(令和3年2月9日(火曜日)15時04分 於:本省会見室)

冒頭発言

  • (1)日豪外相電話会談
    【茂木外務大臣】ちょうど今まで、日豪の外相会談をやっておりまして、若干時間が延びましたので、会見の時間も遅れました。
     先ほど1時45分から45分ぐらいだったと思いますけれど、ペイン・オーストラリア外務大臣、向こうからの要請によりまして、電話会談を行ったところであります。
     まず、ミャンマー情勢について、突っ込んだ意見交換を行いまして、双方の現状認識と懸念を共有し、民主的な政治体制の早期回復やアウン・サン・スー・チー最高顧問を含みます、拘束された関係者の解放を国軍に対して強く求めていくことで一致をしました。その上でミャンマー情勢について、引き続き、日豪で緊密に連携していくことを確認をいたしました。
     また、昨年のモリソン首相訪日及びペイン外相訪日を含む日豪関係の進展を踏まえ、安全保障面をはじめとする、二国間関係の更なる深化について意見交換を行うとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、同志国間で緊密に連携していくことで一致をいたしました。また、日米豪印、クワッドの連携を強化していくことで一致をしたところであります。
     更に、中国についても意見交換を行いました。東シナ海、南シナ海を含みます地域情勢についても意見交換を行い、一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致をいたしました。日豪外相電話会談については、以上であります。
  • (2)シュルツ米元国務長官逝去
    【茂木外務大臣】それから、あと2点ほど簡単に申し上げます。
     米国時間の6日、ジョージ・シュルツ元国務長官がお亡くなりになられました。シュルツ元国務長官は、1982年から89年にかけて国務長官をお務めになり、ロナルド・レーガン元大統領とともに冷戦終結に尽力するなど、国際社会の平和と安定のために多大な貢献をされました。
     また、国務長官在任中も退任後も、日米両国の協力を推し進め、現在の強固な日米同盟の基盤構築に多大なる貢献をされました。同長官に心からの敬意と感謝の意を表します。
     私(大臣)自身も、昨年1月、サンフランシスコを訪問した際に、シュルツ長官にお目にかかることができて、大変光栄だったと思っております。その上に、ちょうど日米安保60周年の記念式典、1月19日に東京で開催をするということで、それに向けたシュルツ長官からの祝辞をいただいたことにも、改めて感謝をしたいと思います。今回の訃報に接して、心からご冥福をお祈り申し上げます。
  • (3)グテーレス国連事務総長再任への支持
    【茂木外務大臣】もう一点だけ、グテーレス事務総長の関係でありますが、事務総長職の2期目に立候補する意向を表明されております。我が国は、2017年の事務総長就任以降、国際の平和と安全、開発、気候変動、新型コロナ対応等、国連が取り組む幅広い分野において、優れた指導力を発揮するグテーレス事務総長と緊密に協力をしてまいりました。
     我が国は、今後もグテーレス事務総長と連携して国際社会の諸課題に対応していきたいと考えておりまして、今般のグテーレス事務総長によります立候補の意向を支持いたします。グテーレス事務総長が、引き続き国際社会の諸課題の解決に向けて、重責を務められることを期待したいと思いますし、日本もそういった活動を全面的に支援していきたいと考えております。私(大臣)の方からは以上です。

日豪外相電話会談(日米豪印、首脳・外相会合)

【産経新聞 石鍋記者】冒頭の日豪外相電話会談についてお伺いいたします。クワッドの強化でも一致したということでしたけれども、昨年のクワッドの外相会合では、年に1回程度、クワッドの外相会合を開くというようなことでも一致していたと思いますけれども、今回の会合で、今年もまたやりたいとか、そういったことに言及があったかどうか併せてクワッドの首脳会談についても、話題に上がったかどうかお聞かせください。

【茂木外務大臣】昨年10月6日にクワッドの外相会談、東京で開催をしておるわけであります。大変有意義な会談であったと、またタイミングを見て、こういった「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた日米豪印、4国間の連携を強化する、その重要性について一致を見たところであります。具体的な、外相レベル、首脳レベルのクワッドの日程であったり、開催する云々については議論しておりません。

人権・環境問題への対応

【フリーランス 志葉記者】フリーランスの志葉と申します。人権と環境問題への具体的な対応、とりわけペナルティ的な対応についてお伺いします。ミャンマーに対しては、安倍政権で約8,000億円の経済協力が決定しておりますし、昨年はJICAによる1,209億円の円借款が決定していると存じております。
 また、ブラジルに関して言えば、そのボルソナーロ政権において、非常に近年類を見ないほどアマゾン破壊が深刻であり、ドイツやノルウェーは同国への支援を停止されたとしておりますよね。
 そこで、日本としての外交政策をお伺いしたいんですが、こういった人権・環境に関して、非常に深刻な問題がある国に対して、何らかペナルティ的な措置を考えているのか、対策を考えてらっしゃるのか、それともノープランなのか、大臣のお考えを伺いたいです。

【茂木外務大臣】ノープランではありません。

【フリーランス 志葉記者】ノープランではない。(マイク外)

【茂木外務大臣】もっと話しますか。
 

【フリーランス 志葉記者】もう少し。(マイク外)

【茂木外務大臣】人権の問題、これが蹂躙される。これについては日本としてもこれまでも厳しい措置をとっております。その一方で、民主化を進めるそれぞれの国において、そういった努力をしている国については、その民主化の歩み、これを進めるための支援と、こういったことを日本としては行ってきております。
 人権に対しては厳しい措置をとりつつ、民主主義が進んでいく、進展していくことに対する、促進のための支援、こういったことは必要であると考えております。
 気候変動の問題については、今、国際的に大きな課題でありまして、日本としても2050年カーボン・ゼロと、これを明確に表明しているところでありまして、こういった問題につきましても、国際社会の取組、連携をしていきたいと思っておりますし、また途上国におけますそういった取組も、しっかりと支援をしていきたいと思っております。

ロシアとの平和条約交渉

【北海道新聞 廣田記者】北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉について伺います。菅首相は、7日に開かれた北方領土返還要求全国大会の中でのビデオメッセージや国会等の答弁で、これまでの両国間の諸合意を踏まえて、今後も着実に交渉を進めていく、とおっしゃっています。これまでの国会答弁ではこの諸合意に関して、東京宣言やイルクーツク声明も含むとも述べられています。大臣も、これまでの国会答弁で同様の発言をされていると思いますが、この東京宣言などの諸合意を踏まえるというこの認識は、18年の日露首脳会談、シンガポールでの会談のときも、ロシア側と共有されているのでしょうか。ご見解を伺わせてください。

【茂木外務大臣】まず、2018年、シンガポールにおけます首脳会談では、当然、安倍総理とプーチン大統領、20数回目の、当時、会談になったと思いますが、それまでも様々なやり取りといいますか議論もしている中で、最終的には1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させると、こういったことで合意をしているわけであります。そういったやり取り、しっかり引き継いだ上で、今後の交渉に当たっていきたいと思います。

ジェノサイド条約

【朝日新聞 安倍記者】ジェノサイド条約についてお伺いしたいと思います。今日、午前中に開かれた超党派の議連でも、中国や北朝鮮が入っている中で、日本も早く批准すべきではないかとの意見が出ていました。日本は長年にわたって慎重に検討する必要があるという立場だったかと思いますが、改めてですが、なぜ日本はこの条約を批准していないのか、その理由について教えていただければと思います。

【茂木外務大臣】この集団殺害犯罪、大きく法体系といいますか、一つはICCのローマ規程というものがあるわけでありまして、もう一つ、ジェノサイド条約というのがあるわけであります。
 我が国は、集団殺害犯罪のように、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した者が、処罰されずに済ませてはならないと、こう考えております。こうした犯罪の撲滅と予防に貢献するとの考え方の下で、ICCローマ規程加盟国として、その義務を誠実に履行してきているところであります。
 一方、「ジェノサイド条約」の方は、締約国に対しまして、集団殺害の行為等を犯した者を国内法により犯罪化する義務を課しております。また、処罰対象とする行為については、ICCローマ規程において処罰対象とする行為よりも広く規定をしていると。こういった中で、日本はICCローマ規程には加盟をしているわけでありますが、今後、「ジェノサイド条約」の締結を考えるにあたっては、今申し上げた点、我が国におけます「ジェノサイド条約」締結の必要性、また締結の際に必要となる国内法整備の内容等につきまして、これは関係省庁でも議論をする必要があります。引き続き、慎重に検討していきたいと思っております。

尖閣諸島問題

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 木原記者】尖閣問題について伺います。中国が、海警局の武器使用を認めた海警法施行後、海警局の船が相次いで尖閣諸島の周辺の領海に侵入しました。尖閣、地理的に台湾問題と直結します。中国が台湾は最も重要かつ敏感な革新的問題と主張する一方で、米国の駆逐艦が、4日に台湾海峡を通過し、中国の反発を招いております。尖閣への中国海警局の船の領海侵入も、巨視的に見れば、米中対立激化の一部と思われます。これに日本が米国側に立って中国との対立を深めることは国益に適うのでしょうか。尖閣に地理的に近い台湾も、尖閣の領有権を主張しています。中国が本気で台湾を併合しようとするとき、尖閣も併合しようとするでしょうし、これを阻止すべく、日本も米国とともに中国に圧力をかけようとしても、ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が『フォーリン・アフェアーズ』の2020年3月号の論文で、「台湾海峡有事を想定した18のウォー・ゲームの全てで、アメリカは敗れている」と指摘したように、米中が激突した場合、米軍が中国軍に破れる可能性が極めて高いと、米国の専門家も認めております。
 一方で、バイデン政権で、インド太平洋調整官に起用されたカート・キャンベル氏は同じく、『フォーリン・アフェアーズ』の今年の1月号で、アジアもしくはインド太平洋地域における勢力均衡と維持の重要性を主張しております。
 そうした中で、尖閣の領有権を守りながら、米中対立と中台対立を激化させない、冷静な知恵のある米国追随一辺倒ではない外交が必要ではないでしょうか。日本が大局的に俯瞰して極東の平和を導き、結果として、日本が尖閣の実効支配を長く続ける方途を、どのように考えておられるかお答えください、よろしくお願いします。

【茂木外務大臣】恐らく、お話の中にありましたグレアム・T・アリソン、「トゥキディデスの罠」で言っております論理の中で、これが今、米国と中国の関係に当てはまるかといいますと、多くの論者は当てはまらないと、現段階においてこういう論説の方が私は多いのではないかなと考えているところであります。
 そういった中で、中国海警局に所属する船舶と、2日連続で尖閣諸島周辺の日本領海に侵入し、日本漁船に接近しようとする動きを見せたことは、誠に遺憾でありまして、断じて容認できないと考えております。このような尖閣諸島周辺の我が国領域内で独自の主張をするといった、海警船舶の活動は国際法違反であり、これまで中国側に厳重に抗議をしてきております。
 様々な形で、日本と米国で連携をするケースというのもあるわけでありますが、この海警船舶の活動に対する抗議というのは、日本として独自に行っているものであります。また、こうした中で、2月1日に中国海警法が制定されたことは、深刻に懸念をいたしております。

人権・環境問題への対応

【フリーランス 志葉記者】2回目で失礼いたします。先ほどの質問で、ちょっと私の聞き方が悪かったんですけども、ちょっとシンプルに聞かせていただくと、例えば、経済協力の停止ということはあり得るのか、それともないのか、そこはちょっと、ミャンマーとブラジルの件についてお伺いしたいと思います。

【茂木外務大臣】外交というのは、様々な要因の中で今後というのを見据えていかなければなりません。一つの時点において、様々な外交手段等々について、あるのかないのかと、一律的にこの時点に限ってお答えすることはできません。

日韓関係(新外交部長官への期待)

【産経新聞 石鍋記者】日韓関係についてお伺いいたします。韓国外交部の長官に、鄭義溶(チョン・ウィヨン)氏が就任いたしました。日韓関係、慰安婦問題、元徴用工の問題で冷え込む関係が続いておりますけれども、大臣、新しい長官にどのような役割を期待されますでしょうか。

【茂木外務大臣】鄭義溶氏が外交部長官に任命されたことは、昨日ですが、承知をいたしております。日韓両国は、お互いにとって重要な隣国でありますが、ここ数年、韓国によって国際約束が破られ、二国間合意が実施をされておらず、日韓関係は、かつてなく厳しい状況にあるわけであります。日本政府としては、我が国の一貫した立場に基づいて、韓国側に適切な対応を強く求めていくという立場に変わりはありません。 部長が変わっても、その立場は変わりありません。同時に外交当局間の意思疎通を継続する中で、日韓間の懸案の解決のための韓国側の具体的な提案を、注視をしていきたいと思っております。