(令和2年3月19日(木曜日)15時57分 於:本省会見室)

冒頭発言

追加的な水際対策措置

【茂木外務大臣】冒頭私(大臣)の方からの一つ。現在欧州を含めた諸外国においても,新型コロナウイルス間の感染が急速に拡大しておりまして,これらに対する措置として,例えばEU諸国もEU域外の第三国からの入域を一時的に制限することで合意をしております。
 こうした中,我が国としても,世界的な感染拡大に対処する各国と足並みを揃えつつ,昨日の新型コロナウイルス感染症対策本部における議論,及び本日の閣議了解に基づきます新たな措置として,21日午前0時から4月末日までの間,EU加盟国や英国等の欧州諸国,エジプト,イランの日本国大使館,総領事館で発給された一次査証,及び数次査証の効力を停止することにしました。またこれらの国に対します査証免除措置の適用を順次停止することとしました。
 また昨日,様々な状況を総合的に勘案し,全世界を対象に,感染症危険情報レベル1(十分注意してください)を発出し,併せて国民の皆さんに対して,地域を問わず,海外への渡航の是非,又はその延期の改めての検討について,注意喚起を行ったところであります。
 各国に対しましては,こうした我が国の考えを丁寧に説明しつつ,引き続き感染症拡大の防止に向けて,各国政府とも緊密に意思疎通をしていきたいと思っております。

新型コロナウイルス(各国外相との電話会談)

【NHK 山本記者】新型コロナの関連で,各国との電話会談について伺いますけれども,昨日のイタリアとカナダと電話会談をされました。今日以降ですね,どういった国と会談する予定があるのかということと,今のビザのお話もありましたけれども,一連の会談でどういった話を大臣の方からされていきたいとお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】今日ですね,夕刻,ドイツの外務大臣,そしてEUの外相と電話会談を行う予定であります。また米国のポンペオ国務長官,さらには日中韓の外相電話会談についても調整中であります。
 基本的には,一つは今,世界的に喫緊の課題でありますコロナウイルス感染症の拡大防止に向けて,各国が連携していくことが極めて重要だと,こういったことを確認をすると。また,この問題も含めて,今世界が直面する課題について,来週のG7外相電話会談で,しっかり協力していこうと,またそういった姿勢を対外的にもしっかり発信していこうと,こういったことを確認したいと思っております。

新型コロナウイルス(全世界への感染症危険情報レベル1の発出)

【読売新聞 阿部記者】感染症危険情報について伺います。先ほど大臣からも全世界にレベル1を発出されたとありましたけれども,その内容を見ると,国民に海外渡航の是非ですとか,延期の必要性について検討を求めています。レベル2に近い内容かと思いますけれども,レベル2とせず,全世界をレベル1とした理由,その狙いについてお伺いします。

【茂木外務大臣】世界保健機関によりますと,3月18日現在,新型コロナウイルス感染症の感染国,150か国以上,感染者累計で18万人近くに上っておりまして,感染,これは世界的な広がりを見せているわけであります。11日にもWHOは,新型コロナウイルス感染症がパンデミックと形容されると評価をしているところであります。
 このような状況の中で,感染者がいるかいないか,これを問わず,出入国規制や検疫措置がとられている国もありまして,これらの措置が,今後更に強化される可能性もあるわけであります。また移動制限の問題もありまして,邦人旅行者等が行動の制約を受けるといった事例であったりとか,航空機も,急になんていうか減便になったりとか,また運行停止とか,こういったこともあり得るわけでありまして,また更に言いますと,海外に旅行に行ってる方が,旅行中に感染すると,こういう事例も見られるところであります。
 こういったことを総合的に勘案して,全世界に対して危険情報,感染症レベル1(十分注意をしてください),これを発出いたしましたが,同時にこういった状況を正しく国民の皆さんにお伝えする,こういった意味から,海外への渡航の是非,またはその延期の改めての検討,こういったことも注意喚起をしたところであります。

新型コロナウイルス(米中対立)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 米中関係について伺います。現在,中国と米国は新型コロナウイルスの感染拡大の責任を巡り,非難し合っています。米国政府関係者は,情報流出を防ぎ,感染拡大に対する国際的取組を遅らせた責任は中国にあると発言しています。その一方で,中国は米軍が中国にウイルスを持ち込んだと非難しています。この対立に関する日本の立場を教えてください。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 新型コロナウイルス,これをめぐって,これは米中だけではなくて,様々な発言が行われているわけであります。この新型コロナウイルスの感染症については,中国で発生したことは明らかでありますが,その発生源や感染ルートも含め,今の各国,及び国際機関において様々な研究や分析が行われている,このように承知をしております。今必要なのは国際協調だと。また,国際的に様々な形で連携した措置をとっていくことが,このコロナウイルスの世界的な拡大を防止することに繋がっていくと,こんなふうに考えておりまして,そういった中でも,米中が安定的な関係構築を進めていくことは,地域と国際社会の平和と安定の観点から重要であると考えております。

【共同通信 高尾記者】今の質問とちょっと関連するんですが,この新型コロナウイルスの名称・呼称についてお伺いします。アメリカのトランプ政権幹部が「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と呼んだのに対して,中国側が反発していると。トランプ大統領も,そのウイルスは中国から来たのだから全く正しい呼称だと正当化しています。でも一方で,その地域名をつけた呼称はその差別的だったり,その偏見を助長したりするという見方もあります。こうした表現自体が適切なのかどうかについて,大臣のご見解をお聞かせください。

【茂木外務大臣】先ほどの,何というか,お答えのとおりだと思っております。
 私(大臣)として,そういったことによってお互いの立場の違いを際立たせる,これが決していいことではない。呼び方どうですかと,どっちが正しいですか,こういったことで,そういうことを煽ることは,私(大臣)はしたくないと思います。

新型コロナウイルス(国連制裁を受けている国への人道支援)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 イラン,北朝鮮,シリア等の制裁を受けている国は,コロナウイルスの感染拡大に直面する上で,人道支援が必要かもしれません。実際,北朝鮮やシリアにおける感染の報道はあまりありませんが,日本やイランに関する報道は多数あります。その上で,このような国々,特にイランにおけるウイルスの感染拡大への対応に関する国際的取組や支援について,及びイランが国際通貨基金及び世界銀行からの支援を要請しているという報道について,日本政府の受け止めを教えてください。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 グローバルな人の動きが盛んな時代においては,それぞれの国地域の取組だけではやはり不十分だと,国際的な連携が極めて重要であると思っております。こういった認識の下で,我が国として,イラン及び周辺国における支援として,WHOであったり,ユニセフなど,国際機関に対して総額150億円の拠出,これを決定をしたところであります。
 国連の制裁を受けている国,こういった国々に対する人道支援,これはまさに,例えば拠出をしたそれぞれの国際機関において判断をされるものでありますけれど,例えば支援の内容,様々な国連の制裁決議等々も関わっているわけでありまして,それに抵触しない形で,仮に行われるとしたら,行われるものだと考えております。

新型コロナウイルス(感染症危険情報)

【NHK 高島記者】感染症危険情報に関連して,今,東南アジアのマレーシア,シンガポールなどでも感染者が増えていると思うんですが,こうした国々に対してレベル2に上げるようなことは,近々考えていますでしょうか。

【茂木外務大臣】少なくとも今の段階で上げていない。これは,例えば感染者の数だけではなくて,1万人当たりの感染者の比率であったり,更には移動制限,これがどこまでかかっているか。そしてまた現地での医療体制がどうであるか等々,総合的に勘案して判断をいたしております。ご案内のように,日々状況は変わっているわけでありまして,今出している危険情報,これは固定されたものでありません。各国状況によって,適時適切に見直しを行っていきたいと思います。

【朝日新聞 太田記者】感染症危険情報のことなんですけれども,先ほどのレベル1のご説明,理由の説明いただきましたけれども,その中で,お聞きしていると,日本にウイルスが持ちこまれるリスクを防ぐというよりは,邦人が海外渡航先で急に帰れなくなるとか,そういったリスクへの懸念の方が理由としては強いんでしょうか。

【茂木外務大臣】先ほど,いくつかの理由を述べたと思うんですけれど,大きく,あまりグルーピングするのはあれなんですけど,聞いていただいたとおりなんですけれども,一つは,感染者の有無を問わず,出入国規制であったりとか,検疫措置がとられている国もありまして,それらの措置がそれぞれの国で,今後強化される可能性もあるということであります。
 そうなりますと例えば,どこかの国に行ったという形で,行ったのは良いんだけれど,空港まで行ったら入国を拒否されると。もしくは旅行の日程は4日間しかないのに,2週間の待機を,観察措置を課せられると,こういったことでは,渡航の目的自身が達成できないということになるんだと思います。
 それから,移動の制限ということで言いますと,現地に行ってから行動の制約がとられると,もしくは着いたのはいいんですけれど,帰りの便が全く運行停止になって,帰れなくなってしまう。こういった移動の制限等々について,注意をする必要がある。更には,例えばエジプトからの入国について,規制をすることになりましたが,かなりこの1-2週間の帰国者,日本人の帰国者で見ておりますと,エジプトでナイル川のクルーズと,これに参加をされた方が感染されているケースも多いわけでありまして,そういった旅行中に感染をするということについても注意をして欲しい。また,そういった人たちが日本に戻ってくると,感染して戻ってくるとなりましたら,またそれが感染拡大にも繋がる。こういった大きく三つぐらいの理由,それを総合して,レベルの引き上げを行ったということです。