安倍総理大臣の長期政権の要因,ポスト安倍をめぐる動き

【NHK 山本記者】外交と直接関係ない話なんですけれども,安倍総理の通算の在任期間,明日で憲政史上最長となります。これに関連して2点伺わせてください。まず,これだけの長期政権となった要因についてなんですが,大臣,閣僚や党幹部として,一貫として安倍総理を支えられてきたと思いますが,長期政権の要因についてはどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】第2次安倍政権,2012年12月26日から発足しまして,私(大臣)は,そのとき経済産業大臣,そのあと党の選対委員長,政調会長,そして経済再生・経済財政政策担当大臣等々を務め,現在,外務大臣という形でありますが,安倍政権,歴代で最長と明日でなるということでありますけれども,これは一言で言いますと,安定した政権の下で様々な政策課題に取り組み,内政・外交共に着実に結果を出してきた,このことが国民から評価をされた,この結果だと考えております。
 外交面では積極的平和主義の下,地球儀を俯瞰する外交,これを一貫して行ってきたわけでありまして,G7・G20・国連,様々な国際社会において日本の存在感は圧倒的に高まっているのは間違いないと,このように思っております。
 また,内政,経済の方も間違いなく良くなっておりまして,日本の経済規模,名目GDPは557兆円ですから過去最高ということでありますし,雇用環境,これも大幅に改善をして,この6年だけでも雇用者数が384万人増えている。様々な改革に挑戦をし,それが成果につながってきた,これが長期政権につながっているのではないかなと思っております。

【NHK 山本記者】もう1点だけお願いします。ポスト安倍についてなんですけれども,総裁任期が2年を切りまして,ポスト安倍をめぐる動きというのも活発になると思いますが,どのような人がふさわしいかという点と,大臣ご自身ですね,ポスト安倍として次の総理というのを目指すお考えというのはおありでしょうか。

【茂木外務大臣】ポスト安倍についてですね,具体的にいま,固有名詞で誰がなるのがふさわしいと言うのは時期尚早だと思いますが,いずれにしても安倍総理とスタイルが一緒か一緒でないかは別にして,しっかりとリーダーシップを発揮して,成果を出す人物ということなんだと思っております。
 ポスト安倍の候補として,自分の名前が挙がっているとしましたら,それは大変光栄なことでありますが,今,私(大臣)は外務大臣として新たな領域,北方領土問題であったり様々な課題に取り組む,こういう課題が山積する厳しい頂に挑戦をしているところでありまして,今はそれに全力を尽くしたい,そういうふうに思っております。

【テレビ東京 坂井田記者】長期政権になってきたことでメリットもあったというところだと思うんですが,逆に課題としてはどんなことがあるのかということと,長期政権の次を担う人物,いろいろ難しいところはあると思うんですけれども,次を担う人物にはどのような難しさがあるとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

【茂木外務大臣】やはり一つ大きな問題というのは,日本が直面する最大の課題,少子高齢化をどう乗り越えて,持続可能な社会保障制度を築いていくか,こういうことである,そんなふうに思っています。そして恐らく外交面,国際情勢の厳しさ,これは変わらないんではないかな。そんな中で日本がどう調整力を発揮し,リーダーシップを発揮し,国際秩序を守っていくか。また新しい国際秩序,ルールを作っていくか,大きな課題だと思っています。

香港情勢

【産経新聞 力武記者】香港情勢についてお聞きしたいんですけれども。ここのところ香港の主要大学で学生と警察の激突が激しさを増す中で,先日,中国の習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席が「一国二制度の原則に重大な挑戦をしている」と述べるなど,取り締まりの強化を支持する考えを示しています。最近は多数のけが人や拘束者が出て,日本人も拘束されていますけれども,このデモが本格化して5か月以上がたつ中で,香港情勢が新たなフェイズを迎えているのかなという気もしますが,大臣はどのように見ておられますでしょうか。

【茂木外務大臣】昨今の香港情勢,情勢の緊迫化,これが長期間にわたっている,また,エスカレーションしている部分もある。新たなフェイズに入っているかどうかという評価は難しいと思いますが,大変憂慮しておりまして,いずれにしても自制と対話による平和的な話し合いを通じた解決,これを関係者に求めてきているところであります。事態が早期に収拾されて,香港の安定が保たれることを強く期待しております。
 そして日本として,様々なレベル・機会を捉えて,中国側にこの旨を伝達をしてきておりまして,G20の外相会合の際に,調整中の日中外相会談でも,王毅(おう・き)国務委員に対してその旨しっかりと意思疎通したいと,そのように考えております。

【NHK 高島記者】一昨日,香港で20代の邦人男性が拘束された事案について,拘束の理由や男性の現況,今後の対応方針について教えてください。

【茂木外務大臣】17日に,香港理工大学周辺で,20代の邦人旅行者の男性1名が現地当局に身柄を拘束されたことを確認いたしております。ですから香港に留学している学生ではなくて,日本から旅行に行った20代の男性ということであります。18日に在香港総領事館が当該邦人と面会をしたところ,当該邦人,けがもなく,体調は良好である,そういった旨を確認しております。
 いずれにしても政府として,邦人保護の観点から領事面会,ご家族との連絡等,できる限りの支援を行っているところでありまして,早期解放に向けて最大限の努力をしたいと思っております。

【共同通信 高尾記者】香港情勢の関連でお伺いします。先週の参議院外交委員会で,茂木大臣は「中国香港当局とデモ隊のどちらかに偏った発言をするのはプラスではない」との趣旨の答弁をされたと思います。この答弁について共産党の志位委員長は「人権侵害に対して抗議しないという表明に他ならない」と批判する一方で,自民党内からは保守系議員を中心に「中国にもっと明確なメッセージを送るべきだ」との声が出ております。このような与野党の指摘をどのように受け止めていらっしゃるか,大臣のお考えをお聞かせください。

【茂木外務大臣】真摯に受け止めたいと思います。

GSOMIAの見通し

【東亜日報 キム記者】GSOMIAについて伺いたいです。昨日,韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官が,GSOMIAは国防レベルではなく,両政府,いわゆる外交で解決する問題という趣旨で発言しました。それについて茂木外務大臣はどういうふうに受け止めているんですかと伺いたいです。そしてG20外相会合で康京和(カン・ギョンファ)長官にどんな話を伝えたいですか,ちょっと伺いたいです。

【茂木外務大臣】これまでも繰り返し述べておりますとおり,韓国政府によります日韓GSOMIA終了の通告というのは,現下の地域の厳しい安全保障環境,これを完全に見誤った対応だと思っております。我が国としては引き続き韓国側に対して,現下の安全保障環境を踏まえた賢明な対応を強く求めていきたいと思っております。
 G20の外相会談,韓国から誰が来るか決まっておりませんので,話ができるかどうかも,決まらないことにはなんというか,どうしていいか分かりません。

【韓国朝鮮日報 リ支局長】GSOMIAについて,この22日,このままGSOMIAが終了する場合,韓国,アメリカ,日本の3か国の協力にどのような影響,東北アジアの情勢にどのような影響を与えると思っていらっしゃいますか。例えば,在韓米軍が減縮して,したがって,在日米軍の配置でも何か影響を与える可能性があると思っていらっしゃいますか。この件について,伺わせていただきます。

【茂木外務大臣】終了しておりません,今の段階で。仮定の質問に対しては,何というか,お答えできない部分がありますが,いずれにしてもですね,韓国側に今は賢明な対応,これを強く求めているところであります。

【NHK 渡辺記者】GSOMIAの関係で,お伺いしたいと思います。大臣の今までの会見の中で,「韓国側に賢明な対応を求める」ということを繰り返して述べていらっしゃいますけれども,この賢明な対応というのは,どんな対応のことなんでしょうか。具体的にお願いします。

【茂木外務大臣】実質的にGSOMIAが有効であると,こういう対応であると思います。

G20外相会合(ラヴロフ外相との会談)

【朝日新聞 楢崎記者】今週末のG20外相会合でロシア・ラヴロフ外相との会談も想定されていると思いますけれども,どのような話がされたいのかということと,諸般の情勢が許せば今年中の訪露も検討されていると思いますけれども,今回のG20での会談での位置付けというのはどのようなものになりますでしょうか。

【茂木外務大臣】ラヴロフ外相,名古屋でのG20外相会談,訪日の予定でありまして,私(大臣)もまた,訪露の招待を受けておりますので,諸般の情勢が許せば年内にもモスクワを訪問したいと考えております。
 今週末のG20におきましては,外相会談,現在,調整中でありますが,基本的には1956年の共同宣言を基礎として,平和条約を加速させるとの両首脳の合意を踏まえてですね,領土問題を解決して平和条約を締結する,これに向けた交渉を行うということになりますが,特に今回はですね,二つのパイロットプロジェクト,これも終了いたしましたので,ある程度,そういった成果についても確認をしたいと。そんなふうに思っておりますし,また,島民の方,これがもっと負担少なくですね,北方四島を訪問できる環境整備,こういったことについても話をしてみたいと思っております。

ローマ法王の訪日(日本とバチカンの連携)

【朝日新聞 楢崎記者】今週末から訪日されるローマ法王がビデオメッセージで,「人類の歴史で二度と核兵器が使われないことを望む」旨の発言をされていますけれども,日本とバチカンの今後の連携のあり方について,お考えをお聞かせください。

【茂木外務大臣】3分間のビデオメッセージ発していただいたと。大変いいメッセージを発していただいたと思っております。法王の訪日,踏まえた上で,どんな協力が可能かということについては,今後,検討したいと思っております。

GSOMIAの見通し

【NHK 高野記者】GSOMIAの話に戻るんですが,先ほどの質問であった,「賢明な対応」の意味,「実質的にGSOMIAが有効である」,これは韓国側が破棄の決定を撤回するということを意味するのか,それ以外の意味があるのかということと,現状,この段階で,日本側が何かやらない限りは破棄を撤回することはないと韓国大統領側は言っていますが,見通し,何か変わる要素があると思っていらっしゃるのか,そこについてお伺いできますか。

【茂木外務大臣】いずれにしても韓国側の判断でありますから,私(大臣)の方から,どうなるという見通しを述べるのは適切ではないと思っておりますが,冒頭申し上げたように,現下の地域の安全保障環境,これを考えたら,韓国側の対応,これはそれを見誤った対応ということでありますから,その対応を変えると,賢明な対応をしてほしいということに尽きます。

G20外相会合(期待する成果)

【読売新聞 阿部記者】週末のG20外相会合についてお伺いします。過去の外相会合と同様に,今回は成果文書は作らないと伺っていますけれども,議長年の締め括りとしてどのような成果を得たいと考えているかお願いします。

【茂木外務大臣】愛知,名古屋でのG20外相会談に向けては,三つのテーマ,自由貿易の推進とグローバルガバナンス,SDGsの実現,そして,アフリカの開発,この三つのテーマを選んだわけであります。これはいずれも国際社会が直面する喫緊の課題でありまして,また,日本が本年,G20大阪サミットやTICAD7で各国との連携強化に大きく貢献した分野であると考えております。G20議長を務めたこの1年の集大成となります,週末の外相会合では是非とも大阪トラックや質の高いインフラ原則など,大阪サミットの様々な合意を改めて確認したいと思いますし,また,現下の国際情勢を踏まえ,それらをどのように,政策であったり制度として具体化していくべきか,そこに集う28か国の知恵を引き出して,しっかりと議論を深めることを成果としたいと思っております。そしてこうした議論の結果が,今後の国際協調にモメンタムを与え,世界の政治経済情勢の見通しを高める前向きなメッセージとなるように議長として采配を振るいたいと,こんなふうに考えております。

習近平中国国家主席の国賓来日

【共同通信 高尾記者】中国の習近平国家主席の国賓来日について伺いたいと思います。国家主席の国賓待遇をめぐっては,人権抑圧が指摘されている香港情勢や覇権主義的な海洋進出を背景に,自民党内から国賓来日反対意見も出ております。こうした意見をどのように受け止めていらっしゃるのか。国家主席の国賓来日の意義とともに,大臣のお考えを教えてください。

【茂木外務大臣】香港情勢については,先ほどお話をさせていただいたとおりであります。そして,日中間,完全に正常な軌道に戻ったとは言え,一方で両国間に課題はあるわけであります。その課題解決に向けては,両政府のハイレベルが大局的な観点から,率直に議論することが重要だと,このように考えておりまして,香港情勢も含めて,来春の習近平国家主席の訪日を見据え,引き続き主張すべきはしっかりと主張し,また,解決できる問題については一つひとつ,着実に解決していきたいと思っています。

中東情勢(ヨルダン川西岸の入植地問題)

【朝日新聞 竹下記者】中東情勢に関連して伺います。アメリカのポンペオ国務長官が会見で,ヨルダン川西岸地域にイスラエルが建設してきたユダヤ人の入植地について国際法に違反しないというふうに述べまして,事実上,容認する考えを示しましたけれども,日本政府は国際法違反の立場でこれまで活動の凍結を呼びかけてきたと思いますが,この発言についての受け止めと,アメリカに対して対応の変更を求めるお考えがあるかお願いします。

【茂木外務大臣】我が国はイスラエル・パレスチナ間の紛争の二国家解決を支持してきておりまして,中東和平,これは当事者間の交渉によりまして解決すべきとの立場であります。また,我が国は入植活動は国際法違反であるとの立場でありまして,この立場に変わりはありません。米国との間でも,よく意思疎通を図っていきたいと思っております。

日米貿易協定・日米デジタル貿易協定の審議見通し

【NHK 高野記者】日米の貿易協定についてお伺いします。今日午後,衆議院の本会議で通過する見込みとなりました。ご所見とともに,これまでの国会審議で野党側はウィン・ウィンというには証拠となるものが少ない,資料が少ないという指摘をしています。今後の参議院での審議にどのように臨まれますか。

【茂木外務大臣】今日,いよいよ,衆議院で採決という予定だとお聞きをいたしております。政府として,この日米貿易協定,更には日米デジタル貿易協定につきまして必要な資料等もできる限り用意をし,そして,国会においてはかなり丁寧に内容についても,いかにこの協定がウィン・ウィンのものになっているか,説明をしてきているつもりであります。参議院におきましても同様に丁寧な説明に努め,一日も早いご承認をいただきたい,そのように思っております。

桜を見る会

【テレビ東京 坂井田記者】再び外交問題から外れてしまって恐縮なんですけれども,桜を見る会について安倍首相から説明が続いていますけれども,多くの資料が失われていたりして,事実関係が確認できない状況です。こうした安倍総理の説明は十分と言えるとお考えでしょうか。あるいは国会で説明が更に必要だとお考えでしょうか。所感をお聞かせください。

【茂木外務大臣】桜を見る会,僕,行ってないから,分かんないね。