首相官邸・新着情報
【岸田総理冒頭挨拶】
日本の内閣総理大臣の岸田文雄です。お招きいただきありがとうございます。本日は、米国の友人に再会できたことをうれしく思います。
2年前に、ここニューヨークでスピーチをした際にも申し上げましたが、私は、日本で戦後、唯一の金融業界出身の総理大臣であり、そしてヌーヨーク(なまり)育ちの初の総理大臣です。
就任以来、日本経済の再生と日本の国際金融センターとしての魅力向上を主要なアジェンダとして、金融関係者とコミュニケーションをとり、そうした声も踏まえながら、投資促進と包括的な金融改革を断行してきました。
就任当初、私は、「Invest in KISHIDA」と、海外投資家の皆さんに、日本への投資を呼びかけました。半信半疑だった方もいたかもしれませんが、3年前、この言葉を信じて日本への投資を拡大した方は、その成果を実感していることでしょう。今うなずいた方は、とくに大きなリターンを得たのですね。大谷翔平選手と約7億ドルの契約を結んだロサンゼルスのドジャースのように。
本日、資本主義の本場であるニューヨークの金融業界の皆さんと、この3年間の金融改革の評価、そして、日本の金融市場、更には日本経済の未来について語り合えることを楽しみにしています。
【岸田総理締めくくり挨拶】
本日は、米国の財界人の皆さんの前でお話しする機会をいただき感謝申し上げます。一昨年、昨年に続き、私の第2の故郷、ニューヨークを訪れることができたことを大変嬉しく思います。
私は、この3年、歴史の分岐点とも言うべき大きな時代背景の中で、内外共に数々の難局に正面から取組、成果を上げてきました。
現在、ロシアのウクライナ侵略を始め世界各地で、国際秩序の根幹そのものが挑戦を受けています。この状況下で私は、日米同盟を一層強固なものとし、日本の防衛力を抜本的に強化し、そして法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くべく、外交面での取組に全力を挙げてきました。
私たちは、一体如何なる未来を、子供や孫の世代に受け継ごうとしているのでしょうか。それは、自由を束縛され民意が抑圧された世界では決してない。第二次世界大戦後に米国が中心となって築き上げてきた、自由と民主主義を根本に据えた、安全で平和な社会であるべきです。今、東アジアを始め世界中が、米国の関与とリーダーシップを必要としています。そしてそれは、米国自身の国益のためでもあります。本年4月、米国連邦議会の超党派議員を前に行ったスピーチで私は、そういった米国の歴史的な使命についてお話をしました。ホワイトハウスでの公式晩さん会では、スタートレックの有名な一節、「To boldly go, where no one has gone before.(誰も行ったことのない場所に、果敢に行くこと)」を引用して、日米同盟の未来を語りました。日米財界人の皆様とも、この「Boldly go!」の精神で共に、堅固な日米関係と、自由、安全で開かれた市場の確保と発展に向け、協働できればと思っています。
日本経済は、30年間にわたり、長期の経済的低迷に悩まされてきました。この間のデフレ経済から脱却し、新たな成長型経済に移行するべく、経済政策に取り組んだ3年でした。大胆な労働市場改革に踏み切り、マークアップ率の向上に取り組みました。半導体やAI(人工知能)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)などの戦略分野での大規模な投資促進策も導入しました。結果、33年ぶりの高水準の賃上げ、過去最高の企業収益と設備投資、GDP(国民総生産)の伸び、金融政策の正常化、資本市場の規模拡大など、その成果は、広範なデータに現れています。変化を力にする改革の大きなトレンドは、新たに選出される新政権の下で、更に加速されると期待しています。
こうした経済の好循環を金融面から支えるのが資産運用立国の取組です。私は、就任当初から、貯蓄から投資へのシフトを大胆に進めるためのNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充やコーポレートガバナンス改革の一層の推進を表明してきました。さらに、資産運用業の改革、公的年金や企業年金を始めとするアセットオーナーシップの改革を包括的に進め、日本のインベストメント・チェーンの強化を図ってきました。
これにより、株価は34年ぶりに最高値を更新し、一時約230兆円まで低迷した東証の時価総額も3月には初めて1000兆円を超えました。同時に、日本企業に「資本コストや株価を意識した経営」が定着しつつあります。上場企業における昨年度の政策保有株の売却も過去最高水準となり、持合いを是とする日本の慣習は過去のものとなりました。
こうした取組には、本日御参加の世界を代表する金融機関やマーケット関係者を始め様々な方々から、ポジティブな評価を多数いただき、大変心強く思いますし、私の改革意欲の支えになってきました。しかし、ここで満足していません。資産運用立国は、日本全体の資金の流れを大胆に変えていく野心的な改革であり、継続性が重要です。
私の当選同期の盟友であった故・安倍晋三元総理は、2015年9月、この場で、私の改革リストのトップアジェンダは、コーポレートガバナンスの改革であると語りました。
私は、コーポレートガバナンス改革を一段推進することに加え、資産運用立国として包括的な金融改革を断行しました。
私は退任しますが、今後とも、日本政府は、資産運用立国の取組の果実を日本経済に定着させ、政策に対する国内外の信頼を得るために、金融関係者とコミュニケーションを継続し、継続的に改革を推進していくと確信しています。このため、10月3日に、日米の主要資産運用業者をメンバーとして、資産運用フォーラムが立ち上がります。
そして、皆さんの強力なリーダーシップの下、日本への事業面・金融面での投資拡大を検討いただけると確信している。
私は、就任時に「Invest in Kishida!」と公言したことを、先ほど申し上げた。この機会に更に力強く、スタートレックのカーク船長を思い浮かべながら、申し上げたい。「Boldly invest in Japan, like no one has done before!(今までにない大胆な日本への投資を)」。
日本と米国は、これまでも、そして、これからも、自由、民主主義、法の支配、市場経済といった普遍的価値を共有し、経済的・政治的・社会的に強いつながりを持つパートナーです。大谷翔平はメジャーリーグでも投手として活躍しています。彼は日米に緊密な関係の象徴となるはずです。
資産運用立国の取組が、日米間のパートナーシップの象徴として、日米間の投資の流れとウィンウィンの関係を更に強固にし、日米及び世界の金融資本市場・経済の発展、輝かしい未来の実現に貢献していくことを期待して、私のスピーチを締めたいと思います。
本日は、お招きいただき、親切におもてなしいただき、ありがとうございました。