(令和3年2月16日(火曜日)15時37分 於:本省会見室)

冒頭発言

オコンジョ=イウェアラ世界貿易機関(WTO)新事務局長の任命

【茂木外務大臣】私(大臣)から、まず、WTOの新しい事務局長の任命についてでありますが、WTOの事務局長に、Dr.オコンジョ=イウェアラ氏が、加盟国のコンセンサスにより任命されたことを歓迎いたします。
 昨年の9月、アゼベド前事務局長が辞任をされて空席になっていたこのポスト、今、WTOが抱えている様々な課題の解決のためにも、早期の事務局長の就任が極めて重要である、このように日本としても考えてきたところでありまして、非常に良かったなと、こんなふうに思っております。
 そして、多くの途上国が加盟をし、多様性を体現する国際機関の長に、アフリカ出身かつ女性初となる事務局長が就任することは、非常に意義深いと考えています。新しい事務局長が、新型コロナ禍で未だ途上にあります世界経済の回復、そして、喫緊の課題でありますWTO改革に指導力を発揮することを期待いたします。
 世界的に保護主義的な傾向が強まる中、多角的貿易体制の維持や強化がこれほど重要な時はないと考えております。この考えから、私(大臣)自身、昨年9月に空席となった事務局長には、それに相応しい資質・能力と強い改革意欲を備えた人物を、できるだけ早く選ぶよう関係国に働きかけるなど、このプロセスに深く関与してきました。相当国際電話もしたのではないかなと思っています。
 我が国として、オコンジョ=イウェアラ事務局長と協力をし、他の加盟国とも緊密に連携をしながら、WTO改革に向けた国際的な取組を引き続き主導していきたいと、このように考えております。私(大臣)からは以上です。

アゼルバイジャンとアルメニアとの軍事衝突に起因する人道危機に対する緊急無償資金協力

【NHK 渡辺記者】今日の閣議決定の案件のことでお伺いしたいんですけれども、アゼルバイジャンとアルメニアに対する人道危機に対する緊急無償資金協力というのを決めました。去年の10月に、ラヴロフ外相と会談したときも、大臣の方から、この問題への日本の姿勢を米国政府よりも早く示したりとか、いろいろ関わっていると思いますけれども、それが結実した結果だと思うんですけれども、この支援に込めた日本としての狙いというのは、どういったところなのでしょうか。

【茂木外務大臣】ナゴルノ・カラバフ問題の最終的な解決、これはコーカサス地域全体の平和と安定にとって極めて重要でありまして、日本は、米国、フランス、更に言及のありましたロシアの関係国の介入努力を一貫して支持をしてきたところであります。
 このことは、前回のラヴロフ大臣との電話会談の際も、私(大臣)の方からそれを評価するという話をさせていただいたところであります。
 また昨年の9月に軍事衝突が始まって以降は、アゼルバイジャンとアルメニアそれぞれに対して、軍事行動の即時停止と対話を通じた平和的解決、繰り返して求めてまいりました。日本は、先ほど申し上げたように、昨年11月に、ロシアの仲介によって停戦合意が達成されたことを歓迎いたしております。
 ちょうどラヴロフ外務大臣との電話会談のときに、ラヴロフ大臣は他の電話を取りながらこの問題をやっていまして、相当忙しく動いているんだなと、こういったことも感じられるところでありまして、そういったロシアの仲介努力、これを歓迎しているところであります。
 この合意が、全ての関係当事者によって履行され、問題の平和的解決につながることを期待しておりますが、同時に、日本としてもできることはないか、こういうことで様々なことを考えてまいりまして、本日、日本として、この軍事衝突によって生じました人道危機に対応する支援として、総額5億2,800万円の緊急無償資金協力の実施を決定したところであります。
 今回、国際機関を通じて緊急人道支援を行うということでありますが、これが軍事衝突後の両国間における人道状況の改善に役立つ、そしてまたそれによって、話合い等々の機運が高まる、こういったことを期待したいと思っております。

日インドネシア外相電話会談

【トリビューン・ニュース リチャード・スシロー記者】先週の水曜日の夜ですけれども、大臣とインドネシアの外務大臣の電話会談のときに、内容的にはミャンマーとインドネシアの話なんですが、インドネシアの具体的にどんな話があったのでしょうか、特にインドネシアの大臣から。よろしくお願いします。

【茂木外務大臣】先週、ルトノ外相と電話会談を行いまして、基本的なテーマ、これはミャンマー情勢を巡る対応といいますか、情報交換そして意見交換ということでありましたが、同時に二国間関係について、新型コロナへの対応であったりとか、インド太平洋に関する協力を含めて、両国の戦略的パートナーを一層強化して、様々な国際的課題に対する連携を推進していくことで一致をいたしました。
 具体的な話もしましたが、これ以上は外交上のやり取りでありますので、控えさせていただきたいと思います。

日露平和条約交渉

【北海道新聞 廣田記者】ロシアのプーチン大統領が、14日のテレビ放送で、日露関係について、憲法に矛盾することはしないと発言しました。昨年改正された憲法には領土割譲の禁止が盛り込まれており、北方領土の主権を引き渡さない意志を示唆したとの見方もありますが、改めまして大臣の受け止め、及びこの発言に関してロシア側に対して真意の確認や抗議など、何らかのリアクションをとったか、これからとる意向があるのかどうか伺えますでしょうか。

【茂木外務大臣】憲法条項に対する解釈、それはそれぞれされるところがあると思いますが、事実関係として、ロシア憲法改正後に、昨年の9月、日露の首脳会談を行っているわけでありまして、その会談におきまして、プーチン大統領は、平和条約交渉の継続、これに言及をいたしております。そして、菅総理とプーチン大統領、2018年11月のシンガポールでの首脳会談で、1956年宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させることで合意したということを改めて確認しているわけであります。
 これが、両首脳間の正式なやり取りであります。こういったものを踏まえて、領土問題を解決して平和条約を締結する、この基本方針の下、粘り強く交渉に臨んでいく、この方針に全く変わりありません。

【NHK 渡辺記者】今の質問の関連ですけれども、ロシアの憲法改正、同時にソビエト連邦の継承国、引き継いだ国であるということも、初めて明確に憲法に入れているわけですけど、そうしますと、日ソ共同宣言というのは、ソ連と日本の両国の国会、議会が批准しているという意味で、国際約束になっていると思うんですが、その約束と、一方で領土の割譲を禁止する条項を盛り込んだと、そのどちらが上位に立つというのは、日本としてどう解釈しているんでしょうか、交渉に臨むに当たって。

【茂木外務大臣】恐らく、外国の憲法について、これは日本だけではなくて、他の国もそうでありますけれど、どう解釈する、そういう立場にそれぞれの国はないのだと思っておりますけれども、少なくとも、これまでのシンガポール合意始め、諸合意というものがあるわけでありまして、そういったものを踏まえてしっかり交渉していく、これが日本の立場でありますし、交渉責任者としての私の立場であると、こんなふうに思っています。

元慰安婦等による日本政府に対する損害賠償請求訴訟

【テレビ朝日 佐藤記者】本日、韓国で、元慰安婦の方が会見を開いて、慰安婦問題をICJに付託するよう日韓に求めたということがありました。こうした声の受け止めをまずお伺いしたいのと、慰安婦問題を巡っては日本政府に賠償を求める判決がソウルで確定していますが、改めて日本政府として、ICJに提訴するお考えはあるのか、現在のご見解を伺いたいと思います。

【茂木外務大臣】ご指摘の発言、承知をいたしておりますが、どういう意図で、どういう考えでご発言しているかも、私(大臣)、存じ上げませんので、コメントは控えたいと思います。
 その上で繰り返しここでもお話をしておりますが、今回の判決、これは国際法及び日韓両国間の合意に明らかに反するものでありまして、日本としては、韓国に対して、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために、適切な措置を講ずることを強く求めてきているところであります。あらゆる選択肢、これを視野に入れて、引き続き毅然と対応していきたいと思います。

尖閣諸島周辺での中国海警局船の領海侵入

【産経新聞 石鍋記者】中国海警局についてお伺いいたします。中国海警局の船舶がですね、昨日来、尖閣諸島周辺へ領海侵入を繰り返しております。まず、この受け止めをお願いいたします。

【茂木外務大臣】中国海警局に所属する船舶が、2日連続で尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入して、日本漁船に接近しようとする動きを見せたことは、誠に遺憾であり、断じて容認できないものでありまして、すぐに抗議をいたしております。
 このような尖閣諸島周辺の我が国海域での独自の主張をするといった、海警船舶の行動そのものが国際法違反でありまして、これまで中国側に厳重に抗議をしております。そういった中で、2月1日に海警法が制定された、このことを深刻に懸念をいたしているところであります。
 中国海警法によって、日本を含みます関係国の正当な権益を損なうようなことがあってはならないと考えておりまして、こうした日本の強い懸念を、中国側に対して、引き続き、しっかりと伝えていきたいと思っております。
いずれにしても、日本の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意の下、冷静かつ毅然として対応してまいりたいと思っております。