2020年1月29日

日本企業のスピンオフ等による積極的な事業再編を促すため、実効的なガバナンスの仕組みを構築するための具体的な方策について検討し、実務指針を取りまとめるため、今般、新たに「事業再編研究会」を立ち上げます。

1.背景

第4次産業革命による産業構造の急激な変化に対応し、グローバル競争の中で、イノベーションによる付加価値創出を通じて生産性の向上を実現していくためには、貴重な経営資源をコア事業の強化や将来の成長事業への投資に集中させていくことが重要です。

こうした成長投資を積極的に行うためにも、事業ポートフォリオの新陳代謝、特にスピンオフ※1や事業売却等によるノンコア事業※2の切出しが重要となります。わが国でも、一部の企業では積極的に取り組む事例が出てきているものの、大企業全体としては、必ずしも十分に行われていないのが現状です。

従来、事業再編を促進するための施策は、税制措置や会社法特例等、M&A等の実施の円滑化のための支援措置が中心でしたが、特に事業の切出しに関しては、日本の経営者の意識や雇用慣行等との関係で、組織的な慣性の力が働きやすく、その決断と実行への動機づけとしては必ずしも十分ではないとのご指摘もあります。

また、我が国のコーポレートガバナンス改革は、こうした事業再編を始めとした果断な経営判断を促す「攻めのガバナンス」を重視して、成長戦略の一環として進められてきたものですが、社外取締役の導入や投資家とのエンゲージメントは進んできたものの、形式論にとどまっている場合も少なくないとのご指摘もあります。

こうした問題意識から、昨年12月に未来投資会議において取りまとめられた「新たな成長戦略実行計画策定に関する中間報告」※3においても、日本の大企業による「新たな分野への投資促進」に向けた政策の一環で、「スピンオフを含めた事業再編促進のための環境整備」として、「取締役会の監督機能の強化等の在り方について指針をとりまとめる」ことが盛り込まれたところです。

こうした動きを踏まえ、経営陣、取締役会(特に社外取締役)及び投資家の3つのレイヤーを通じてガバナンスの力が有効に発揮される仕組みを構築するための具体的な方策(ベストプラクティス)について検討し、実務指針を取りまとめるため、今般、新たに「事業再編研究会」を立ち上げることとしました。

※1スピンオフとは、既存の子会社の株式又は切り出した事業を承継させた子会社の株式を、株主に対して、その保有株式数に応じて交付することにより、当該子会社または事業を切り離し、経営を独立させる仕組みをいう。

※2ノンコア事業とは、必ずしも事業そのものの収益力や成長性が低いというわけではないが、自社グループにとって競争優位性を有する分野でない等の理由で、自社グループ内にあっては十分なリソースが投入されにくいために、相対的に成長可能性が低くなっている事業等をいう。

※3「新たな成長戦略実行計画策定に関する中間報告」(令和元年12月19日、未来投資会議)外部リンク

2.本研究会の取組

本研究会では、日本企業において事業ポートフォリオの新陳代謝、特にノンコア事業の切出しが進みにくい背景・要因を明らかにした上で、事業再編を積極的に行っている企業の取組を参考にしつつ、経営陣における適切なインセンティブ、取締役会による監督機能の発揮、投資家とのエンゲージメントへの対応、事業評価の仕組みの構築と開示等の在り方について検討を行います。

3.今後の予定

以下の日程で第1回研究会を開催します。

第1回:令和2年1月31日(金曜日)午後1時30分~3時30分
(研究会は非公開、後日議事要旨をHP掲載予定。)

※第2回は令和2年2月14日(金曜日)午後2時~4時に開催予定です。第3回以降は、月1~2回程度開催し、その検討結果を本年5月末を目途に報告書(実務指針案を含む)として取りまとめ、これに基づき、本年6月末を目途に、経済産業省名にて実務指針を策定・公表する予定です。

4.委員等名簿

こちらPDFファイルをご参照下さい 。

担当

経済産業政策局 産業組織課長 坂本
担当者:上田、疋田、白岩、香川、行廣

電話:03-3501-1511(内線 2621~2625)
03-3501-6521(直通)
03-3501-6046(FAX)