(令和2年12月25日(金曜日)14時49分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)EU・英国間の将来関係交渉の妥結

【茂木外務大臣】私(大臣)の方から何点かご報告があります。
 まず、EUと英国間の将来関係交渉の妥結について、すでに外務大臣の談話を出させていただいておりますが、改めて簡単に申し上げますと、12月24日、EU及び英国政府は、EU・英国間の将来関係交渉について妥結をしたところであります。日本政府として、EU・英国間の関税設定といった事態が回避されたことを歓迎いたします。今後、EU及び英国双方における議会承認等の必要な手続が、速やかに行われることを期待します。
 日本政府は、経済連携協定等を有するEU及び英国との関係を一層強化していきます。また、日系企業の円滑な経済活動を確保すべく、将来関係協定の履行状況等を注視していきたいと思っております。

(2)茂木大臣の中南米及びアフリカ訪問

【茂木外務大臣】それから2点目でありますが、年明けの私(大臣)の海外出張についてであります。来年1月4日から14日まで、中南米のメキシコ、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジルの5か国、そしてアフリカのセネガル、ナイジェリア、ケニア、合計しますと8か国を訪問する予定であります。
 新型コロナの世界的な感染拡大以降、日本の閣僚としては、中南米、初めての訪問となりますし、2度目のアフリカ訪問となります。いずれの国におきましても二国間関係の強化とともに、「自由で開かれたインド太平洋」についての連携を確認するとともに、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を推進していきたいと考えています。
 なお訪問国の中でナイジェリアにつきましては、昨24日、アフリカCDCが新型コロナの変異種が検知された旨発表したと承知しております。ただこの変異種は、夏や10月に出たと、こういうものであると、こんな報道もあるところでありまして、感染度の強さであったりとか、最新の状況等も踏まえて、このナイジェリア訪問については、最終判断、いずれかの段階でしたいと思っています。
 中南米では、基本的価値を共有する各国との間で、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の維持・強化のための連携であったりとか、日本企業のビジネス環境の改善を含みます経済関係の強化に向けて意見交換を行う予定であります。なお、中南米、日系人の多い国でありまして、日系社会との連携強化、これも図っていきたいと思います。
 アフリカでは、今月の第一弾のアフリカ訪問の成果も踏まえ、TICAD8に向けた開発、ビジネス関係、地域の平和と安定などについて、各国と連携を確認したい、このように思っています。

(3)冨田駐米大使の任命

【茂木外務大臣】3点目ですが、大使人事の関係であります。今朝の閣議決定を受けまして、本日付で冨田浩司(とみたこうじ)駐韓大使を新たな駐米大使として任命をいたしました。
 冨田大使は、これまで北米局長であったり、在米国大使館公使を務めるなど、米国との間で太いパイプを築いてきました。
 1月20日に発足するバイデン新政権との間で、緊密に連携をし、日米同盟の一層の強化や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力、ポスト・コロナのルール作りなどを進めていくため、その経験と人脈を生かして活躍することを期待をいたしているところであります。

(4)旅券の旧姓併記

【茂木外務大臣】最後は旅券の旧姓併記についてであります。旅券、すなわちパスポートの旧姓表記については、これまで非常に厳格な要件の下で認めてきましたが、来年、4月1日以降の申請については、その要件を緩和をして、旅券上の記載方法を変更することといたしました。
 具体的には、戸籍謄本、旧姓が記載された住民票又はマイナンバーカードのいずれかで旧姓を確認できれば、旧姓の併記を認めることといたします。
 また今までも、ただ単に括弧で入ったのですけれども、括弧の中の意味が分からないと、こういうこともありましたので、旅券の身分ページで併記されたものが旧姓であることを、外国の入国管理局などに分かりやすく示すために、英語で「Former surname(フォーマー・サーネイム)」との説明書きを書き加えます。
また国際結婚等による、旧姓以外の別名についても、所定の要件を満たすことで併記を認め、「Alternative surname(オールタナティブ・サーネイム)」などの説明書きを加えます。
 今回の変更によりまして、より円滑な渡航や活動が可能になることを期待をいたしております。私(大臣)の方からは以上です。

EU・英国間の将来関係交渉の妥結

【NHK 山本記者】英国とEUの交渉の妥結の関係で伺いたいんですけど。英国がEUを離脱したことで、かなり経済界から日本企業への影響等心配されましたけれども、1月1日には、日本と英国のEPAが発効することになりますけれども、今回の英国とEUの交渉妥結で、これである程度日本企業、日系企業への影響というのは最小限に抑えることができるという見通しになったといえるでしょうか。逆に、他に何か課題等ありましたらお願いします。
 
【茂木外務大臣】特に大きな課題が残っているとは考えておりませんけれど、英国がEUから離脱をしたと、こういう中で、まず日本と英国との間の継続的なビジネス関係、これを維持していかなければならないということで、日英の包括的経済連携協定、これに署名をいたしまして、国会でご承認いただきましたので、来年の1月からこれが発効することになります。
 残っておりましたのは、今度は英国とEUとの間の、新たな協定がどうなるかということでありまして、これも欧州に展開して、グローバルなサプライチェーンを持つ日系企業の活動に影響を与えかねないということで、日本としても、EU、そして英国双方に対して、早期に新たな協定と、この締結を、働きかけてきたところでありまして、今回難しい協定を経まして、漁業権の問題も含めて、妥結に至ったということで、これから英国、EUともに、国内での手続きを進めるということでありますが、これが速やかになされることによって、基本的には日本と欧州、また欧州の中でもEUと英国の間の、これまでどおり、ちょうど日EU・EPA、当時の経済活動がほぼ維持されることになるのではないかなと思っております。
 今後の運用等については、よく注視をしながら、何か問題あるようでしたら、その点はきちんと関係国にも提起をしていきたいと思っております。

茂木大臣の訪米時期

【朝日新聞 佐藤記者】話題変わりまして、日米関係についてお伺いしたいと思いますが、本日、報道で大臣がインタビューに応じられまして、大臣ご自身の訪米時期について、1月20日のバイデン政権発足の後、1か月から2か月後を目途に調整されたいというお話がございましたのですけれども、今その訪米時期について、どういうふうにお考えになっておられるかお伺いします。
 
【茂木外務大臣】米国の新政権、現時点で発足をしておりませんが、発足をして、ブリンケン次期国務長官が正式に就任された暁には、できるだけ早くお会いしたいということを申し上げました。
 もちろんこれは一つには、米国の新政権、発足してからも様々な準備状況であったりとか、またコロナの状況等々も見極める必要があると思っておりますが、できるだけ早くということであれば、一般的には1、2か月程度かな、こんなことも睨みながら、しかるべく日程調整も行っていきたい、こういう趣旨で申し上げております。

中東情勢(GCCサミット)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
中東情勢についてお伺いします。湾岸協力理事会(GCC)サミットが1月5日に開催されるとの報道が出ています。また、クウェートのシェイク・ナッワーフ首長が、湾岸諸国の間で湾岸危機の解決に向けた最終的な合意に至ったことに言及した旨の報道も見られます。日本とGCC諸国との緊密な関係と、互いにエネルギー安全保障と市場の安全性を確保する重要性を踏まえ、この問題についての日本政府の見解をお聞かせください。
 
【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)
まず、エネルギー・セキュリティという話でありますが、原油輸入の約9割を中東に依存する我が国にとりまして、中東地域の平和と安定は極めて重要でありまして、そのためにも湾岸諸国間の関係が改善されることが望ましいと考えております。
 GCCのサミットで、カタール断交問題が取り上げられると、こういう報道もあるところでありますが、カタールの断交問題については、クウェート政府が、解決に向けた最終的な合意が達成された旨の声明を発出するなど、前向きな動きがあると認識をいたしております。日本政府は、クウェートを始めとした、関係諸国によります努力を高く評価するとともに、これらの努力が問題の解決につながることを期待をいたしております。

慰安婦問題に関する日韓合意5周年

【共同通信 中田記者】2015年のですね、慰安婦問題に関する日韓合意について伺います。週明け28日に、合意から5年がたつのですけれども、この間のですね、今日に至る韓国の対応のご評価ですとか、今後、韓国に求めることに関する大臣のご所見をお願いいたします。
 
【茂木外務大臣】慰安婦合意に関する日韓合意、これは日韓両政府が大きな外交努力の末に、5年前の2015年12月の日韓外相会談における合意によって、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したものであります。外相会談の直後に首脳会談においても確認をし、韓国政府としての確約を取り付けたものだと理解いたしております。
 これはたとえ政権が変わったとしても、国同士の約束であります。日韓合意は責任を持って実施されなければならないと考えております。この合意につきましては、米国を含みます国際社会からも高く評価されているものでありまして、合意の着実な実施、これは、我が国はもとより、国際社会に対する韓国の責務でもある、このように考えているところであります。
 日本としては、日韓合意の下で約束した措置、全て実施をしてきております。国際社会が韓国側によります合意の実施を注視している状況でありまして、日本としては、引き続き、韓国側に日韓合意の着実な実施を強く求めていきたいと思います。

外交記録特別公開(天安門事件)

【産経新聞 石鍋記者】23日に公開された外交記録について伺います。1989年の天安門事件を受けてですね、西側諸国が共同制裁を検討する中、日本は長期的、大局的見地から得策ではないなどとの理由から反対していたことが明らかになりました。
 中国はその後もですね、日本が期待したような変化は見せずに、今も香港やウイグルなど、深刻な人権問題を抱えています。当時の日本の外交姿勢について、現職の外務大臣としてどのようなご評価を下していますでしょうか。またですね、今の中国の人権問題にどのような姿勢で取り組んでいくか、お願いいたします。
 
【茂木外務大臣】まず大前提として、この外交記録の公開、これは、我が国政府の過去の外交活動の成果を歴史的検証に委ねることを本旨としているものでありまして、今回、公開いたしました個別の記録の意義であったりとか、評価の判断、これは歴史家に委ねられるべきものだと、このように考えております。
 その上で、あえてご質問でありますので申し上げますと、天安門事件については、事件発生直後、1989年6月5日になるわけですが、官房長官談話におきまして示されているとおり、軍の実力行使による衝突の結果、多くの人命が失われるという痛ましい事態に至ったことは、まことに遺憾と言わざるを得ないと受け止めております。
 政府としては、自由、基本的人権の尊重、法の支配、これは国際社会における普遍的な価値でありまして、これらが中国においても保障されることが重要であると、このように考えております。

国際的な人の往来再開(変異種の影響)

【日本経済新聞 加藤記者】水際対策についてお伺いします。先日、英国で新たな変異種が見つかったことを受けて、政府としても外国人の新規入国を一時停止する措置をとられました。その後、ドイツでまた新たな変異種が見つかったりですね、先ほど、ご言及ありましたけれども、ナイジェリアで別の変異種が見つかるなどの新たな動きがありますけれども、今後、水際対策、つまり一時入国停止の措置を拡大していく可能性があるのか、大臣のお考えをお伺いします。
 
【茂木外務大臣】12月21日のWHOの報告によりますと、南アフリカを含みます7か国、英国、オーストラリア、デンマーク、イタリア、アイスランド、オランダ、及び南アフリカで、変異種が確認をされております。さらに報道等によりますと、香港、シンガポール、ドイツ、ナイジェリアにおいても同様に変異種が確認をされているところであります。 
 また、12月18日に南アフリカ保健省が、南アフリカ国内において多数確認されている変異種が、同国内における現在の感染を拡大させているという見解を示していると承知をいたしております。
 そういった中で、国際的な人の往来につきまして、我が国は現在、感染症危険情報レベル3の国・地域からの新規入国については、原則として、特段の事情がある場合のみ、入国を認めております。またレベル2の国・地域についても、査証免除措置の停止等の対応を行ってきているところであります。
 さらに今般の変異種の問題を踏まえまして、23日、政府として、英国からの入国に対する水際対策を強化して、当分の間、英国からの外国人の新規入国を拒否して、また、日本から英国への短期出張者の帰国後、再入国後の14日間待機緩和を認めないこととして、英国からの日本人帰国者に対して、出国前72時間以内の検査証明を求め、そして、外国人の日本居住者に対して、改めて英国への短期渡航自粛を呼びかけるなどの措置をとることを決定をしたところであります。
 今、英国においてはこの変異種がかなり広がっているということでありますが、今申し上げた、それ以外の国の状況がどうなっているかと、こういったことも考えまして、感染の国内における拡大防止をしなければいけない。状況によっては、同様のといいますか、必要な措置をとることも検討したいと思っております。