(令和3年6月25日(金曜日)10時40分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)日本によるワクチン提供

【茂木外務大臣】私(大臣)の方から、まず2点報告いたします。
 まずワクチンの供給についてでありますが、先週の会見で、日本から各国へのワクチンの現物提供について発表いたしましたが、先方政府との調整を含む諸般の条件が整いましたら、来週、7月1日以降、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンに、それぞれ約100万回分ずつ、アストラゼネカ社製ワクチンをできるだけ早急に供与する方向で、最終調整を行っております。
 また、既に第一弾の供与を行いました台湾、ベトナムについても、それぞれ約100万回分の追加供与を行う予定であります。
 また、バイではないCOVAXを通じたワクチンの供与についても、WHOによります承認取得等の条件が整えば、関係機関と調整の上、7月の中旬以降、東南アジア、南西アジア、太平洋島嶼国等に対して、合計で約1,100万回分のワクチンの供与を開始いたします。
 これは既に日本としてコミットしております3,000万回分、この内数ということでお考えいただければと思います。

(2)海外在留邦人向けワクチン接種

【茂木外務大臣】それからもう一点、海外の在留邦人向けのワクチンの接種でありますが、新型コロナが世界的に拡大する中で、海外にお住まいの在留邦人の中には、居住国でのワクチンの接種について懸念を有する方がおられます。
 実は外務省として、在留邦人の方々に対して、日本に一時帰国してワクチンを接種する希望があるかと、こういった希望を調査した結果、多くの方から日本での接種を希望したい、こういう回答が寄せられたところであります。
 こうしたご要望にお応えするために、8月1日から在留邦人へのワクチン接種を日本で実施することにいたします。
 具体的には、7月中・下旬以降、専用のホームページで予約を行っていただき、一時帰国等で日本に戻られた際に、早い機会ですとお盆の機会とかあると思うんですが、成田空港もしくは羽田空港の中に設置する会場において、ファイザー製ワクチンの接種を受けることが可能となります。
 加えて、日本に今一時帰国中の海外駐在員が、職域接種の枠の中で早期にワクチン接種を受けられるようにして欲しい、こういった要望も寄せられております。これらの方々も、7月2日以降は、所定の手続きを経ることによって、在留邦人向け事業の一環として、職域接種会場での接種ができるようにいたします。
 詳しい内容は、この会見の後、外務省のホームページに掲載いたしますので、そちらをご覧いただければと思います。私(大臣)からは以上です。

日本によるワクチン提供

【NHK 渡辺記者】冒頭ご説明ありましたワクチンの件でお伺いしたいと思いますけれども、今回いろいろ東南アジアの国々の名前が挙がっておりますが、こうした国を選んだ背景、ある種の日本にとっての「ワクチン外交」ともいえるのではないかと思うんですが、その辺、大臣のご所見をお願いします。

【茂木外務大臣】まず、今回日本として、COVAXを通じて、途上国へのワクチンを提供するための資金の調達を行うということで、6月2日に、COVAXのワクチン・サミット、これを主催させていただいたところであります。
 ご案内のとおり、今後、途上国の人口の30%をカバーする、そのための資金ギャップ、当時でいいますと17億ドルあったと思いますが、それを上回り、全体的には、今年必要になる83億ドル、これを超える額をしっかり確保できたと。
 こういった国際的な枠組み、昨年以降日本が主導してきたものでありまして、これを通じてワクチンの調達そして分配を行っていくと。これはこれからも非常に重要な事業だと思っております。
 その一方で、ワクチンについては現物で欲しいと、こういう要望も各国から寄せられているところであります。特にそういった国においては、今、感染が急拡大していて、ワクチンがないという状況にも直面をしていると。そういった各国とか地域における感染の状況、それからワクチンの不足、また日本との関係等々、総合的に勘案をしまして、今申し上げたような国に対して、現物での供与を行っていると。
 同時に、この現物での供与を行うと、アストラゼネカ社製のものでありますが、これについては、それぞれの国とか地域が、既にアストラゼネカ社との間で、ある意味契約を結んでいる等々によりまして、そこの部分がクリアできるので、早く出せる国というというのがあります。
 一方で、例えば太平洋島嶼国であったりとか、違った国においては、そういったアストラゼネカ社との契約がないということになりますと、先ほど言ったような形のCOVAXを通じたワクチンの提供といったものが、より円滑な形で供給に繋がるではないかと。こういう観点から、COVAXを通じた、但し、COVAXを通じたといいましても、この地域にとかこの国に、こういったことも、COVAXの側とは調整しながら行っていきたいと、こんなふうに考えています。

海外在留邦人向けワクチン接種

【朝日新聞 佐藤記者】先ほど発表していただきました在外邦人へのワクチン接種ですけれども、最近まで在外邦人向けにアンケート調査とかもしておられたと思うんですけれども、何人を対象に調査して、何人から希望するという回答が寄せられ、その結果、全部で何人ぐらいが接種の対象となりそうかというような、そういった数字がもしありましたらお伺いします。

【茂木外務大臣】ありますので、事務方の方に聞いてください。

日本によるワクチン提供(台湾)

【台湾中央通信社 楊記者】ワクチンをご提供いただきまして、台湾全国民が感謝しております。今度、先ほど大臣がおっしゃったのは、台湾へは100万回ぐらいを提供します。その時期はいつですか。

【茂木外務大臣】台湾については、6月4日の日に、最も早いタイミングで、日本から第一弾となりますワクチン124万回分、お届けをさせていただきました。
 台湾との間では10年前、東日本大震災が発生したときも、台湾からいち早く義援金を集めて送っていただいたり、様々な協力というのが、人道分野等々、また人的交流の分野でも進んでいると、そんなふうに考えておりまして、日本としても世界で最初にそういうワクチンの支援ができたということは、大変良かったと思っております。
 また蔡英文(さい・えいぶん)総統を始め、多くの台湾の皆さんから、日本のワクチン提供について感謝をいただいていると、日本として大変良かったと、そんなふうに考えております。
 台湾におきましては、まだワクチンの不足と、こういった状況が当面は続くと、このように承知をしておりまして、先ほど7月1日以降というお話をさせていただきました。おそらく7月の中旬前ということになると思うんですが、具体的な日程については今後、調整をしたいと、こんなふうに思っております。

対露外交(同志国との連携)/北方領土におけるロシア軍の軍事演習

【テレビ朝日 佐藤記者】対露、日露関係についてお伺いします。ロシアは23日から北方領土周辺で共同軍事演習を始めています。こうした動きがある中、一方、ロシアは欧州でもウクライナで、力による一方的な現状変更ともいえる動きを見せています。
 ロシアとは平和条約締結に向けた交渉という関係もありますけれども、こうした状況を踏まえて、対露外交でも価値観を同じくする同志国との連携を図っていかれるお考えはあるのでしょうか。

【茂木外務大臣】まずロシアが、択捉島、国後島ほかで軍事演習を始めて、北方領土におけるこのような軍事演習が行われているということに対して、これらの諸島に対する我が国の立場と相いれないものでありますから、きちんと抗議をしているところであります。
 北方領土問題に関して、政府として、これまで様々な機会に、日本の立場をロシア側に明確に伝えてきておりますが、その上で根本的に重要なことは、北方領土問題を、それ自体を解決することだと、こんなふうに考えておりまして、ロシアの様々な行動、これはウクライナの問題をはじめ、欧州各国との間で平素から様々な事案について、緊密に意思疎通を行っております。
 北方領土問題、これはまさに日本とロシアの間の交渉ということになってくると思っております。国際社会での様々な一方的な現状変更の試みに対する懸念等では連携しつつ、この北方領土問題の解決に向けては、日本とロシアが向き合わなければならない問題でありまして、まさにこれは今、交渉中というところでありまして、その具体的な方針をどうしていくか、またどう進めていくか、その内容が今どうなっているか、これは交渉にも関わる問題でありますので、控えさせていただきたいと思います。

第9回太平洋・島サミット

【時事通信 越後記者】来週、太平洋・島サミット第9回の会合が開かれますけれども、現下の国際情勢の中で、太平洋島嶼国と関係を強化する意義と、会議に期待する成果、2点お聞かせください。

【茂木外務大臣】この太平洋・島サミット、3年に一度行われておりまして、本来、対面でと思っておりましたが、オンラインという形になりましたが、7月2日に第9回のサミットが開かれるわけでありまして、大きく五つぐらいのテーマといいますか、課題を考えておりまして、一つは新型コロナへの対応と、それからコロナからの回復と。そして二つ目に法の支配に基づく持続的な海洋、三つ目として気候変動・防災、こういった問題、更に持続可能で強靭な経済発展の基盤の強化、最後に人的交流・人材育成といった分野、これらの分野について太平洋島嶼国と首脳間で率直な議論を行う予定であります。
 日本としては、冒頭も発表しましたように、ワクチンの供与を含む様々な協力を実施しているところでありまして、今回の太平洋・島サミットを通じて、太平洋島嶼国との間で長年にわたって育んできた絆、これをより深く強いものにしていきたいと思っております。Bond、絆ということですね。

香港「リンゴ日報」の廃刊

【朝日新聞 佐藤記者】再三伺っていることで恐縮ですけれども、香港の民主派の新聞の「リンゴ日報」の件ですけれど、また今度、廃刊を発表ということになりまして、大臣、先日もおっしゃっていただいたとおり、G7首脳コミュニケにも「香港の自由の尊重」というのが書き込まれていまして、大臣もよくご存じの英国のラーブ外務大臣も、表現の自由への打撃というふうに声明を出されておられますけれども、日本の外務大臣としての受け止めと、今後の対応をお伺いします。

【茂木外務大臣】「リンゴ日報」廃刊にあたって最終号と、前の晩から多くの香港の方々が、その新聞を手にしたいと、朝も長蛇の列ができる。この言論であったりとか表現の自由、こういうものに対する香港の方々の強い思いというのが象徴的に表れていたなと、そんなふうに思います。
 雨の中での廃刊と、こういうことになったわけでありますけれども、香港情勢をめぐって、これまでの一連の事案、これは今申し上げたように、香港がこれまで享受をしてきました民主的・安定的な発展の基盤となる言論の自由であったりとか報道の自由、大きく後退をさせるものでありまして、重大な懸念、強めているところであります。
 我が国の香港に対する立場、これは何度もこの場で申し上げておりますので繰り返しませんが、先般、発出されましたG7の首脳コミュニケでも、香港における人権・自由・高度な自治の尊重、これを求めている他、我が国を含みます45か国が参加した第47回人権理事会における、中国の人権状況に関する共同ステートメントにおいても香港情勢に関する深い懸念が表明をされているところであります。
 我が国としては、中国香港当局に対して香港基本法に規定されている言論及び報道の自由が保護されるよう求めるとともに、国際社会と緊密に連携して、中国側に強く働きかけていきたいと思っております。言論、言葉は大切だと思います。
 In the beginning was the Word, the Word was with God, and the Word was God.(「初めに言葉ありき。言葉は神と共にあり、言葉は神であった。」)

対露外交

【NHK 渡辺記者】日露関係でまたお伺いしたいと思うんですけれども、択捉島とか国後島での軍事演習ということで、択捉島では、山が噴火したんじゃないかと言って住民が驚いて、訓練をやっている様子をSNSに投稿していたりとかするんですけれども、日露の関係は、そういうふうに今なっていますが、「2+2」とかでも、外務・防衛でもロシアとは、そういう実績もありますけれども。

【茂木外務大臣】何て言いました?

【NHK 渡辺記者】日露の「2+2」をやったりとか、今までそういった実績もありますけれども、そういう中での今後のロシアとの信頼関係醸成というのは、どうやって考えていらっしゃるのか、度重なるそうした日本の抗議に対しても、そういったことが行われていると、そういったことについては大臣、どう思っていらっしゃいましょうか。

【茂木外務大臣】局面局面において、様々な問題はあるわけでありますけれども、日露間におきましては、平和条約締結に向けた交渉、これも途切れているわけではありません。交渉というのは引き続き行っていくということで合意をしておりますし、また交流事業であったりとか、様々なプロジェクトというものも具体化されたり、また検討というのも進められているところであります。
 確かに新型コロナの影響によって、対面でなかなか交渉ができないとか、具体的なプロジェクトについても進めにくいとか、墓参等につきましても、なかなか今年は開始できない、こういう問題はありますが、コロナの収束、そういったものを見ながら、しっかりそれぞれの事業であったりとか協議、こういったものをしっかりと進めていって、最終的には領土問題を解決して平和条約を締結する、こういう基本方針の下で、粘り強く交渉に取組んでいきたいと思っております。