外務省・新着情報

令和5年4月30日
首脳会談を前に、握手をする日・エジプトの両首脳 日・エジプト首脳会談(写真提供:内閣広報室)
日・エジプト首脳会談が行われている様子 日・エジプト首脳会談(写真提供:内閣広報室)
共同記者発表において、発言を行っている岸田総理大臣 共同記者発表(写真提供:内閣広報室)

 エジプトを訪問中の岸田文雄内閣総理大臣は、現地時間4月30日午前11時(日本時間同日午後5時)から約1時間40分、アブドゥルファッターハ・エルシーシ・エジプト・アラブ共和国大統領(H.E. Mr. Abdel-Fattah El-SISI,President of the Arab Republic of Egypt)と首脳会談を行いました。その後、両首脳立ち会いの下で円借款「カイロ地下鉄四号線第一期整備計画(III)」交換公文(E/N)等の署名式が行われ、共同記者発表を実施した後、午後1時35分から約60分間、エルシーシ大統領主催の昼食会が行われたところ、概要は以下のとおりです。

1 冒頭

 エルシーシ大統領から、岸田総理の訪問を心から歓迎する、エジプトは日本との関係を重視しており、今回の訪問で二国間関係を更に発展させていきたい旨発言がありました。
 これに対し、岸田総理から、今回は総理就任以降初めてのアフリカ歴訪となるが、最初の訪問国として、長い歴史を有し、人口1億人を超える地域の大国であるエジプトを訪問することができ光栄である、エジプトは中東・アフリカ地域の平和と安定にとって極めて重要な役割を果たしており、日本としてエジプトとのパートナーシップを重視している旨述べました。

2 二国間関係

 両首脳は、日エジプト関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし、二国間関係を深化させていくことで一致しました。

(1)経済協力

 エルシーシ大統領から様々な分野における日本からの支援に対する謝意が表明され、両首脳は、カイロ地下鉄四号線第三期円借款の署名実施、スエズ運河の安全航行のための船舶支援に向けた調査の開始、食料安全保障強化に関する協力の実施、高等専門学校の導入に向けた協議の開始を含む教育分野における日本式教育の着実な普及、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)における博士課程を中心とした150名の留学生の受け入れ決定、大エジプト博物館(GEM)に関する協力の実施等、我が国のODAを通じた支援が着実に進展していることを確認しました。また、岸田総理からエジプトがホストしたCOP27の成功に祝意を表した上で、日本貿易保険によるサムライ債発行支援、国際協力銀行及び日本貿易保険による日本企業の風力発電事業参画支援について言及しました。

(2)日本企業のエジプト進出

 岸田総理から、スエズ運河を擁するエジプトは、投資先としての魅力が高まっており、日本企業のエジプトへの更なる進出・投資を呼びかけたい、引き続き、官民双方で貢献していきたい旨述べました。
 これに対し、エルシーシ大統領から、スエズ運河経済特区を含め、日本企業のエジプトへの積極的な進出を期待している旨発言がありました。

(3)安全保障

 岸田総理から、中東の平和と安定のためシナイ半島に展開する多国籍部隊・監視団(MFO)に対し、これまでの財政支援・人的貢献に加え、今後更に人的貢献を強化する方針を伝達しました。これに対し、エルシーシ大統領から、地域の安定に向けた日本の貢献を高く評価する旨発言がありました。

3 地域情勢等

(1)ウクライナ情勢

 岸田総理から、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないことを国際社会が一致して訴えかけていく必要がある旨述べ、両首脳は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を擁護するパートナーとして引き続き連携していくことで一致しました。

(2)自由で開かれたインド太平洋

 岸田総理から、本年3月に公表された「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の新たなプランを紹介し、今後も、スエズ運河の安全航行に係る協力を含め、FOIPの理念に合致するような協力・支援を行っていきたい旨述べました。
 これに対し、エルシーシ大統領から、FOIPへの関心とともに、中東やインド・太平洋での協力を進めていきたいとの意向が示されました。

(3)地域情勢

 両首脳は、中東和平やスーダンを含む地域情勢についても議論しました。両首脳は、イスラエル・パレスチナ間で高い緊張状態にある現下の情勢に対する深刻な懸念を共有し、岸田総理から、5者会合(エジプト、ヨルダン、米国、イスラエル、パレスチナ)における緊張緩和の取組を高く評価する旨述べました。これに対し、エルシーシ大統領から、パレスチナにおける情勢悪化を防ぐとともに、公正で永続的な和平の実現に向けたエジプトの取組について説明があるとともに、日本によるこれまでの支援に対する謝意が表明されました。
 両首脳はまた、現下のスーダン情勢についても時間をかけて議論を行いました。両首脳は情勢に対する深刻な懸念を共有し、一刻も早い事態の沈静化と民政移管プロセスの再開に向けて、スーダンと密接な関係を有するエジプトと緊密に連携していくことで一致しました。岸田総理から、日本としてもG7議長国、安保理メンバーとして積極的に貢献すべく、近く、清水アフリカの角担当大使をエジプトを含む関係国に派遣予定であり、また日本として、周辺国における難民・国内避難民に対する緊急人道支援を実施する用意がある旨を伝達しました。これに対しエルシーシ大統領から、日本の積極的な関与を高く評価する、情勢安定化に向けて連携していきたい旨の発言がありました。
 また両者は、日・エジプト・ヨルダン三者協力を更に推進することで一致したほか、本年9月に第3回日アラブ政治対話を開催すべく調整することで一致しました。
 また、エルシーシ大統領からTIⅭADの下での日本によるアフリカ支援に対し高い評価が示されるとともに、引き続き、日本とエジプトとでアフリカ開発で連携していきたいとの考えが示されました。
 そのほか、両首脳は、中国、北朝鮮を含む東アジア情勢について意見交換を行い、拉致問題を含む北朝鮮への対応等において引き続き緊密に連携していくことで一致しました。

(4)国際場裏での協力

 岸田総理から、安保理改革を含む国連全体の強化、NPT体制の維持・強化の必要性について述べ、両首脳は、引き続き、緊密に連携していくことで一致しました。

4 その他

 両首脳は、首脳会談後、円借款「カイロ地下鉄四号線第一期整備計画(III)」交換公文(E/N)、円借款「カイロ地下鉄四号線第一期整備計画(III)」借款契約(L/A)、通信・情報技術分野の協力強化のための協力覚書(MoC)、日本法務省とエジプト司法省間の法律及び司法分野に関する協力覚書(MoC)、国際協力銀行(JBIC)・国際協力省間の包括的戦略的パートナーシップに関する協力覚書(MoC)の署名式に立ち会いました。


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