2020年10月8日

電動車いすの利用の促進は、高齢者の移動・活動を促すだけでなく、自動車運転による事故の減少などにもつながることから、高齢化の進む日本において、重要な役割を果たし得るものです。経済産業省は、電動車いすについて、普及の促進と安全性の周知も含めた取組を行います。

1.事業の背景・目的

電動車いすは、高齢者が一人で自由に外出できるツールの一つですが、高齢者が日常的に利用することが自然であるとの認識が低い状況にあり、社会における理解の増進や受容性の向上が、電動車いすの普及に向けた課題です。

本事業では、地域の高齢者に電動車いすを3週間貸与し、電動車いすの利用が高齢者の活動に与える効果や、地域で活用する上での課題等を把握するとともに、安全な利用に関する周知を行います。

  • 「のろーよ!デンドー車いす」のロゴ

2.全国5地域で電動車いすを導入する実証を開始します。

横浜市・調布市・つくば市・京丹後市・静岡市の全5都市において、電動車いすの導入実証を10月12日(月曜日)から順次スタートします。

一部の地域では、電動車いすの利便性向上を目指した「電動さんぽマップ」を作成し、より地域に根差した電動車いすの普及を目指します。

各地域での実証の概要

茨城県つくば市 千現(郊外都市)、宝陽台(郊外戸建て団地)
つくば駅を中心に設置されたペデストリアンデッキの活用が期待できる「千現」と、高齢化率50%を超えるオールドニュータウン「宝陽台」という2つの地区で実証。車社会の地域で免許返納後の移動手段として期待。
実証期間:10月12日(月曜日)~11月1日(日曜日)
京都府京丹後市 宇川地域(過疎地)
地域に唯一のスーパーが撤退し、買い物へのニーズに対応するため移動販売や朝市などを定期的に実施している。住宅が密集しており、狭い道や坂道が多く車が侵入しにくい。
実証期間:10月19日(月曜日)~11月8日(日曜日)
東京都調布市 多摩川住宅(郊外型集合住宅団地)
建設から50年余りが経過し居住者の高齢化が進む大規模団地。建替えを機会とした地区の再生に取り組んでおり、高齢者の安全な移動手段の確保が求められている。
実証期間:10月19日(月曜日)~11月8日(日曜日)
静岡県静岡市 大川地区(中山間地域)
生活する上で自動車が手放せない地域。免許返納した方はご家族や集落支援員による移動支援により生活している状況。
実証期間:10月19日(月曜日)~11月8日(日曜日)
神奈川県横浜市 上郷ネオポリス(郊外型戸建て団地)
実証地域は開発から40年以上経過した大規模戸建住宅地。住民と産官学が連携し、安全で安心に住み続けられるまちを目指し、地域内の移動手段の確保など様々な課題解決に取り組んでいる。
実証期間:10月30日(金曜日)~11月20日(金曜日)

実証事業 事前説明会の様子

  • 説明会の様子の画像1
  • 説明会の様子の画像2

 

【参考1】時代背景と電動車いすの可能性(桜美林大学大学院教授 鈴木隆雄先生)

サマリー

  • 外出は足腰の衰えを防ぐだけでなく、脳裏に刺激を与えるため、認知機能の活性化、心肺機能の向上、筋肉や骨の維持などの点からも非常に重要。
  • 外出へのハードルを下げるためであれば、電動車いすなどのパーソナルモビリティを上手に活用することも有効。

 

【参考2】高齢者の外出及び移動に関する調査

調査結果のサマリー

  • 外出が減少したと回答した高齢者が67.3%に及ぶ一方、80%以上が「一人で自由にお出かけを楽しみたい」と回答。自由な外出に対するニーズは高い状況。
  • コミュニティへ参加する人の割合及びコミュニティ参加に伴う活動時間(外出して自宅に戻るまでの時間)は「電動車いす利用者」が「非利用者」を上回っており、電動車いす利用者は、コニュミティ参加への積極的な姿勢が伺える。
  • 「電動車いす利用者」は“電動車いすは便利”というイメージを持つ割合が高く、「非利用者」は“筋力が低下しそう”というイメージを持つ割合が高い。

※高齢者の外出及び移動に関する実態を把握するため、全国の65歳以上の男女450名とその子世代(40~50代)150名の計600名を対象に「高齢者の移動に関する意識調査」を2020年9月7日(月曜日)~9月9日(水曜日)に実施。

担当

商務・サービスグループ医療・福祉機器産業室長 廣瀬
担当者:影山、平野、佐藤

電話:03-3501-1511(内線4051)
03-3501-1562(直通)
03-3501-6794(FAX)