議案審議経過情報

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項目 内容
議案提出者 厚生労働委員長
衆議院審議時会派態度 多数
衆議院審議時賛成会派 自由民主党・無所属の会; 立憲民主党・無所属; 日本維新の会; 公明党; 国民民主党・無所属クラブ; 日本共産党; 有志の会
衆議院審議時反対会派 れいわ新選組
議案受理年月日 2023-05-31
公布年月日 2023-06-16

要項または提出時法律案

第一 総則
 一 目的
   この法律は、ゲノム医療が個人の身体的な特性及び病状に応じた最適な医療の提供を可能とすることにより国民の健康の保持に大きく寄与するものである一方で、その普及に当たって個人の権利利益の擁護のみならず人の尊厳の保持に関する課題に対応する必要があることに鑑み、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策(以下「ゲノム医療施策」という。)に関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本計画の策定その他ゲノム医療施策の基本となる事項を定めることにより、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。              (第1条関係)
 二 定義
  1 この法律において「ゲノム医療」とは、個人の細胞の核酸を構成する塩基の配列の特性又は当該核酸の機能の発揮の特性に応じて当該個人に対して行う医療をいうこと。        (第2条第1項関係)
  2 この法律において「ゲノム情報」とは、人の細胞の核酸を構成する塩基の配列若しくはその特性又は当該核酸の機能の発揮の特性に関する情報をいうこと。               (第2条第2項関係)
 三 基本理念
   ゲノム医療施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならないこと。
  ① ゲノム医療の研究開発及び提供に係る施策を相互の有機的な連携を図りつつ推進することにより、幅広い医療分野における世界最高水準のゲノム医療を実現し、その恵沢を広く国民が享受できるようにすること。
  ② ゲノム医療の研究開発及び提供には、子孫に受け継がれ得る遺伝子の操作を伴うものその他の人の尊厳の保持に重大な影響を与える可能性があるものが含まれることに鑑み、その研究開発及び提供の各段階において生命倫理への適切な配慮がなされるようにすること。
  ③ 生まれながらに固有で子孫に受け継がれ得る個人のゲノム情報には、それによって当該個人はもとよりその家族についても将来の健康状態を予測し得る等の特性があることに鑑み、ゲノム医療の研究開発及び提供において得られた当該ゲノム情報の保護が十分に図られるようにするとともに、当該ゲノム情報による不当な差別が行われることのないようにすること。                  (第3条関係)
 四 責務
  1 国の責務
    国は、三の基本理念にのっとり、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有すること。     (第4条関係)
  2 地方公共団体の責務
    地方公共団体は、三の基本理念にのっとり、ゲノム医療施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じて、施策を策定し、及び実施する責務を有すること。            (第5条関係)
  3 医師等及び研究者等の責務
    医師、医療機関その他の医療関係者(以下「医師等」という。)並びに研究者及び研究機関(以下「研究者等」という。)は、国及び地方公共団体が実施するゲノム医療施策及びこれに関連する施策に協力するよう努めなければならないこと。            (第6条関係)
 五 財政上の措置等
   政府は、ゲノム医療施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならないこと。           (第7条関係)
第二 基本計画
  1 政府は、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に推進するため、ゲノム医療施策に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならないこと。
  2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
   ① ゲノム医療施策についての基本的な方針
   ② ゲノム医療施策に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策
   ③ ①及び②に掲げるもののほか、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
  3 基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとすること。
  4 政府は、基本計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこと。
  5 政府は、適時に、3の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果を公表しなければならないこと。       (第8条関係)
第三 基本的施策
 一 ゲノム医療の研究開発及び提供に係る体制の整備等
  1 ゲノム医療の研究開発の推進
    国は、ゲノム医療の研究開発の推進を図るため、ゲノム医療に関し、研究体制の整備、研究開発に対する助成その他の必要な施策を講ずるものとすること。                  (第9条関係)
  2 ゲノム医療の提供の推進
    国は、ゲノム医療の提供の推進を図るため、ゲノム医療の拠点となる医療機関の整備、当該医療機関と他の医療機関との連携の確保その他の必要な施策を講ずるものとすること。       (第10条関係)
  3 情報の蓄積、管理及び活用に係る基盤の整備
    国は、個人のゲノム情報及びその個人に係る疾患、健康状態等に関する情報を大量に蓄積し、管理し、及び活用するための基盤の整備を図るため、これらの情報及びこれに係る試料を大規模かつ効率的に収集し、並びに適切に整理し、保存し、及び提供する体制の整備、極めて高度な演算処理を行う能力を有する電子計算機による情報処理システムの整備及び的確な運用、国際間における情報の共有の戦略的な推進その他の必要な施策を講ずるものとすること。       (第11条関係)
  4 検査の実施体制の整備等
    国は、ゲノム医療の提供に際して行われる個人の細胞の核酸に関する検査について、ゲノム医療を提供する医療機関及びその委託を受けた機関における実施体制の整備及び当該検査の質の確保を図るために必要な施策を講ずるものとすること。         (第12条関係)
  5 相談支援に係る体制の整備
    国は、ゲノム医療の提供を受ける者又はその研究開発に協力してゲノム情報若しくはこれに係る試料を提供する者に対する相談支援の適切な実施のための体制の整備を図るため、これらの者の相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の支援を行う仕組みの整備、当該相談支援に関する専門的な知識及び技術を有する者の確保その他の必要な施策を講ずるものとすること。             (第13条関係)
 二 生命倫理への適切な配慮の確保
   国は、ゲノム医療の研究開発及び提供の各段階において生命倫理への適切な配慮がなされることを確保するため、医師等及び研究者等が遵守すべき事項に関する指針の策定その他の必要な施策を講ずるものとすること。
                           (第14条関係)
 三 ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応の確保
  1 ゲノム情報の適正な取扱いの確保
    国は、ゲノム医療の研究開発及び提供の推進に当たっては、生まれながらに固有で子孫に受け継がれ得る個人のゲノム情報について、その保護が図られつつ有効に活用されることが重要であることを踏まえ、ゲノム医療の研究開発及び提供において得られた当該ゲノム情報の取得、管理、開示その他の取扱いが適正に行われることを確保するため、医師等及び研究者等が遵守すべき事項に関する指針の策定その他の必要な施策を講ずるものとすること。           (第15条関係)
  2 差別等への適切な対応の確保
    国は、ゲノム医療の研究開発及び提供の推進に当たっては、生まれながらに固有で子孫に受け継がれ得る個人のゲノム情報による不当な差別その他当該ゲノム情報の利用が拡大されることにより生じ得る課題(四の2において「差別等」という。)への適切な対応を確保するため、必要な施策を講ずるものとすること。       (第16条関係)
 四 医療以外の目的で行われる核酸に関する解析の質の確保等  
  1 国は、ゲノム医療に対する信頼の確保を図り、併せて国民の健康の保護に資するため、医療以外の目的で行われる個人の細胞の核酸に関する解析(その結果の評価を含む。)についても、科学的知見に基づき実施されるようにすることを通じてその質の確保を図るとともに、当該解析に係る役務の提供を受ける者に対する相談支援の適切な実施を図るため、必要な施策を講ずるものとすること。
  2 国は、二及び三の趣旨を踏まえ、1の解析についても、生命倫理への適切な配慮並びに三の1に規定するゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応を確保するため、必要な施策を講ずるものとすること。                      (第17条関係)
 五 その他の施策
  1 教育及び啓発の推進等
    国は、国民がゲノム医療及びゲノム医療をめぐる基礎的事項についての理解と関心を深めることができるよう、これらに関する教育及び啓発の推進その他の必要な施策を講ずるものとすること。 (第18条関係)
  2 人材の確保等
    国は、ゲノム医療の研究開発及び提供に関する専門的な知識及び技術を有する人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとすること。                   (第19条関係)
  3 関係者の連携協力に関する措置
    国は、ゲノム医療施策の効果的な推進を図るため、関係行政機関の職員、医師等、研究者等、関係事業者その他の関係者による協議の場を設ける等、関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとすること。
                           (第20条関係)
  4 地方公共団体の施策
    地方公共団体は、一から四まで及び五の1から3までの国の施策を勘案し、その地域の状況に応じて、ゲノム医療施策の推進を図るよう努めるものとすること。               (第21条関係)
第四 その他
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から施行すること。    (附則第1項関係)
 二 検討
   政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。         (附則第2項関係)