外務省・新着情報

冒頭発言

【林外務大臣】今回、ソロモン諸島とクック諸島を、日本の外務大臣として初めて訪問いたしました。太平洋島嶼国は、同じく太平洋国家の一員である日本にとって、様々なつながりを有する長年の友好国でありまして、また、地域の平和と安定を確保していく上で戦略的にも極めて重要であります。
 本年2月のキリバスの太平洋諸島フォーラム(PIF)への復帰によって、地域の一体性を取り戻したこの太平洋島嶼国地域は、クック諸島が先般議長国に就任し、新たなスタートを切っております。今回の訪問では、こうした地域の動きを後押しすることや、この地域の安定と繁栄に対する日本のコミットメントを各国要人に直接伝えるとともに、太平洋島嶼国情勢等についてじっくり議論し、地域の安定と平和のため緊密に連携することで一致をいたしました。
 また、2021年の第9回太平洋・島サミット(PALM9)以降の日本の支援の進捗について触れながら、日本は引き続き島嶼国のニーズに基づく協力を行っていく旨を伝達し、二国間関係の一層の強化につき一致をいたしました。また、日本を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しく複雑な状況にある中、日本は新たな国家安全保障戦略を策定し防衛力を抜本的に強化すること、島嶼国を含む途上国と協力し、気候変動分野の支援を強化することにつき説明し、理解を得たところであります。
 さらに、インドを訪問中の岸田総理から発表がありました「平和のための『自由で開かれたインド太平洋』プラン」を通じて、日本は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、島嶼国との間でも透明性・包摂性のある協力を幅広く進めていく旨を伝達をいたしまして、一層の連携強化を確認したところでございます。
 加えて、ALPS処理水の海洋放出に関して、2月のPIF代表団の訪日をはじめ、太平洋島嶼国との対話を強化していることを踏まえて、安全性が確認されない海洋放出を認めることは決してない、環境及び人の健康に害がないことを確保した上で行うという日本の立場、これを両国首脳及び外相にしっかりと伝達をいたしたところでございます。
 この機会を捉え、二国間関係強化や、ALPS処理水の海洋放出に関する日本の立場について、岸田総理からの親書をそれぞれ手交いたしました。
 ソロモン諸島については、19日朝に到着後、マネレ外相との会談、ソガバレ首相への表敬訪問を行い、マネレ外相主催の昼食会に参加いたしました。その後、ガダルカナル島の戦没者慰霊碑訪問、そして在留邦人との懇談等を行いました。
 ソガバレ首相との間では、ホニアラ国際空港の整備や不発弾処理等、日本の支援を説明し、同首相からは、長年にわたる日本の支援に謝意が示されました。そして、安全保障や開発金融についても議論し、ソロモンと中国との安全保障協力協定への我が国の関心を伝えつつ、安全保障・治安分野において、まずは地域で対処するという「Family First」の原則に対する強い支持を表明をいたしました。
 マネレ外相との間では、加えて、気候変動、北朝鮮、ウクライナ情勢への対応を含む国際情勢等に関して緊密に連携していくことを改めて確認をいたしました。
 クック諸島については、こちらの本日(20日)午前にブラウン首相兼外相を表敬をいたしました。
 まず、私から、PIF議長であるブラウン首相を本年5月のG7広島サミットのアウトリーチ会合に招待したいとお伝えをし、自由で開かれたインド太平洋を推進する上でのパートナーであるクック諸島の参加を心から歓迎する旨述べ、ブラウン首相から、招待は光栄であり、感謝すると、議論に積極的に貢献したい旨述べられました。また、二国間関係として、保健医療体制の強化、そして上下水インフラ環境のための支援等、日本の支援について説明し、ブラウン首相からは、草の根レベルを含むこれまでの効果的な日本の支援に謝意が示されました。さらに、ブラウン首相は、本年開催予定のPALM中間閣僚会合で私と共に共同議長を務めることを踏まえて、来年開催予定の第10回太平洋・島サミットを見据え、充実した議論が行われるよう協力していくことを確認をしました。また、北朝鮮やウクライナ情勢への対応についても意見交換し、緊密に連携していくことで一致いたしました。
 今回の訪問を契機に、我が国は太平洋島嶼国との連携を一層進め、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて協力を強化していきます。
 私からは以上です。

質疑応答

【記者】今大臣からご紹介ありましたけれども、広島サミットにクック諸島を招待するということですけれども、クック諸島を始めとする島嶼国とどう連携していくかなんですけれども、特にこの広島サミットにおけるクック諸島の役割、そういった議論、貢献してもらいたいか、どういうことを期待しますでしょうか。

【林外務大臣】冒頭申し上げたとおり、私から、PIF議長であるブラウン首相を本年5月のG7広島サミットのアウトリーチ会合に招待したいとお伝えし、自由で開かれたインド太平洋を推進する上でのパートナーであるクック諸島の参加を心から歓迎する旨申し上げました。ブラウン首相からは、招待は光栄であり、感謝する、議論に積極的に貢献したいという発言がありました。エネルギーや食料安全保障、気候変動、保健、開発といった課題への対応、これにおいてですね、やはりG7メンバーのみならずグローバルサウスと呼ばれる国々を含めた国際社会の幅広いパートナーと協力していくことが不可欠であります。こうした観点から、このクック諸島と共にこうした点を念頭に有益な議論を行いたいと考えております。

【記者】先ほど大臣からもお話ございましたけれども、政府はグローバルサウスが直面する課題に先進国が対応すべきだとこれまでもしてきましたが、今回の訪問を通じまして、この太平洋島嶼国が抱えるどのような課題にどう取り組みたいと感じたでしょうか。また、ソロモンとの会談で表明された海洋安全保障分野での協力というのは具体的にどのようなものを検討されているでしょうか。

【林外務大臣】太平洋島嶼国は、今回の訪問を通じて実感しましたけれども、気候変動、これが国の存立に関わる死活的問題であり、また、小さな国土や人口に比べて領海そして排他的経済水域が大変大きい、広大であるなど特有の課題を抱えております。この点を踏まえ、我が国は、太平洋・島サミット、さらにはバイでの取組を通じて、各国のニーズに寄り添う形で島嶼国を支援して、信頼関係の強化を図ってきております。
 今回の訪問でですね、各国要人との会談などを通じて、この取組が実際に評価をされて、期待も大きいこと、それぞれのニーズや課題、今後の発展に向けた潜在性、これを直接確認できたと思っております。現地の視察も通じて日本の援助がしっかりと人々の暮らし等にしっかり活用されていることを確認できました。
 例えば、ソロモン諸島ですが、ソガバレ首相からはですね、不発弾処理、海上保安能力向上に関するニーズが示されました。私(大臣)自身も不発弾処理の現場、それから海上警察を自ら視察して、現場を確認しました。特に今お話のあった海洋安全保障ですが、やはり違法・無報告・無規制漁業(IUU)、これの対策、それから領海・排他的経済水域、これも大きいので、監視・取締り、これ非常に大きな課題となっております。FOIPの観点からもソロモン諸島の能力向上に資する支援を検討しております。
 クック諸島でもですね、ブラウン首相から、やはり医療、それから再生可能エネルギー等の分野に関するニーズが示されました。これまで日本が支援を行ってきた病院、先ほど訪れました。そしてこの後ですね、消防救急隊を訪れる予定をしていまして、こうしたこの現地のニーズを踏まえた日本の強みを活かす協力を実施している現場を確認をすることができ、またこれからも確認しようと思っております。
 こうした島嶼国のニーズにしっかり寄り添った支援、これを実施していければと思っております。

【記者】ALPS処理水の海洋放出についてお伺いします。林大臣は、今回の訪問でソロモン諸島やクック諸島の首脳らに、環境及び人の健康に害がないことを確保した上で行うことなど日本政府の海洋放出に関する立場を説明されたと思います。両国首脳ら先方のどのように受け止めましたか。また、今回の訪問で海洋放出に懸念を持つ太平洋島嶼国の理解が進むか、林大臣の手応えを教えてください。

【林外務大臣】今次訪問ではALPS処理水の海洋放出についても意見交換を行って、私からソガバレ首相に対して、日本が国際社会に負っている責任であると、日本は、第9回太平洋・島サミット(PALM9)のコミットメントに基づいて、環境及び人の健康に害がないということを確保した上で行うことを説明いたしました。ソガバレ首相からは、私からの説明を評価するということに併せて、引き続き日本が透明性をもって情報提供し、IAEAによる評価を含め科学的に安全性が確保されることを期待するという発言がございました。
 また、PIF議長であるブラウン・クック諸島首相に対しては、2月のPIF代表団の訪日及びPIF特別首脳会合を踏まえてですね、太平洋島嶼国との対話を強化していくことを説明いたしました。ブラウン首相からは、日本の取組の強化を評価するとともに、引き続き連携していきたいという発言がありました。この機会に両首脳に岸田総理からの親書をお渡ししたところでございます。

【記者】島嶼国についてはですね、さきほど大臣からも言及有りましたけどもソロモン諸島と中国が安保協定結ぶなど、中国の影響力拡大が指摘されています。こうした島嶼国と今後この安全保障分野でどういうふうに連携していきたいかお聞かせください。

【林外務大臣】我が国は、太平洋諸島フォーラム(PIF)自身が打ち出した、地域の平和と安全保障に対する「Family First」のこの原則を強く支持しております。
 太平洋島嶼国は、新型コロナからの経済回復、そして気候変動・自然災害の影響、さらには脆弱なインフラ等の課題に直面しており、それらに対して信頼できるパートナーが効果的な支援を行うことが重要であります。安全保障分野についても、米国、豪州、ニュージーランドといった同志国との連携を強化しながら、能力構築支援等の協力に取り組んでいかなければならないと思っております。
 また、太平洋島嶼国は、やはり気候変動を唯一最大の脅威と認識をしています。そのことを踏まえてですね、日本として、自身の気候変動対策を進めるというのが一つ大事なことですが、太平洋島嶼国に対しても支援を行っていかなければならないと思っております。
 これに関し、気候変動による海面上昇について、日本は、海域維持に関するPIF宣言を十分に考慮して、気候変動により海岸線が後退した場合も、国連海洋法条約に従って設定された既存の基線及び海域の維持は許容される、こうした立場を採ることを首脳外相にお伝えしたところでございます。


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