令和2年3月19日

1 3月19日(現地時間同日),マーシャル諸島共和国の首都マジュロにおいて,我が方齋藤法雄駐マーシャル特命全権大使と先方キャステン・ネッド・ネムラ外務貿易大臣(Hon. Casten Ned Nemra, Minister of Foreign Affairs and Trade of the Republic of the Marshall Islands)との間で,以下2件の無償資金協力(供与額計8.21億円)に関する書簡の交換が行われました。

2 対象案件の概要はそれぞれ以下のとおりです。

(1)海上保安訓練・司令センター建設計画(供与額:4.5億円)
マーシャル諸島共和国は,29の環礁と5つの島からなる国であり,広大な排他的経済水域(EEZ)を有し,海上における安定・安全の確保が観光業及び漁業の発展に直結します。しかし,同国の海上取締能力等は極めて脆弱でEEZ内での違法漁業や麻薬密輸等の事案が頻発していることや,同国の海域の適切な管理及び捜索救助等の海洋安全確保が十分でないことから,海上保安能力強化が喫緊の課題となっています。
 このような状況の中,同国唯一の海上保安機関であるマーシャル海上警察が利用している海上保安訓練・司令センターは,築約40年の施設で老朽化が進むとともに,施設のスペース不足が顕著であり,約40名の職員が本施設を効率的に利用する妨げとなっています。このことから,マーシャル海上警察が今後活動を維持・発展するためには,より大きな施設への建て替えが必要な状況にあります。
    この協力では,マーシャル政府に対し,海上保安訓練・司令センターの建設及びトレーニング関連機材(モニター,防犯カメラ等)を供与することにより,海上保安能力の向上を図り,もって同国を含むインド太平洋の社会・経済発展及び平和と安定の確保に寄与することが期待されます。

(2)電力供給安定化等のための支援(経済社会開発計画)(供与額:3.71億円)
マーシャル諸島共和国は,海外市場から遠く離れた広大な海域に,狭小な29の環礁と5つの島が点在しており,国際的な石油価格の変動を受けやすい上,その特有の狭小性,隔絶性及び遠隔性から輸送コストが上乗せされ,慢性的に燃料価格が高価となっています。マーシャル政府は,燃料が高価なディーゼル発電以外の電力供給を確保するため,再生可能エネルギーの比率向上を図っているものの,依然として,当地では電力供給の殆どをディーゼル発電に依存する現状があり,エネルギー安全保障上の脆弱性を抱えています。
 このような背景を抱えるなか,昨年8月以降デング熱が大流行し,国家非常事態宣言が発令されました。デング熱の流行沈静化に向けた政府取組が長期化し,国家財源の不足が懸念される事態となっており,経済活動の停滞に繋がる基本的ライフライン,特に発電燃料調達への支障が危惧されています。
 この協力では,マーシャル政府に対し,発電用の燃油を供与し,同国の電力供給安定化を図ることで,同国の経済社会開発に寄与することが期待されます。

3 上記2つの協力は,2018年5月18日及び19日に福島県いわき市において開催された第8回太平洋・島サミットにおいて,我が国政府が表明した支援の柱である「自由で開かれた持続可能な海洋」及び「強靱かつ持続可能な発展の基盤強化」に資する協力(PDF)別ウィンドウで開くとして実施するものです。

[参考1]マーシャル諸島共和国基礎データ
 マーシャル諸島共和国は,面積180平方キロメートル(霞が浦とほぼ同じ),人口約5.8万人(2018年,世界銀行),一人当たりの国民総所得(GNI)は4,740米ドル(2018年,世界銀行)。

[参考2]第8回太平洋・島サミット

(1)第8回太平洋・島サミット(PALM8)は2018年5月18日及び19日に福島県いわき市において開催。16の太平洋島嶼国・地域,オーストラリア及びニュージーランドの首脳級等が出席。マーシャルからはハイネ大統領(当時)が参加した。

(2)我が国は,PALM8において,(ア)自由で開かれた持続可能な海洋,(イ)強靱かつ持続可能な発展の基盤強化,(ウ)人的交流・往来の活性化の3つを柱として,今後3年間でこれまでの実績も踏まえた,従来同様の,しっかりとした開発協力の実施及び成長と繁栄の基盤である人材の育成・交流の一層の強化を表明した。