令和2年3月24日

1 3月24日(現地時間同日),カンボジア王国の首都プノンペンにおいて,我が方三上正裕駐カンボジア特命全権大使と先方プラック・ソコン・カンボジア王国副首相兼外務国際協力大臣(H.E. Mr. PRAK Sokhonn, Deputy Prime Minister, Minister of Foreign Affairs and International Cooperation of the Kingdom of Cambodia)との間で,カンボジアに対する計2件の有償資金協力(合計294.17億円)及び計3件の無償資金協力(合計47.21億円)に関する交換公文の署名が行われました。

2 対象案件の概要は,それぞれ以下の通りです。

(1)南部経済回廊の輸送能力強化
 カンボジアにおいては,道路輸送が国内輸送の中心的役割を果たしており,また,同国はタイ及びベトナムに挟まれ,南部経済回廊の中央に位置しており,地域的な物流の中継基地となることが期待されています。
 同国の運輸インフラは1991年の内戦終了時から我が国をはじめとする国際社会の支援を得て修復が進められています。国道5号線はカンボジアの基幹道路であるとともに,アジアハイウェイ1号線及び南部経済回廊の一部であり,メコン地域の産業大動脈として機能することが期待されています。本計画の対象区間は,応急的な修復が行われてきているものの,道路の質は低く,交通量も増加傾向にあります。そのため,今後のカンボジアの経済発展に伴う国内・国際物流の増加に対応するために,輸送能力の増強及び輸送効率の改善が喫緊の課題となっています。

(ア)国道五号線改修計画(スレアマアム-バッタンバン間及びシソポン-ポイペト間)(第二期)【有償資金協力:供与限度額177.02億円】
 本計画では,首都プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線のスレアマアム-バッタンバン間及びシソポン-ポイペト間において,既存道路の改修及び拡幅並びにバイパスの整備等を行います。
 本計画の実施により,スレアマアム-バッタンバン間の所要時間が2019年実績の185分から事業完成2年後(2024年)には145分に,シソポン-ポイペト間の所要時間が2019年実績の63分から事業完成2年後(2024年)には50分に短縮され,同国道の輸送能力の増強及びタイとカンボジア間の物流の円滑化が図られ,もってカンボジアの経済発展の促進に寄与することが期待されます。

(イ)国道五号線改修計画(プレッククダム-スレアマアム間)(第三期)【有償資金協力:供与限度額117.15億円】
 本計画では,首都プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線のプレッククダム-スレアマアム間において,既存道路の改修及び拡幅並びにバイパスの整備等を行います。
 本計画の実施により,プレッククダム-スレアマアム間の所要時間が2019年実績の170分から事業完成2年後(2024年)には124分に短縮され,同国道の輸送能力の増強及びタイとカンボジア間の物流の円滑化を図られ,もってカンボジアの経済発展の促進に寄与することが期待されます。

(ウ)供与条件(注)上記(ア)・(イ)ともに同一の条件

     金利 0.01%
     償還期間 40年(10年の据置期間を含む。)
     調達条件 一般アンタイド

(2)タクマウ上水道拡張計画【無償資金協力:供与限度額34.21億円】
 プノンペン都の南側約11kmに隣接するカンダール州の州都タクマウ市においては,水需要の急増に伴い,既存の供給能力のままでは継続的な給水が困難な見通しです。このため,タクマウ市内に独自の浄水場を新規に整備することによる給水体制の強化とプノンペン都内の浄水場の負荷の低減が緊急に必要とされています。
 一方,タクマウ市は貧困層が多い地区であり,水道料金の引き上げは難しいため,プノンペン都水道公社は,効率的に施設の整備及び運営・維持管理を行うために我が国及び民間企業の資金・技術を活用したいとして,事業運営権対応型無償資金協力を日本政府に対し要請しました。
 本事業は,タクマウ市の上水道施設を拡張することを通し,給水サービスの向上を図り,同市の日平均給水量を,2015年実績の11,400 (m3/d)から,事業完成3年後(2026年)には30,000 (m3/d)に増加させることにより,もってタクマウ市及びプノンペンにおける生活環境の改善及びカンボジアにおける社会開発の促進に寄与することが期待されます。

(3)統合的地雷除去及び地雷被害者支援計画【無償資金協力:供与限度額10億円】
 カンボジアは,1991年のパリ和平協定締結から約30年経過した現在も,深刻な地雷・不発弾による汚染が社会問題となっています。地雷・不発弾汚染地域は,全国で約2,145km2存在しており,汚染地域の多くは,国民の大半が居住する農村部に集中しています。
 本事業は,カンボジアで地雷汚染が特に深刻な北西部の3州において,地雷除去機を活用した迅速かつ安全性の高い地雷除去活動を展開するとともに,地雷除去後の土地において,農道整備や農業インフラ整備及び農業トレーニングからなる住民支援を行います。
 本事業の実施により,同3州における地雷原の面積が,2019年実績値284.72km2から事業完了時(2022年)には241.96 km2に減少すると共に,対象地域に住む住民(92,566世帯(421,774人))が安全に暮らせるようになり,もって同国の経済社会開発の促進に寄与することが期待されます。

(4)カンボジアにおけるASEAN関連会議の開催に向けた人員輸送機材等の供与(経済社会開発計画)【無償資金協力:供与限度額3億円】
 カンボジアは,ASEAN地域の連結性強化と域内の格差是正の鍵を握る国として重要であり,我が国はカンボジア内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来,国際場裏での協力等を通じ,同国との関係を強化してきました。近年は,二国間の経済関係も緊密化しており,また,2013年12月には両国関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされ,地域・国際場裏の課題に関しても一層緊密に連携・協力していくことで一致しています。 カンボジアは2022年にASEAN議長国を務める予定ですが,同会議に際しての人員輸送に必要な大型車両等が不足している状況であり,今般我が国に人員輸送機材等の供与に係る支援の要請がありました。
 計画は,カンボジア政府が2022年にASEAN関連会議をホストするにあたり,同会議の開催に向けた人員輸送機材等(移動用車両等)を供与することにより,同会議の成功を図り,もって地域の安定及び同国の社会の安定化を通じた経済社会開発に寄与することが期待されます。

[参考]カンボジア王国基礎データ
 カンボジア王国は,面積約18万1,000平方キロメートル(日本の約0.48倍)を有し,人口1,529万人(2019年,人口センサス),人口1人あたりの国民総所得(GNI)は1,485ドル(2016年,世界銀行)。