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令和5年4月18日
議長国会見に臨む林外務大臣
議長国会見で話をする林外務大臣
議長国会見場の様子

1 冒頭発言

【冒頭】
 4月16日から3日間にわたり、ここ長野県軽井沢でG7長野県軽井沢外相会合を開催をさせていただきました。国際社会が歴史的な転換期を迎える中で、豊かな自然に恵まれたこの軽井沢の地で、G7外相と率直かつ踏み込んだ議論ができましたこと、また、会合の成果として、先ほど、G7外相コミュニケを発出したことを大変嬉しく思っております。
 御参加いただいたG7外相、そして関係者の皆様に感謝を申し上げます。その上で、議長を務めた私(大臣)から、今回の外相会合の成果につきまして、簡潔に紹介させていただきます。

【総論】
 今回は、今年2回目となる対面でのG7外相会合でありまして、セッション全体を通じて、この5月のG7広島サミットに向けましたG7外相間の連携を確認をいたしました。また、今年のサミットが広島で開催されることも念頭に、核軍縮・不拡散についても詳細に議論を行ったところであります。
 さらに、G7として初めて、日本が重視をいたします「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」へのコミットメントや、「世界のどこであれ」一方的な現状変更の試みに強く反対するということを文書の形で確認をすることができました。

【インド太平洋】
 アジアで唯一のG7メンバーといたしまして、このG7の間でインド太平洋についてしっかり意見交換を行うことが重要と考えておりまして、今回の外相会合でも、初日のワーキングディナー、そして2日目の最初のセッションで十分に時間を取って議論をいたしました。その際、私からFOIPや、その新プランに関する日本の考え方について説明をいたしまして、G7メンバーからの支持を確認したところであります。また、G7メンバーのインド太平洋地域への関与強化や、ASEAN中心性・一体性への揺るぎない支持及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック」に沿った協力の推進へのコミットメント、さらに、太平洋島嶼国との連携を再確認をいたしました。また、各国外相とは、G7の枠組みにおきまして、インド太平洋に関する議論を定例化をし、連携を強化していくことでも一致をいたしました。

【中国】
 中国に関しまして、G7として、中国と率直な対話を行い、懸念を直接伝える重要性、また、グローバルな課題や共通の関心分野では中国と協力をする必要性、これを確認をいたしました。その上で、G7として、中国に国際社会の責任あるメンバーとして行動するように呼びかけるとともに、対話を通じて中国と建設的かつ安定的な関係を築く用意があるということを確認をいたしました。また、G7として、東シナ海・南シナ海情勢について、引き続き深刻な懸念を表明するとともに、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対をするということで一致をいたしました。さらに、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性、これを再確認をいたしました。

【ロシア・ウクライナ】
 ウクライナ情勢に関しましては、G7として、引き続き一致して厳しい対露制裁及び強力なウクライナ支援を継続していくということを確認をいたしました。また、ロシアが即時かつ無条件に全ての軍及び装備をウクライナから撤退させるべき旨を強調し、ロシアによる無責任な核のレトリックやベラルーシに核兵器を配備するという威嚇、これを受け入れられないことを確認をいたしました。さらに、制裁回避や第三国等からのロシアへの武器提供に対処するための連携強化で一致をいたしました。

【軍縮・不拡散】
 軍縮・核不拡散につきましては、先ほど1セッションを用いまして、詳細な議論を行いました。残念ながら、核軍縮を巡る状況は一層厳しいものになっておりますが、G7として、引き続き「核兵器のない世界」、これにコミットをしているということを再確認をいたしました。また、NPT体制の維持・強化を図り、その下で核軍縮を進めることが重要という認識を共有をし、岸田総理が「厳しい安全保障環境」という「現実」、これを「核兵器のない世界」という「理想」に結びつけるための現実的なロードマップの第一歩として昨年提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」、これは、「核兵器のない世界」の実現に向けた歓迎すべき貢献であるというG7メンバーによる評価を得たところであります。また、具体な核軍縮の取組として、CTBT及びFMCTを重視するということとともに、G7として、中国の核戦力の拡大に対する懸念を共有し、その透明性の重要性を確認をいたしました。そして、中国に対して戦略的なリスク低減に関する米国との対話に速やかに関与することを強く求めるとともに、核分裂性物質(FM)生産モラトリアムの宣言・維持を行っていない核兵器国に対して、これを行うように要請をいたしました。

【経済安保】
 経済安全保障については、G7外相文書としては初めて、独立した項目を設けました。その中で、経済安全保障上の脅威、これが増大していることへの懸念を表明をし、信頼性に基づく、強靭なサプライチェーンを構築すること、そして外交当局間で連携しつつ経済的威圧に対抗していくこと、そして国家主導で我々の重要技術や知的財産を不当に又は強制的に獲得をしようとする動きに対して対策を講じていくこと等、具体的な取組を進めることについて認識を共有をしたところでございます。

【グローバル・サウス等】
 さらに、いわゆる「グローバル・サウス」への関与強化の重要性、これを再確認をし、G7の連携を強化することで一致をし、中東、中央アジア、アフリカ、中南米といった国々との協力を強化していくということで一致をいたしました。
 また、スーダン情勢に関しましては、G7として進行中の戦闘、これを強く非難し、即時の暴力停止を求めるとともに、各国の自国民保護を含めて、各国とも緊密に連携していくことを確認をいたしました。

【結語】
 今回、このG7外相間でこのような充実した議論を行うことができたことに、議長として大変満足をしております。G7外相間の連携はかつてないほど緊密であります。引き続き、国際社会の喫緊の課題、これに対処すべく、広島サミットに向けて引き続き連携をしていきたいと思います。
 最後に、素晴らしい「おもてなし」の精神でG7外相を温かく歓迎いただいた、ここ長野県と軽井沢町(まち)の皆様に心より感謝申し上げて、私の冒頭発言とさせていただきます。

2 質疑応答

【毎日新聞 竹内望記者】
 今回の会合の成果についてお伺いします。アジアで唯一のG7として、中国が軍事的・経済的に影響力を増す東アジアの安全保障環境の危機感を、距離的に遠い欧州各国と共有できたとの手応えをお感じでしょうか。また、5月の広島サミットでは核軍縮や核廃絶が主要なテーマになると思います。今回の会合を通じて、核戦力を急速に増強させる中国への対応など、核軍縮や核廃絶に向けた議論の成果があったとお考えでしょうか。さらに被爆地の広島や長崎からは、広島サミットに合わせ、各国首脳が被爆者の声を直接聞き、被爆の実相に触れる機会を作るよう求める声が相次いでいます。政府としてそのような対話の場を設けるお考えがあるか教えてください。

【林外務大臣】
 まず、1つ目のお尋ねですが、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙でありまして、断じて認められないと考えております。欧州とインド太平洋の安全保障、これは不可分でありまして、私(大臣)自身、ウクライナは明日の東アジアかもしれないとの危機感を持っております。
 インド太平洋地域に目を向けますと、東シナ海・南シナ海の力による一方的な現状変更の試みが継続をし、日本周辺での軍事活動は活発化をしております。また、北朝鮮は、前例のない頻度と態様で弾道ミサイルを発射するなど行動をエスカレートしています。さらに、ロシアは極東地域での活発な軍事活動を継続し、さらに中露の軍事的連携、これも強化されております。
 今回のG7長野県軽井沢外相会合では、こうした東アジアの安全保障環境を含めて、G7外相間で突っ込んだ議論を行いました。そして、G7としては初めて、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」、これへのコミットメント、そして「世界のどこであれ」一方的な現状変更の試みに強く反対することを確認できたのは、大きな成果であると考えております。
 さらに、今回の外相会合では、G7の枠組みにおいてインド太平洋に関する議論を定例化することでも一致をいたしました。このような成果を踏まえ、広島サミットも念頭に、引き続き、G7としての連携を強化していきたいと思います。
 また、2つ目の軍縮・不拡散に関してですが、今回の会合では、G7サミットが広島で開催されることも念頭に置きまして、「核兵器のない世界」に向けたG7としてのコミットメント、これを改めて確認をいたしました。その上で、核軍縮を進めるための具体的・実践的な取組について意見交換を行い、岸田総理が昨年提唱されました「ヒロシマ・アクション・プラン」は、「核兵器のない世界」の実現に向けた歓迎すべき貢献であるという評価を得たところであります。
 加えて、G7として、中国の核戦力の拡大に対する懸念を共有し、その透明性の重要性を確認いたしました。さらに、中国に対して戦略的なリスク低減に関する米国との対話、これに速やかに関与することを強く求めるよう要請したところでございます。
 3つ目に関連いたしますが、G7広島サミットでは、今次G7外相会合の議論も踏まえながら、広島と長崎に原爆が投下されてから77年間、核兵器が使用されていない歴史、これをないがしろにすることは決して許されない、というメッセージを力強く世界に発信したいと考えております。
 また、世界に被爆の実相、これをしっかりと伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要であります。広島サミットの日程についても、有意義なものとなるようにしっかりと検討して参りたいと考えております。

【ロイター通信 村上さくら記者】
 中国が台湾に対する軍事的圧力を高める中で、G7としてこういった威圧をどのように抑止すべきでしょうか。当該抑止が失敗した場合の有事に備えた具体的な連携についてもG7として進めていくべきでしょうか。また、今回のG7外相会合において、台湾有事に関しどのような議論が交わされたか教えてください。

【林外務大臣】
 台湾海峡の平和と安定、これは、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安全、そして繁栄にとっても不可欠でありまして、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが、政府の従来から一貫した立場であります。
 今般のG7外相会合においても、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性、これを確認し、両岸問題の平和的解決を求めたところであります。
 「台湾有事」という仮定に基づく質問についてはお答えを差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、政府としては、台湾海峡の平和と安定の重要性について、中国側に直接しっかりと伝えるとともに、G7を始めとする国際社会とも緊密に連携して明確に発信してきておりまして、今後ともこのような外交努力を続けて参りたいと考えております。

【信濃毎日新聞 矢沢健太郎記者】
 大臣は、コロンナ外相とブリンケン長官のお誕生日に、ジョン・レノン愛用の軽井沢の万平ホテルのアップルパイで祝福されたと伺いました。軽井沢は、ジョン・レノン始め、政治家、文化人ら多くの人に選ばれてきた町です。この地、軽井沢での外相会合の開催が、討議の進展や共同声明に何か影響を及ぼされた点がありましたら伺いたいです。また、会期中のエピソードとか印象も交えて伺えればありがたいです。さらに、もう1点伺いたいんですけれども、大臣がこの期間中にピアノを弾かれる計画があるとも事前に伺いました。実際に弾かれたことがおありになったでしょうか。弾かれたら、何を弾かれたかを伺います。

【林外務大臣】
 この今お話をしていただいたように、16日は、ブリンケン米国務長官及びコロンナ仏外相の誕生日でありましたので、ワーキングディナーの最後に、軽井沢に縁のあるジョン・レノンが好んだことでも有名な「万平ホテル」のアップルパイを提供しつつ祝福をいたしました。これがどう「影響」があったかは分かりませんが、「栄養」はたくさんあったというふうに思っております。
 この豊かな自然がある軽井沢において、敷地内に我々だけという状況で、外務大臣の間の個人的な信頼関係、これはもちろんですが、率直な議論を通じてG7の「チーム」としての信頼関係も一層深めることができました。
 なお、私のピアノの演奏については、ピアノはございませんでしたので、そういうチャンスはございませんでした。

【AFP通信 サラ・フセイン記者】
 G7各国が対ウクライナ支援、外交的・軍事的支援及び対露制裁を実施してもなおウクライナでの戦争は継続しています。本日のコミュニケには制裁を含む新たな措置は盛り込まれていませんでした。これは、この紛争に影響を与えられるような新たな手段を模索する上での困難を示しているのでしょうか。また、この戦争を終結に導くためにG7に残された現実的な手段は何でしょうか。

【林外務大臣】
 ロシアはですね、引き続き国際法に違反をしまして、ウクライナに対する侵略を続けております。また、プーチン大統領は、併合したウクライナの一部地域、これは交渉の対象ではないとして、真剣な、真摯な対話に応じる姿勢、これを全く見せていない、こういう状況であります。
 残念ながら侵略が長期化をしておりますけれども、これを一日も早く終結させるためにはですね、140か国以上が賛成した累次の国連総会決議にもありますように、ロシアが即時に撤退して、侵略をやめる必要があると考えております。ロシアをそのような国際社会の声に応じさせるためにも、違法な侵略から自国を守っているウクライナを支援するとともに、ロシアへの制裁を実施していくことが重要であると考えております。
 今回のG7長野県軽井沢外相会合ではですね、G7として引き続き一致して厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を継続していくこと、そして、いわゆる「グローバル・サウス」と呼ばれる国々を含む国際社会全体が、この主権及び領土一体性の尊重といったですね、国際秩序の根幹となる原則を守るべきという認識を共有すべく、一層働きかけを行っていくということなどを確認をいたしました。
 日本は、本年のG7議長国として、G7広島サミットも念頭に、引き続き国際的な議論、これを積極的にリードしていきたいというふうに考えております。


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