(令和3年4月20日(火曜日)16時04分 於:本省会見室)

冒頭発言

EUの「インド太平洋協力戦略」

【茂木外務大臣】私(大臣)の方から1点ございます。EUの「インド太平洋協力戦略」についてであります。昨日、EUがインド太平洋における協力のための戦略を発表いたしました。我が国は、EUが、インド太平洋に関与していくとの強い意思を表明したことを歓迎いたします。
 今年の1月、私(大臣)は、EU外務理事会に日本の外務大臣として初めて出席をしまして、「自由で開かれたインド太平洋」に関する日本のビジョンや取組を説明しました。今回の文書は、日本が重視をしている民主主義、法の支配、ルールに基づく国際秩序、航行の自由に言及しつつ、安全保障・防衛、経済、地域の連結性といった幅広い分野での協力を含むものであります。
 日本は、引き続き「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けまして、EU、欧州諸国を含め、関係国と協力を進めていきたいと思っております。私(大臣)からは以上です。

モンデール元駐日米国大使の逝去

【朝日新聞 佐藤記者】米国の元副大統領で、クリントン政権で駐日大使を務められたウォルター・モンデール氏がお亡くなりになりました。大使としてですね、1996年の米軍普天間飛行場の返還合意、これを当時の橋本龍太郎総理とともに発表して、沖縄の基地負担軽減に取り組んだ方として知られておりますけれども、大臣の受け止め、もしありましたらお聞かせください。
 
【茂木外務大臣】米国時間の19日、昨日ですね、ウォルター・モンデール元駐日大使がお亡くなりになりました。心からご冥福をお祈り申し上げます。
 モンデール元駐日大使、カーター政権下の77年から81年まで副大統領を務められ、更には1993年から96年にかけて、駐日大使として活動されました。大使在任中は、ご指摘の問題だけではなく、日米経済摩擦問題、日米安全保障問題、そして普天間基地返還の日米合意を含みます在日駐留米軍をめぐる問題への対応等、日米関係の発展に大きな貢献をされたと考えております。
 また、大使退任後も、ご出身のミネソタの日米協会名誉会長として、日米間の相互理解の促進や日米関係の将来を担う人材育成に、大きく貢献をされました。
こうした大きな功績を踏まえまして、2008年には桐花大綬章(とうかだいじゅしょう)を受章されるなど、同大使は今日の強固な日米関係の礎を築かれ、同盟強化に大きく貢献されたと思っております。
 同大使によります、これまでの日米関係へのご貢献に、改めて敬意を表したいと思います。

EUの「インド太平洋協力戦略」

【日本経済新聞 飛田記者】冒頭、大臣から発言がありましたEUのインド太平洋戦略に関して、歓迎されるということでしたけれども、現在の世界情勢をみると、東シナ海、南シナ海で現状を変更する試みがある一方で、欧州でもウクライナでそういった現状変更の動きがありまして、日本として、EU、そして同盟国である米国とともに対応していく戦略というか、その辺り、大臣からお考えを教えてください。
 
【茂木外務大臣】先ほど申し上げましたが、EUの1月の外務理事会において、私(大臣)の方から、インド太平洋には大きな発展の可能性と同時に、様々な挑戦、こういったものが存在することを指摘いたしました。それに対してかなり議論したところでありますけれど、今回のEUの文書にも、インド太平洋地域での地政学的競争に起因する緊張の高まりへの懸念を示すとともに、既に独自のインド太平洋に係るアプローチを発表しているパートナー、もちろん日本もそこの中で最重要なパートナーと考えておりますけれども、との間で、インド太平洋への関与を深めていく旨明らかにしております。
 例えば、ウクライナ情勢とこれを同一に語るかどうかは別にいたしまして、一方的な現状変更の試みに対しましては、同盟国であります米国を始めとする同志国と緊密に連携して対応していくことが重要だと考えておりまして、今年に入ってから英国、米国、インドネシア、更にはドイツとの間で「2+2」と、これも実施をしているところでありました。そこの中で、こういった認識を共有して、協力を進めていくことで一致をいたしております。
 「自由で開かれたインド太平洋」、今から5年前、2016年に日本が提唱した考え方、ビジョンでありますが、この意義であったりとか重要性、ますます高まってきているし、また、この考え方を共有する国々も増えてきていると、こういうふうに考えておりまして、今後とも、こういった価値を共有するパートナーであるEUとも緊密に連携をしていきたいと考えております。
 
【テレビ朝日 佐藤記者】同じくEUのインド太平洋戦略についてお伺いします。今回EUで文書をまとめたわけですけれども、この作業には、当初年単位での時間がかかるとの見方もありました。大臣、ご出席になった外務理事会が1月でしたので、3か月弱での今回取りまとめになりましたけれども、このスピード感についてどのようにご評価されるか、また、その背景をどうご覧になるか、まず教えてください。
 
【茂木外務大臣】それだけですね、様々な動きが、今、世界において早まっているということなのだと思います。先ほども申し上げたように、このインド太平洋、大きな発展の可能性と同時に、様々な挑戦というものにも曝されている。そういった中で、既にフランスであったりドイツ、オランダ、独自のビジョンというものを発表しているところでありますが、EUとしてもそういった戦略を作るという機運が、ちょうど1月の頃、かなり高まっていたなと、自分もこのEUの外務理事会で実感をしたところでありまして、非常に早いタイミングで、これは外務理事会ですけれど、最終的には欧州委員会で決定することになると思いますが、スピード感を持って対応されているなと、こんなふうに考えております。
 
【テレビ朝日 佐藤記者】関連してもう1問、今回の文書の最後にはジョイント・コミュニケーションが9月までに具体的な文書として出るということが記されていますけれども、ここにどういった期待をされるのかということと、その文書をまとめるに当たって、また茂木大臣が、何かこうお話を向こうとされたりとか、そういったお考えはありますでしょうか。
 
【茂木外務大臣】先ほど触れたように、EU全体としての文書をまとめるということだと思っております。この作業、今後進めていくということですが、今回で基本的にベースができたと思っております。もちろん、今後、例えばG7であったりとか様々な機会に、欧州各国の外務大臣であったりとか、また、EU委員会の外交担当等々と話す機会があると思いますけれども、そういったことも一つひとつまた、確認するというか、連携を深めていきたいと、こんなふうに思っています。

ミャンマー情勢(邦人ジャーナリストの拘束)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】ミャンマー情勢について伺います。ミャンマー軍の市民弾圧に対し、政府は国軍と培った人脈を通して、制裁ではなく、対話による事態の打開を図る方針であると伺っていますが、この度、ミャンマーで拘束されたジャーナリストの北角裕樹さんの解放に向けても、この同様の方針で事態を打開される予定でしょうか。よろしくお願いします
 
【茂木外務大臣】すみません。「対話によって、解決を図る」と、こういう方針を誰が示しているんでしょうか。
 
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】私は、日本経済新聞の記事の中でそういうふうに。
 
【茂木外務大臣】だったら日本経済新聞がいますから、聞いてください。
 
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】分かりました。

イラン核問題

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
先週(16日)発表された外務報道官談話において、日本政府はイランの濃縮ウラン製造開始に関し懸念を表明するとともに、中東地域の安定化に向けて外交努力を継続することを表明しました。特にサウジアラビアへの越境攻撃やイランによる制裁措置の緩和の要求を踏まえ、具体的に今後どのような取組を検討されているかお聞かせください。
 
【茂木外務大臣】イランの核問題をめぐっては、二つの動きがあるわけでありまして、一つはいい動きでありまして、ウィーンにおいて、各国間の前向きな対応が行われているということは歓迎しております。米国とイラン双方の核合意履行への復帰に向けた進展を期待をして、協議の行方、注視をしているところであります。
 その一方で、ご指摘のように、イランが60%の濃縮ウランの製造を開始したこと、これは強く懸念をしております。イランに対して、核合意を遵守し、核合意を損なう挑発的な措置を控えるともに、対話を通じた解決に向けて建設的な対応を行うように、強く求めたいと思います。こういった姿勢は、ザリーフ大臣とも何度も会談をしておりますが、直接伝えているところであります。
 日本、核合意の当事国でありませんが、米国とは同盟関係にあり、また、イランとは伝統的な友好関係にあるわけでありまして、こういったものも生かしながら、なかなかここでどういうステップを踏んでと、難しいところはあるのですけれども、対話の進展に向けて積極的に貢献していきたいと思っております。

ミャンマー情勢(邦人ジャーナリストの拘束)

【フリーランス 志葉記者】ミャンマーで、北角裕樹さんが拘束された件に関連してです。水面下の働きかけをいろいろやってらっしゃるところだと思うんですが、ミャンマー側の対応に応じて、日本が何をするべきするかということを、ある程度明確にすべきではないか。例えば、ミャンマーでの暴力の停止の期限をいつまでと定めて、段階的に、例えば経済制裁、あるいはそれに準じたものを行うとか、邦人の不当拘束や加害に対しては制裁の対象にするだとか、そういったことを「見える化」することが必要じゃないかと思うんですけど、いかがでしょうか。
 
【茂木外務大臣】18日夜に、ヤンゴン在住の、40代の邦人ジャーナリストが自宅において逮捕され、現在そのヤンゴン市内のインセイン刑務所に拘束をされております。ミャンマー当局によりますと、当該邦人に怪我等はないとのことでありますが、拘束されている状況は受け入れられるものではなく、ミャンマー側に抗議するとともに、当該邦人への早期の面会、そして早期な解放をあらゆるレベルで強く求めているところであります。
 お考えを伺いました。その上で、今大切なことは何かと、この邦人の方、安全を確保する、そしてまた、早期解放を実現すると、これに向けてどういう対応をとるのが最も適切か、こういう観点から検討していきたいと思っております。