平成30年7月3日(火曜日)
10時00分~10時15分
於:記者会見室

冒頭発言

エネルギー基本計画

おはようございます。私から2点申し上げます。
1点目ですが、エネルギー基本計画についてであります。昨年8月に検討に着手をして、対外オープンな場に異なる立場を採用する世界の有識者をお招きするなど、精力的に議論を進めて、5月16日に素案を示させていただいたところです。その後、関係省庁との調整、パブリックコメントの聴取などを踏まえて、本日閣議決定に至ることになりました。その内容についてです。まず2030年に向けては、エネルギーミックスの確実な実現に向けた取組の更なる強化を行います。具体的には3E+Sの原則のもと、再エネは主力電源とするためコスト低減の取組強化、系統制約の克服、調整力の確保に取り組むということ、また原子力は依存度を可能な限り低減する方針のもと、安全最優先の再稼働や使用済燃料対策など、必要な対応を着実に進めること、化石燃料については自主開発促進や高効率火力の有効活用、災害リスクへの対応強化を図ることとしております。また、2050年に向けてはパリ協定発効に見られる脱炭素化への世界的なモメンタムを踏まえてエネルギー転換、脱炭素化に向けた挑戦を掲げ、あらゆる選択肢の可能性を追求して、官民を挙げて総力戦で対応していくこととしています。今後、このエネルギー基本計画に基づいて全力を挙げてエネルギー政策に取り組んでまいります。

産業革新機構の新体制

2点目は、5月に通常国会で成立をいたしました改正産業競争力強化法では、産業革新機構について投資機能の強化に向けた新たなガバナンスの仕組みを採用し、新たな体制を立ち上げることとなっております。法律の施行は今年の秋を予定しているわけでありますが、新しい仕組みを担う体制を早期に始動するため、新経営陣の中核となる人事を先だって公表させていただくことといたしました。具体的には、取締役会議長に、現在、株式会社小松製作所相談役の坂根正弘さん、そして代表取締役社長に現在PwCインターナショナルシニア・グローバル・アドバイザーの田中正明さん、そして代表取締役副社長に現在スカイライン・ベンチャーズ社マネージング・ディレクターの金子恭規さん、そして代表取締役専務に現在、エゴンゼンダー東京オフィスパートナーの佃秀昭さんをそれぞれ迎えることを内定しております。正式には臨時株主総会等を経て就任することとなります。新しいガバナンスの仕組みのもと、オープンイノベーションの推進という政策目的を達成しながら受託者責任を果たして国民へのリターンを最大化すべく、国内外へのより機動的な投資を行うことを目指します。先ほど申し上げました4人の方は、金融分野の専門家、投資分野の専門家としてのディシプリンにのっとってグローバルスタンダードの運営を行って、次世代の産業を創出することに貢献していただけると確信をしております。なお、それぞれの方のプロフィールや選定の考え方などの詳細については、後ほど事務方から説明をさせます。
私からは、以上です。

質疑応答

エネルギー基本計画

Q:エネ基で1点だけ。プルトニウムの保有の方針について、ちょっと表現が強まったというか、明確になった点があるかと思うんですが、この辺の狙いというのはどういうことなんでしょうか。

A:プルトニウム保有量の削減に取り組むということは、平和的利用を大前提に核不拡散に貢献をして国際的な理解を得ながら核燃料サイクルを着実に進めるために必要な取組と認識をしています。もう既にこれまでも、例えばプルトニウムを利用していくためにプルサーマル推進を事業者に要請するなど、政府としても取組は進めてきているところであります。こうした認識のもと、今回の基本計画においては削減に取り組むという趣旨をより明確にさせていただいたということになります。具体的には、プルサーマルの一層の推進や再処理等拠出金法の枠組みに基づく国の関与によって、この量の削減を含むプルトニウムの適切な管理と利用を行っていきたいと考えています。

米中貿易摩擦

Q:もう1点、6日にアメリカが知的財産の侵害ということで中国に340億ドルの関税を課すというふうに公表しておりまして、中国もそれに対抗して、同じ規模の関税を課すというふうな発表をしているんですけれども、状況がどんどんエスカレートしていく懸念が高まっていると思うんですが、世界経済、日本経済への影響と、あと自制を求めていくという点から、政府としてどのように対応していくかというような点をお聞かせいただけますか。

A:アメリカと中国というのはGDPで世界第一位、第二位となるわけでありまして、この両国が世界経済の安定的な成長と発展につながる良好な関係を構築するということは、これはもう世界全体にとって極めて重要なことであります。また、日本としては、いかなる貿易上の措置もWTOに整合的であるべきだと考えておりまして、WTOルールに則らない一方的措置の応酬は、どの国の利益にもならないと考えております。今後の米中間での協議の動向、課税対象品目の検討状況もよく注視をしながら、日本企業を含む影響をしっかりと精査をしてまいりたいと考えています。

エネルギー基本計画

Q:エネルギー基本計画のことで追加でお伺いしたいんですけれども、石炭火力についての書きぶりが世論とか世界的な情勢を受けて、より厳しい方向というか、狭まる方向に微修正をされました。これについての受け止めと日本政府が打ち出しているインフラ輸出への影響があるかどうか、御見解をお願いいたします。

A:世界の脱炭素化をリードしていくためには、相手国のニーズに応じて再エネ、水素などCO2削減に貢献するあらゆる選択肢を相手側に提案をして、低炭素型インフラ輸出を積極的に推進していく、この姿勢には変わりありません。その中でエネルギーの安全保障や経済性の観点から、石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国、これも現実にあるわけであります。そういった国に限って原則として世界最新鋭の超々臨界圧以上の発電設備の導入を支援していく方針であります。

Q:エネルギー基本計画に関してですけれども、以前取りまとめの際にも1回伺っていますが、原発の新増設であったりとか、原発の政策について、委員会の中では議論すべきだという声が上がっていました。委員長からも原発としっかり向き合うようにと経産省に言ってきたという発言もありました。この新たな計画、原発政策についての議論が不十分ではないかという指摘もある中で閣議決定まで至ったことについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:そういった議論も踏まえて、有識者の皆様方も最終的には素案には了解をいただいているわけであります。当然その過程にはいろいろな議論、いろいろな立場からの御発言というのはあるわけですけれども、最終的には報告書に御同意をいただいて、名前を連ねて報告書をまとめていただいている。それに基づいて我々は素案を提示し、更に省庁間の調整、パブコメを行って、そして閣議決定という形になっているわけであります。エネルギー政策については、いろいろな立場、いろいろな考え方がありますけれども、我々はそれも踏まえた今日本として一番出せる明確な方針を示させていただいたと認識をしています。

Q:議論は十分であったとお考えなんでしょうか。

A:非常に十分な議論をオープンな場で尽くしたというふうに思っております。

Q:エネ基の関係で、プルトニウムの削減に関する記述の部分で追加ですけれども、どうやって削減していくかという具体論で言いますと、電力事業者間の連携ということも重要になってくると思うんでが、その辺について経産省としてどういうふうに関わっていくか。

A:これは基本的には事業者の判断でありますけれども、我々としては事業者間の連携をしてほしいという要請はやってきているわけでありますから、その姿勢に変化はありません。

Q:原発の新増設の関係なんですけれども、今回のエネルギー基本計画では触れられておりませんけれども、今後原子力を維持するためにはそういう新増設なりの議論が必要かと思いますが、いつの時点から始めるべきだというふうにお考えですか。

A:まずは、今、今回のエネルギー基本計画に沿った政策をしっかりと進めていくことが重要だと思っています。

Q:先ほどのプルトニウムの関係ですけれども、これまで政府の考え方としてはプルトニウムのバランスをしっかり維持すると。利用目的のないものを持たないということを強調されてきていて、総量としてどうかということではなくて、バランスが重要なんだと、利用目的がないということが重要なんだということだったと思うんですが、今回量を減らす、削減するということを踏み込んだ理由というのはどういったことなんでしょうか。

A:もともと我々は別に量を減らさないと言っているわけではないわけであります。プルトニウムバランスの重要性も申し上げながら、基本的には削減に取り組んでいくというのは、これは日本政府として明確な姿勢だったと思います。それを今回、この基本計画上、更に明確にさせていただいたということに尽きると思っています。

Q:今までは、現状としてなかなか減らないという状況があって、ただ掲げていた方針が分かりにくかったということで、「削減」ということを言葉として入れたということなんですか。

A:方針自体何か今回の基本計画で変更があるというわけではなくて、今までの路線でしっかりと取り組んでまいりたいと思っています。

米国による自動車輸入制限措置/サッカーW杯

Q:すみません、2問短い質問でお願いしたいと思っていますが、先週、アメリカの安全保障を理由にした自動車追加関税の検討措置に関連して、パブリックコメントに日本政府として応じられていましたが、その狙いを1点伺えないでしょうか。もう1点は、今朝方のサッカーのW杯で日本チームは少し残念な結果になりましたが、御感想と、これまでの評価を伺えればと思います。

A:まず、自動車等の輸入に関する232条に基づく調査に関してパブコメを求められましたので、我々の方としても、まず1つは日系の自動車及び部品メーカーなどによる米国経済への多大な貢献、そして貿易制限措置が仮に発動された場合の米国経済、ひいては世界経済への悪影響、そしていかなる貿易上の措置もWTO協定と整合的であるべきといった日本の立場についてしっかりとコメントを提出させてもらいました。商務省がこれから調査を行っていくに当たって、こうした事実を十分に踏まえていただくことを期待したいと思いますし、引き続き日本の立場についてさまざまな機会を通してアメリカ側にしっかりと働きかけてまいりたいと思います。サッカーワールドカップについては、私も今大変体力的に睡眠不足でしんどいわけでありますけれども、大変残念だった。もう勝ったかなと思いましたけれども、大変残念だったと思いますし、頑張っていただいた選手の皆さんには心からエールを送りたいと思います。

産業革新機構の新体制

Q:新しい産業革新機構のことですけれども、新しい機構の運営の組織のあり方の検討状況を伺いたいと思います。産革機構をめぐってはスタートアップへの支援ということで一定の評価はありながら、一方で経営再建とか経営が危機に陥った企業への救済に使われているのではないかという指摘もあるのですけれども、その辺いかがお考えでしょうか。

A:救済に使われているという事実はなくて、あくまでも我々はオープンイノベーションを前提にこれまでも投資を行ってきているわけでありますが、産革機構については、投資機関としてのあり方としていろいろ私は問題点があったというふうに思っています。政府の役割と投資のプロの役割、その辺が非常に曖昧な点があったと思っていまして、このあいだ法改正を行っていただいて、政府が基本的な方針をしっかりと示して、そしてその方針に基づいた投資が行われている限りは、後は投資、運用のプロにお任せをするということがこのあいだの法改正の大きな趣旨だったわけであります。それに則った体制整備へ向けて、今回の人事で一歩踏み出したと。これだけ、もうお任せできる投資のプロに今回入っていただいたということであります。

エネルギー基本計画

Q:エネ基のプルトニウムの削減についてですけれども、素案には入っていなかった一文が入ったということですが、素案の作成以降、どういった議論、経緯があって入ったのか、改めてちょっとお願いします。

A:それは省庁間の議論その他については、詳細は控えさせていただきたいと思います。ただ、我々は素案でよしとしたわけではなくて、各省の意見やパブリックコメントを求めて、それも織り込むべきものがあればしっかり織り込むというオープンな姿勢で臨んでおりました。その結果が今回反映されたということに尽きると思います。

以上

最終更新日:2018年7月4日