平成31年1月18日(金)

 今朝の閣議においては,法務省案件はありませんでした。

法制審議会会社法制部会に関する質疑について

【記者】
 16日の法制審議会の会社法制部会において,社外取締役の義務化や役員報酬の透明化などを含む会社法改正の要綱案が取りまとめられました。要綱案への所感をお聞かせください。
 また,社外取締役についてはなり手不足や社外取締役を置いていても企業の不祥事が起こっているという現状があるかと思いますが,そういった質の確保や実効性の担保にどのように取り組むべきかお考えをお聞かせください。

【大臣】
 御指摘のとおり,会社法制(企業統治等関係)の見直しについては,平成29年4月から,法制審議会の会社法制(企業統治等)部会で調査審議が行われていたもので,今月16日に同部会において要綱案が取りまとめられました。
 今回の要綱案は,株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るため,株主総会資料の電子提供制度の創設,株主提案権の濫用的な行使を制限するための規定の整備,監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け等の措置を講ずること等を内容とするものです。諮問の趣旨に適切に対応する内容のものと受け止めています。密度の濃い充実した審議をした上で,要綱案を取りまとめていただき,感謝しています。
 今後,部会の取りまとめを受けて,法制審議会の総会における調査審議を経て,要綱の答申が得られれば,できる限り早期に国会に関連法案を提出することができるよう,所要の準備を進めていきたいと考えています。
 次に,社外取締役の質の確保等に関する取組については,企業の不正を防止し,その業務の適正を確保するための体制を整備するに当たっては,法制度を整えるだけでなく,実質的に機能させることが重要であると認識しています。「仏作って魂入れず」ではいけないということです。
 社外取締役による監督の実効性を高めるためには,期待される役割を適切に遂行することができる知見と経験を兼ね備えた者を社外取締役に選任することや,社外取締役の機能が発揮しやすい環境を整備すること等の運用面の取組も重要である考えています。こういった知見を備えた社外取締役の確保については関係団体において適切な取組がなされることを期待しています。また,法務省としてもコーポレートガバナンスの強化等の取組を行っている関係省庁と連携して,協力してまいりたいと考えています。

日本の刑事司法制度に関する質疑について

【記者】
 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長による一連の事件について関連してお伺いします。被疑者に対して,取調べに弁護人を立ち会わせる権利を認めないことや被疑者・被告人の身柄拘束の在り方に関連して,一部,日本の刑事司法制度について批判があるものと思いますが,これについて大臣の所見をお伺いします。

【大臣】
 個別の事件に関連するコメントはできないとの前提で,一般論としてお答えします。
 各国の司法制度には様々な違いがあります。例えば,実体法の面についても,手続法の面についても,それぞれの国において違いがあって,それが制度全体として機能するように成り立っていると承知しています。ですから,制度全体の在り方を考慮せずに個々の制度の相違点に着目して単純に比較することは適切ではないというのが基本的な考えです。
 我が国においては,例えば,実体法において主観面というのが構成要件,犯罪の成否を決めるに当たって大きな要素を成している部分もあり,また被疑者の取調べは,犯行の動機や背景等も含めて,事案の真相を解明するための証拠収集手法として,重要な機能を果たしています。
 被疑者の取調べに弁護人を立ち会わせる権利を認めることについては,過去に法制審議会において議論はされたことがありましたが,「取調べの在り方を根本的に変質させて,その機能を大幅に減退させるおそれが大きい。」との意見があり,導入されなかったという経緯があります。
 そういったことから取調べに弁護人の立会いが認められていないのですが,一方で,被疑者には,黙秘権や弁護人と立会人なしに接見して助言を受ける権利が認められています。そして,裁判員裁判の対象事件や検察官の独自捜査事件などの一定の事件については,被疑者取調べの録音・録画を実施することとされています。我が国ではこれらの制度などによって不適正な取調べの防止が図られていると考えています。
 また,身柄の拘束ですが,これは大前提として,被疑者,あるいは被告人の勾留というのは,捜査機関から独立した裁判官による司法審査を経て行われているということです。被疑者の勾留というのは,具体的な犯罪の嫌疑を前提に,個別の事件単位で判断されるわけですが,罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合に限って,最長で20日間を限度として認められるということです。また,勾留等の裁判に対しては不服申立てを行うことができるということです。起訴後の被告人の勾留については,例えば罪証隠滅のおそれがある場合といった除外事由に当たらない限りは原則として保釈が許可される仕組みになっています。その判断も司法判断に帰するということです。また,不服があれば不服申立てもできます。
 そういったことから,被疑者・被告人の身柄の拘束については,法律上,厳格な要件,司法審査及び手続が定められており,適切な制度になっていると理解しています。

【記者】
 今回の件をきっかけとして日本の刑事司法制度全体に注目が集まったということですが,今回の件を受けて刑事司法制度そのものを見直す必要性はないという認識でよろしいでしょうか。

【大臣】
 日本の刑事司法制度については,近年,刑事訴訟法が大きく改正されましたが,日本の刑事司法の在り方について様々な議論が,法制審議会や国会でなされ,その上で改正に至ったという経緯があります。そういった中で一定の事件に関する録音・録画や保釈の判断に関する規定といったものが総合的に見直されたと考えています。
 まずは現行制度をしっかり運用していくということに向き合っていきたいと考えています。あわせて,各国の刑事司法制度がそれぞれ違うということは,各国で共通の認識があると思いますので,我々としては,日本の制度についてしっかりと説明し,御理解をいただきたいと考えています。

毎月勤労統計調査に関する質疑について

【記者】
 厚生労働省の毎月勤労統計調査が不適切な調査手法で行われていた問題を受け,修正予算案を閣議決定する事態になったことについて,閣僚のお一人としてどのようにお考えになられるか,所感をお聞かせください。

【大臣】
 まず,厚生労働省の毎月勤労統計調査が修正されたことについてですが,これにより法務省予算にも若干の影響がありました。同調査に基づく平均賃金が修正されたことによって,労災保険給付における最低補償日額,雇用保険の支給上限額に影響が生じるということで,これを受けて法務省予算において全体として,約40万円の予算が増加することになりました。
 この統計調査の取扱い自体に関しては,私の所管外ですのでコメントをすることは差し控えたいと思いますが,先ほど申し上げた予算上の影響については,直ちに,適正な対応をしていきたいと考えています。

(以上)