(令和2年3月24日(火曜日)11時08分 於:本省会見室)

冒頭発言

G7外相会合(テレビ会議形式)

【茂木外務大臣】私の方からまず,明日のG7外相会合についてお話をいたします。
 明日,日本時間25日午後8時から翌26日午前0時ごろまで,若干延びるかもしれませんけれど,G7の外相会合,テレビ会議形式で開催されます。
 当初,G7の外相会合は24日から25日に,米国ピッツバーグで開催される予定でしたが,今回史上初めて,テレビ会議形式で実施をされることになりました。
 新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大をして,G7の外相が物理的に集まることができない,こういう厳しい状況にあっても,G7の外相がテレビ会議を通じて連携を確認し,国際社会の取組をG7が主導するという決意を表明することの重要性について,認識が共有されたことの表れだと考えております。
 3月16日に行われましたG7の首脳テレビ会議での議論も踏まえて,私からは日本の取組や国際協調の必要性をしっかりと説明をし,外相間でもG7の連携を確認したい,このように考えております。
 また,このコロナウイルスの問題だけではなくて,北朝鮮,そしてイラン,中東情勢をはじめとする,国際社会の喫緊の課題であったり地域情勢についても,議論を行う予定であります。日本の立場をしっかりと説明しながら,積極的に議論に参加していきたいと,このように考えております。

新型コロナウイルス(ペルーで足止めされている邦人)

【NHK 山本記者】新型コロナの関連で,ペルーで足止めをされています日本人について伺いたいんですが,大臣,昨日の参議院予算委員会で,日本人観光客,出国できずにいるということは明らかにされましたけれども,現在,その帰国支援に向けてどういった対応をされているのかということと,ペルー以外の国・地域で同じように,日本人が出国できずにいるというケースはあるのでしょうか。

【茂木外務大臣】まず,ペルーでありますけれど,日本人の旅行客等々も,クスコであったりとかマチュピチュに行っておりまして,現在230名程度の日本人旅行者が,現地で今,移動制限がかかっていると。また航空便も全て止まってるということで,現地にとどまった状況にあるところでありまして,ペルーの大使館が,情報収集している限りにおいては,非常に健康状態が悪化しているという人はいないようでありますが,1日も早い帰国の実現に向けて,ペルー政府にも働きかけを行っているところであります。
 いくつかの旅行会社がツアーの企画をして,現地に行かれていると,こういった形が多いようでありまして,例えば旅行会社が,例えば台湾が今,チャーター機を出すと,こんなことも検討していたりとか,民間でのチャーター機等々も含めて,なんらかそういった定期便ではない形で帰国することができないかと,こういったことも検討しているようでありますので,そういった検討も含めて,現地大使館等々も,できる限りの支援をしていきたいと,こんなふうに思っておりますし,クスコ,緯度,高さが3,400メートルということで,かなり高地にあるわけでありまして,中には高齢者の方もいらっしゃるということでありまして,健康状態に今問題ないにしても,現地の病院,そことも連携をして,なんらかの問題があったら,その病院にかかれるような状態,こういったことも今,確保しているところであります。
 今,海外で移動制限がかかっている国,いろいろあるわけでありまして,人数として全体で何人と,それぞれ国によって,イタリアであったりヨーロッパであったり,また置かれている状況は違いますので,全体を一つの数字ということで申し上げるのは難しいのですが,昨日時点で50か国以上で国際線の運航の停止の措置がとられているということでありまして,そういった意味では,それらの国で滞在している邦人,もしくは旅行者の中で,帰国等が困難になっている方が出ている可能性はあると考えておりますが,それぞれ各国におけます我が国の在外公館におきまして,できる限り丁寧にそういった情報入手をすると,また支援が必要な人については,できる限りの支援をこれからも続けていきたいと,こんなふうに思っております。

新型コロナウイルス(査証効力停止についての措置)

【フェニックステレビ リー記者】中国と韓国の入国者に対して,3月5日から入国制限,そして査証の効力停止をしたと思うんですけれども,しかし日本にすでに滞在をした人で,中国に一時的に帰った人の場合,再入国を待つ人の場合,日本に入国はできるんですね。この人たちが,いつまで日本に入国制限措置2週間の待機が求められるのか,現時点では3月31日までというふうに政府が発表しているんですけれども,この措置は継続されるのかどうか,そして4月末に,欧州などと同じく継続をされるのかどうかということについて教えてください。

【茂木外務大臣】今の時点では,入国の,まず制限については期間は決まっておりません。一方で,入国後14日間の措置につきましては,3月31日という形になっていると思います。また今,世界的に,このコロナウイルスの感染の拡大,これは続いている状況でありまして,3月31日の措置につきましても,それをその時点で停止をするのがどうかというのは,今週,もしくはその3月31日前に,何らかの決定を行うとこんなふうに考えておりますが,3月31日で措置が全て撤廃される,これは少なくとも明日から劇的に世界で,これはウイルスが全くなくなると,こういう状況が生まれれば別ですけれど,そういったことは想定できないと,私(大臣)は思っております。

【フェニックステレビ リー記者】もう一つ教えていただきたいことがありまして,今,中国の中にいる人たちで,このコロナの関係で査証効力を全て停止,そして大使館も査証を発行していない状況だと思うんですが,しかし4月からの新学期等,日本に来る予定の留学生がたくさんいるんですね。その人たちが,今後日本政府が,その査証に関する救済措置を,コロナの状況が落ち着いたらとる,あるいは検討していく考えはあるのかどうかお聞かせください。

【茂木外務大臣】まず前提として,日本が中国だけに対してこういった措置をとっているわけじゃありません。今,世界の128か国が日本と同じような措置,入国制限等々をとっている形でありまして,決してこれは対外的な政策,これでとっているわけではない。
 もちろん例えば留学生であったり,さらには経済であったり,人的な交流に様々な影響は出るということは理解をしますが,それであっても今,世界でこれだけの流行が広がり,これだけ多くの死者が出ているコロナウイルス感染症,これを国際社会が協力して協調して,止めていかなきゃならない,これは一致した認識だと私(大臣)は思っております。その元の措置をとらざるを得ない状況においては,それをとるということです。

新型コロナウイルス(G7外相会合の議題)

【共同通信 高尾記者】冒頭紹介ありましたG7外相のテレビ会議の関連で伺います。先週の日中韓外相テレビ電話会議では,中国の王毅(おう・き)国務委員が,東京オリンピックに言及したのを受けて,大臣は完全な形での開催を目指す日本の立場を説明されました。そのときとちょっと局面は変わったのかもしれませんが,今回のそのG7外相会議でも,東京オリンピックについて何らかの取り上げるお考えはあるのでしょうか。

【茂木外務大臣】G7外相会議の議題が全て決まったわけではありませんけれど,東京オリンピック・パラリンピックについては,すでに一定の方向性と,これは見えているんだと思います。少なくてもG7の外相会合において,時間をかけて議論するテーマではないと思っております。

新型コロナウイルス(感染症危険情報レベル3)

【NHK 高野記者】日本による入国制限に関連してお伺いします。昨日外務省は,感染症危険情報をドイツ,フランス,ベルギーなどで,レベル3にしました。渡航中止勧告ということになります。これまでだと,こうした国に対して入国拒否をやっていること,そういう措置をとっていることがほとんどかと思いますが,政府としての検討状況を教えてください。

【茂木外務大臣】レベル3にした国につきましては,入国制限措置,入国拒否の措置をとっております。特段の事情がなければ,どこの国だから特別扱いする,こういったことは考えておりません。

新型コロナウイルス(邦人保護チームの創設)

【共同通信 高尾記者】新型コロナウイルスの関連で伺います。一部報道で,日本政府は感染拡大を受けて,在留邦人保護のための緊急対応チームを4月にも創設するとありました。チームの構成など,その現在の検討状況についてお聞かせください。

【茂木外務大臣】ちょっとですね,一部の報道,どういう形かよく分かりませんが,今回の新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりを受けて,これからも様々な教訓を蓄積していく必要があると思いますが,世界各国に在住する邦人,または世界各国に旅行する日本人の旅行者,これに対する保護であったりとか,支援を強化していく必要性,そういったものは強く感じているところであります。
 もちろん,それぞれの在外公館において,今できる限りの支援をしていると。私(大臣)は,特に今回,本省もそうでありますが,領事局,更には各在外公館を中心にしながら,かなりきめ細かい対応をさせていただいているんじゃないかなと思っております。どうやったら帰国できるかと,また病院等に対してはどうするかと,こういったことも含めて,丁寧に相談に乗り,そしてまた支援を行っている,こういうことだと思いますけれど。
 例えば,今後,孤立した場所でそういった支援が必要な人のグループが出てくると,こういったことも,今後の状況によっては,このコロナの関係であっても,更に新しいこういう何かが流行したとき等々においても考えられるわけでありまして,ある意味機動性を持った,そういったユニットというのは必要なのではないかなと。
 ご案内のとおり,武漢から帰国を希望する日本人,この帰国のオペレーションを行うにあたっては,中国大使館から武漢に支援のチームが入って,様々なオペレーションを行ってくれたわけでありまして,こういった武漢のチームのような,機動性を持って,また専門性を持ったユニットという,こういったものは,今後の邦人の保護等からも,私(大臣)は重要なのではないかなと思っています。

新型コロナウイルス(北朝鮮)

【NHK 山本記者】新型コロナの関係なんですけども,北朝鮮のですね,感染状況についての分析をちょっとお伺いしたいんですけれども。北朝鮮国内で感染者が出ているという見方も出ていて,それで,河野防衛大臣は,先のミサイルの発射について,国内体制の引き締めのために使っているんじゃないかという見方を示していたんですが,外務省として北朝鮮国内の感染状況っていうのは,どのように分析していらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】完全にこうであると,こういったことが,北朝鮮も感染情報について明確な,私(大臣)は,発信はしていないと思っております。感染者がいないといった一方で,こういった緊急な対応が必要であるという形で,出てきている情報というのは一貫性に欠けるなと,こんなふうに思っております。
 そして様々な国で,今,この新型コロナウイルスの感染症,北半球から南半球へも今広がろうとしている,こういった中で,武漢で発生したこの新型コロナウイルス,日本でも韓国でも,感染者が多数確認をされている。こういった中で,中国ともそして韓国とも地続きである北朝鮮において,全く感染者がいないということであれば,極めて私(大臣)は奇跡的なことであるなというふうに感じます。人類史上,そういった事態というのは非常に考えられないなと。中世のペストでも,どこかの国だけがヨーロッパで,ペストが広がらなかった,こんな例は聞いたことありませんので。これは非常に,もしそうであれば,奇跡的なことであるなと思っております。その上で,少なくとも今,北朝鮮がこの新型コロナウイルス感染症の問題は問題として,国境線等々の封鎖によりまして,経済的に影響が出ている,こういったことは多分間違いないのではないかなと。
 こういった先日のミサイルの発射,これは北朝鮮の内側向けの,ある意味メッセージ,目を外に向けると,こういうメッセージと取ることができるのではないかなと思っておりますし,また,今,米朝の会談と,こういったものが,アメリカも大統領選を迎える中で滞っているところがある。アメリカに対して何らかのメッセージを送りたい,こういう意図があるのかもしれません,更にはミサイル能力そのものを向上させていく,こういったことに関する一連の動きでもあると。
 更には,今申し上げた三つの要因,この複合的なものであるかもしれないといったことで,今後,米国そして韓国等とも,情報交換・共有しながら,よく分析をしていきたいと,こんなふうに思っています。

新型コロナウイルス(東京オリンピック・パラリンピック)

【NHK 渡辺記者】東京オリンピック・パラリンピックについて,質問させていただきたいと思いますけれども,オリンピックが延長やむなしという形で,今,流れが変わってきましたけれども,そうした機会を使っての外交といったことも考えられていたと思うんですけれども,大臣,オリンピックがこの延期含みになってきた,この状況についてはどう受け止めていらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】多分,延期のことを延長って言ってるんじゃないですか。延長っていうと,なんか7月から始まったのを12月ぐらいまでやるのを延長っていうんですけれども。

【NHK 渡辺記者】開催時期の延期です。

【茂木外務大臣】IOCが,一昨日行われました理事会において,2020年の東京大会について,全ての関係者の健康を守り,また新型コロナウイルスの封じ込めに協力をするため,今後4週間を目途に,大会開催日の変更も含めたシナリオの検討に入ることを発表したわけであります。
 こうしたIOCの判断,これは安倍総理が述べております「完全な形での実施」という方針に沿うものでありまして,仮に,この夏にそれが完全な実施,「完全な形での実施」というのが困難な場合には,アスリートの皆さんことも第一に考えて,延期の判断を行わざるを得ないと,そんなふうに考えております。
 もちろんこういった国際的な大きなイベントがあると,その際には海外からも多くのお客さん,そして海外の要人の方がお越しになるわけでありまして,そういった機会を活用して,様々な外交活動,これをやりたいと思っておりましたが,大会そのものが仮に延期ということになったら,それは当然,そこに人が集まってこないわけですから,それ自体はできなくなりますが,それに代わるような代替手段での,様々な外交的な取組というのは続けていきたい。
 今,ご案内のとおり,様々な会議そのものが,延期になったり中止になると,こういう事態でありますが,それはどこまで補えるかという部分はあるのですが,明日のG7の電話テレビ会議,こういったことも含めて,様々な取組をこれからもしていきたいと思いますし,また,一日も早い沈静化によって,これは外交活動ももちろんでありますけれど,人・物の往来,これも正常化をすると,こういう状況が訪れると,こういったことを期待もしたいと思いますし,またそれに向けて,政府一丸となって取組を進めていきたい,こんなふうに思っております。
 起こってしまったことは,起こってしまうことですから,それに抗うことはできないんだと思います。そこの中で何が最善であるかということを,前向きに考えていくということが重要じゃないかなと思います。