平成31年1月15日(火)

 今朝の閣議においては,法務省案件はありませんでした。
 続いて私から2件,私の海外出張についてと裁判員制度の施行状況等に関する検討会について報告します。
 まず,私の海外出張についてです。この度,司法外交の促進の一環として,今月8日(火)から12日(土)まで,中華人民共和国香港特別行政区及びインドを訪問しました。
 香港では,行政のナンバー2であるマシュー・チュン政務長官,そしてカウンターパートであるテレサ・チェン法務長官とお会いし,インドでは,ランジャン・ゴゴイ最高裁判所長官,元インド人民党総裁のラージナート・シン内務大臣,そしてカウンターパートであるラヴィ・シャンカル・プラサード法務・司法大臣等とお会いしました。
 また,国際仲裁機関,空港施設等の法務省と関わりのある機関・施設等もそれぞれ訪問しました。その他,現地の邦人の方とも意見交換をさせていただきました。
 香港では,当省と香港法務庁との間の協力覚書(Memorandum of Cooperation,MOC)に署名しました。
 この協力覚書は,国際仲裁や国際調停の促進を中心とした分野における協力について定めたものです。
 香港は国際商事紛争のアジア地域におけるハブとして発展しています。日本としても国際仲裁等の活性化に向けた基盤整備は,政府として取り組んでいる大きな課題の一つであり,そういった課題について香港との間で協力覚書を交換できたことは非常に大きな成果であると認識しています。
 インドでは,シン内務大臣,プラサード法務・司法大臣,そしてゴゴイ最高裁判所長官と,インドの司法制度について情報交換をさせていただきました。
 香港,インドともに法務大臣が訪問するのは初めてであり,インドとしても日本の司法制度,あるいは日本との関係を強化することについて非常に大きな関心を持っていました。そういった中で,我が国からは入管法等の改正や,外国人材の受入れ拡大と,それに伴う共生社会の実現等の施策に取り組んでいること,あるいは2020年に京都で開催される国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)について紹介して出席をお願いする,あるいは法務省が日本の法令を英語に翻訳する取組を行っていることの紹介をしました。
 今回の香港及びインドの訪問では,カウンターパートや政府の枢要部にいる大臣と直接英語で会談をすることで,日本の法務大臣としても,また個人としてもしっかりと相互理解を深め,今後の協力関係の強化に向けた足がかりを築くことができました。
 御承知のとおり,我々法務省は,法の支配を促進し,そして貫徹する立場にあります。国際分野においてもあらゆる活動に法の支配を浸透させるために関係国と意思疎通する,協力するという「司法外交」をこれからもしっかりと展開する上で,大きな意義を有する機会になったと考えています。
 今回の訪問を契機として,訪問した香港,インドはもちろん,その他の国ともしっかりと協力関係を築き上げて,より一層,「司法外交」を強力に推進してまいりたいと思っています。
 次に,裁判員制度の施行状況に関する検討会についてです。本制度については,平成27年に裁判員法一部改正法が成立いたしましたが,同法において,施行から3年経過後に,施行状況等について検討を加え,必要がある場合には所要の措置を講ずるものとされています。
 この度,この検討のため,「裁判員制度の施行状況等に関する検討会」を開催することとしました。
 この検討会は,法務省刑事局において検討作業を行うに当たり,意見交換を重ねていただき,その作業に必要な協力をお願いするものです。
 委員は,法曹三者のほか,研究者等の有識者を含む11名の方々にお願いしました。
 本年5月21日には,裁判員制度の開始から10周年となる節目を迎えます。
 法務省としては,裁判員制度が我が国の司法制度の基盤として重要な役割を果たすことができるよう,引き続き努めてまいります。

「裁判員制度の施行状況等に関する検討会」に関する質疑について

【記者】
 「裁判員制度の施行状況等に関する検討会」での取りまとめについて,いつ頃までに取りまとめをされるかということと,どのような成果を期待されるかをお聞かせください。

【大臣】
 先ほど申し上げたとおり,この検討会は刑事局が裁判員法一部改正法に基づく検討作業を行うに当たって,意見交換を重ねていただき,その作業に必要な協力をお願いするものです。いつまで継続するかや検討結果を取りまとめるかどうかについては,議論の状況にもよりますので,現段階では未定であると申し上げます。
 ただ,裁判員制度は重要な意義のある制度であり,非常に高い専門性や見識,広い視野をお持ちの委員の方々に充実した意見交換を行っていただくことを期待しています。

香港法務庁とのMOC締結に関する質疑について

【記者】
 今回の出張で香港の法務庁とMOCを締結されたとのことですが,もう少し詳しく,その意義と今後に期待することをお聞かせください。

【大臣】
 香港は,国際経済におけるアジア有数のハブ都市です。また,その法制においても,元々英米法系のコモン・ローがあり,あるいは中国法についても相当詳しい部分があります。例えば国際紛争というのは,国際仲裁や国際調停という手続で解決される場合が多く,法務省が香港と国際仲裁や国際調停に関する協力覚書を締結するということで,国際紛争解決分野において,我が国が香港とともに主要なプレイヤーとして重要な役割を果たしていくことが期待されます。
 日本は経済大国であり,また香港も中国との経済のハブであるというところもあります。そうしたところと情報交換や協力をすることによって,「法の支配」の強化もしっかりとできるのであろうと考えています。
 アジアは御承知のとおり,様々な法文化があり,法制度も様々です。そうした中で経済取引をめぐる多種多様な紛争が存在しているわけです。香港では,東西の経済・文化が行き交っていた経緯もあり,早くから仲裁文化が根付いています。我が国も多様な文化を受け入れて「法の支配」を醸成してきており,日本の司法については法的安定性に優れているということで,信頼されている部分があります。そういったこともあり,香港も我が国との協力については非常に前向きであり,今回,覚書を交わすことによって,国際仲裁の制度,文化の定着に向けた連携が深化するということになり,我が国のビジネスにおいても非常に裨益するでしょうし,アジア,あるいは国際的なビジネス,「法の支配」の文化においても活性化に繋がると考えています。
 署名式の様子は,香港でも報道されており,非常に関心が高かったというところです。