(令和2年9月15日(火曜日)11時35分 於:本省会見室)

外務大臣としての振り返り

【NHK 山本記者】昨日行われた自民党の総裁選挙で、菅房長官が新総裁に選出されましたけど、率直に受け止めとですね、新総裁にどのようなことを期待されるか、あと、大臣の、外務大臣としての1年間を振り返ってのご所感などがあればお願いします。

【茂木外務大臣】昨日の自民党の総裁選、地方票そして議員票、それぞれ菅官房長官、大きな支持を得て、自民党の総裁に就任をされたわけであります。こういった大きな支持、これを背景に、明日には新内閣の発足ということになると思いますが、コロナ対策、そして景気の回復、更には積極的な外交の推進等々、これまで安倍政権で進めてきた様々な取組を更に前に進め、残っている課題もあります。そういった課題に、全力で当たり、国民の負託に応えていく、こういったことが何より重要だと、こんなふうに思っております。
 外務大臣としての1年、率直に言っていいメンバー、いいスタッフに恵まれたと思っておりまして、あっという間の1年だったな、こんなふうに思っています。結構楽しく、また刺激的に仕事をさせていただいた、こんなふうに思っているところでありますが、この1年間の成果というより、この1年、日本の外務大臣として様々な会談であったりとか、会議に臨んできて感じたこととして、この7年8か月、安倍総理が「地球儀を俯瞰する外交」と、これを積極的に展開をしてきた。その成果として、国際社会での日本の存在感が圧倒的に高まり、また様々な課題について、日本への期待、国際社会からの期待、各国からの期待が大幅に増加している、こんなふうに感じたところであります。
 就任当初、私(大臣)は、この「地球儀を俯瞰する外交」、これを更に前に進めるために、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を全力で推進していきたい、こういうお話をさせていただきました。先週、ASEANの関連の様々な会合がありました。意見が合わないといいますか、それぞれ議論になるテーマが多かったと思いますが、日本の包容力と、これはASEANはじめ多くの国に理解をしていただいたんじゃないかなと、受け入れていただいたんじゃないかなと、こんなふうにも感じております。
 確か就任にあたって5点申し上げたと、そんなふうに思っております、重点課題として。一つは日本外交の基軸であります日米同盟、これを更に深化させて、その上で拉致、核、ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案に対応をしっかり進めていく。そして、中国・韓国・ロシアを始めとする近隣諸国外交を行っていく。また、緊迫する中東情勢への対応、更には新たな共通ルール作りを日本が主導する外交、そして地球規模課題への対応ということでありまして、そういった外交を進めていきたい、そんなふうに思っておりまして、こういった中で、かなり進んだことと懸案として残っていることは率直に言ってあると、そんなふうに思っておりまして、日米同盟で言いますと、昨年今年と、トランプ大統領、安倍総理、首脳の往来というのも続きました。そういった中で、今年は日米安保60周年を迎え、更には日米英貿易協定もこの1月に発効するという形でありまして、日米同盟、様々な意味で様々な分野で、深化をすることができたんじゃないか。日本外交の基軸、これはかつてなく強いものになった、こんなふうに今考えているところであります。
 一方、総理も拉致問題、自分の任期中に解決できない、これに対して、本当に断腸の思いというか、これは残念な思いというのを述べられておりました。そして、日露の平和条約交渉、昨年の9月の国連総会から始まって、名古屋でそしてモスクワで、かなり時間をかけて協議を進めてきたところでありますが、今年に入って、コロナの世界的な拡大もあり、直接ラヴロフ外相とお会いして、更に話を前に進めることができなかった、こういう問題も残っているところでありまして、進んだ部分はあったし、まだ課題として次の政権に持ち越したという部分もあると思っております。
 また、今年に入ってからの様々な活動で言いますと、やはりコロナ対策これが最大の課題となったわけでありまして、機動的な感染症の危険情報の発出であったり、そのレベルの引き上げ、そして水際対策、更には武漢でのオペレーションから始まりまして、1万2,000人を超える邦人の帰国と、各在外公館の協力がありまして実現することができました。
 更には、コロナに関する様々な医療支援、物資支援、さらには医療体制が脆弱な国の医療体制そのものの強化、こういうふうに、これにつながる途上国支援についても、かつてないスピードで実行できたのではないかなと、こんなふうに考えているところであります。
 また、この新型コロナ拡大防止と両立する形で、経済の再生を進めると、そのための人の往来の再開、これにつきましても、おそらくどの国よりも意識的にこの問題について取り組みまして、すでに7か国・地域とレジデンストラックを開始いたしております。シンガポールとの間ではビジネストラックの開始に合意していたしておりまして、着実とこういった往来の再開に向けた取組も進んでいるのではないかなと思っているところであります。
 経済・通商分野におきましては、元々、私(大臣)はTPPを担当してきましたが、TPP11の発効、更には日EU・EPAの発効に続きまして、今年の1月には日米貿易協定、これの発効にこぎつけることができました。なかなか去年の国会、大変な国会だったなと、こんなふうに振り返っております。そして、つい先週は、日英の包括的経済連携協定についても、大筋合意にこぎつけることができたわけであります。
 こういった通商交渉を通じまして、これは単に物の移動だけではなくて、様々な投資のルールであったりとか、知財の保護であったりとか、更にはデジタルデータの分野と、こういったことでTPP、日EU・EPAより高い、ハイレベルのルール、こういったものを作ることができたのではないかなと思っておりまして、世界的に今、保護主義というものが台頭している中で、日本が自由で公正な貿易体制の維持、更には新しいルール作り、こういったものを主導できたのではないかなと、またこれからも主導していかなければいけない、こんなふうに思っているところであります。
 今、新型コロナ、世界的な拡大がまだ続いております。また、米中対立、こういった問題もありまして、国際社会は大きな変動期にあると考えております。ポスト・コロナの国際秩序、こういったものを考えますと、感染防止対策と、人や物の自由な移動度をどう両立させていくか。またデジタル化が進む中で、昨年の大阪G20でも打ち出したように、大阪トラックのような形で、データ流通分野でのルール、新しいルールをどう確立し、また世界に普及させていくか、こういう課題もあるわけであります。それと同時に、先ほど申し上げた開かれた自由貿易体制をどう維持していくのか、更には気候変動問題含め、世界が直面している諸課題は多いわけでありまして、ポスト・コロナのルール作り、体制作りにおいても、日本が引き続き指導力を発揮し、また国際社会の期待にも応えていきたい、こんなふうに考えております。

WTO事務局長選

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて質問)

 大臣は貿易交渉について言及されたので、関連の質問をさせていただきます。現在、世界貿易機関(WTO)の事務局長選が行われており、サウジアラビアを含む複数国が候補者を出しました。これら候補者のうち、日本の立場を最も反映する候補者は誰でしょうか。また、大臣は貿易交渉に精通していらっしゃることで知られていますが、新事務局長の主要な任務は、どのように日本の国益に沿ったものになるとお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて質問)

 WTOの事務局長選、まさに今週、第1ラウンドが行われまして、まず、8名の候補者が5名に絞られると承知をいたしております。日本として、今、特定の候補、どの方と、決めているわけではありません。WTOは機能不全に陥っている上級委員会の問題であったり、新型コロナで重要性が高まっているデジタル経済のルール作りなど、改革が待ったなしであります。新しい事務局長には、これら山積する課題に取り組み、WTO改革を着実に前進させることが求められていると思っております。
 以前もお話ししましたが、三つの資質というのが必要だと思っておりまして、その一つ、それが主要国間の利害を調整する能力があることと、今の現状を考えると、この能力は極めて私は重要だと、重視をしております。それから二つ目に、多角的貿易体制の維持・強化に積極的に貢献できること、そして三つ目は、組織の透明性をきちんと確保できること。これらの条件を満たす候補が選ばれるよう、関係国とも引き続き連携をしていきたいと思います。