(令和2年5月19日(火曜日)15時00分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)外交青書2020

【茂木外務大臣】私(大臣)の方から2点,ご報告いたします。まず,外交青書についてでありますが,本日の閣議で,令和2年版外交青書を配布いたしました。この外交青書は1957年以降,外務省が発行しておりまして,60年以上の歴史があります。昨年の日本外交,G20大阪サミットやTICAD7の開催など,日本外交史に残る1年でありました。今年の外交青書は,複雑化し,不確実性の高まる国際社会での動きに加え,日韓,日中関係の動き,また,日米貿易協定の締結や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組など,「地球儀を俯瞰する外交」そして,「包容力と強さを兼ね備えた外交」の実践について発信する内容となっております。
 また昨年末以降,新型コロナが国民生活,経済,社会,外交など,様々な面で世界に大きな影響を及ぼしているところでありますが,海外での邦人の安全確保に関連して,武漢での帰国オペレーションや,在外邦人および渡航者に対します様々な情報発信など外務省の取組について,出版までに時間が許す範囲で4月初めまでの状況,これを記載しております。
 これに加えまして,外交を国民の皆さんに,より身近に感じていただけるように,ラグビーワールドカップ,そして,公邸料理人といった親しみやすい話題のコラムも盛り込んでおります。
 この外交青書,6月の末以降から市販する予定であります。日本語版に加えまして,今後,英語,フランス語,スペイン語版も作成いたします。これを通じて,日本外交に対する国民の皆さんと海外の読者の理解が深まることを,期待をいたしたいと思います。
 昨年まで私(大臣)は,経済財政政策担当大臣をやっておりまして,いわゆる経済白書,経済財政白書,これを2年にわたって作成してきたわけでありますけれど,2年前は,手を入れるのにおそらく20時間以上かかって,グラフを見やすくしたりとか,できるだけ図表,写真を取り入れると,こういった工夫をして,いかに分かりやすく,また国民の皆さんに興味を持っていただけるか,こういうことに腐心してまいりましたが,今年の外交青書,忙しい中でありましたが,自分なりにじっくり読み込みもしました。
 そしてまた,それぞれの章をどういう構成にするか,そのことにつきましても事務方とよく相談をした上で,今回の青書の発行ということになったわけでありまして,是非全体を読んでいただきたい。個別にいろいろなことはあると思います。この文言どうなんですか,北方領土はどういう表現なんですか。その前に,是非皆さんにですね,全体の外交青書がどうなっているのか,日本外交はどういう方向に向かおうとしているのか,こういったことをよく理解していただきたい,こんなふうに思っております。

(2)航空機等が停止された地域における邦人の出国・帰国

【茂木外務大臣】もう1点,邦人の出国・帰国の関係でありますが,これまでに出国・帰国をされた方,約9,700名,もうすぐ1万名という形になります。引き続き出国を希望されている方,27か国140名となっておりまして,これらの方々のうち約52名については,今週中に出国・帰国予定となっております。

WHO総会(台湾の不参加)

【NHK 山本記者】WHOの年次総会について伺います。台湾のオブザーバー参加が一つありましたが,認められませんでした。この台湾の問題も含めてですけれども,WHOの対応をめぐって米国と中国の対立というものが鮮明になっています。改めてこうした問題への日本政府の立場をお願いします。

【茂木外務大臣】今回のWHOの総会にも,台湾がオブザーバー参加できなかったことは残念であると思っております。我が国は従来より,国際保健課題への対応に当たっては,地理的空白を生じさせるべきではないと考えておりまして,この観点から,台湾のWHO総会へのオブザーバー参加を一貫して支持をしてきたわけであります。今回もそういった働きかけを行ってきたところであります。
 今回のような全世界に甚大な影響を与える感染症に対しては,自由・透明・迅速な形で各国及び地域の情報や知見が,広く共有されることが重要であります。新型コロナの対策のために,まずは国際社会が一体となって,万全の対策を講じる必要があると思っております。
 同時に,感染が一段落したタイミングでは,初動対応がどうであったかと,WHOの機能について何か改善をすべき点がないか,こういったことについて,公正で,そしてまた独立性を持って,さらに包括的な検証がなされることが必要だと,このように考えております。

新型コロナウイルス感染症(日本政府としての対外発信)

【読売新聞 大藪記者】新型コロナウイルス感染症に関する,日本政府としての対外発信に関してお伺いいたします。日本国内のPCR検査体制ですとか,外出自粛要請などの対策について,依然,諸外国から高い関心が寄せられております。SNSなど様々なルートで情報が回る中で,どんな情報発信が効果的と考えていらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】新型コロナにつきましては,国内での感染者,もちろんまだ予断を許さない段階でありますが,かなり落ち着きを取り戻しつつある,このように思っております。爆発的な感染には至っていない。死者の方,残念な形でありますが,それも諸外国と比べると人数的には比較的少ない形であります。
 手洗いであったりとかうがい,こういった日本の公衆衛生的な国民のこれまでの取組,そして今回の対応についても,私(大臣)も海外のメディア,できる限り目を通すようにしておりますが,かなり高く評価をされているのではないかなと思います。
 先日のフランスの「フィガロ」なども,かなりいい記事を書いたと,こんなふうに思っているところでありますし,その意味で,個々の項目については,それは言い出すと,中国の対応についても,米国の対応についても,イタリアの対応についても,それはパーフェクトではない,いろいろ改善点があるのだと思いますけれども,そういった意味では日本も同じでありますが,全体としてはしっかりした対応が取られていると,これが私(大臣)は,国際社会全体としての認識ではないかなと思っております。
 また,そういった正しい認識を,国際社会にきちんと伝えていくことが極めて重要だと考えておりまして,我が国の状況であったりとか,取組に関する正確な情報発信,国内外に適時適切に発信していくことが極めて重要だと思っておりまして,まず私(大臣)のレベルでも,ほぼ毎日のように各国の外相と電話会談をして,その冒頭では,日本,そして相手国の今の感染の状況であったりとか取組,そういったことについても意見交換をしておりますし,また,この問題について国際社会が一体になって取り組むことの重要性,情報や知見を共有することの重要性,そういったことも確認をしているところであります。
 こういった取組は外務省全体で,それも本省だけではなくて,在外公館も含めて行っていくと。そして,それは一対一の対応でもありますし,様々なテレビ会議等を通じて行っていきます。そして,マスコミの皆さんに対する正確で迅速な発信,更にはインターネット,ソーシャルメディアを通じた発信,こういったものもますます重要になってくると考えておりまして,外務省でも本省,および在外公館の双方におきまして,様々なプラットフォームにおきまして,アカウントを応用しているところであります。
 この,今やっております定例の記者会見につきましても,ちょうど1か月前から,外務省の公式Twitterアカウントで,日本語および英語でライブ配信,こういうことも実施するようにしております。様々なメディアを通じて,日本はこういうことをやっているんだと,誤解が生じないように,正しい情報が世界にも伝えられるように努めていきたいと思っています。

韓国情勢(外交青書,慰安婦問題)

【中央日報 ユン記者】質問は2点あります。今日閣議で決定された2020年の外交青書の中で,韓国を「重要な隣国」として表記されたんですけれども,こういった表現は,2017年以降初めて示されたと思います。これを変えられた背景に関してお伺いしたいと思います。
 2点目は,韓国で今,慰安婦の被害者支援団体に対して非難をする報道がされています。被害当事者の李容洙(イ・ヨンス)さんからの非難もあったんですけれども,この件に関して日本政府はどう受け止めていらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】まず外交青書についてでありますが,限られたページ数の中で,その年々に起こった様々な事象を,できる限り分かりやすく表現をしていくと。特集を設けたり,いろいろな形でその時々の,年々の工夫をして行っていくという形でありまして,個別の記述についてどうだということよりも,全体のトーンとして,今,日本の外交がどちらの方向に向かっている,こういう観点で,是非ご覧いただきたいと。
 そんな中で日韓関係につきましても,昨年来の日韓をめぐります様々な状況,いいものもあります,悪いものもあります。そういったものも含めて,先ほど申し上げたような表現を使ったということであります。
 2点目につきまして,韓国の国内の問題でありますから,私(大臣)の方から基本的にコメントは控えたいと思っておりますが,慰安婦問題については,引き続き韓国政府に対して,「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意の着実な実施を強く求めると,この我が国の立場に変わりありません。