令和元年9月30日
林野庁

農林水産省は、本日、「平成30年度 国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況」について取りまとめました。

1.はじめに

農林水産大臣は、「国有林野の管理経営に関する法律」(昭和26年法律第246号)に基づき、5年ごとに10年を1期とする「国有林野の管理経営に関する基本計画」(以下「管理経営基本計画」という。)を策定するとともに、「管理経営基本計画」の実施状況について、毎年9月末までに前年度の実施状況を公表することとされています。

本日公表する実施状況は、平成25年12月に定めた平成26年4月から令和6年3月までを計画期間とする「管理経営基本計画」の5年目に当たる、平成30年度の取組をまとめたものです。

2.「平成30年度 国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況」のポイント

国有林野事業は、平成25年度から一般会計で実施する事業に移行し、国有林野を名実ともに「国民の森林」とするよう、民有林に係る施策との一体的な推進を図りつつ、公益重視の管理経営を一層推進するとともに、我が国の森林・林業の再生への貢献や木材の安定供給等を進めるため、「管理経営基本計画」に基づき以下の取組を実施しました。

(1)公益重視の管理経営の一層の推進
・国有林野を重視すべき機能に応じて、「水源涵(かん)養(注1)タイプ」などの5つの類型に区分し、機能類型区分ごとの管理経営の考え方に即し、長伐期施業や育成複層林等へ導くための多様な施業等を実施するとともに、効果的な路網整備にも取り組みました。
・台風や集中豪雨等により発生した山地災害の被害状況調査や復旧等の治山対策について、民有林関係者と連携して取り組みました。
・地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収・貯蔵を進めるため、間伐等を推進するとともに、間伐材等の搬出・供給や治山施設等における木材利用を推進しました。
・生物多様性の保全を図るため、「保護林」や「緑の回廊」(注2)を設定し保護・管理を行うとともに、渓流等と一体となった森林の連続性を確保し、森林生態系ネットワークの形成に取り組みました。
・シカ等野生鳥獣による被害防止のため、地域の関係行政機関やNPO等と連携し、効果的な捕獲技術の開発・実用化等も含め、総合的な被害対策に取り組みました。
・国有林野及びこれに隣接・介在する民有林野において、外来種駆除や間伐等を一体的に行うため「公益的機能維持増進協定」を締結し、施業を実施しました。

注1)森林の土壌が、降水を貯留し、河川へ流れ込む水の量を平準化することにより、洪水を緩和するとともに川の流量を安定させる働きや、雨水が森林の土壌を通過することにより、水質を浄化する働きのこと。
注2)野生生物の移動経路を確保し、より広範かつ効果的に森林生態系を保全することを目的として設定した、主に保護林の間をつなぐ帯状の国有林野の区域。

(2)森林・林業再生に向けた貢献
・コンテナ苗を活用し、伐採から造林までを一体的に行う「一貫作業システム」等、地域の状況に応じた低コストで効率的な施業のための技術の開発・普及に取り組みました。
・計画的な事業発注や情報提供、研修フィールドの提供等により、林業事業体の育成や森林総合監理士(フォレスター)等の森林技術者の人材育成に取り組みました。
・民有林と連携した森林施業等の推進のため「森林共同施業団地」を設定し、団地内での路網の接続や協調した木材の出荷等に取り組みました。

(3)国民の森林(もり)としての管理経営
・国有林野事業の実施に係る情報発信と併せて、「国有林モニター」会議や「地域管理経営計画」の策定に当たっての地域懇談会の開催など国民の皆様との対話を重視した取組を推進しました。
・森林環境教育の推進や自主的な森林(もり)づくり活動を支援するため、「遊々(ゆうゆう)の森」や「ふれあいの森」等の設定によるフィールド提供、技術指導等に取り組みました。

(4)国有林野の林産物の供給
・機能類型区分に応じた適切な森林整備の下、木材の持続的かつ計画的な供給に努め、国有林材の需要者への直送や、これまで未利用であった小径木等の新たな需要の開拓に取り組みました。
・国産材の安定供給体制の構築のため、民有林と連携した供給や、地域の需要が大きく変動した際の木材の供給調整機能の発揮を推進しました。

(5)国有林野の事業運営
・伐採・造林等の事業の民間委託や情報システムの活用等により、効率的な事業運営に努めつつ、収穫量の計画的な確保やコスト縮減等に取り組み、平成30年度において166億円の債務返済を行いました。

(6)その他国有林野の管理経営
・東日本大震災で被災した海岸防災林の再生を進めるとともに、避難指示が解除された地域においては、地元からの要望も踏まえて森林整備事業等を再開しました。

平成30年度の実施状況の全文については、次の当省ホームページから御覧になれます。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/jissi/jyokyo_2018/index.html

3.林政審議会の意見の概要

「管理経営基本計画」の実施状況の公表に当たっては、林政審議会の意見を聴くこととされています。
令和元年9月11日(水曜日)に開催された林政審議会において、公表することが適当である旨の答申がありました。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/jissi/jyokyo_2018/attach/pdf/toushin.pdf

なお、林政審議会では、委員から主に次のような発言がありました。
・多岐にわたる内容について、多くの事例が取り上げられ、内容が充実している。
・林業大学校等の研修フィールドとして国有林野を提供することは、将来の担い手の育成のためにも継続すべき。
・来年に向けて、SDGsに沿った形で、森林・林業の価値・意義を国民により身近に伝えてほしい。

林政審議会の意見の概要については、次の当省ホームページから御覧になれます。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/singikai/index.html

4.参考

「国有林野の管理経営に関する基本計画」(平成25年12月25日策定)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/kanri_keiei/kihon_keikaku.html

お問合せ先

国有林野部経営企画課

担当者:企画班 長谷川、松井
代表:03-3502-8111(内線6288)
ダイヤルイン:03-3502-1027
FAX番号:03-3592-6259

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