(令和2年8月4日(火曜日)11時56分 於:本省会見室)

冒頭発言

大臣の訪英

【茂木外務大臣】まず、私の方から一点、ご報告があります。
 明日8月5日から予定では8月7日までということですが、英国を訪問いたします。
 今回の訪問は、新型コロナの世界的拡大以降、日本の閣僚としては、初めての海外出張となります。
 英国では、トラス国際貿易大臣との間で、新たな日英間の経済パートナーシップの早期交渉妥結に向けた詰めの協議を行うことを予定いたしております。日英間の円滑なビジネスの継続のために、日EU・EPAに代わる新たな日英間の貿易・投資の枠組みを、迅速に作ることは必要不可欠であります。
 英国のEU離脱後の移行期間が本年末に終了することを踏まえ、集中的に詰めの交渉、協議を行いたいと思います。
 またカウンターパートでありますラーブ外相との間で、「自由で開かれたインド太平洋」や安保・防衛協力をはじめとする幅広い日英協力、更には新型コロナ対策や、地域情勢について意見交換を行う予定であります。私からは以上です。

大臣の訪英

【共同通信 高尾記者】大臣から今ご紹介あった、イギリス訪問から帰国後の防疫措置のあり方についてお伺いします。
 政府は新型コロナウイルス感染症阻止の観点から、海外から日本への入国者に対しその14日間の自主隔離を要請しております。
 今回、大臣、そして随行する職員の皆さんは、どのように対応されるのでしょうか、これまでのその検討状況とあわせてお考えをお聞かせください。

【茂木外務大臣】今回の英国訪問に先立ちまして、感染防止対策を徹底するとの観点から、政府要人等の公務外国訪問に際しての感染症対策の措置について、政府部内で調整を行ってきました。
 その主な内容は、まずチャーター機などの専用の航空機を使用した、必要最小限の人数での現地への移動、そして、現地では一般市民との接触の極力回避など、新型コロナの感染防止策の徹底、そしてまたチャーター機で帰ってくるわけでありますが、専用機で帰ってくるわけでありますが、その上で、日本帰国時のPCR検査等の実施、さらに帰国後2週間の公共交通機関の不使用、健康観察の継続と感染リスクを考慮した慎重な行動を前提として、今後必要な外交活動等を行っていく考えであります。
 こうした措置、これ欧米の主要国をはじめ、グローバル・スタンダードになっていると認識をいたしております。
 まず今般のですね、私の英国訪問に際して実施いたしますが、当面の間、政府要人等の公務外国訪問においても同様の措置をとることを考えております。
 また、隔離がある意味、健康観察はしっかりしますが、免除される随行者の範囲については、感染拡大対策を徹底して私と行動を共にする、行き来ももちろんでありますが、それから現地滞在においても、そういった対象者、具体的には局長以上であったりとか、秘書官、警護官等想定しているところであります。

【読売新聞 大藪記者】今のイギリスとの交渉に関してお伺いいたします。
 先ほど、大臣、トラス大臣と詰めの交渉を行うとおっしゃいました。具体的に、これまで事務的に積み上げてきたっていうのがあるかと思いますが、どのようなテーマが今残っていて、どう交渉に臨んでいきたいかっていう部分をお聞かせください。

【茂木外務大臣】これまでの事務レベルの交渉、トラス大臣との間で、日英経済パートナーシップの交渉を開始するとしてから2ヶ月が経ったわけでありますけれど、おそらく20数章で構成されることとなると思いますが、かなりの論点についてですね、日英の事務方で、議論の詰め、行われているところであります。
 当然残った論点というのは出てくるわけでありまして、そこを閣僚レベルで交渉してですね、どうにか妥結をすると、これがまさに経済連携交渉でありますから、残っている分野はあります。そして、どういうアプローチをしたいかと私なりの考えもあります。
 ただこれはまさに交渉でありますから、申し上げることはできません。

外国人入国問題

【ラジオ・フランス 西村記者】外国人入国について質問させていただきます。日本にあるインターナショナルスクール、国際学校の教師の数人は入国が認められたことが取材でわかりました。再入国ではなく、新規入国です。欧州の国から来日した方々です。日本の水際対策に基づいて、入国拒否の原則がありますが、こういった業務理由での例外があるのでしょうか。もしあれば、判断基準を教えていただきたいと思います。

【茂木外務大臣】外国人学校、主に、初等・中等教育を行っている機関でありまして、子どもの教育を受ける権利の確保と、こういう観点から、入国拒否の例外であります「特段の事情」があるものとして、日本国内では、適切な代替人材の格好が困難である人材の入国・再入国を認めることになっておりまして、そういった観点から、外国人学校の教員およびその家族については関係省庁とも調整をして、在留資格保持者の再入国に加えて、新規赴任者の入国についても認めているところであります。

大臣の訪英

【日本経済新聞 加藤記者】英国訪問に関連してお伺いします。今回の外遊、新型コロナウイルス拡大後、初の閣僚の概要ということで、大臣のお考えとしては、今回の訪英を今後の対面の外交の再開のきっかけとしたいというお考えなのかという点と、帰国後、一部報道で、東南アジア訪問されるという、そういった報道もありますけども、現状でのご予定をお願いします。

【茂木外務大臣】まず、今、各国の動向を見ていただきますと、首脳間、そしてあの外相間の交流であったりとか、様々の会議と、こういったものが再開し始められているところであります。全体的に、感染拡大の防止と両立する形での、しっかりした措置を取りながら行うということになってくると思いますが、日本としても、今、様々な外交上の課題あるわけでありまして、冒頭申し上げた、日英の経済パートナーシップの締結、これはお尻が決まっている話であります。そして、これができなければ、日英間のビジネスにも大きな影響が出る。そしてまた、こういった国益をかけた、まさに、難しい交渉、おそらく電話でやるのは無理だと思います。少なくとも私の能力は超えています。実際に直接会って、交渉すると、それも何時間かかる交渉になると思います。かなり長時間の交渉になると思いますけれど、それで妥結点を見つけたい、合意に達したい、こんなふうに感じているところでありますが、案件というのはこれだけではなくて、例えば人の往来の再開に向けて、具体的なスキーム、これを感染が収束しつつある国から始めるということで、まず4か国について、その対象といたしました。
 そして既に、タイ・ベトナムとの間では、「レジデンストラック」スタートしたわけでありますが、さらに、東アジアであったりとか、東南アジア、こういった国々12か国との間で、今後、協議を行っていくということでありまして、そういった協議を加速する上でも、閣僚間の協議というのは必要になってまいります。
 更に言いますと、最近の東アジア、そして東シナ海、南シナ海、様々な、我が国を取り巻く、そして、アジア地域を取り巻きます環境変化にどうやって対応していくか、こういったことについても、東南アジアの国々と様々な意見交換をする、摺り合わせをする、こういったことは、極めて重要になってくるのではないかなと考えております。
 もちろん、それ以外にも、私以外の閣僚、更にはですね、首脳レベルの外交というのも再開しつつある状況にあるわけでありますから、それぞれ必要な会議であったりとか、交渉、それに臨んでいただくということになると思いますが、まず第1弾として私の方が英国を訪問し、そして訪問に当たっての、様々な感染拡大防止措置、帰国後も含めたこういったものをまずは取らさせていただくと、そんなふうに思っています。

ODA事業プロサバンナ

【TBS 守川記者】モザンビークでのODA事業についてお伺いいたします。同国で実施されてきましたODA事業「プロサバンナ」を、どのような理由で中止決定されたんでしょうか、お伺いいたします。

【茂木外務大臣】この「プロサバンナ」の事業、モザンビーク北部を対象とした小農の生産性向上と、これを目指した農業開発事業でありまして、事業の方は大きく進展をしたと思っております。先般、モザンビーク政府から日本の本事業への支援、これはモザンビークの農業政策に十分活かせるようになったことから本事業完了したいという申し出があったわけであります。これを受けて日・モザンビーク両国の間で事業の完了の確認をいたしました。本事業の目的を果たしたと、それで完了ということであります。

【TBS 守川記者】今回ですね、2011年度から10年間で35億円を費やされた、非常に評価の高い事業でありますが、今回、ここで中止を決断したということで、どのように総括、教訓というふうに感じておられますでしょうか。

【茂木外務大臣】今申し上げたとおりで、十分な成果が上がってきたと。中止ではありません。完了です。途中で止めたのではありません。十分な成果が終わったから完了したということです。

香港立法会選挙

【NHK 山本記者】2点お願いしたいんですけれども、1点目に香港についてなんですが、先週、香港政府が立法会の議員選挙を1年延期をすると発表しました。香港政府はですね、新型コロナウイルスの感染拡大を理由としていまして、政治的な意図はないとしているんですけれども、こうした対応について日本政府の考えをお願いいたします。

【茂木外務大臣】選挙情勢全体も含めてお答えをしたいと思うんですが、我が国は、香港の立法会選挙の一部の候補者の立候補資格無効の決定、そして、ご指摘のありました選挙の延期の決定が、香港の「一国二制度」に与える影響を含めまして、昨今の香港、立法会選挙をめぐる情勢について重大な懸念を有しております。
 香港は我が国にとって、緊密な経済関係および人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして、「一国二制度」の下、自由で開かれた体制が維持され、香港が民主的、安定的に発展していくことが、重要であるというのは、我が国の一貫した立場であります。自由で公正な選挙を遅滞なく実施をすることは、その重要な基礎でありまして、我が国は関係国とも緊密に連携しつつ、香港立法会選挙をめぐる情勢について引き続き注視していきたいと思っております。

尖閣諸島(漁船団の侵入予告)

【NHK 山本記者】尖閣諸島についてなんですけれども、周辺での中国漁船の航行に関して、先日、一部報道で、中国側が日本政府に対しまして、多数の漁船による領海侵入を予告するような主張が伝えられたという報道がありました。日本側には、航行制止を要求する資格はないと伝えてきたともされていますけど、事実関係をお願いします。

【茂木外務大臣】そういって予告を受けたという事実はございません。ありません。いずれにしても政府としては、現下の安全保障環境において、様々な事態に適切に対処することができるように、必要な体制を構築いたしております。引き続き関連動向を注視するとともに、関係省庁が緊密に連携しつつ、情勢に応じて対応に万全を期してまいりたいと思っております。

核兵器禁止条約

【共同通信 高尾記者】核兵器禁止条約についてお伺いします。広島市や被爆者などから、政府に締結を求める声は根強く、その条約発効に必要な批准は残り10か国・地域となりました。こうした状況を踏まえ、改めて核兵器禁止条約に対する政府の立場をお聞かせください。また核保有国と非保有国の対立がある中、政府としてどのように橋渡ししていくのか、この点もあわせてお願いします。

【茂木外務大臣】個別の条約の問題と日本のスタンスと、ここは分けて考えていただく必要があると思いますが、唯一の戦争被爆国として核兵器の非人道性を知る我が国は、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組みをリードする使命を有していると考えております。今年、原爆の投下から75年を迎えるということで、これ、我が国の確固たる方針でありまして、その方針に揺るぎはない。またそれをしっかりと確認をしなければいけないと思っております。
 こういった中で、核兵器禁止条約が目指す核廃絶というゴールと、これは、我が国も共有しております。一方で何度も繰り返してきておりますが、同条約は現状では核兵器国のみならず、核の脅威にさらされている非核兵器国からも支持を得られていない、こういう状況にあるわけでありまして、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、抑止力の維持・強化を含めて、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に現実的に核軍縮を前進させる道筋を追求していくと、こういったことが、必要であると思っておりますし、なかなかそういった中で、各国の足並みが揃わない、では、各国が共通してやれることは何なんだろうか、こういう共通の基盤、こういったものを築いていくということも、極めて重要なことであると、そんなふうに考えておりまして、昨年のG20の名古屋外相会談の際にも、NPDIの外相会合、こういったものを開かさせていただいたわけでありますが、そういったフォローアップと、そういったものも、今回というか今後もしっかりやっていきたい、こんなふうに考えております。

旧朝鮮半島出身労働者問題(公示送達効力発生)

【東亜日報 キム記者】日韓関係について伺いたいんですが、今日、徴用工問題で、日本製鉄が、今後、財産の差し押さえに向けた手続きに対しては、直ちに抗告を行っていくとしています。これについて大臣どう受け止めておられますか。そして今後、韓国との協議、外相会談の想定もされているんですか、お聞きしたいです。

【茂木外務大臣】まず強調したいのは、旧朝鮮半島出身労働者問題に関わります韓国大法院判決及び関連する司法手続き、これは明確な国際法違反であります。その上で、資産の差し押さえイコール現金化ということでありませんが、差し押さえ命令は、本日の午前0時をもって公示送達の効力が発生していると、このように承知をいたしております。今後、仮に現金化ということになりますと、深刻な状態を招くので、避けなければならない。このことは、先般の日韓外相会談を含めて、日本側から繰り返し強く指摘しているところでありまして、今後とも韓国側に早期解決策を示すように求めていきたいと思っております。日本企業の正当な経済活動、保護することは極めて政府として重要だと考えておりまして、引き続き関係企業と緊密に連絡を取りつつ、どういうシナリオがあるのかと、それを含めて、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応していきたいと思います。