議案審議経過情報

(注)下記の表で内容がない箇所は、現時点で情報が未定のもの、もしくは情報がないことが確定したものです。

項目 内容
議案提出者 小野泰輔 君外二名
衆議院審議時会派態度
衆議院審議時賛成会派
衆議院審議時反対会派
議案受理年月日
公布年月日

要項または提出時法律案

第二一一回
衆第九号
   発電に関する原子力の利用に係る責任を明確化するための改革の推進に関する法律案
目次
 第一章 総則(第一条-第四条)
 第二章 基本方針(第五条-第十条)
 附則
   第一章 総則
 (目的)
第一条 この法律は、発電に関する原子力の利用が我が国のエネルギー政策において重要であることに鑑み、発電に関する原子力の利用に係る国、地方公共団体及び原子力事業者(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第二条第三項に規定する原子力事業者をいう。以下同じ。)の果たすべき責任を明らかにするため、発電に関する原子力の利用に係る責任を明確化するための改革(以下「原発利用責任明確化改革」という。)について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進することを目的とする。
 (基本理念)
第二条 原発利用責任明確化改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
 一 発電に関する原子力の利用が、電気の安定供給において重要な役割を果たすものである一方で、事故が発生すれば国民の生命、身体及び財産への危害並びに国民生活及び国民経済への重大な影響を及ぼし得るものであることを踏まえ、発電に関する原子力の利用が国民の利益の観点からの総合的な判断を踏まえて行われるよう、国及び原子力事業者の責任が明確化されるようにすること。
 二 発電に関する原子力の利用に際しては、原子力事業所の周辺地域の住民等の理解を得ること及び原子力災害に対する対策が実効的に行われることが重要であることに鑑み、原子力事業所の周辺地域に係る地方公共団体の責任が明確化されるようにすること。
 三 放射性廃棄物の最終的な処分に現在の世代において道筋を付けることが発電に関する原子力の利用を将来においても継続するために避けることのできない国民的な課題であることに鑑み、放射性廃棄物の最終的な処分のために必要となる施設が、国及び地方公共団体の関与の下で確実に整備されるようにすること。
 (国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、原発利用責任明確化改革を総合的に推進する責務を有する。
 (改革の実施及び目標時期)
第四条 政府は、次章に定める基本方針に基づき、原発利用責任明確化改革を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
   第二章 基本方針
 (発電用原子炉の設置の許可等に関する手続等の見直し)
第五条 発電用原子炉(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下この条及び第十条第二号において「原子炉等規制法」という。)第二条第五項に規定する発電用原子炉をいう。以下同じ。)の設置に係る国及び地方公共団体の責任を明確にするため、発電用原子炉の設置の許可(原子炉等規制法第四十三条の三の五第一項の原子力規制委員会の許可をいう。以下同じ。)等に関する手続並びに国及び地方公共団体の関与の在り方については、次に掲げるところにより見直しを行うものとする。
 一 発電用原子炉の設置の許可及び重大事故後設置変更許可(原子炉等規制法第四十三条の三の八第一項の原子力規制委員会の許可のうち、各発電用原子炉について、我が国で重大事故(原子炉等規制法第十四条第一号に規定する重大事故をいう。第七条において同じ。)が発生した場合における当該重大事故の発生後最初のものをいう。)の申請に当たっては、特定都道府県(当該発電用原子炉に係る原子力災害に対する対策を重点的に実施すべき都道府県をいう。次号及び第四号において同じ。)の知事の同意を必要とするものとすること。
 二 特定都道府県の知事は、前号の同意を求められたときは、関係市町村長の意見を聴かなければならないものとすること。
 三 原子力規制委員会は、第一号の許可をするときは、あらかじめ、内閣総理大臣の同意を得なければならないものとすること。
 四 第一号の許可があったときは、同号の同意をした特定都道府県の知事が統括する都道府県は、当該同意に係る発電用原子炉の円滑な設置及び運営に資するよう、原子力事業者に対し、必要な支援を行うよう努めなければならないものとすること。
 (原子力事業者に対する援助等)
第六条 国は、原子力事業者に対し、原子力事業の安全の確保及び円滑な運営に資するため、技術的助言、情報の提供その他の援助を行うものとする。
2 原子力規制委員会は、発電用原子炉の設置の許可等について、手続の合理化、審査の効率化その他の審査期間の短縮に資する措置を講ずることにより、公表されている標準処理期間内に審査を終えるよう努めなければならないものとする。
 (発電用原子炉の運転の特例)
第七条 電気の安定供給を確保する観点から、当分の間、発電用原子炉のうち、その附属施設であってテロリズムによる重大事故等に対処するための機能を有する施設のみが完成していないものは、短期間で当該施設が完成することが確実であると見込まれると原子力規制委員会が認める場合は、運転を可能とするものとする。
 (原子力災害に関する地域防災計画の作成手続等の見直し)
第八条 原子力災害に対する対策が実効的に行われるようにするため、原子力災害に関する地域防災計画(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条第十号に規定する地域防災計画をいう。以下この条において同じ。)の作成及び実施に関する手続並びに国の関与の在り方については、次に掲げるところにより見直しを行うものとする。
 一 内閣総理大臣は、発電用原子炉が設置されている原子力事業所の区域をその区域に含む都道府県及び当該都道府県と相互に連携協力して原子力災害に対する対策を実施する必要がある都道府県(以下この号において「対象都道府県」という。)の地域ごとに、その地域内のそれぞれの原子力災害に関する地域防災計画の作成及び実施に関し必要な協議を行うため、内閣総理大臣、関係行政機関の長及び当該対象都道府県の知事その他関係者をもって構成する地域原子力防災協議会を組織するものとすること。この場合において、地域原子力防災協議会は、必要に応じて、関係市町村長、当該原子力事業所に係る原子力事業者又は学識経験者の意見を聴かなければならないものとすること。
 二 都道府県防災会議(災害対策基本法第十四条第一項の都道府県防災会議をいう。)、市町村防災会議(同法第十六条第一項の市町村防災会議をいい、これを設置しない市町村にあっては、当該市町村の長とする。)、都道府県防災会議の協議会(同法第十七条第一項の都道府県防災会議の協議会をいう。)又は市町村防災会議の協議会(同項の市町村防災会議の協議会をいう。)(以下この号において「都道府県防災会議等」という。)は、原子力災害に関する地域防災計画を作成したときは、原子力規制委員会に報告するものとするとともに、原子力規制委員会は、必要があると認めるときは、都道府県防災会議等に対し、原子力災害に関する地域防災計画の作成又は実施に関し必要な助言又は勧告をすることができるものとすること。
 (原子力損害が生じた場合における負担の在り方の見直し)
第九条 原子炉の運転等(原子力損害の賠償に関する法律第二条第一項に規定する原子炉の運転等をいう。第一号において同じ。)により原子力損害(同条第二項に規定する原子力損害をいう。以下この条において同じ。)が生じた場合における国及び原子力事業者の責任を明確化するため、原子力損害の賠償における国及び原子力事業者の負担の在り方について、次に掲げるところにより見直しを行うものとする。
 一 原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合において、原子力事業者が当該原子力損害の賠償に関し負担する金額の上限を設けるものとし、当該原子力損害について賠償すべき金額が当該上限を超える場合には、当該上限を超える金額は、国が負担するものとすること。
 二 政府による原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対する資金の交付の制度(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)第五十一条及び第六十八条の規定による資金の交付に係る制度をいう。)は、廃止するものとすること。
 (最終処分施設の整備に関する手続の見直し)
第十条 最終処分施設(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)第二条第十四項に規定する最終処分施設をいう。以下この条において同じ。)が確実に整備されるようにするため、最終処分施設の整備に関する手続について、次に掲げるところにより見直しを行うものとする。
 一 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律第四条第一項に規定する最終処分計画において、同法第二条第十項に規定する概要調査地区、同条第十一項に規定する精密調査地区及び同条第十二項に規定する最終処分施設建設地(次号において「概要調査地区等」という。)のそれぞれについて選定の工程表を定め、これに選定に係る期限を記載しなければならないものとすること。
 二 前号のそれぞれの期限内に概要調査地区等が選定されなかったときは、概要調査地区等が選定されるまでの間、発電用原子炉の設置の許可及び運転期間の延長の認可(原子炉等規制法第四十三条の三の三十二第二項の原子力規制委員会の認可をいう。)は行わないこととするとともに、設置の許可を受けた後運転を開始していない発電用原子炉については、運転をしてはならないものとすること。
 三 最終処分施設の整備に関する事業については、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)に定める手続により土地を収用し、又は使用することができる事業とするものとすること。
   附 則
 (施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
 (検討)
2 政府は、発電用原子炉に係る技術上の基準の強化等により原子力事業者に求められる経理的基礎及び技術的能力の水準が上昇し、更なる上昇が見込まれる中で、発電に関する原子力の利用を国の施策として確実に推進していく観点から、発電に関する原子力事業の在り方について、国有化も含め検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

     理 由
 発電に関する原子力の利用が我が国のエネルギー政策において重要であることに鑑み、発電に関する原子力の利用に係る国、地方公共団体及び原子力事業者の果たすべき責任を明らかにするため、発電に関する原子力の利用に係る責任を明確化するための改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。