(令和2年6月26日(金曜日)11時57分 於:本省会見室)

イージス・アショアの配備断念(日露関係,日米関係)

【NHK 渡辺記者】日露関係についてちょっとお伺いしたいと思っております。茂木大臣が交渉担当になられてから,ミュンヘンでの日露外相会談を含めて建設的なちょっと雰囲気にこれまでに比べてなってきていると思うんですけれども,そうした中で常にロシア側が,外相会談それから2プラス2含めて,イージス・アショアの問題というのを交渉の過程で,平和条約交渉の障害になっているということを繰り返し言ってきていると思うんですけれども,今回のこの河野大臣が自民党の部会で言いましたけれども,断念すると,イージス・アショアをですね。これが,そういった意味で,日露の平和条約交渉にどういった影響を与えると大臣として考えていらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】今回の決定,これが与える影響,これは日露だけではなくて,予断をもってお答えすることは差し控えたいと思っておりまして,平和条約交渉,これについては政府として,領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針,何らの変更もありませんので,引き続き粘り強く交渉に取り組んでいきたいと思っております。
 その上で,昨年来ラヴロフ外務大臣と様々な議論を本当に率直に,どういった形でお互いの立場と歩み寄れるかと,こういう議論もしているところでありますが,当然その平和条約を締結する,こういう交渉の途中の段階において,安全保障の問題を議論しないということはないと思います。安全保障の問題をやはり乗り越えるというのも,一つ大きな課題だと思っておりまして,そういった議論もしっかり進めていきたいと思っています。

【NHK 渡辺記者】関連ですけれども,そうしますと大臣としましては,このイージス・アショアは断念ということで,日本の周辺諸国を含めてそういうふうに認知している中で,今後その日米関係,こういう今イージス・アショアの断念という段階には来ていますけれども,大臣としては日米関係を踏まえながらの対露交渉だと思うのですが,それはどのようにして,この状況を日本の置かれた状況というものを説明して,平和条約交渉を進めていきたいのか,その辺の周辺諸国との関係をどう取り組まれるのか,日本の安全保障の状況を踏まえて,大臣のお考えをちょっと,方針を聞かせてください。

【茂木外務大臣】多分今のご質問というのは二つのパートに分かれておりまして,まず我が国を取り巻きます安全保障環境,一層厳しさを増す中で,国民の生命・財産を守ること,これは政府の重大な責務でありまして,その必要性というのは更に高まっている。これまで同盟国であります米国との様々な協力によりまして,切れ目のない体制というものを構築してきたところであります。
 今年は安保条約の60周年を迎えて,日米同盟,かつてなく強固でありまして,今回の決定がこのような米国との協力に影響を与えるとは考えておりません。我が国として引き続き米国と緊密に連携をして,日米同盟の抑止力・対処力を一層強化をしていきたいと思っております。
 一方で例えばロシアとの交渉,まさにこれは交渉の中身に関わる問題でありまして,私が今ここで発言すること,これは交渉に影響を与える可能性もありますので,具体的にそれについて,どう話すとかどういう方針で臨む,このことについては控えさせていただきたいと思います。

日本のIWC脱退及び商業捕鯨再開1年

【産経新聞 原川記者】日本が国際捕鯨取締条約から脱退して,またそれに伴った商業捕鯨を再開して間もなく1年になりますので,この機会に伺いたいのですけれども,政府が一昨年末に,国際捕鯨取締条約から脱退を表明した際には,諸外国から,遺憾の表明とかという形で,否定的な言説が目立ったと思うんですけれども,今年,大臣この上半期,かなりこの電話会談を中心に,かなりの数の外相会談をやってこられたと思うのですけれども,その中で日本の商業捕鯨に関して否定的な意見が述べられたり,あるいはIWCへの復帰を求めるような意見表明があったりとか,そういったことはどこかの国からありましたら,ちょっとご紹介いただけないでしょうか。

【茂木外務大臣】コロナが世界的に拡大を始めて以降,50回以上,電話会談等々を各国の外相等々と行っておりますが,先方から我が国の捕鯨に関する懸念であったりですとか,IWCについて言及があったことはございません。

日露平和条約交渉

【読売新聞 阿部記者】日露関係についてお伺いします。先ほど大臣からもお話ありましたけれども,ウラジオストクで9月に予定されていた東方経済フォーラムが今年は中止となりました。外相間・首脳間の対面での会談というのがなかなか見通せない中で,日露関係をどう前進させていくか,方針をお聞かせください。

【茂木外務大臣】例えば,東方経済フォーラムについてもそうでありますが,決して日露どちらかの,何らかの政治的な事情によって,会談等が延期をされたりとか,また,私とラヴロフ外相の間の外相会談についても,お互いに,できれば早くやりたいと,次回は日本に来てほしい,コロナの状況を見ながらということで,まさにコロナの動向がどう収束するかと,こういうことにかかっている問題だ,こんなふうに考えているところでありまして,先月28日に,7日の首脳電話会談を踏まえてラヴロフ外相との間で,電話会談を行ったわけでありますが,平和条約交渉,北方四島における共同経済活動,四島交流事業,地域交流年等の日露間の協議や協力についても,しっかり進めていくために,事務レベルの協議を早期に再開するということで一致をしております。
 そしてその一致を見てすぐに,(今月)4日,5日に次官級の協議であったりとか,局長級の作業部会というものが行われている。交流年の開会式についても開催することは極めて重要だと,状況を見ながらできるだけ早期に開催したいということで,一致を見ているところでありまして,まさにこういったコロナの状況を見ながら,きちんと交渉を進めていく。更には,日露間の協力を進めていくということについては,日露間の関係に齟齬はない,そういう影響が出ていると思っていません。

日露平和条約交渉(露憲法改正)

【読売新聞 阿部記者】すみません,もう一点お伺いします。ロシアでは7月1日に憲法改正の全国投票が行われます。改憲案には領土の割譲禁止も盛り込まれていますけれども,改憲が実現した場合の,北方領土交渉への影響について,大臣のご所見をお伺いします。

【茂木外務大臣】憲法改正の動向について関心を持って注視をしておりまして,4月22日に予定されていた投票が,新型コロナの影響で7月1日に延期をされたと,このように承知をしておりますが,日露平和交渉にどうこれが影響するかと,まさにこれから交渉でありますから,予断を持ってコメントすることは差し控えたいと思いますが,憲法改正の動きについて関心を持っている,日本として,このことはしっかり伝えてあります。

イージス・アショアの配備断念(日露関係)

【NHK 渡辺記者】大臣,度々,申し訳ございません。ちょっと先ほどの関連なんですけども,いろいろと過去の記録を見ますと,ラヴロフ外相からですね,繰り返しイージス・アショアの問題っていうのが,日本がどんなに説明しても取り上げてくるという状況が続いていました。前任の大臣のときも含めまして,そうしますと,そうしたその要因が一つ,これでなくなったと言えるのか,それによってその交渉の妨げというかロシア側が理由として毎回出してきたものがなくなったっていうことは,やっぱり交渉にとってはプラスの要素になりうるのかどうか,その辺はちょっとどう考えていますか。

【茂木外務大臣】これまで私(大臣)も,様々な外交上の交渉,携わってまいりました。難しい交渉もあったと思って振り返っておりますけれど,一つひとつの要素については,楽観的でも悲観的でもありません。

WTO事務局長選(韓国候補の擁立)

【産経新聞 原川記者】WTOのですね,次期事務局長選挙ですけど,アゼベド事務局長が8月末に退任されるということで,いくつかの立候補,お隣の韓国も含めてですね,立候補表明というのが出ていますけれども,これに対して政府の対応なんですけれども,例えば,独自に日本としても誰か事務局長候補に擁立するのかどうかということも含めて,日本の対応をどう考えているのかというのをお聞かせください。

【茂木外務大臣】今,対応については検討中ということでありますけれど,おそらく次期の事務局長に求められる資質,いろいろあると思いますが,このところのWTOをめぐります様々な動きというものを見ていますと,私(大臣)は主要国の利害を調整する能力,これは極めて重要だと,こんなふうに思っております。
 同時に,その多角的貿易体制の維持・強化に積極的に貢献できるかどうか,そして組織の透明性・説明責任を十分に果たせる人物であるかどうか等々も重要な要素だと。そういうことも考えながら,総合的に対応,他国の動向等も見ながら,また,主要国とも連携しながら対応していきたいと思います。