平成26年3月14日

平成25年における「人権侵犯事件」の状況について(概要)
              ~人権侵害に対する法務省の人権擁護機関の取組~
                                   
 法務省の人権擁護機関(以下「人権擁護機関」という。)は,人権侵犯事件調査処理規程(平成16年法務省訓令第2号,以下「処理規程」という。)に基づき,人権侵害を受けた者からの申告等を端緒に人権侵害による被害の救済に努めている。
 平成25年(暦年)における人権侵犯事件の取組状況は,以下のとおりである。
○新規救済手続開始件数 22,437件 (対前年比2.2%減少)
○処理件数               22,172件 (対前年比2.3%減少)

 【新規救済手続開始件数からみた特徴】
 (1) インターネット上の人権侵害情報に係る人権侵犯事件の増加
                957件(対前年比42.6%増加)
 (2) 教育職員による体罰に関する人権侵犯事件の増加
                887件(対前年比139.7%増加)
 (3) 学校におけるいじめに関する人権侵犯事件の増加
              4,034件(対前年比1.2%増加)

1 人権侵犯事件数(開始件数・処理件数)の動向

(1) 開始件数(図1
     新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数は22,437件であり,対前年比で493件(2.2%)減少した。
     (内訳)
        ◆ 公務員等の職務執行に関する人権侵犯事件数が6,875件(対前年比591件 (9.4%)増加)
         (注)・学校におけるいじめに関するもの 4,034件(対前年比1.2%増加)
            ・教育職員による体罰 887件(対前年比139.7%増加)
        ◆ 私人等に関する人権侵犯事件数が15,562件(対前年比1,084件(6.5%)減少)
 (2)  処理件数(図2
     処理した人権侵犯事件数は22,172件であり,対前年比で522件(2.3%)減少した。
      (内訳)
        ◆ 公務員等の職務執行に関する人権侵犯事件数が6,619件(対前年比539件(8.9%)増加)
        ◆ 私人等に関する人権侵犯事件数が15,553件(対前年比1,061件(6.4%)減少)
     処理内訳別にみると,措置の内容としては,「援助」(注1)が20,663件(全処理件数の93.2%)で最も多く,次いで「要請」(注2)が401件(同1.8%),「説示」(注3)が244件(同1.1%),「調整」(注4)が50件(同0.2%),となっている。
      このほか,「措置猶予」(注5)が24件(同0.1%),「侵犯事実不存在」が31件(同0.1%),「侵犯事実不明確」が802件(同3.6%),「啓発」(注6)を行ったものが137件(同0.6%)ある。
    (注1)法律上の助言を行ったり,関係行政機関や関係ある公私の団体等を紹介すること。
    (注2)被害の救済又は予防について実効的な対応ができる者に対し必要な措置を執るよう求めること。
    (注3)相手方の反省を促し善処を求めるため事理を説き示すこと。
    (注4)当事者間の関係調整を行うこと。
    (注5)事案の軽重や反省の程度,懲戒の有無等を考慮して措置を講じないこと。
    (注6)事件の関係者や地域社会に対し,人権尊重に対する理解を深めるための働きかけを行うこと。
 (3)  特別事件
   新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数のうち,特別事件(処理規程第22条に規定されている重大な人権侵犯事件)の件数は2,062件で,前年に比べて260件(14.4%)増加した。

2 人権侵犯事件の類型別新規救済手続開始件数の動向

(1) 暴行・虐待事案(図3
 暴行・虐待事案は4,452件(対前年比10.5%減少)で,全事件類型別の中で最も多く全事件数の19.8%を占め,依然として憂慮すべき状況で推移している。
 このうち,いわゆる社会的に弱い立場にあるとされる女性,児童,高齢者,障害者を被害者とする事件の割合が85.9%(3,824件)と非常に高い割合を占めている。
(2) 住居・生活の安全関係事案(図3
 住居・生活の安全関係事案は3,265件(対前年比7.8%減少)で,全事件数の14.6%を占めている。
 このうち,相隣間における騒音等の相隣関係から生じる事件の割合が53.7%(1,752件)と半数を占めている。
(3) 強制・強要事案(図3
 強制・強要事案(注)は2,894件(対前年比5.4%減少)で,全事件数の12.9%を占めている。
 (注) 強制・強要事案とは,家庭内における強制・強要やセクシュアル・ハラスメント,ストーカー行為等を含む。
(4) プライバシー関係事案(図3
  プライバシー関係事案は1,773件(対前年比1.9%増加)で,全事件数の7.9%を占めている。

3 特徴的な動向

(1)  インターネット上の人権侵害情報に係る人権侵犯事件の増加(図8) 
     インターネットの普及により様々な情報に容易にアクセスできるようになった反面,インターネット上の人権侵害情報に係る人権侵犯事件は,ここ数年高い水準で推移している。
   平成25年中に新規に開始した同事件の事件数は,前年の671件を上回る957件(42.6%増加)で,このうち,プライバシー侵害事案が600件,名誉毀損事案が342件となっており,この両事案で全体の98.4%を占めている。なお,この両事案のうち,当機関がプロバイダ等に対し削除要請を行ったものは136件である。
   具体的には,何者かが被害者になりすまし,インターネットに被害者の顔写真等を掲載した事案について,法務局から所定のフォームにより削除要請を行った事案などがある(別添1事例3)。
(2) 教育職員による体罰に関する人権侵犯事件の増加(図9
   教育職員による体罰に関する人権侵犯事件は887件(対前年比139.7%増加)で,昨年に引き続き過去最高(注1)となった。
   具体的には,体罰を行ったとされる教育職員等に対する調査の結果,体罰が認められ,当該職員に対する「説示」等を行った事案などがある(別添1事例8)。
(3) 学校におけるいじめに関する人権侵犯事件の増加(図10
   学校におけるいじめ(注2)に関する人権侵犯事件数は,4,034件(対前年比1.2%増加)で,昨年に引き続き過去最高(注1)となった。
     具体的には,いじめを受けている被害児童の母親と学校との信頼関係の回復を目指して,両者の関係を調整した事案などがある。(別添1事例9
(4)  児童に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件の増加(図11)(※(1)の事件は含まない)
     児童に対する暴行・虐待事案に関する人権侵犯事件数は911件(対前年比4.4%増加)で,昨年に引き続き過去最高(注1)となった。
     具体的には,継父から性的虐待を受けている被害者について,中学校や児童相談所などの関係機関と連携し,被害者を速やかに一時保護した事案などがある。(別添1事例1

4 添付資料

 (1) 平成25年中に法務省の人権擁護機関が救済措置を講じた具体的事例(別添1
 (2) 人権侵犯事件統計資料(平成25年)(別添2)〔PDF〕
 (3) 「女性の人権ホットライン」統計資料(平成16年~25年)(別添3)〔PDF〕
 (4)  「子どもの人権110番」統計資料(同上)(別添4)〔PDF〕
 (5)  近時の社会状況に関連したトピックス(別添5)〔PDF〕
 (6) 東日本大震災に関する法務省の人権擁護機関の取組状況について(別添6)〔PDF〕
(注1)平成13年から実施している現行の統計報告要領において,過去最高になる。
(注2)学校におけるいじめに関する人権侵犯事件とは,学校側のいじめ防止のための対応が適切か否かをとらえ,学校長等を相手方とするものであって,いじめを行ったとされる児童・生徒を相手方とするものではない。

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