厚労省・新着情報

日時

令和6年3月26日(火) 14:00~16:00

場所

厚生労働省 仮設第1会議室
(オンライン会議場)

議事

○医薬安全対策課長 それでは、定刻になりましたので、令和5年度第16回「薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開会いたします。
 本日御出席の委員、参考人の先生方におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 今回の会議の公開については、YouTubeによるライブ配信で行うこととしておりますので、御理解、御協力のほど、お願いいたします。議事録については、後日、厚生労働省ホームページに掲載いたします。
 また、今回もウェブ開催としており、対面での進行と一部異なる部分があります。議事に先立ち、審議の進行方法などについて事務局より説明させていただきます。
○事務局 事務局より御説明申し上げます。
 まず、ハウリング防止のため、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御意見、御質問をいただくときは、ミュートを解除し、初めにお名前をお知らせください。発言のタイミングが重なったりした際は、調査会長から順に発言者を御指名いただきます。
 そのほか、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので、事前にお伝えしている事務局の電話番号まで御連絡をお願いいたします。また、もし事務局のサーバーがダウンするなどのトラブルが発生した場合は、事務局から一斉にメールで御連絡いたしますので、御確認いただけますと幸いです。
 御不便等をおかけするかもしれませんが、何とぞ御理解、御協力のほど、お願い申し上げます。
 事務局からは以上です。
 それでは、ここからの議事進行につきましては、調査会長の岡委員にお願いいたします。
○岡座長 調査会長の岡でございます。座長を務めさせていただきます。委員の皆様にも円滑な議事進行に御協力をお願いします。
 今回もウェブ開催ということで、事務局から御説明がありましたけれども、これまでの御説明に何か御意見等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入る前に、委員の出欠状況について事務局から御説明をお願いします。
○事務局 本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 現時点で6名全員の委員に御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会の規程により定足数に達していることを御報告申し上げます。本日の会議は成立いたします。
 続きまして、本日、参考人として御参加いただく先生方を御紹介いたします。
 議題1「カルベジロール及びビソプロロールの『使用上の注意』の改訂について」の関係で、一般社団法人日本循環器学会より、東京都立小児総合医療センター副院長、三浦大先生、国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センターより、後藤美賀子先生、三浦寄子先生に御出席いただいております。
 また、議題2「エンタカポン製剤の使用による健康影響評価について」の関係で、一般社団法人日本神経学会より、順天堂大学医学部神経学講座准教授、西川典子先生に後ほど御参加いただく予定でございます。
 また、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター安全性予測評価部部長、増村健一先生から書面で御意見を提出いただいております。
 以上です。
○岡座長 続きまして、審議参加に関する遵守事項について御説明をお願いします。
○事務局 本日御出席の委員及び参考人の方々につきまして、議題1の対象品目、競合品目の製造販売業者からの過去3年度における寄附金・契約金などの受け取り状況を報告いたします。
 対象品目・対象企業及び競合品目・競合企業について、事前にリストを各委員・参考人にお送りして確認をいただいたところ、石井委員より、第一三共株式会社より50万を超えて500万円以下のお受け取り、住友ファーマ株式会社、エーザイ株式会社より50万円以下のお受け取り。
 岡委員より、田辺三菱製薬株式会社より50万円以下のお受け取り。
 柿崎委員より、田辺三菱製薬株式会社、住友ファーマ株式会社、エーザイ株式会社より50万円以下のお受け取り。
 舟越委員より、第一三共株式会社より50万を超えて500万円以下のお受け取り、田辺三菱製薬株式会社、住友ファーマ株式会社、エーザイ株式会社より50万円以下のお受け取り。
 後藤参考人より、第一三共株式会社より50万を超えて500万円以下のお受け取りと御申告いただいております。
 石井委員、舟越委員におかれましては、議題1の審議中、御意見を述べることはできますが、議決に加わることはできません。そのほかの委員におかれましては、意見陳述、議決のいずれにも加わっていただくことができます。また、参考人につきましても意見陳述が可能なことを確認しております。
 続きまして、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。
 薬事分科会規程第11条においては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定されております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますことを報告させていただきます。
 報告は以上です。
○岡座長 ただいまの事務局からの御説明に対して御意見、御質問等はございますか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料はあらかじめお送りさせていただいており、議題1に関して資料1-1から1-3、議題2に関して資料2-1と2-2がございます。
 このほか、議事次第、資料一覧、委員・参考人名簿及び競合品目・競合企業リストがございます。お手元に御用意のない委員がいらっしゃいましたらお知らせください。
 なお、資料は厚生労働省ホームページにも掲載しておりますので、オンラインで傍聴されている方はそちらを御参照ください。
 以上ございます。
○岡座長 よろしいでしょうか。お手元にございますでしょうか。
 それでは、議題1「カルベジロール及びビソプロロールの『使用上の注意』の改訂について」の審議を行いたいと思います。
 事務局より御説明をお願いします。
○事務局 議題1について御説明いたします。
 資料1-1「カルベジロール及びビソプロロールの『使用上の注意』の改訂について」を御覧ください。カルベジロールとビソプロロールは、ベータ遮断薬と呼ばれる医薬品の1つで、慢性心不全、頻脈性心房細動、高血圧症等の効能効果を有します。「1.品目概要」の項に、先発医薬品の販売名、製造販売業者等をお示ししております。
 2ページ目の「2.経緯」を御覧ください。国立成育医療研究センターでは、厚生労働省の委託事業として、医薬品の添付文書における妊産婦等に関する記載を最新の知見に基づき見直すワーキンググループを設置しており、本件は、カルベジロールとビソプロロールについてワーキンググループの報告書がまとめられたことが契機となります。
 ベータ遮断薬のうち、カルベジロール及びビソプロロール(以下「両剤」という。)は、虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全の適応を有し、収縮不全を伴う心不全や頻脈性心房細動への使用が推奨されている製剤ですが、カルベジロールについては、ラットにおける妊娠前及び妊娠初期投与試験において、臨床用量の約900倍で黄体数の減少及び骨格異常の増加が報告されていること、及び、ヒトにおける妊娠中の投与に関する安全性は確立していないことを理由に、また、ビソプロロールについては、動物実験で胎児毒性及び新生児毒性が報告されていたことを理由に、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないこととされ、先発医薬品の製造販売承認時より禁忌に設定されています。
 今般、ワーキンググループにより、両剤の妊婦禁忌の適正性が検討され、その結果、両剤ともに、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与に関しては「禁忌」の項から削除し、「妊婦への投与」の項において、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨の注意喚起を記載することが適切であるとの報告書が取りまとめられました。
 ワーキンググループ報告書を受け、PMDAにおいても調査が行われ、資料1-2、1-3のとおり、PMDAの調査結果報告書が取りまとめられました。
 3ページ目の「3.WG報告書を踏まえた機構の調査結果」を御覧ください。
 まず、医療上のニーズについてです。慢性心不全に関して、国内ガイドラインにおける両剤またはベータ遮断薬の臨床的な位置づけを踏まえると、慢性心不全の妊婦におけるこれら薬剤の医療上のニーズが考えられ、そのニーズは、高齢出産の増加、先天性心疾患患者の予後の改善等から高まってきています。しかしながら、現行妊婦に投与可能なベータ遮断薬であるアテノロール、プロプラノロール、ラベタロール等には慢性心不全の適応がなく、当該ニーズに対応する医薬品は現状においても十分とは言えません。
 また、慢性心不全以外の両剤の各適応症についても、国内ガイドラインにおける両剤またはベータ遮断薬の臨床的な位置づけを踏まえると、慢性心不全同様、妊婦におけるニーズは高まってきていると考えられます。
 続いて、国内外のガイドラインや文献等における安全性に関する情報についてです。妊婦への両剤の使用に関しては、国内ガイドラインでは「カルベジロールとビソプロロールは妊娠中期以降では胎児発育不全や新生児ベータ遮断症状のリスクとなるものの、妊娠初期の催奇形性や胎児毒性は否定的である」と記載されています。また、妊婦へのベータ遮断薬の使用に関して、国内ガイドラインにおいては、関連記載がある場合は「おそらく安全」とされており、欧米のガイドラインでは安全である旨が記載されています。
 また、両剤ともに、妊婦禁忌の設定理由とされている疾患等、具体的には、カルベジロールはラットでの骨格異常及び黄体関連事象、ビソプロロールは動物実験での胎児致死について、ヒトでそのリスクを示唆する疫学研究結果は得られておりません。
 ビソプロロールの妊婦禁忌の設定理由とされている胎児・新生児の発育不全に関しては、ヒトでもリスクを示唆する疫学研究が報告されておりますが、母体及び児の状態を観察し、適切な処置を行うことで臨床的に管理可能であると考えられます。
 続いて、海外添付文書についてです。米国、英国、カナダ、オーストラリアにおいて、両剤の妊婦への使用は禁忌とされておらず、有益性投与とされております。
 また、その他として、ワーキングの文献調査等において、妊婦禁忌の設定理由とされている疾患のほかに、低血糖、哺乳不良、徐脈等の胎児・新生児毒性及び心奇形を示唆する報告がございましたが、胎児・新生児毒性については、母体及び児の状態を観察し適切な処置を行うことで臨床的に管理可能であること、心奇形については、相反する文献報告もあり、リスクに関しては見解が一致していないことを踏まえ、現時点では、これらの事象を根拠に両剤を引き続き妊婦禁忌とする必要性は乏しいと考えております。ただし、これらの事象については、適切な注意喚起並びに情報提供を行った上で、引き続き副作用症例報告、公表文献の収集等の医薬品安全性監視活動を継続し、必要に応じ措置を検討することとしたいと考えております。
 最後に「4.対応方針」を御覧ください。以上を踏まえ、両剤について、資料1-2別添4及び資料1-3別添4の改訂案にお示ししたとおり、添付文書の禁忌から「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」を削除し、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に投与すること」の注意事項を記載することに加え、投与に際して、母体及び胎児・新生児の状態を観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行う旨の注意喚起、文献や副作用報告で報告されている事象の情報提供を行うこととしてはどうかと考えております。
 御説明は以上となります。
 御審議のほどよろしくお願いいたします。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、まず、今日御出席いただいている参考人の中で、成育医療研究センターの後藤参考人と三浦寄子参考人より御意見をいただけますでしょうか。よろしくお願いします。
○後藤参考人 ベータ遮断薬には種類が複数ありますけれども、今回のビソプロロール、カルベジロールにおきましては、本剤以外の有益性投与であるベータ遮断薬には有しない、慢性心不全ですとか心房細動などの致死的な不整脈に対しての適応もございます。そして、それらに対して、複数の大規模な治験によって効果というのも認められている薬剤です。
 妊娠中なのですけれども、妊婦さんは循環血漿量が増しますので、今、適応で述べたような疾患を特に有するような女性においては、より心血管リスクが高まる状態での妊娠を迎えることになります。そういった背景がございます。
 資料1-2の16ページにレセプトデータを参考でつけさせていただきました。これは妊婦さんそのもののデータではないのですけれども、妊娠可能年齢の女性においてどのような種類のベータ遮断薬が使われているかというデータになります。ビソプロロールが1位、カルベジロールが4位ということで、非常に多く処方されていることがこれを見て分かります。また、既に事務局からも述べていただきましたけれども、有益性投与で海外では使えるという状況であります。
 これらの背景を踏まえてヒトでの疫学研究を検討してまとめましたので、こちらを三浦参考人からお願いいたします。
○三浦寄子参考人 では、私、三浦のほうから疫学研究の評価についてお話しさせていただきます。
 まず、カルベジロールとビソプロロール、それぞれについて妊娠に関する項目に関してシステマティックレビューを行いました。疫学研究と症例報告、どちらも調べておりますが、今回は時間の関係で疫学研究のお話のみさせていただきます。
 カルベジロールについては疫学研究が5報、ビソプロロールは7報ありまして、こちらについて検討を行いました。なお、妊娠と薬の領域では薬剤1剤ずつではなく同効薬をグループとして見て解析することが多くあります。今回の2剤に関しても、ベータ遮断薬全体で見た解析が中心で、文献が重複しております。なので、カルベジロールの5報は全てビソプロロールのほうにも含まれておりますので、今回はビソプロロールの文献番号を用いて御説明いたします。資料1-3の29ページからが疫学研究の情報なりますので、そちらを御参照いただければと思います。
 まず、妊娠第1三半期の使用による先天異常への影響についてお話しします。
 先生方は御存じのこととは思いますが、先天異常に関してはベースラインリスクが存在し、薬剤の使用の有無にかかわらず先天異常は生じ得ます。なので、薬剤のリスク評価に当たっては、曝露群で先天異常がどれだけ認められたかという数ではなく、曝露群と非曝露群を比較して先天異常の割合に差があるかで評価をしております。
 先天異常全体の評価に関しては、(4)の処方情報を用いたベータ遮断薬全体を評価した研究においては、処方群188例と非処方群を比較して先天異常に有意な差はなかったと報告されています。
 ビソプロロールに関しては、単独な研究がありまして、(1)のドイツの研究においても、妊娠第1三半期にビソプロロールに曝露した339例において、対照群と比較して先天異常発生に有意な差は見られませんでした。
 先天異常のうち心奇形に着目した研究が3報あります。いずれもベータ遮断薬全体での解析になります。
 (16)の処方情報を用いた研究におきましては、処方群2628例と非処方群を比較して、母体の疾患背景を調整した後の解析では、心奇形のリスクの上昇は見られませんでした。先ほど御紹介した(4)の研究においても、心奇形についてのリスク上昇は見られておりません。
 (2)のスウェーデンの研究では、ベータ遮断薬曝露群778例と非曝露群を比較して心奇形のリスク上昇が認められたとの報告があります。ただし、この研究においては少し注意が必要で、この研究はベータ遮断薬のみではなくて、他剤を含めた降圧薬全体について研究したものであります。また、母体の疾患背景が調整されていないことにも注意が必要で、薬剤の有無の影響ではなく、母体の高血圧の有無による影響が反映された可能性というところも考慮する必要があるかと思います。
 これらの結果をまとめますと、妊娠第1三半期の使用について、先天異常全体についてはリスク上昇を示唆する報告はなく、心奇形については交絡因子を含めた解釈が必要と考えています。リスクを指摘する報告もあるにはあるのですが、全ての報告を含めて総合的に判断すると、この薬剤を必要とする方に対して使用を禁止しなければならないほどのリスクが指摘されているとは現在の情報では言えないと考えます。
 ここからはあくまで参考としての補足になりますけれども、お話ししてきたとおり、この領域の研究は多くのリミテーションが存在し、様々な交絡因子によって結果が左右されます。妊娠初期のベータ遮断薬の使用による先天異常のリスクを評価したあるメタアナリシスがあるのですけれども、そのメタアナリシスでは、全ての文献を含めた解析では心奇形のリスク上昇があるとの結果になっております。ただ、交絡因子が調整された文献を用いた解析ではリスク上昇というのは否定されております。それは、交絡因子を含めた結果の解釈の重要性が示されているものと私たちは考えております。このメタアナリシスをもって、このメタアナリシス自体でリスクを評価するものではないのですけれども、交絡因子を考慮した解釈の仕方の参考になればと思い、御紹介させていただきました。
 ここまでが先天異常の情報になります。
 次に、先天異常以外の影響というところで、特に第2、第3三半期の曝露についてお話しさせていただきます。
 (4)の研究では、妊娠第3三半期にベータ遮断薬を処方された群において、児の低血糖や哺乳不良のリスクが認められています。(14)の日本の研究においては、曝露時期に関しては明確ではないのですけれども、カルベジロール群とベータ遮断薬群おのおのについて対照群と比較がされまして、カルベジロール群については新生児低血糖、ベータ遮断薬群については児の体重の在胎週数過小のリスク上昇が認められています。
 (3)の日本の研究においても、カルベジロール群とベータ遮断薬群がおのおの対照群と比較されまして、胎児発育不全についてベータ遮断薬群において有意な差が認められております。
 ほか、ビソプロロールについては、メトプロロールと併せた研究にはなりますが、(15)の研究で児の体重の在胎週数過小、(1)の研究で低出生体重についてリスク上昇が指摘されています。
 これらの研究を全てまとめまして、先天異常以外のリスクについてはもちろん注意を払う必要があるとは思います。ただ、さきの先天異常の報告、研究報告も全て含め総合的に判断すると、これらの薬剤について、この薬剤を必要とする方に使用を禁止しなければならないほどの研究結果は得られていないのではないかと私たちとしては考えております。
 以上になります。
○岡座長 ありがとうございました。
 続きまして、日本循環器病学会の三浦大参考人より御意見をいただけますでしょうか。
○三浦大参考人 ありがとうございます。今まで説明があったとおりであります。現場の医師としての意見ですけれども、カルベジロールもビソプロロールも非常によく使われているお薬で、説明があったように、心不全とか不整脈という致死的な疾患にエビデンスのある薬です。
 私は小児循環器科医ということもあって、先天性心疾患を持つ女性が大人になられて、成人先天性心疾患という1つのジャンルが確立し、学会もあるわけです。そういう方の妊娠・出産にも関わりますが、これらの薬剤はぜひ使いたいという思いがあります。
 経験の多い国立循環器病研究センターの産婦人科医の神谷先生にもお尋ねしましたけれども、患者さんに説明同意を得た上で国立循環器病研究センターでも使っていて、特に他のベータ遮断薬に比べて副作用が多いということは経験されないということでした。
 それから、高齢出産にどうかという話が事前のディスカッションであったのでお聞きしましたけれども、これらの薬剤を使っている方の平均年齢が33歳とやや高い傾向があり、35歳以上の方にも何例か使っているということで、特別に高齢出産に関わるわけではないのでしょうが、これらの心疾患の合併症が高齢になると高くなるということを考えると、より有用性が高いのではないかと思います。
 私もそうですが、患者さんに説明して使うということになりますと、学会のガイドラインはオーケーとなっているのだけれども、添付文書上は禁忌なのですよねというと、ちょっとびくびくしながら使うのですね。悪いことは健常な妊娠・出産でもあり得ますから、何か問題が起きたときに、「禁忌」と書かれると非常に使いづらいということがあります。有用性の乏しい他のベータ遮断薬に切り替えることになると、かえって母体あるいは胎児に悪影響を及ぼすのではないかと思いますので、ぜひ禁忌を解除していただき、慎重な上での有益性投与をお認めいただければと思います。
 以上です。
○岡座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 柿崎委員、お願いします。
○柿崎委員 柿崎です。3点お伺いしたいです。
 まず1点目です。新生児ベータ遮断症状などは、他のベータ遮断薬でも可能性があるかと思うのですけれども、妊婦禁忌になっていないベータ遮断薬と比べて、この薬剤が、そういったリスクが特段上がることはないという理解でよろしいのかというのが1点目。
 2点目です。海外では以前から使われているということで、添付文書でも禁忌が外れているということですけれども、海外でも使用経験が多くて、ある程度通常に使われているという理解でいいのかというのが2点目。
 3点目は、参考人の先生にお伺いしたいのですが、ガイドラインでは使用可能で、添付文書では禁忌ということですが、実際には使われていて、禁忌が外れることによって臨床の現場に即した状態になるといった理解でよろしいのでしょうか。
 その3点をお伺いします。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、まず順番に行きたいと思います。
 この薬がベータ遮断薬の中で特に新生児の低血糖等を起こしやすいのかどうか、そのあたりについてはいかがでしょうか。何か資料はございますでしょうか。
○事務局 すみません。1点目の御質問は、新生児の低血糖が起こりやすいかということでしたか。
○岡座長 柿崎委員、どうぞ。
○柿崎委員 他のベータ遮断薬と比べて特段リスクが上がるわけではないというような理解でよろしいでしょうか。
○事務局 ありがとうございます。
 今回、ワーキンググループのほうで検討している文献の中でも、ベータ遮断薬全体として検討しているものが多くございまして、具体的に、個別の医薬品のリスクについて解析したものというのは基本的には限られており、今回得られている結果の中で、例えばカルベジロール、ビソプロロール、そのほかのアテノロールやラベタロールといったもののリスクの差がどうかということについてこと結論づけることは困難であると考えております。
○岡座長 よろしいですか。
○事務局 何か補足ございますでしょうか。
○岡座長 そうしましたら、2点目の海外での使用状況については何か分かりますでしょうか。
○事務局 事務局から回答させていただきます。
 まず、海外の添付文書の記載状況です。現在はいずれも有益性投与となっておりますが、承認時からどうだったかというところは確認しておりまして、限られた情報ではございますが、カルベジロールについては、英国、カナダ、オーストラリアについては承認時から妊婦禁忌ではないということが確認できております。また、米国については、当時どうだったかというのが不明な状況でございます。また、ビソプロロールについても、米国、英国、カナダ、オーストラリア、いずれも承認時からどうだったかというのが不明な状況でございます。
 以上となります。
○岡座長 3点目は、三浦参考人に御質問かと思います。臨床の現場からは、そのガイドラインが使用可能ということ、しかし、禁忌になっているということで非常に困っている状況かという御質問かと思いますが、そのあたりいかがでしょうか。
○三浦大参考人 重複になるかもしれませんが、実際困っていて。アンケート調査をしたわけではありませんが、使っている施設が多いのではないかと思います。そのときに倫理委員会を通すかどうかというのは各施設のポリシーによるかと思うのですが。
 それから、先ほど御紹介した国立循環器病研究センターの神谷先生の御経験によると、1番目の質問に関しては、特にカルベジロールやビソプロロールで新生児の低血糖とか発育不全のようなものが多いわけではなく、むしろカルベジロールがやや少ないかなというコメントをいただいております。
 以上です。
○柿崎委員 ありがとうございます。
○岡座長 ありがとうございました。
 そのほか。
 舟越委員、お願いします。
○舟越委員 舟越です。三浦寄子参考人に教えていただきたいことがございます。よろしいでしょうか。
○三浦寄子参考人 はい。
○舟越委員 ワーキングの報告書を確認させていただきますと、今回は慢性心不全での適応があるところについての禁忌の解除となっておりますけれども、ワーキング自体は心不全のみにとどまらずベータ遮断薬全体のお話をされていて、実際に使用されている妊娠と薬情報センターでのベータ遮断薬相談事例を見ますと、カルベジロール、ビソプロロール以外の薬についても使われている現況があると思っています。こちらについては、今後カルベジロールとビソプロロールが緩和されることによって、適切にカルベジロールとビソプロロールを心不全の患者さんの部分については使っていく方向になるとは思うのですけれども、ほかの、心不全ではない、循環器関係で使われているベータ遮断薬を使っている妊婦については、追加調査をして、ほかのベータ遮断薬等についても禁忌のほうを緩和していく方向で調査をしていく予定なのかどうなのかを少し教えていただければと思います。
○三浦寄子参考人 御質問いただきありがとうございます。今回は、カルベジロールとビソプロロールを対象薬とさせていただいておりますので、この2剤を含めた疫学研究を調査しての結果について私が御説明させていただきました。
 ほかの薬剤に関しては、詳細な検討というのは現在していない状況にはなります。必要性といいますか、禁忌解除への御要望があれば、また今後の検討課題になっていくのではないかと考えております。
○舟越委員 ありがとうございました。
 以前もカルシウム拮抗剤の部分でも2剤程度を緩和していますけれども、今回のベータ遮断薬関係も、今、カルベジロールとビソプロロール自体が禁忌になっているからいろいろなものにバラついているのか、ほかの疾患に対してほかのベータ遮断薬を使っているのかというのは、報告書の中で全部を読み切れなかったので、少し意見確認をさせていただきました。ありがとうございます。
○三浦大参考人 よろしいでしょうか。
○岡座長 三浦参考人、どうぞ。
○三浦大参考人 三浦大です。
 今回ちょっと気になったのは、ナドロールというベータ遮断薬がありまして、QT延長症候群というこれまた致死的な不整脈の疾患があるのですが、遺伝性の疾患です。これが今、ナドロールが第一選択薬になっていて、申請書を出したときにはまだそこまでの位置づけではなかったのですけれども、これがまた妊婦禁忌なのです。このことに関しては検討する余地があるかなと思っていて、また、学会のほうで持ち帰って、不整脈学会であるとか、そういうところと相談をして検討したいと思います。
 以上です。
○舟越委員 ありがとうございます。
 ナドロール自体も気になっていたのですが、相談事例にはゼロ件だったので、今回発言しなかったのですけれども、先生のほうでもそういった御認識であれば、ぜひ引き続きよろしくお願いします。ありがとうございます。
○岡座長 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 そうしましたら、議決に移りたいと思いますけれども、石井委員と舟越委員におかれましては、利益相反に関するお申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮願うことになっております。
 この事務局案以外の御意見は特になかったかと思いますので、事務局の御提案のとおりにカルベジロールとビソプロロールの「使用上の注意」を改訂するということでよろしいでしょうか。3人の委員の先生方。
(首肯する委員あり)
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、皆さん首肯していただいていることを確認できましたので、御異議なしとさせていただきます。
 それでは、本議題に関する今後の進め方について事務局より御説明をお願いします。
○事務局 御議論いただきありがとうございました。カルベジロール及びビソプロロールの製造販売業者に対して、本日の審議結果のとおり「使用上の注意」を改訂するよう指示いたします。
 また、本調査会での議論につきましては、安全対策部会に報告いたします。
○岡座長 それでは、本議題は終了したいと思います。
 後藤参考人、三浦大参考人及び三浦寄子参考人におかれましては、貴重な御意見をいただいて、どうもありがとうございました。これ以降は御意見を求める予定はございませんので、途中で御退席をいただいて差し支えございません。ありがとうございました。
 それでは、報告事項であります議題2「エンタカポン製剤の使用による健康影響評価について」の報告を行いたいと思います。
 事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 議題2について説明させていただきます。
 資料2-1「エンタカポン製剤の使用による健康影響評価について」を御覧ください。
 「2.経緯」にお示ししましたとおり、現在医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクについては、厚生省から通知を発出し、各製造販売業者等に自主点検を依頼しております。今般、「1.品目概要」に挙げましたとおり、パーキンソン病における症状のwearing-off現象の改善に対する効能を有するエンタカポン製剤のうち、先発のノバルティスファーマ株式会社のエンタカポン単剤及びエンタカポン配合剤、そして後発のサンド株式会社のエンタカポン単剤からニトロソアミン類のN-ニトロソジエチルアミン(NDEA)が検出されたとの報告があり、その健康影響評価を報告させていただきます。
 「3.NDEAについて」のとおり、NDEAは、有効成分であるエンタカポン製剤の原薬及び製剤の製造工程でその化学構造由来のジエチルアミンがニトロソ化して生成されると考えられております。NDEAは既知のニトロソアミン類であり、1日許容摂取量は、げっ歯類の発がん性データに基づき26.5ngと公表されております。
 次に「4.製造販売業者より提出された本剤の使用による健康への影響評価等について」を御覧ください。エンタカポン単剤及びエンタカポン配合剤のNDEAの検出結果は、こちら資料に示すとおりとなっております。
 次に、NDEAの管理値の設定について、企業の報告書に基づき説明させていただきますので、資料2-2、通し番号4から5ページ目を御覧ください。図2は2022年7月、図3は2015年1月からエンタカポン単剤または配合剤を投与開始した患者の処方継続状況を示したデータとなります。これらのデータから、患者の多くは投与開始半年ほどで投与中止に至り、単剤及び配合剤いずれも72カ月時点で継続している患者は10%未満となっており、この結果をもってエンタカポン製剤の投与期間は10年未満と考えられております。したがって、企業は、6ページの表1にお示ししますように、ICH M7ガイドラインの一生涯よりも短い期間(LTL)に基づくアプローチを適用して、26.5ngに6.7という係数を乗じた1日許容摂取量177.55ngを本剤におけるNDEAの管理値としております。
 資料2-1にお戻りください。2ページ目下段に示しましたとおり、この管理値をもって、先発、後発企業いずれも、出荷管理を行うとともに、出荷済みの製剤で管理値を上回る製剤ロットの回収を実施しております。
 3ページを御覧ください。これまでにエンタカポン製剤を服用した患者での理論上の発がんリスクについては、エンタカポン単剤1600mgを毎日服用し、その使用期間が通常10年を超えないと仮定した場合、リスクの上昇の程度は0.70×10-5、もしくは0.75×10-5と推定され、これは、生涯でおよそ14.3万人に1人、もしくは13.3万人に1人が過剰にがんを発症する程度のリスクに相当するとされております。なお、ICH M7ガイドラインにおいては、「おおよそ10万人に1人の増加」のリスクは許容可能とされておりまして、今回の発がんリスクは許容される程度に収まっていると考えます。
 参考情報とはなりますが、「5.」に、本剤の製造販売業者は本邦以外では本剤を製造販売しておりませんが、同じ原薬が使用された製剤が欧米で製造販売されておりまして、その製剤からもNDEAが検出されております。その一方で、米も含めて現時点で海外の製造販売業者や海外規制当局が回収等の措置を行ったとの情報は確認されておりません。
 また、「6.」に国内の当局報告の状況を示しております。本邦でエンタカポン製剤の製造販売承認を受けた時点から昨月末までに、本剤でがんに関連する国内副作用症例報告が15件報告されておりますが、いずれも因果関係は明確ではございません。また、発がんに関する文献等の研究報告はございませんでした。
 以上の結果を踏まえまして「7.今後の方針」を説明させていただきます。
 本剤の使用による健康影響評価の結果を情報提供するとともに、本剤の投与中止により悪性症候群や横紋筋融解症が発現するおそれがありますので、患者の自己判断のみで本剤の服用を中止しないよう説明してほしいことを医療機関等へ周知するための事務連絡を発出することを考えております。
 資料の説明は以上となります。
 本議題については、参考人である増村先生より事前に御意見をいただいておりまして、事務局から読み上げさせていただきます。
 本剤の使用による健康影響への評価について、ICH M7ガイドラインのLTLアプローチを適用し、NDEAの1日許容摂取量26.5ng/dayに6.7を掛けた177.55ng/dayを管理値とする方針に同意します。
 資料2-2によると、投与開始後8.5年間の追跡調査から100カ月後の使用者は5%未満と考えられます。したがって、本剤の投与期間を10年未満と考えて、LTLアプローチ(×6.7)を適用することは許容できると考えます。
との御意見をいただいております。
 御報告は以上となります。
○岡座長 ありがとうございました。
 ただいま増村参考人の御意見を御紹介いただきましたけれども、続きまして、西川参考人より御意見をいただけますでしょうか。
○西川参考人 西川です。よろしくお願いいたします。
 このエンタカポンという製剤は、進行期パーキンソン病の患者さんにおいて、つまり、パーキンソン病と診断もしくは発症してから約5年を超えた後ぐらいの時期から使い始める可能性がある薬剤で、L-ドパがパーキンソン病の治療薬の主たる薬ですが、これの代謝酵素阻害剤で、末梢で代謝を阻害する薬剤となっております。そのような進行期の方、つまり、年代でいうと70代ぐらいの方が多いのですけれども、その方々が使い始め、御高齢であることとか、進行性の疾患で病状が少しずつ悪くなっていくことから、同じ用量を10年以上飲み続けるということは余りなくて、体の状況に合わせて増減するのですけれども、基本的には、10年というスパンで見ると、減って使わなくなる人が多いだろうと思っております。
 また、最大用量1600mgで様々なリスク計算をされておりますけれども、私どもがたくさんの患者さんを拝見する中で、エンタカポンを1600mg使ったことは一例もありませんで、通常、この半分量の800mgですら多いなと。800mg使用する人はほとんどいないのではないか、300~600mgぐらいの使用量が通常用量ではないかなと思いますので、このリスク計算としては、日常臨床からいうと、十分リスクヘッジを取ったところかなと思っております。
 以上となります。
○岡座長 ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様から御意見、御質問等をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 特にございませんか。
 ただいまお2人の参考人から御意見をいただきましたけれども。
 それでは、特に御意見等がございませんので、本議題については確認させていただいたということにさせていただきますけれども、よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○岡座長 ありがとうございます。皆様、首肯していただいていますので、ありがとうございました。
 それでは、確認させていただいたとさせていただきます。
 予定していた議題は以上ですけれども、事務局から何かございますか。
○事務局 特にございません。次回開催については改めて御連絡いたします。
 事務局からは以上です。
○岡座長 それでは、本日の調査会は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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