外務省・新着情報

【林外務大臣】まず始めに、安倍元総理に対する銃撃、これは民主主義の根幹である選挙が行われている中で起きた卑劣な蛮行であり、決して許すことができません。最大限の厳しい言葉で非難をいたします。
G20外相会合の場や、二国間会談において議長国インドネシアを始め多くの国から私に対してお見舞いや哀悼の意が表明をされました。私としても大変残念であり、衷心によりご冥福を、お祈りを申し上げます。

 今回は、私自身にとって初めてのG20外相会合への出席となりました。この機会に、G20の場で日本としての考え方を明確に表明するとともに、各国の外務大臣との二国間会談等を実施し、充実した議論を交わすことができました。

 G20外相会合のセッション1では、「多国間主義の強化」をテーマに議論を行いました。私からは、ロシアによるウクライナ侵略は、国際社会が築き上げてきた国際秩序、また、多国間主義、こうしたものの基盤を破壊しようとするものであり、戦後の国際社会を支えてきた基本原則が、力による一方的な現状変更の試みにより脅かされている、そうした旨を指摘し、国際社会が結束してロシアの一連の行動には高い代償が伴う、ということを示すことが重要だと訴えました。この点については、出席した他の多くの国からも同様の指摘があったところであります。加えて、私からは、国連の機能強化に向けた取組や、気候変動や国際保健といった分野における日本の具体的な貢献に触れつつ、我々がこれらの喫緊の課題に真剣に取り組むことの重要性について指摘をしたところでございます。

 午後のセッション2では、「食料・エネルギー安全保障への取組」をテーマに議論が行われました。私からは、エネルギーと食料の価格高騰の原因、これはG7による制裁にあると、こうした主張は完全な誤りであり、このロシアによるウクライナ侵略、特にロシアが黒海を封鎖し、ウクライナからの穀物輸出を阻害していることが原因であり、G7による制裁は食料を対象としていない、こうしたことを説明したところでございます。この点についても、出席した他の多くの国から同様の指摘があったところであります。さらに私からは、これまでの支援に加えて、ウクライナの穀物貯蔵能力の向上に向けた支援やアフリカ・中東向けの食料支援、これを含むグローバルな食糧危機への対応のための約2億ドルの追加拠出を行うことを、紹介をいたしました。また、ウクライナからの穀物輸出のための国連やEUの取組に対する支持や評価、これを表明し、ロシアに対して黒海ルートによる穀物輸出の再開、これを直ちに認めるように強く求めたところでございます。エネルギーに関しては、現実的なエネルギー転換、これを加速化する重要性や、各国・地域の特性に応じてエネルギー・アクセスを確保していくことの重要性を、指摘をいたしました。

 また、会合終了後には、G20議長国インドネシアのルトノ外務大臣との会談を行い、今次会合におけるリーダーシップに対して敬意を表するとともに、日本として今後もG20バリサミットの成功に向けてインドネシアを支えていく旨を伝達し、先方からは謝意が表明されたところでございます。さらに今回の会合の機会に、アルゼンチン、オランダ、豪州、南ア、スペインの各外務大臣と会談をいたしまして、二国間関係や地域情勢、G20における協力等について有意義な意見交換を実施したところでございます。加えて、この機会に日米韓外相会合も実施をいたしました。日米韓外相会合では、ブリンケン国務長官、朴(パク)外交部長官との間で、核実験を始め、北朝鮮によるさらなる挑発行為への対応や北朝鮮の完全な非核化に向けた今後の対応についてすり合わせを行い、日米韓の安全保障協力を含む地域の抑止力強化、安保理での対応、外交的な取組、こういった観点から、日米韓で一層緊密に連携していくことで一致をいたしました。また、拉致問題について、改めて両長官から支持を得たところでございます。
私からは以上です。

質疑応答

【記者】日米韓の外相会合について二点お伺いしたいのですけれども、まず一点目はですね、今回の会合の中でですね、地域情勢についてどのように扱ったというところでですね、中国、インド太平洋、東シナ海、南シナ海、そういったようなところを扱ったのでしょうか。

【林外務大臣】はい、この日米韓外相会合ではですね、日米韓協力の戦略的な重要性というのを踏まえて、中国やウクライナ情勢を含む地域情勢や自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組について意見交換を行いました。またさらにですね、強靱なサプライチェーンの構築、また国際保健といったグローバルな課題についても意見交換を行ったところでございます。

【記者】二点目の質問も日米韓外相会合について、核実験について北の核実験、先ほど議論されたということだったんですけど、どのような議論がなされたのか、特記事項があればご紹介をお願いします。

【林外務大臣】はい、この先ほど申し上げた日米韓では、このやりとりをやってきたところでございます。今次の会合では、北朝鮮の核ミサイル活動について深刻な懸念を共有したうえで、核実験を始め北朝鮮による更なる挑発行為への対応、また北朝鮮の完全な非核化にむけた今後の対応、こうしたことについてすりあわせを行ったところでございます。
その上で地域の抑止力を一層強化する重要性について認識を共有し、日米韓の安全保障協力を推進していくことで一致をしたところでございます。北朝鮮による核ミサイル開発、これは我が国において国際社会の平和と安全を脅かすものでございまして、断じて容認できないと考えております。我が国としては引き続き、必要な情報収集・分析及び警戒監視、これに全力をあげる、上げていくと共に北朝鮮の完全な非核化に向けて、日米、日韓、日米韓、緊密に連携をしていく考えでございます。

【記者】今日のセッションの中でラブロフ外相と二人で話す機会だったり、やり取りをする場面はあったのか、という点と、もう一点はロシアの外相がいる国際会議に対面で出席されたのはウクライナ侵攻後初めてだと思うが、この出席してみての率直な感想や手応えがありましたら教えてください。

【林外務大臣】はい、このラブロフ・ロシア外相とのやり取りというのはございませんでした。また、G20ではですね、他国の発言内容については言及をしない事になっておりますので、詳細は控えたいと思いますが、ラブロフ外相は、ロシアの従来からの主張を繰り返していたということでございます。私からはロシアに関しては、先ほど述べたような日本の考えをしっかりと主張して、他の多くの国からも同様の発言があったということでございます。

【記者】昨日、今日のG20の関係で、昨日夕食会を欠席されたと思います。本日はロシアに反論するということで、退席をせず出席されたと思うんですけれども、G7で一致した対応ということで、改めてこうした対応を取られた理由を教えていただけますでしょうか。

【林外務大臣】はい、G7で一致してですね、対応していこう、ということで我々の主張をしっかりしていこうということにしたわけでございます。ラブロフ外相と我が国を含むG7の外務大臣が初めて対面で出席をした会合ということになりました。先ほど申し上げたとおり、日本の立場をですね、ラブロフ外相本人に明確に伝えることが出来たと考えております。またその他のG7をはじめとする多くの国がですね、ロシアの侵略への非難、またそれがもたらしている食料・エネルギーの価格高騰など、世界経済への悪影響について、発言をするところを直接きかせる場となったということでございまして、こうした点で一定の意義があったと考えております。

【記者】大臣冒頭おっしゃられた安倍元首相の件なんですけれども、同じ山口県の出身であると思いますが、大臣にとっては安倍元首相とはどういった存在でしたでしょうか。

【林外務大臣】先ほど申し上げたように、各国要人からの弔意が寄せられておりまして、安倍元総理が外交において残された大きな足跡というのを、この、残念なケースでございますが、感じることができました。また議長であるルトノ・インドネシア外務大臣からはですね、この銃撃の件について、議場の中でご紹介をいただいて、会合を代表してお見舞いの表明があったところでございます。私自身は、もう議員になる前から、安倍総理ご自身も議員になる前から、同じ地域ということで、知遇を得ることができておりました。また安倍内閣では、農水大臣を2回と文科大臣ということで、閣僚としてもお仕えをしてきましてですね、まだこの亡くなったということが信じられない、大きな穴が空いたようなですね、そういう大きな喪失感を感じております。

【記者】確認なんですけれども、G20の場で中国の王毅外相や韓国の朴振(パクチン)外相との立ち話ですとか接触というのはあったのでしょうか。

【林外務大臣】まず、中国の王毅外相とはそうしたやりとりはございませんでした。朴長官とは先ほど申し上げましたように日米韓の会合をやったわけですが、また午前中のG20外相会合でのセッションにおいて、短時間の立ち話を行っております。朴長官から、安倍元総理への銃撃事件に対して、深い遺憾と憂慮の意が述べられました。その後、日米韓外相会合の際には、哀心からの弔意をいただいたところでございます。

【記者】今の質問の関連なんですが、朴振(パクチン)外相とは歴史問題の話ですとか、今後の日韓の協議のあり方というような、そういったところのやりとりというのはなかったのでしょうか。

【林外務大臣】先ほど申し上げたようなこともありまして、多くのやりとりはなかったわけでございますが、私からは非常に厳しい日韓関係を健全な関係に戻すために、ご尽力いただきたいという旨は述べたところでございます。

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