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第58回アフリカ開発銀行・第49回アフリカ開発基金年次総会日本国総務演説
(2023年5月23日(火) 於:エジプト・シャルム・エル・シェイク)

1.はじめに

議長、総裁、各国総務、並びに御列席の皆様、

アフリカ開発銀行(AfDB:African Development Bank)及びアフリカ開発基金(AfDF:African Development Fund)年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して、一言申し上げます。また、本総会のホスト国であるエジプト政府及びシャルム・エル・シェイクの皆様の温かい歓迎に感謝申し上げます。

2.アフリカの現状とAfDBグループへの期待

(1)アフリカの現状

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響、債務問題、気候変動、長期化するロシアのウクライナ侵略による食料不安等、世界が引き続き複合的な危機や課題に直面する中、貧困・脆弱層の多いアフリカはとりわけ大きな影響を受けています。昨年のアフリカのインフレ率は世界平均を大きく上回り、食料価格の高騰が多くの人々に深刻な影響を及ぼすなど、アフリカ諸国は、厳しい状況に置かれています。

他方、アフリカは、鉱物資源といった脱炭素に不可欠な製品の材料や成長する若い人材をはじめとする豊富なリソースを背景に、世界で最も潜在的な成長力が高い地域です。そうした潜在力を最大限に引き出すことで、現下の苦境を乗り切り、誰一人取り残さない、持続可能で、強靭な成長を実現することが重要であり、AfDBグループに求められる役割は一層重要性を増しています。

(2)AfDBグループへの期待

持続可能で強靭な成長を実現するためには、日本がかねて重視してきた気候変動、質の高いインフラ投資、国際保健といった重要な課題に適切に対応する必要がありますが、その際、民間セクターの力を活用することが不可欠です。例えば、気候変動に対する脆弱性が高いアフリカにおいては、気候変動への適応と強靭化が重要ですが、依然として適応策への資金提供は不十分です。また、そのほとんどが限りある公的資金によって支えられており、対応を強化していく上では民間資金動員の促進が喫緊の課題です。

アフリカ諸国への民間投資を促すには、「共通枠組」の下で債務問題の根本的な要因に対処することが重要です。債務の持続可能性を確保し、債務の透明性を向上することが不可欠であり、債権国の協力を得て、債務データ突合を実施し、データの透明性・正確性を向上することが必要です。アフリカ諸国の債務問題への対処に際し、AfDBグループが、IMF・世界銀行と緊密に連携しながら主導的役割を担うことを期待しており、日本としても後述のEPSAなどを通じAfDBグループの取組を積極的に支援していきたいと考えています。

また、付加価値の高い多様な産業の構築が必要です。例えば、アフリカ諸国が、鉱物資源や人材を活かして、脱炭素に不可欠な製品の供給網で、鉱物採掘を超えた役割を果たせるようになれば、新たな成長機会の創出につながるとともに世界全体のエネルギー移行にも貢献できます。こうしたwin-winの成果実現を促進すべく、日本はAfDBとの効果的な連携策について模索します。

このほか、健全なマクロ経済政策運営や投資環境整備といった伝統的な課題への取組、更にはスタートアップ支援やデジタル化といった新たな投資分野への積極的な投資も重要です。これらの取組を通じて民間セクターの活力を引き出せるよう、日本はAfDBとも連携して必要な支援を進めます。

アフリカへの投資にかかるリスクに関する認識には実情とギャップが存在するとの指摘があります。日本とAfDBの長年のパートナーシップを象徴する存在であるAfDBのアジア代表事務所は、これまでアフリカへの民間投資促進に向けて、ビジネスマッチングのためのセミナーを開催するなど多大な貢献をしてきました。アフリカのファイナンシングギャップが拡大する中、リスクパーセプション・ギャップの低減の観点も含め、日本とアフリカ諸国との間のビジネスチャンスの更なる拡大に向けた取組を同事務所が強化することを期待します。

上述のとおり、民間投資の促進は重要ですが、複合的な危機や課題に対応していく上ではAfDB自身にもこれまで以上の取組が求められます。この観点から、G20 による「MDBs の自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の勧告に基づき、既存資本を最大限活用する方策について検討することを求めます。この文脈で、AfDFによる市場調達オプションや、AfDBがSDRチャネリングを検討していることなど、AfDBグループにおいて積極的かつ建設的な議論が行われていることを歓迎します。SDRチャネリングについて、日本は、参加する方向で前向きに検討するとともに、引き続き積極的に議論に参画します。

3.日本の取組

2022年8月、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)がチュニジアで開催されました。TICADは、アフリカと「共に成長するパートナー」として日本政府が主導する国際フォーラムで、アフリカの開発をテーマとして3年に1度開催しています。

TICAD 8では、岸田総理が、強靱で持続可能なアフリカを実現していくため、グリーン成長や民間投資促進などの分野に対し、官民あわせ、今後3年間で300億ドルの貢献を表明しました。

また、日本とAfDBは、アフリカにおける持続可能で包摂的な成長を促進するために民間セクター開発を包括的に支援する「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ」の第5フェーズ(EPSA 5)において、インフラ整備や農業生産性の向上等を目的に2023年から2025年までに最大50億ドルの資金協力を行うことを発表しました。

さらに、TICAD 8のイベントとしてAfDBが主催した「アフリカにおける持続可能な債務管理に関するハイレベル政策対話」を支援するとともに、債務の透明性・持続可能性の向上を含めた改革に取り組み、債務健全化に着実かつ顕著な前進が見られる国を支援するため、EPSA 5において最大10億ドルの特別枠を設置するなど、日本がかねてよりリードしてきた債務分野においても、引き続き積極的に貢献することを表明しました。

なお、先述のとおり、気候変動に対する脆弱性が高いアフリカにおいては、自然災害に強靭な質の高いインフラ整備が重要です。自然災害の多い日本は、適応の分野で豊富な知見や教訓を有しており、高度な専門性や技術を活用しながら、AfDBと緊密に協調してアフリカにおける気候変動対応への支援に引き続き貢献します。

これまで述べてきた課題はいずれも重要ですが、アフリカにおいて最も本質的かつ最優先に対処すべき課題は、持続可能で強靭な成長の土台となる貧困削減であることは言うまでもありません。複合的な危機に際して貧困・脆弱な立場への後戻りを余儀なくされる人々が多くいる中、AfDFの果たすべき役割は非常に重要であり、この観点から、昨年12月に第16次増資(AfDF-16)が成功裏に妥結したことを歓迎します。日本は、AfDF-16が日本の重視する開発課題を優先分野としていることを評価し、前回の増資から大幅に増額となる553億円の貢献を行っており、日本を含むドナー資金の効果的・効率的な活用を求めます。

4.結語

困難な時代ではありますが、多様な課題は経済成長を実現するためのチャンスでもあります。大きな潜在力を有し、成長するアフリカ諸国のAfDBに対する期待は大きく、アデシナ総裁の強力なリーダーシップの下、引き続きアフリカにおける第一の開発金融機関としてAfDBがアフリカの発展において中心的な役割を担うことを期待します。日本は、資金面のみならず、人材面でもAfDBグループに一層貢献してまいります。

(以上)

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