ミリー米統合参謀本部議長との意見交換

【NHK 山本記者】先ほどまで行われていました,米国のマーク・ミリー統合参謀本部議長の表敬について1点だけ伺いますが,冒頭の頭撮りのところで大臣のほうから,「日米間の足並みの乱れは北朝鮮のみならず中露も利することになる」とおっしゃっていました。来週,失効の期限の迫ったGSOMIAも念頭に置いた発言かと思われますが,その後の会談の中でどのようなやり取り,特に韓国への対応をめぐってどのようなやり取りがあったのかということと,議長は明日から訪韓するということでしたが,大臣,期待されている点などありましたらお願いします。
 
【茂木外務大臣】ミリー統合参謀本部議長との今日の会談でありますけれど,予定した時間よりもかなり長くなりまして,非常に有益なものだった,そんなふうに考えておりますが,まず自分のほうから,お聞きいただいたように,トランプ大統領の国賓の訪日,さらには先般署名に至りました日米貿易協定を通じて,日米の絆はかつてなく強固である,この旨申し上げました。
 その上で,日米同盟はインド太平洋の平和・安全・繁栄の礎であり,日米同盟の対処力・抑止力に一層の強化や,自由で開かれたインド太平洋構想の実現に向けて,連携と協力を深めたい,この点についてもミリー議長と一致をしております。
 そして,引き続き日本周辺の安全保障環境は非常に厳しいわけでありまして,中長期的かつ最大の課題,これも冒頭でも発言させていただいたと思うんですが,東シナ海・南シナ海での中国の一方的な現状変更の試みは継続しておりまして,日本としては中国に前向きな姿勢を求めているという説明をしたところであります。もちろん日中関係全体につきましては首脳間,そして外相間の往来等を通じて完全な正常な軌道に戻っている,こういう話もさせていただきました。
 また,北朝鮮をめぐる問題において,日米韓の連携はきわめて重要であり,日米韓の足並みが乱れるということは,北朝鮮にとってもそうでありますが,この地域の不安定化を招き,これがまた中露にも利することにもなりかねない。しっかりした結束を日米韓でもっていきたいということでありまして,日米双方,ミリー議長との間でも,直近の北朝鮮によります弾道ミサイルの発射事案を含めて,北朝鮮をめぐる最新の情勢について意見交換を行いまして,日米韓の連携,今こそ特に重要だという話でありまして,その点も含めてミリー議長,しっかりと韓国側にも話をしたいという話をしておりました。

GSOMIAの見通し

【産経新聞 力武記者】GSOMIAの終了の通告をめぐっては,大臣これまで,現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応と言わざるを得ないとおっしゃってこられましたが,実際に8月23日の破棄の通告以降も,北朝鮮によるミサイルの発射が続いている中で,先日,韓国の国家安保室長がGSOMIAが破棄されても安保への影響は限定的ということを述べています。日韓の間でGSOMIAを持つことの意味ですとか,この安全保障環境についての認識に相当差があるように思うんですけれども,日韓の間でどうしてこうした認識の差が生まれるか,そこら辺について大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
 
【茂木外務大臣】ずっと申し上げておりますように,韓国政府によりますGSOMIAの終了の通告,これは現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応と言わざるを得ず,きわめて遺憾だと感じております。そこの中でどういうギャップがあるか,いろいろな分析があるかと思うんですが,少なくともGSOMIAの終了決定と,我が国によります輸出管理の運用の見直し,関連づけていることに関しましては,両者は全く関係ない話でありまして,北朝鮮情勢もにらみながら,日米韓でしっかりした情報共有を図って連携を図っていくという問題と,安全保障上,それぞれの国に与えられているしっかりした輸出管理の問題,そのための体制と言いますか,運用の問題,これは全く違っている。そういった意味において,仮にその点であれば,韓国側の認識はそこでも違っているということです。

ミリー米統合参謀本部議長との意見交換(ロシア関連)

【NHK 渡辺記者】先ほどの山本記者の質問の関連なんですけれども,日米韓の足並みの乱れは中国とロシアを利することになりかねないということなんですけれども,この場合の文脈でのロシアを利するということは,どういった意味で利するのかというのをお願いします。基本的には日露では平和条約に取り組まれていると思いますけれども,この文脈におけるロシアを利するというのは,どういう状況のことでしょうか。
 
【茂木外務大臣】日本そして米国,韓国は,民主主義,自由貿易,そして法の支配,人権等,基本的な価値観,これを共有していると,そんなふうに思っております。そしてこの東アジア,またアジア全域,これに対する平和と安定にとって,共に協力をしている。こういう認識もまた共有すると思っています。
そういった中で近隣の諸国,中国の協力も必要であります。ロシアの協力も必要だ,こんなふうに思っておりますが,一方で,では中国であったりロシア,この問題について完全に考え方が一致しているかと言いますと,それは違っている部分があると考えております。
 その一方で,先ほども申し上げたように,中国との関係では,中国との外交関係,完全に正常な軌道に戻っております。またロシアとの関係におきましても,領土問題を解決して平和条約を締結する,こういう基本方針の下で共同経済活動等々も進められているわけでありまして,敵対しているというよりも,地域の情勢に対する見方が完全には一致していない。そこに何らかの空白が生まれることによって,利する可能性も出てくるということに言及したまでです。

ミリー米統合参謀本部議長との意見交換(GSOMIA)

【NHK 高野記者】先ほどの米国統合参謀本部議長に関連してお伺いします。最初の質問にもあったんですが,GSOMIAは話題になったのか。総理との会談の中では話題になったというのは,議長のほうはぶら下がりで発言されていますが,茂木大臣とはどういうやり取りがあったのか,その内容というのは2問目の質問にあったようなことを改めて伝えられたということでいいのか,お伺いできますか。
 
【茂木外務大臣】GSOMIAも含めた日米韓の連携の重要性を確認したということです。

米中関係

【共同通信 高尾記者】米中関係を巡る茂木大臣のご認識について伺います。今日の参議院外交防衛委員会で,大臣は,覇権国と新興国との対立は互いに望まなくても,最終的には戦争に発展してしまうことを意味する「トゥキディデスの罠」,これを引き合いに現状への懸念を示されました。米中両国はすでにそのような罠にはまりつつあると見ていらっしゃるのでしょうか。大臣の見方を教えてください。また,「トゥキディデスの罠」を克服するために,その解決方法として何が考えられるのでしょうか。これも合わせて大臣の考えをお聞かせください。
 
【茂木外務大臣】「トゥキディデスの罠」,これはグレアム・T・アリソンが過去の歴史・政治研究の中から,覇権国と新興国の間では両国が望まない中にも関わらず覇権を巡って衝突に至る,紛争に至るケースが多いと,20くらいの事例を取り上げていたと思いますけれども,古代ギリシアの当時は陸上に力を持っていたスパルタ,この覇権国に対して海上軍事力を持ったアテネがチャレンジをすると,このペロポネソス戦争,更には古代ローマにおけるローマに,ハンニバル率いるカルタゴが三次にわたって挑戦をしたポエニ戦役等々の事例があるわけですが,一般論としてそのときの覇権国といいますか,力を持っている国に対して新興国というものは今まで作られてきた覇権国によります秩序と,これに対して新しい秩序を模索する,更にはその新しい秩序を模索するにあたって,同調する国を探すといいますか,同調する国を増やそうという働きかけをする,こういう傾向があると,そのように申し上げましたが,今の米国と中国が,今,少なくとも現時点において,そういう状態にあるとは思っておりません。

ミリー米統合参謀本部議長との意見交換(中東情勢)

【朝日新聞 竹下記者】先ほどのミリー議長との会談の冒頭でも,中東情勢についてもお話ししたいとおっしゃっていたと思いますけれども,ホルムズ海峡をめぐる地域情勢についてお話をされたのかどうかということをお伺いしたいのと,イランに関しては,イランが核合意破りであるウラン濃縮活動を再開して,アメリカも制裁を強化しておりますけれども,現状の米・イラン関係,どのように分析されているかお伺いしたいと思います。
 
【茂木外務大臣】中東情勢については意見交換を行いました。当然,軍のトップの方との意見交換でありますから,その内容については控えたい部分もあるわけでありますが。先方からはですね,中東における航行の安全確保に向けた,我が国独自の取組としての情報収集体制強化のための,自衛隊アセットの活用に係る具体的な検討に対しまして,謝意の表明はありました。
 
【朝日新聞 竹下記者】イラン関係,米・イランの現状についてどのように分析されているかという点についてもお願いします。
 
【茂木外務大臣】イランについて意見交換をいたしました。ただ,イランが今どうである,イランに対してどういう対応が必要である,正にこれから外交努力を行っていく中で,そのことにつきましてはコメントは控えたいと思います。

香港情勢(邦人の負傷)

【ブルームバーグ レイノルズ記者】香港についてお聞きしたいんですが,日本人が怪我されたという話は報道されていますけれども,日本で確認されていますでしょうか。
 
【茂木外務大臣】11日,香港で50代の邦人男性1名が,デモに遭遇し負傷したことを確認しております。在香港総領事館が本人と連絡をとりまして,当該邦人は病院で治療を受け,既に退院したことを確認しております。引き続き,邦人保護の観点から,必要かつできる限りの支援を行っていきたいと考えております。