平成30年1月12日(金)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 私から1件報告があります。法務省においては,真の難民の迅速かつ確実な保護を推進するため,難民認定制度の運用について更なる見直しを行うこととしました。近年急増する難民認定申請者の中には,我が国での就労等を目的として,明らかに難民とは認められないような申立てを行う申請者が相当数存在しています。法務省では,平成27年9月に難民認定制度の運用を見直し,濫用・誤用的な申請への対策を採っていますが,依然として,難民認定申請が急増しており,真の難民の迅速な保護に支障が生じる事態となっています。そこで,今回の見直しでは,庇護が必要な申請者については,更なる配慮を行うとともに,濫用・誤用的な申請については,これまでよりも厳格な対応を行うこととし,難民認定制度の適正化を推進してまいりたいと考えています。

戸籍法に関する質疑について

【記者】
 最高裁判事に就任した宮崎裕子さんが,9日の記者会見で,最高裁判事として初めて結婚前の旧姓を使うと明らかにし,「選択的夫婦別姓なら全く問題ない。可能な限り選択肢を用意することが重要だと思う。」と述べました。また,ソフトウエア開発会社の社長らが,日本人同士の結婚で夫婦別姓を選択できないのは戸籍法の欠陥で憲法違反だとして,損害賠償を国に求めて東京地裁に提訴しています。戸籍法の改正についての大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 最高裁判事の記者会見での御発言及びソフトウエア開発会社の社長らから訴えが提起されたとの報道については承知しています。最高裁判事の御発言については,申し上げる立場ではありませんのでお答えは差し控えさせていただきたいと思います。また個別の訴訟についてもお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として,戸籍制度は,民法に従って定められる親族的身分関係を登録公証する制度であり,日本人同士の夫婦の氏については,民法に基づき定められることとなっています。選択的夫婦別氏制度を導入することについては,我が国の家族の在り方に深く関わる事柄であり,国民の皆様の間にも様々な意見があることから,平成27年12月16日の最高裁判決における指摘や国民的な議論の動向を踏まえながら,慎重に対応する必要があるものと考えています。したがって,お尋ねの戸籍法の改正についても,慎重に対応する必要があると考えています。

難民認定制度に関する質疑について

【記者】
 新たな難民認定制度の運用について,一昨年の難民認定申請数は1万人を超え,今年1月から9月までで1万4,000人に達するとされています。この運用で濫用・誤用的な申請がどれくらい抑えられると,大臣はお考えでしょうか。

【大臣】
 今回難民認定制度の更なる見直しとして新たな取り組みをするわけですが,難民認定申請数は,平成29年9月までで1万4,000人に達し,平成28年に比べて1.8倍と大幅に増加しています。申請者の中には,借金などの明らかに難民とは認められないような申し立てを行うもの,難民と認定しない処分を受けたにもかかわらず申請を繰り返すもの,また,より良い条件で就労することを目的として実習先から失踪した実習生による申請などが相当数存在しています。平成22年3月に,正規在留者が難民認定申請した場合に,申請から6か月経過後,一律に就労を許可する運用に変更したことが申請数急増の主な要因と考えており,就労を目的とする申請者によって制度が濫用・誤用されていると分析しています。依然として申請者が急増している結果,未処理数が急増し,処理期間も長期化していますので,今回の見直しでは,その成果がしっかりと上がるように,これまでの様々な分析の結果を踏まえ,理由も明らかに分かるところの判断を早い時期にして,そして真に庇護が必要な難民に対して,しっかりとした適正な対応ができるように全力を尽くしてまいりたいと思っています。具体的にどのくらいの削減率かについては,運用開始からしばらく経ってから成果を客観的に評価してまいりたいと思っています。

【記者】
 今回大幅に見直すということですが,もともと日本では難民認定者数は非常に少なく,認定率が非常に低い中で,国内外でも日本は難民に冷たいのではないかという評判もあるのですが,更に大幅に制限することになると,そういった評判が逆に広がるのではないかという指摘もあります。大臣は司法外交を積極的に進められている中で,海外に対する訴えはどのようにしていくお考えでしょうか。

【大臣】
 今回の見直しですが,そもそも難民の受入れを消極的にしていくという趣旨の話ではなく,真に庇護すべき難民からの適正な難民申請に基づく手続にしっかりと対応していくという本旨であり,消極的な方向に御理解されることにはならないと思っています。手続の運用については,十分御理解をしていただくことができるように,今日このような形でも発言をさせていただきました。また,これから様々な司法外交の展開の中でも,この問題についてそのように申しあげたいと思っています。

【記者】
 難民申請は,難民条約上認められた申請者による権利でもあり,今回のケースでいえば,申請中に在留制限が掛かり得るということで,手続の途中から強制収容など身体的勾留を伴う厳しい対応が予定されていると思いますが,そういった対応が申請者の権利を侵害しているという認識はありますか。

【大臣】
 真に庇護すべき難民や条約難民の方を適正に庇護することの趣旨をしっかりと反映することができるように,今回の運用の見直しをしています。つまり申請の手続の第一段階で明らかに制度そのものを適正に行使していない事例について,なるべく早い時期に判断をするとともに,真に庇護が必要な方について早い段階で判断していくことになると思います。

【記者】
 そういった批判は当たらないということですか。

【大臣】
 そういった批判は全く当たらないと思います。

(以上)