2019年6月14日

経済産業省及びIEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)は、水素協議会(Hydrogen Council)との連携の下、「G20 IEA 水素レポートローンチイベント」を開催しました。イベントでは、日本政府からの要請を受けて作成されたIEA初となる水素レポートを発表しました。

1. 概要・目的

水素は、エネルギー供給構造を多様化させるとともに、大幅な低炭素化を実現するポテンシャルを有するため、エネルギー転換・脱炭素化のキーテクノロジーとして世界各国から大きな注目を集めています。
こうした中、水素に対するグローバルな投資を喚起し、水素エネルギーを世界に普及させるためには、コストや将来見通しなどの信頼できるデータが不可欠です。このため、IEAは日本政府からの要請に基づき、水素に関する初のレポートを作成しました。
これを受け、G20エネルギー・環境大臣会合の前日である6月14日に軽井沢で水素レポートローンチイベントを開催しました。本イベントでは、IEAファティ・ビロル事務局長が水素レポート「The Future of Hydrogen」を発表するとともに、世耕経済産業大臣から水素レポートへの期待やグローバルな水素社会実現に向けた日本政府の取組、水素協議会(※)ブノワ・ポチエ会長から産業界を代表して水素レポートへの期待や、民間企業の取組等について発表を行いました。

※ 水素協議会(Hydrogen council):2017年1月、気候変動やエネルギーセキュリティ等の課題に対する解決手段の一つとして期待される水素に関し、参加企業(現在60社)の共通ビジョンをグローバルに提示していくことを目的として発足。


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2. IEAによる水素レポートのポイント

水素の現状を定量的に分析し、将来展望や提言をまとめたもの。

 水素の将来像

  1. 多様なエネルギー課題の解決策となる
  2. あらゆるエネルギー源から製造でき、ガスとして輸送し、電気・化学原料・輸送燃料の多用途に使える
  3. 再エネ電気を長期間貯蔵でき、長距離の輸送が可能

克服すべき課題

  1. 低炭素なエネルギーからの製造コストは高い
  2. インフラの開発が遅れており、普及の足かせとなっている
  3. 現在は化石燃料からの製造が太宗を占めてCO2排出量が多い
  4. 規制がクリーンな水素産業の発展を制限している

政策提言

  1. 将来の期待・意図を明確化するため、野心的かつ具体的な長期水素戦略を策定すること
  2. 水素のコスト低減に向け、クリーンな水素の商用需要を喚起すること
  3. 新しい水素に関する投資を増やすため、投資リスク低減の仕組みを導入すること
  4. コスト低減に向けた技術開発促進のため、R&Dに対する支援を行うこと
  5. 投資障壁を解消するため、不必要な規制の撤廃、基準のハーモナイゼーションを進めること
  6. 長期目標を達成するため、定期的に進捗レビューを実施すること
  7. 次の10年を見据え、現在のモメンタムを維持・拡大すべく、①産業分野での水素利用、②既存のガスインフラでの水素利用、③トラック、バス等向け利用、④水素の国際貿易に向けた輸送ルートの確立の、4つの分野に集中的に取り組むこと

担当

資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課長 水素・燃料電池戦略室長 江澤
担当者:牟田、田場
電話:03-3501-1511(内線 4551~3)
03-3580-2492(直通)
03-3501-1365(FAX)