農林水産省・新着情報
坂本農林水産大臣退任記者会見概要
日時 | 令和6年10月1日(火曜日)10時06分~10時22分 於: 本省会見室 |
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主な質疑事項 |
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冒頭発言
大臣
昨年12月14日に第184代の農林水産大臣を拝命して以降、目の回るような忙しさだったと思います。25年ぶりに改正した食料・農業・農村基本法をはじめ、6法案を国会会期中に成立させることができました。私にとっては、非常に意義のあるものだったと思います。
今年1月1日に発生した能登半島地震では、これまで4回現地に足を運びました。まだまだ復旧途上です。これからやらなければならない農・林・水それぞれの被災地の復旧・復興は大変な作業になると思いますが、後任の大臣がしっかりと舵をとっていただきたいと思います。熊本地震は5年、6年はかかりました。そのくらいのスパンは考えながらやっていかなければいけないと思います。
国会では、審議時間が衆・参延べ31日、114時間5分という、平成30年以来、一番長い審議だったと聞いています。審議の過程で与野党から色々なお叱りやアドバイスを受け、将来の農・林・水についての考え方を伺いました。国会も含めて色々なことを勉強させていただきましたので、これからもしっかりと農・林・水に関心を持って取り組んでまいりたいと思います。
G20、G7の会合にもそれぞれ出席をさせていただきました。非常に有意義なものでしたが、世界共通の課題というのは、気候変動にどう対応し、生産性の高い農業をどう確立させていくのか。さらに、地政学的リスクが高まる中で、そういったものにどう対応し、公正で公平な貿易体制を作っていくのか。こういうものが、共通した課題であると感じました。
G7では、京都大学の学生3人も含め、世界から若い農業者、学生が集まり、世界の農業や各国の農業に対する意見を述べていただき、非常に参考になりました。若い人たちも、気候変動、環境、(農業の)生産性や経営体、それぞれの国・地域における格差を強調されていましたので、若者が感じ取る農林水産業の課題は世界で共通していると思いました。
それ以外にも、タイ、UAE、ベルギー、香港にも行き、それぞれの農業関係大臣と話をして、色々なご意見をいただきました。EUはポーランド出身の農業担当でしたので、もう少し小規模農業を大事にしなければいけないと言われました。ただ、ポーランドの小規模農業は30ha以下ということで、日本とは規模が違うなと感じました。香港、UAE、タイについては、それぞれの品目において、さまざまな要望が出ましたが、これから技術的に時間をかけて検討していくということでした。
中国に対するALPS処理水に関連した水産物の輸出については、一定程度明かりが見えてきたと思います。今後、新しい政権のもとで慎重に論議を進め、扉が開くように努力をしていかなければいけないと思いますし、牛肉の輸出に関しても、中国の理解をしっかり得る努力、輸出できるような努力をしていかなければいけないと感じました。
私が在任中は、円安、物価高、飼料高の中で畜産物の価格が低落し、一次産業に対して円安の影響が大きくのしかかってきていると感じました。今も畜産農家や燃料を使う漁業者からは、色々なご意見をいただいているところです。それに対して、今後しっかりと合理的な価格をいかに形成していくか、コストをいかに抑えていくのか、努力していかなければいけないと思います。来年の国会に向けて、合理的な価格の形成に関する法律を準備しているところですので、この法案がうまく機能していけば、農業への若者の参入、食料安全保障の確立、集落の活性化はできるのではないかと思います。
天皇皇后両陛下のご臨席の下、岡山でみどりの式典や全国植樹祭などにも出席させていただきました。私たちの国は70%が森林ですので、森林をしっかり守りながら、その森林資源をいかに活用していくかが大事だと思います。
国際会議等にも出席させていただき、日本の農・林・水は諸外国から一定の評価を受けていると感じました。技術的にも環境面でも非常に他国に比べて遜色なく、それ以上に進んでいると感じましたので、これまでの農・林・水それぞれの政策方針に沿って、さらに深化させていかなければいけないし、新大臣への引継ぎでもしっかり伝えてまいります。
米の問題について、8月のお盆前後から国民の皆さんに心配と不安をおかけしました。ちょうど端境期の時に、南海トラフ地震の問題、台風、インバウンドも含めた色々なものが重なって、米不足のような状況になりました。備蓄米を放出するか判断も迫られましたが、ちょうど8月から9月に入るところであり、備蓄米を放出するにしても2週間から3週間は時間がかかるということで、卸売業者に全力で米の確保に走り、小売店に流してもらうことを私自身が決断しました。その決断に誤りはなく、適切だったと思います。備蓄米を放出していたら、5年産米、備蓄米、6年産の新米が折り重なってだぶつく状況となり、混乱を与えていたのではないだろうかと思います。10月末に開催する食糧部会で有識者としっかり論議をしていただき、今回の状況がどうだったか分析した上で、今後の対応方針を考えていかなければいけないと思います。
非常に大括りでしたが、12月からの在任期間中の感想とさせていただきます。色々とお世話になりました。ありがとうございました。
質疑応答
記者
報道では小里さんが後任と伝えられていますが、どのようなことを具体的に引き継ぎたいか、お願いしたいのか伺います。
また、備蓄米を放出しないという判断に誤りはなかったということで理解できる一方、価格が高止まりしている状況をどう考えればいいのか、価格が高止まりしている中で判断に誤りはなかったと言い切れる根拠を大臣の言葉でご説明いただけると幸いです。
大臣
新しい大臣に引き継ぐことについては、ちょうど農政の転換期であると。25年ぶりに食料・農業・農村基本法を改正し、それに関連する農業経営基盤強化促進法といった法律も含めて改正し、スマート農業技術活用促進法も新法として成立し、合理的な価格形成に関する法律も予定していると。こうした一連のものをしっかり実のあるものにしていただきたいと。そして、食料・農業・農村基本計画を策定しますので、基本計画に則って、一歩一歩前に進めていただきたいと。
そしてなによりも、若い農業者、女性農業者が就農できるような魅力ある農林水産業にしていただきたいということを、新大臣に訴えたいと思います。
米の問題について、高止まりにどう対応していくかということですが、いずれ、ある程度は落ち着くと思います。ただ、今回のことで米に対する国民の皆様の思いといいますか、米がこれだけ大事だったのだと。米さえあれば、色々な食料安全保障の一端は解決するということを国民の皆様は理解していただいたと思います。米の大事さはしっかりと推進する一方で、水田の活用も含めた自給率の向上を図っていかなければいけないと思います。価格については、今後どれだけ落ち着いていくのか注視していかなければいけないと思いますが、今年の米の作況は非常に好調ですので、米の価格の高止まりが長く続くわけではないと考えています。
記者
熊本では、TSMC進出に伴う農地不足、諫早湾干拓事業に伴う有明海再生などの課題が残されていますが、熊本の重要課題に何が残っているのかと、今後、農水大臣の経験を活かしてどう解決に関わっていくのか、考えを教えてください。
大臣
熊本に限って言えば、まずは県南の豪雨からの復旧・復興がまだ残っています。これを(復旧・復興)していかなければなりません。震災からの復興はほぼ完了していますが、土地改良も含めて、新たな大区画化も進めていかなければいけません。
TSMCの進出について、厳しい農地状況ですが、守るべき農地はしっかり守ると。特にあの地域は酪農地帯ですので、デントコーンをはじめ、さまざまな畑作物を作っていかなければいけない地域です。その農地を守るためには、これまでの農水大臣の経験を活かして、その発言を高めていきたいと思います。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上