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2023年4月6日

4月5日、IAEA(国際原子力機関)は、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の安全性レビュー(2回目)に関する報告書を公表しました。同報告書は、2022年11月14日から18日にかけて、IAEAの職員及び国際専門家が日本を訪れ、その際に実施したレビューに基づき作成されたものです。

1.概要

2022年11月のALPS処理水の安全性に関するIAEAレビューは、IAEAとの間で2021年7月に署名されたALPS処理水の取扱いに係る包括的な協力の枠組みに関する付託事項(TOR)に基づき実施されたもので、今回で2回目になります。IAEAレビューは、原子力分野の専門機関であるIAEAの職員及び国際専門家からなるIAEAタスクフォースにより実施されています。

今回公表された報告書では、主に、国際安全基準に基づき2022年11月に実施されたレビューにおける見解について記されています。 

(参考) IAEAタスクフォースには、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、米国、英国、ベトナム出身の国際専門家が含まれる。

2.報告書のポイント   ※IAEA報告書からの引用(一部要約)有

前回の報告書と同様、以下の8つの技術的事項について確認が行われました。
  1. 横断的な要求事項と勧告事項
  2. ALPS処理水/放出水の性状
  3. 放出管理のシステムとプロセスに関する安全性
  4. 放射線影響評価
  5. 放出に関する規制管理と認可
  6. ALPS処理水と環境のモニタリング
  7. 利害関係者の関与
  8. 職業的な放射線防護

報告書では、技術的事項毎に、IAEAタスクフォースと経済産業省及び東京電力との議論のポイントや、所見の概要が記載されています。

全体的な内容としては、東京電力は第1回レビューでの指摘を考慮し、その計画の改訂に大きな進展があったこと、IAEA側の理解が深まったこと、経済産業省及び東京電力への追加ミッションは必要ないことが明記されています。

主な確認事項

(1)横断的な要求・勧告事項

  • 第一回のミッションにおいて、タスクフォースは日本側から完全な協力を得て、IAEAレビューの基礎となるような多くのプレゼンテーションや関連資料を得た。

  • タスクフォースは、本レビューに適用されるIAEAの国際安全基準に含まれる要件及び勧告に関連する追加情報を、経済産業省及び東京電力に対して要請しなかった。

(2)放出する水の性状

  • タスクフォースは、改訂されたソースタームを決定するための方法論について、十分に保守的でありつつも現実的であるという全体的な見解を有した。

  • タスクフォースは、放射線環境影響評価報告書における人及び環境に与える放射線量の計算を、利用可能となった更に現実的なソースタームに基づいて、東京電力が再度行わなければならないと強調した。

  • 改訂されたソースタームは原子力規制委員会で審査中であり、国内の規制要求により更に改訂され得るものである。​

(3)放出を制御するシステムとプロセスの安全性

  • タスクフォースは、起こりうる事故シナリオとその結果について適切な分析がなされていること、また、原子力規制委員会に提出した実施計画の変更認可申請に含まれていることを理解している。

  • タスクフォースは、この技術的事項に関して、東京電力に追加的な質問をしなかった。また、東京電力側もタスクフォースの発言等に対して明確化を求めることはなかった。

  • 改訂された実施計画及び放射線環境影響評価報告書の主要部分に関するレビューを踏まえ、タスクフォースは2022年2月に行われた第1回レビュー報告書で指摘された点は、適切に対応されていることを確認した。

(4)放射線環境影響評価

  • 概して、残された技術的な論点は、東京電力が関連するIAEA国際安全基準を忠実に実行しているかどうかについてIAEAが結論を出すことを妨げるものではない。

  • ミッションを経て、東京電力は2023年2月更に放射線環境影響評価報告書を改訂し、ソースタームに関する未処理のコメント以外について、タスクフォースによるコメントに対応した。

  • タスクフォースは、東京電力に対して、以下の点を放射線環境影響評価報告書に加えることを提案した。タスクフォースは、放射線環境影響評価報告書の一環として行われた仮定と計算を利害関係者がより容易に理解できるように、以下の点を明確に文書化すべきであると強く考えている。

  1. 初年度の線量(海水と堆積物との間の平衡状態を仮定)が放出期間中の最高線量に相当するとしていることなど、代表的個人の線量計算についてより明確な説明をすること
  2. 有機結合トリチウム(OBT)の形成やこれによる線量についての不確実性をより明確に説明し、OBTが被ばく評価に有意に影響を与えないことを示すため、OBTを100%と仮定して線量計算することを検討すること
  3. 線量に寄与することとなった炭素14とヨウ素129について、拡散シミュレーションの境界における海水中濃度の推定値を記載すること

(5)モニタリング

①ソースモニタリング
  • タスクフォースは、この(攪拌・循環)テストによって均質性が実証され、実施されたサンプリングの範囲が適切であったことに満足した。

  • 東京電力は、海洋放出前に測定・評価施設の保守管理計画をタスクフォースに提出することに同意した。

②環境モニタリング
  • ミッション中の東京電力によるプレゼンテーション及び放射線環境影響評価報告書から、タスクフォースは東京電力の環境モニタリング計画を理解し、この情報を踏まえ、それが包括的であることに同意した。

  • タスクフォースは、ベースラインモニタリングの結果と放出後の環境モニタリング結果がどのように比較されるのか、また、この比較が処理水放出による影響の評価にどのように用いられるのか、について記述するよう東京電力に求めた。

  • タスクフォースは、放出後の測定から得られる線量が放射線環境影響評価報告書における評価値と異なる場合に取られる対応について説明するよう東京電力に求めた。

(6)利害関係者の関与

  • タスクフォースは、東京電力と経済産業省が、透明性を確保するため、重要なアウトリーチ活動を行い、努力していると認めた。

(7)職業被ばくの防護

  • タスクフォースは、東京電力が必要な責任感と当事者意識を持ちながら、信頼できる持続可能な放射線防護プログラムを有していることを確認した。

  • ​タスクフォースは、長期的な運用を想定し、東京電力に対し、施設周辺や運用時の放射線状況の推移を考慮して、定期的にALPSの施設・設備を再評価する内部メカニズムの確立の検討を推奨する。

3. IAEA報告書を受けた対応

IAEAタスクフォースからの指摘は、本年2月に原子力規制委員会への補正申請に添付された放射線環境影響評価報告書の見直しに反映され、内容の一層の充実が図られています。

日本政府は、引き続き、IAEAレビューを通じて国際的な安全基準に照らした確認を継続し、安全確保に万全を期していきます。

IAEAタスクフォースの福島第一原発視察の様子

関連資料

関連リンク

担当

資源エネルギー庁
原子力発電所事故収束対応室調整官 田辺
担当者:泉井、飯塚、大塚 

電話:03-3501-1511(内線 4441)
03-3580-3051(直通)
メール: bzl-hairo-syorisuitaisaku★meti.go.jp
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