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2023年5月30日

特許庁は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)技術に関する各国・地域の特許出願動向を概括するため、特許庁が作成したグリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)を用いた網羅的な調査を初めて実施しました。
この調査の結果、①GX技術全体で見ると、国際的に展開された発明の件数において日本が最大であることが示されるとともに、②太陽光発電、建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)及び二次電池等の分野においては、価値の高い発明の創出において日本が強みを有することが示唆されました。

1.背景

特許庁では、グリーン・トランスフォーメーション(GX)技術に関する特許情報を簡単に分析できるよう、グリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)外部リンクを2022年6月に作成・公表しました(図1)。
このGXTIを用いて特許情報分析を行うことで、各国・地域のGX技術の動向を可視化することや、各企業のGX技術分野でのポジショニングを客観的に把握することができます。GXTIの活用により、企業等は、知財戦略・研究開発戦略の立案や、投資家等への自社の技術優位性の開示などをエビデンスベースで行うことも可能です。

この度、特許庁において、GXTIを用いた網羅的な特許出願動向調査を初めて実施しましたので、結果概要を紹介します。

図1 GXTIの構造

グリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)の詳細については、こちら外部リンクを参照ください。

2.調査手法について

本調査では、主に、「発明件数※1」と「国際展開発明件数※2」の観点で分析しています。ある技術分野における「発明件数」を国籍・地域別又は出願人別に分析することで、各国・地域又は出願人毎の技術開発の状況を把握できます。
また、二つ以上の国・地域へ出願される発明は、1か国のみに出願される発明に比べ、出願人自身にとって価値の高い発明と考えられるため、「国際展開発明件数」に注目することで、発明の価値や国際的な影響力を考慮した分析が行えます。

3.調査結果の概要

GX技術全体の動向

GXTI におけるGX技術全体の「発明件数」についてみると、中国籍出願人による「発明件数」は急増しており、2013年には日本国籍出願人による「発明件数」を超え最多となっています (図2)。一方で、「国際展開発明件数」についてみると、日本国籍出願人による「国際展開発明件数」は、調査期間を通じて最も多くなっており(図3)、相対的に価値が高いと考えられる「国際展開発明」の件数で存在感を有しています。

「発明件数」及び「国際展開発明件数」の年次推移を併せて考えると、中国籍出願人による出願は、1か国(自国)のみへの出願が大部分を占めると推測されます。

図2 GXTIに含まれるGX技術全体における発明件数の年次推移

図3 GXTIに含まれるGX技術全体における国際展開発明件数の年次推移

GXTIの中区分別の動向

また、本調査ではGXTIの技術区分別の調査も行いました。一例として、GXTIの中区分「gxA01 太陽光発電」に関する調査結果を紹介します。

中国以外の日米欧韓籍出願人による「国際展開発明件数」は減少傾向にあることから (図4)、太陽光発電の分野について新たな技術の開発段階から既存技術の普及段階に移っている可能性が示唆されました。日本国籍出願人による「国際展開発明件数」の年次推移を見ると、2018年までの全ての期間において首位を維持しています。また、中国籍出願人による「国際展開発明件数」は近年、日米欧籍出願人による「国際展開発明件数」と同水準にまで増加しています。

図4 太陽光発電における出願人国籍・地域別国際展開発明件数推移

「国際展開発明件数上位20者」に注目すると、10者を日本国籍出願人が占めています(図5左)。また、各国・地域の特許審査において引用された回数の多い「国際展開発明」の件数である「高被引用国際展開発明件数※3」では、米国籍出願人が359件で最も多く、次いで日本国籍出願人が182件と多くなっています(図5右)。

太陽光発電分野は、「国際展開発明件数」及び「高被引用国際展開発明件数」から価値の高い発明の創出において日本が強みを有する分野と考えられる一方、米欧も存在感を示しています。また、近年の中国の台頭にも注目が必要と言えます。

図5 国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

この他の技術区分についても同様の分析をしており、例えば、「gxB01 建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)」及び「gxC01 二次電池」においても日本が、「国際展開発明件数」及び「高被引用国際展開発明件数」から価値の高い発明の創出において強みを有すること等が示唆されました。

今回の調査では、GXTIに示された技術区分のうち約50の区分について分析を行うとともに、GXTIの技術区分に対応しない八つの注目技術を調査しました。ご関心のある技術について、「GXTIに基づく特許情報分析の結果概要外部リンク」又は「GXTIに基づく特許情報分析の報告書(要約編)外部リンク」をご覧ください。

本調査の結果が、GX技術の出願動向の把握と、GXTIを用いた特許情報分析を行う際の一助となれば幸いです。

※1 「発明件数」とは、いずれかの国・地域に出願された発明の数を指します。ある発明を一つの国・地域のみへ出願した場合も、二つ以上の国・地域へ出願した場合も1件と数えます。二つ以上の国・地域へ出願した場合の出願のまとまりは、「Patent Family」とも称されることがあります。

※2 「国際展開発明件数」とは、「発明件数」のうち、二つ以上の国・地域へ出願された発明、欧州特許庁(EPO)へ出願された発明又はPCT出願された発明の数を指します。「International Patent Family (IPF)」とも称されることがあります。

※3 「高被引用国際展開発明件数」とは、各国・地域の特許審査において引用された回数が発明全体の上位1%以内(被引用回数が28回以上)である「国際展開発明」の件数であり、そのような発明は後続の特許出願への影響が大きく、価値が高いと考えられています。

関連リンク

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