議案審議経過情報

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項目 内容
議案提出者 中島克仁 君外十一名
衆議院審議時会派態度
衆議院審議時賛成会派
衆議院審議時反対会派
議案受理年月日
公布年月日

要項または提出時法律案

第二〇四回
衆第三八号
   家庭医制度の整備の推進に関する法律案
 (目的)
第一条 この法律は、地域における医療提供体制について、新型コロナウイルス感染症(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第七項第三号に掲げる新型コロナウイルス感染症をいう。)その他の国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症その他公衆衛生上の危害が発生した場合においても、家庭医により十分な医療が提供されるとともに、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化を踏まえ、家庭医により地域住民一人一人の心身の状況に応じた疾病の予防のための措置を中心とする医療が提供される体制を整備することが喫緊の課題となっていることに鑑み、家庭医制度の整備について、基本理念を定め、及び国の責務を明らかにするとともに、家庭医制度の整備の目標時期及びこれに関する施策の基本となる事項を定めることにより、家庭医制度の整備に関する施策を総合的に推進し、もって国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会の実現に資することを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「家庭医」とは、地域において日常的に地域住民の疾病その他のあらゆる健康上の問題に対応する医師として、次に掲げる業務を行うものをいう。
 一 地域の医療機関又は医療を受ける者の居宅等において、地域住民に対し、予防管理その他のプライマリ・ケアを行うこと。
 二 専門的な医療の提供を行う医療機関及び介護、福祉その他の地域包括ケアシステム(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第六十四号)第二条第一項に規定する地域包括ケアシステムをいう。次条第四号及び第十条において同じ。)に関係する機関との連携協力を確保するための連絡調整を行うこと。
2 この法律において「予防管理」とは、地域住民の健康相談及び健康管理(疾病の予防のための措置を含む。)をいう。
3 この法律において「プライマリ・ケア」とは、地域住民の疾病その他のあらゆる健康上の問題に対し、その初期の段階で適切な対応を行い、必要に応じて予防管理及び継続的な医療を総合的に提供することをいう。
4 この法律において「家庭医制度」とは、家庭医による医療の提供を中核とした地域における医療提供体制をいう。
 (基本理念)
第三条 家庭医制度の整備は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
 一 家庭医がプライマリ・ケアを適切に実施することができる環境を整備すること。
 二 家庭医が医療を受ける者の心身の状態その他の医療を受ける者に関する情報(第七条第二項及び第八条において「医療関連情報」という。)に基づく良質かつ適切な医療の提供を行うことができる環境を整備すること。
 三 家庭医が地域におけるプライマリ・ケアの提供を行う医療機関と専門的な医療の提供を行う医療機関との機能の分担及び相互の連携協力を確保するための連絡調整を行うことができる環境を整備することにより、地域において良質かつ適切な医療を提供するための体制を構築するとともに、医療を受ける者の利便を増進し、及び医療機関に勤務する医師(第九条において「勤務医」という。)の負担を軽減すること。
 四 家庭医は、地域包括ケアシステムの構築に資する役割を積極的に果たすものとし、介護、福祉その他の関係機関との相互の連携協力の確保を図ること。
 (国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、家庭医制度の整備に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
 (家庭医制度の整備の目標時期)
第五条 政府は、家庭医制度の整備に必要な法制上又は財政上の措置については、この法律の施行後三年を目途として講ずるものとする。
 (家庭医の認定等)
第六条 政府は、プライマリ・ケア等に関する研修を修了した医師が、家庭医として認定される制度を設けるものとする。
2 政府は、地域住民が自らのプライマリ・ケアを担う家庭医を登録することができる制度を設けるものとする。
3 政府は、地域住民による家庭医の登録が促進されるよう、プライマリ・ケアに関する啓発及び知識の普及その他の家庭医の登録の推進に必要な施策を講ずるものとする。
 (予防管理に係る保険給付等の検討)
第七条 政府は、家庭医による予防管理を推進するため、国民の予防管理に係る経済的負担の軽減が図られるよう、登録を受けた家庭医がその登録を行った者に対して行う予防管理を医療保険の保険給付の対象とすることについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、登録を受けた家庭医がその登録を行った者に対して行うプライマリ・ケア及びその者の医療関連情報を一元的かつ継続的に把握して行う医学的な指導に係る診療報酬及び財政上の措置の在り方を検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
 (診療録等のデータベースの整備及び活用の促進等)
第八条 政府は、家庭医が医療関連情報を一元的かつ継続的に把握して医学的な指導を行うことができるようにするとともに、家庭医と専門的な医療の提供を行う医療機関との連携等による医療の提供が適切かつ効率的なものとなるよう、次に掲げる措置を講ずるものとする。
 一 診療録その他の診療に関する諸記録に係るデータベースの整備及び各医療機関における当該データベースの活用の促進
 二 各医療機関が診療録その他の診療に関する諸記録を電磁的記録により作成するために必要な支援
2 政府は、前項の措置を講ずるに当たっては、医療関連情報には、医療を受ける者に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生ずるおそれのあるその者の心身の状態に関する情報が含まれており、その取扱いに特に配慮を要することを踏まえ、医療関連情報の保護のために必要な措置を講じなければならない。
 (家庭医と専門的な医療の提供を行う医療機関との連携等)
第九条 政府は、家庭医と専門的な医療の提供を行う医療機関との連携による医療を提供することにより、良質かつ適切な医療の継続的な提供の確保を図るとともに、勤務医の労働時間の短縮に資するよう、次に掲げる措置を講ずるものとする。
 一 地域におけるプライマリ・ケアの提供を行う医療機関と専門的な医療の提供を行う医療機関との機能の分担及び相互の連携協力の確保を通じた勤務医の時間外労働の限度時間の短縮その他の勤務医の負担を軽減するための措置
 二 地域における家庭医の確保、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者相互間の連携の強化その他地域における医療提供体制の確保を推進するための措置
 (在宅医療の推進等)
第十条 政府は、家庭医による在宅医療を推進するとともに、在宅医療及び介護が一体的に提供されるよう、家庭医と介護、福祉その他の地域包括ケアシステムに関係する機関との緊密な連携協力を確保するための措置その他必要な措置を講ずるものとする。
 (家庭医のオンライン診療の実施の在り方の検討)
第十一条 政府は、登録を受けた家庭医がその登録を行った者に対して行うオンライン診療(映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の医師の診断が可能であると認められる方法により、医師が即時に行う診療をいう。)の実施の在り方を検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。

     理 由
 健康長寿社会の実現に資するよう、新型コロナウイルス感染症その他の国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症その他公衆衛生上の危害が発生した場合においても、家庭医により十分な医療が提供されるとともに、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化を踏まえ、家庭医により地域住民一人一人の心身の状況に応じた疾病の予防のための措置を中心とする医療が提供される体制を整備することが喫緊の課題となっていることに鑑み、家庭医制度の整備に関する施策を総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。