1. 1 12月19日,東京において,河野太郎外務大臣とカルロス・ホルメス・トゥルヒージョ・コロンビア共和国外務大臣との間で「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約」(日・コロンビア租税条約)の署名が行われました。我が国とコロンビア共和国との間では,これまで租税条約は存在せず,本条約は,両国の緊密化する経済関係等を踏まえ,新たに締結されるものです。

    2 本条約は,両国間で生ずる二重課税を除去するため,両国において課税することができる所得の範囲を定める規定等を設けています。また,本条約の締結によって,両国の税務当局間において,本条約の規定に従っていない課税についての協議,租税に関する情報交換及び租税債権の徴収共助の実施が可能となります。これらにより,二重課税を除去し,国際的な脱税及び租税回避行為を防止しつつ,両国間の投資・経済交流を一層促進することが期待されます。

    3 条約の主な内容は以下のとおりです。

    (1)事業利得に対する課税
     事業利得については,企業が進出先国に支店等の恒久的施設(注)を設けて事業活動を行っている場合に,その恒久的施設に帰属する利得に対してのみ,進出先国において課税することができます。また,恒久的施設に帰属する利得は,本支店間の内部取引を網羅的に認識し,独立企業原則を厳格に適用して計算されます。
     (注)企業が使用人等を通じて一定期間を超えて行う役務の提供(いわゆるサービスPE)を含みます。

    (2)投資所得に対する課税
     投資所得(配当,利子及び使用料)については,以下のとおり,源泉地国(所得が生ずる国)における課税の上限(限度税率)が設けられ,又は課税が免除されます。

     

    配当 免税(年金基金受取)
    5%(議決権保有割合20%以上・保有期間6月以上)
    10%(その他)
    利子 免税(政府,金融機関間,年金基金受取等)
    10%(その他)
    使用料 2%(設備)
    10%(その他)
     

     

    (3)株式譲渡収益に対する課税
     法人の資本の10%以上に相当する株式の譲渡収益については,源泉地国において10%を限度税率として課税することができます。ただし,法人の組織再編成の直接の結果として行われる所有の変更から生じるもの及び年金基金が取得するものについては,課税が免除されます。

    (4)条約の特典の濫用防止
     条約の特典の濫用を防止するため,投資所得及び譲渡収益に対する課税に関する特典は適格者等一定の要件を満たす居住者に限って認められます。また,条約の特典を受けることが取引等の主要な目的の一つであったと認められる場合及び第三国に存在する恒久的施設に帰属する一定の所得については,条約の特典は認められません。

    (5)相互協議手続
     条約の規定に従っていない課税は,両国の税務当局間の協議による合意に基づき解決されます。

    (6)情報交換及び徴収共助
     国際的な脱税及び租税回避に効果的に対処するため,両国間における租税に関する情報交換及び租税債権の徴収に関する相互支援が導入されます。

    4 この条約は,両国においてそれぞれの国内手続(我が国においては国会の承認を得ることが必要)に従って承認された後,その承認を通知する外交上の公文の交換の日の後30日目の日に効力を生じ,次のものについて適用されることとなります。

    (1)我が国においては

    • ア 課税年度に基づいて課される租税に関しては,本条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度の租税
    • イ 課税年度に基づかないで課される租税に関しては,本条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に課される租税

    (2)コロンビア共和国においては

    • ア 源泉徴収される租税に関しては,本条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に支払われ,又は貸記される額
    • イ その他の全ての租税に関しては,本条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度

    (3)情報交換及び徴収共助に関する規定は,対象となる租税が課される日又はその課税年度にかかわらず,本条約が効力を生ずる日から適用されます。