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冒頭発言

【林外務大臣】今回、ここジャカルタにおきまして一連のASEAN関連外相会議に出席をいたしました。昨日は日ASEAN外相会議及びASEAN+3外相会議に参加をし、本日はEAS参加国外相会合及びARF閣僚会合に参加をいたしました。これに加えまして、ASEAN議長国であるインドネシアを始め、マレーシア、東ティモール、ブルネイ、韓国、モンゴル、豪州、中国、トルコ、バングラデシュとそれぞれ二国間会談をしまして、日米韓外相会合及び日米比外相会合を実施いたしました。
 一連のASEAN関連外相会議では、ASEAN中心性・一体性及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」への支持を改めて表明をし、開放性、透明性、包摂性、国際法の尊重などですね、FOIPとAOIPが共有する本質的原則の重要性、これを強調いたしました。また、日ASEAN友好協力50周年の歴史的節目である今年、12月16日から18日にかけて東京で開催予定の特別首脳会議に向けて、ASEANとの緊密な協力を確認いたしました。
 また、地域・国際情勢については、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、明白な国際法違反であるとして厳しく非難するとともに、ロシアによる核の威嚇は断じて許されず、ましてやその使用はあってはならないといった日本の立場を述べました。さらに、力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ決して認められないと述べた上で、東シナ海では中国による日本の主権を侵害する活動が継続、強化されておりまして、これに強く反対するとともに、南シナ海でも軍事化や威圧的な活動が強化されていることや台湾海峡の平和と安定の重要性について指摘をいたしました。
 中国については、「建設的かつ安定的な関係」の構築を双方の努力で進めていくことの重要性を指摘をいたしました。また、北朝鮮については、12日のICBM級弾道ミサイルの発射は国際社会の平和と安全を脅かすものであり強く非難するとともに、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルのCVIDの実現に向けて、国際社会が一体となり、安保理決議を完全に履行することが不可欠であると指摘をいたしました。さらに、拉致問題の即時解決に向けて、各国に引き続きの理解と協力を求めました。
 今般のASEAN関連外相会議におきまして、ALPS処理水の海洋放出に関し、中国側から科学的根拠に基づかない主張がなされたことを受けまして、私から、ALPS処理水の海洋放出は、IAEAの包括報告書の結論を踏まえて、国際基準及び国際慣行に則り、安全性に万全を期した上で実施するとの我が国の立場、これを明確に説明いたしました。
 一連の会議を通じまして、地域の諸懸案を含めた様々な課題に関して我が国の立場を明確に発信するとともに、外交・安全保障分野から経済分野まで幅広く有意義な議論を行うことができました。
 時代の転換点にある中で、日本とASEANが世界の平和と繁栄のために連携を強化していくことを今回の訪問において確認できましたことは、非常に大きな意義がありました。今後も、ASEANを含む関係国と緊密に連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現に向けた取組を力強く推進していく考えです。
 私からは以上です。

質疑応答

【記者】今日で一連の日程を終えましたけれど、ASEAN諸国の中にはロシアや中国に対してさまざまな立場の国があります。今回は中国、ロシア、さらに北朝鮮を含めて、当事者間の会合の中で、法の支配の重要性などを直接訴えた成果についてはどのように捉えていらっしゃるでしょうか。

【林外務大臣】冒頭述べましたとおりですね、一連のASEAN関連外相会議におきまして、私から、一貫してASEAN中心性・一体性及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」への支持を改めて表明し、開放性、透明性、包摂性、国際法の尊重などですね、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」とAOIPが共有する本質的原則の重要性を強調いたしました。また、日ASEAN友好協力50周年の歴史的節目である今年、12月16日から18日にかけて東京で開催予定の特別首脳会議に向けて、緊密な協力を確認いたしました。
 地域・国際情勢については、日本の考え方や立場をしっかりと発信しつつですね、ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海・南シナ海、台湾、北朝鮮、ミャンマー等についてもですね、各国と有意義な議論を行うことができたと考えております。
 歴史の転換点にある中で、今回の訪問において、日本とASEANが世界の平和と繁栄のために連携を強化していくことを確認できたことは、非常に大きな意義があったと思っております。今後も、ASEANを含む関係国と緊密に連携をし、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現に向けた取組を力強く推進していく考えでございます。

【記者】「処理水」の海洋放出計画を巡って、マルチの会議や王毅氏との会談の中で、どのようなやり取りが成されたのでしょうか。また、成果は得られたとお考えでしょうか。中国は、議長声明に海洋放出に反対を明記するよう働きかけたそうですが、日本政府としてどのように対応されたのでしょうか。対話が始まっていた中で、今後の日中関係に与える影響についても伺います。

【林外務大臣】先ほど述べましたとおり、今般のASEAN関連外相会議において、ALPS処理水の海洋放出に関して、中国側から科学的根拠に基づかない主張がなされたということを受けまして、私から、ALPS処理水の海洋放出は、IAEAの包括報告書の結論を踏まえて、国際基準及び国際慣行に則り、安全性に万全を期した上で実施するという我が国の立場を明確に説明いたしました。
 そして王毅主任との会談においては、私からは、本件の政治化に反対するとともに、今般のIAEAの包括報告書に言及しつつ、我が国の立場を改めて明確に述べまして、科学的観点からの対応を改めて強く求めるとともに、中国とも科学的観点からの意思疎通を行う用意がある旨改めて伝えたところであります。王毅主任からは、中国側の立場が述べられました。
 ARFの議長声明につきましては現在議長が我が国を含む各国の意見を踏まえ、調整中であると承知しておりますが、いずれにいたしましても、我が国としては、引き続き、IAEA報告書の結論を踏まえて、高い透明性をもって国際社会に丁寧に説明していく考えでありまして、中国側に対しては科学的根拠に基づいた議論を行うように強く求めてまいります。
 その上で、日中関係については、主張すべきは主張し、中国に対し責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ねて、グローバルなものを含む共通の課題については協力する、「建設的かつ安定的な関係」の構築を双方の努力で進めていく事が重要だと考えております。

【記者】本日の会議にはロシアのラブロフ外相や北朝鮮の「大使」も参加されていました。大臣どこかで接触はされましたでしょうか。もしあれば、やりとり含めてお伺いします。また、中国の王毅政治局員との会談をされましたが、大臣から秦剛外相や李強首相の訪日への招待、また、岸田総理と習近平氏との会談についても話題になりましたでしょうか。

【林外務大臣】北朝鮮、そしてロシアの代表との接触はございませんでした。
 日中間のハイレベルの往来について、現時点で決まっていることは何もございませんが、王毅主任との会談ではですね、昨年11月の日中首脳会談で一致したとおり、首脳及び外相を含めて、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくということを改めて確認いたしました。


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