首相官邸・新着情報

【岸田総理冒頭発言】

 本日は、こども・子育て政策について、基本的考え方をお知らせしたいと思います。
 総理就任以来、私は、我が国は歴史的転換点にあり、これを乗り越える最良の道は「人への投資」だと申し上げてきました。人口減少時代を迎え、経済社会の活力を維持していくには、構造的賃上げを通じた消費の活性化、一人一人に着目したリスキリングと生産性の向上、そして、男女問わず、全ての人々の可能性の実現など、「人への投資」が何よりも大切です。
 その大切な「人」ですが、2022年の出生数は過去最少の79万9,700人となりました。僅か5年間で20万人近くも減少しています。2030年代に入ると、我が国の若年人口は現在の倍の速さで急速に減少することになります。このまま推移すると、我が国の経済社会は縮小し、社会保障制度や地域社会の維持が難しくなります。2030年代に入るまでのこれから6年から7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスです。
 子供は国の宝です。この国難に当たって、政策の内容・規模はもちろんのこと、社会全体の意識・構造を変えていく、そのような意味で、次元の異なる少子化対策を岸田政権の最重要課題として実現してまいります。
 正に効果ある少子化対策が求められており、当事者であるお父さんやお母さん、地域や職場など現場の皆様の声を直接聞くことが何よりも大切です。私自身、こども政策対話を各地で重ね、当事者の方々から様々な意見をお聞きしているところです。
 現在、私の指示に基づき、小倉大臣の下で、こども政策の強化について、今月末をめどに具体的なたたき台を取りまとめるべく、検討が進められていますが、本日は、これに先立ち、私が考えております目指す社会像、少子化対策の基本理念と主な課題に対する基本的方向性をお話ししたいと思います。
 私が目指すのは、若い世代が希望どおり結婚し、希望する誰もが子供を持ち、ストレスを感じることなく子育てができる社会、そして、子供たちがいかなる環境、家庭状況にあっても、分け隔てなく大切にされ、育まれ、笑顔で暮らせる社会です。子供の笑顔あふれる国をつくりたい、これが私の思いです。
 20歳代、30歳代は「人生のラッシュアワー」とも言われます。同時期に学びや就職、出産、子育てなど、様々なライフイベントが重なる中で、現在の所得や将来の見通しが立たなければ、結婚、出産を望んでも後回しにならざるを得ません。このような状況を打開し、人生のラッシュアワーに自信を持って向き合えるよう、若い方々の所得を向上させる政策、特に賃上げの実現がまず必要です。
 また、男女ともに、子育てに当たって、キャリア形成との両立や多様な働き方を阻む壁をなくしていかなければなりません。また、少子化には、我が国のこれまでの社会構造や人々の意識に根差した要因が関わっています。個々の政策の強化はもちろんですが、個々の政策をいかすためにも、社会を変えることが必要です。
 「ワンオペ育児」という言葉があります。家庭内において、育児負担が女性に集中している実態を変え、夫婦が協力しながら子を育て、それを職場が応援し、そして、地域社会全体で支援する社会をつくらなければなりません。
 そして、子育て支援策は、誰がどのような形で働いていても、家にいても、学びの中にあっても、また、両親がどのような関係にあっても、分け隔てなく、切れ目なく支援するものでなければなりません。その中で、多子世帯、ひとり親世帯、障害をお持ちのお子さんがいる家庭などには、よりきめ細やかな対応を行います。
 こうした社会を目指すための対策の基本理念は、第1に「若い世代の所得を増やす」こと、第2に「社会全体の構造や意識を変える」こと、そして第3に「全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援する」こと、この3つです。順番にお話しいたします。
 まず、「若い世代の所得を増やす」ことです。少子化の背景として未婚率の増加があり、その原因の一つとして、若い世代の経済力が挙げられます。結婚した御家庭においても、理想とする子供の数を持てない理由として、子育てや教育にお金がかかることがトップに挙がっています。若い世代の所得向上に、子育て政策の範疇(はんちゅう)を超えて、大きな社会経済政策として取り組みます。
 岸田政権の最重要課題は「賃上げ」です。物価高に負けない賃上げに取り組みます。そして、賃上げが持続的、構造的なものとなるよう、L字カーブの解消などを含めた、男女ともに働きやすい環境の整備、希望する非正規雇用の方の正規化に加え、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を加速し、若い世代の所得向上を実現します。
 その際、いわゆる106万円、130万円の壁によって、働く時間を希望どおり延ばすことをためらう方がおられると、結果として世帯の所得が増えません。こうした壁を意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、最低賃金の引上げに取り組みます。加えて、106万円、130万円の壁について、被用者が新たに106万円の壁を超えても、手取りの逆転を生じさせない取組の支援などをまず導入し、さらに、制度の見直しに取り組みます。
 こうした取組と併せて、3月末をめどに取りまとめるたたき台の第1の柱として、子育て世帯に対する経済的支援の強化を行います。これまでも幼児教育・保育の無償化などを進めてきましたが、さらに兄弟姉妹の多い御家庭の負担、高等教育における教育負担なども踏まえて、児童手当の拡充、高等教育費の負担軽減、さらには若い子育て世帯への住居支援などについて、包括的な支援策を講じます。
 第2は、「社会全体の構造や意識を変える」ことです。社会的機能の維持が危ぶまれるような少子化が進む今、「こどもファースト社会」の実現は社会全体の課題です。これまで関与が薄いとされてきた企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身者を含めて、皆が参加し、社会構造・意識を変えていくという、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したいと考えています。
 子育て中の方からは、「日本は子育てに冷たい」という指摘を聞くことがあります。例えば欧米では、公共の場に子育て世帯の専用レーンが設けてあったり、子連れの人を見つけると、周囲の人がいろいろと手助けしてくれたりすることが多いと聞きます。ところが、我が国では、「子連れだと混雑しているところで肩身が狭い」、「公園の遊び声が近所迷惑と言われないか心配」といった声を多く聞きます。
 他方で、私が訪れた岡山県奈義町は、子育てを終えた方や地域高齢者も参加し、地域ぐるみの住民参加型の子育て支援を展開することにより、出生率2.95という「奇跡のまち」を実現されていました。こうした好事例を横展開し、普及を図ることを目指します。
 政府としても、こどもファースト社会の実現をあらゆる政策の共通の目標とします。また、様々な社会運動を展開するため、先行的に国立博物館などの国の施設において、子連れの方が窓口で苦労して並ぶことがないよう、「こどもファスト・トラック」を設けるとともに、この取組を全国展開するなど、子供優先の取組を実施することとします。
 企業においても、出産、育児の支援を投資と捉え、職場の文化、雰囲気を抜本的に変えていくことが必要です。「会社に育休制度はあるが、実際には取りづらい」という社員の声が多く寄せられています。「育休で休むと職場の同僚に迷惑がかかる」、「育休について、上司や人事担当者が理解してくれない」などを理由に挙げる人が多いと言われています。こうした職場環境を早急に改め、男性、女性ともに希望どおり、気兼ねなく育休制度を使えるようにしなければなりません。
 幸い、新たな取組に挑戦している事例は数多くあります。例えば大手A社は、地方に本社機能を移転し、独自の育休と時短勤務制度で、東京に比べ、女性社員の子供の数が3倍以上になりました。中小企業のB社は、男性社員が育休を取得しない主な理由が「職場に迷惑をかけたくなかった」ということでした。このため、育休取得者の担当業務を引き継ぎ、業務が増加する他の社員に応援手当を支給し、育休取得を推進しています。
 こうした取組が幅広く浸透するよう、現状、低水準にとどまっている男性の育休取得率の政府目標を大幅に引き上げて、2025年度に50パーセント、2030年度に85パーセントとします。目標達成を促すため、企業ごとの取組状況の開示を進めます。最大のポイントは中小企業です。中小企業において、職場の負担を気兼ねする声が多いことも踏まえ、応援手当など育休を促進する体制整備を行う企業に対する支援を検討します。国家公務員については、先んじて男性育休の全員取得を目標として定め、2025年度には85パーセント以上が1週間以上の育休を取得するための計画を策定し、実行に移します。地方自治体や企業の皆様にも、先行して意欲的な取組をしていただくよう、様々な機会を捉えて要請してまいります。
 こうした育休を取りやすい職場づくりと両輪で、育児休業制度自体も充実させます。利用者の声を踏まえて、キャリア形成との両立を可能にし、多様な働き方に対応した自由度の高い制度へと強化します。例えば現在は、育児期間中に完全に休業した場合に育児休業給付が出ますが、希望する場合には、時短勤務時にも給付が行われるよう見直しします。
 また、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を手取り10割に引き上げます。これらにより、夫婦で育児、家事を分担し、キャリア形成や所得の減少への影響を少なくできるようにします。
 育児休業中の所得減少に対する支援は、働いている企業の大きさにかかわらず、そして、正規、非正規を問わず行われなければなりません。そこで、非正規に加え、フリーランス、自営業者の方々にも、育児に伴う収入減少リスクに対応した新たな経済的支援を創設します。
 育児休業に加え、職場に復帰した後の子育て期間における働き方も重要な課題です。人生のラッシュアワーに当たる時期に子供と一緒に過ごす時間を確保できるよう、例えば「フレックスタイムで午後5時までに帰宅する」、「テレワークを活用する」など、働き方を変えていかなければなりません。
 以上、育休を取りやすい職場づくり、育休制度の強化、働き方改革を通じて、人生のラッシュアワーの中で御家庭に「子供と過ごせる時間を確保する」、このことを初めて本格的に取り上げます。大きな社会構造改革には相応の時間を要します。しかし、少子化問題はもはや一刻の遅れも許されない「時間との闘い」であり、社会全体の意識改革に向けた取組、働き方改革の推進とそれを支える育児休業制度等の強化などに全力で取り組んでいきます。
 基本理念の第3は、「全ての子育て世帯を切れ目なく支援する」総合的な制度体系を構築することです。これまでも自公政権において、保育所の整備、幼児教育・保育の無償化など、こども・子育て政策を強化してきました。予算は大きく増加し、その結果、例えば保育所の待機児童はピーク時の2.6万人(注)から、昨年は約3,000人まで減少するなどの成果がありました。
 他方、この10年間で社会経済情勢は大きく変わり、今後取り組むべき政策の内容も変化しています。これまで申し上げた経済的支援の拡充、社会全体の構造、意識の改革に加え、子育て支援サービスの内容についても、親が働いていても、家にいても、全ての子育て家庭に必要な支援をすること、幼児教育・保育サービスについて、量・質両面からの強化を図ること、これまで比較的支援が手薄だった妊娠、出産時から0~2歳の支援を強化し、妊娠、出産、育児を通じて、全ての子育て家庭の様々な困難、悩みに応えられる伴走型支援を強化すること、子供の貧困、障害児や医療ケアが必要なお子さんを持つ御家庭、ひとり親家庭などに対して、より一層の支援を行うことなどが必要になっています。
 今月末にまとめるたたき台では、こうした観点から、子育て支援制度全体を見直し、全ての子供・子育て世帯について、親の働き方やライフスタイル、子供の年齢に応じて、切れ目なく必要な支援が包括的に提供される総合的な制度体系を構築すべく、具体的な支援サービス強化のメニューをお示しします。
 その際、重要な点は、伴走型支援、プッシュ型支援への移行です。従来、様々な支援メニューは当事者からの申請に基づいて提供されてきましたが、これを行政が切れ目なく伴走する、あるいは支援を要する方々に行政からアプローチする形に、可能な限り転換してまいります。
 以上、こども政策の強化について、目指す社会像、基本理念と主な課題に対する基本的方向性についてお話をしました。更に検討を進め、今月末をめどに、小倉大臣に具体的なたたき台をパッケージで取りまとめてもらいます。
 そして、4月1日には、日本の省庁の歴史で初めて「こども」を名称に冠する「こども家庭庁」が発足します。その後は、国民の皆様の声を引き続き伺いながら、私が主導する体制の下で、必要な政策強化の内容、予算、財源について更に議論を深め、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠をお示しします。
 先日、こんな話を一人の若い女性から伺いました。結婚して子供も持ちたいが、将来、離婚することもあり得る、そのとき一人で子供を育てていけるだろうか、養育費はちゃんともらえるだろうか、そんなことを考えると、結婚に踏み切れない。正に時代も若い方々の意識も、大きく変化していることを実感するお話でした。内閣総理大臣として、時代の変化、若い方々の意識の変化を的確に捉えつつ、時間との闘いとなっている少子化問題に、先頭に立って、全力で取り組んでまいります。
 我が国は、世代間の助け合いと支え合いを大切にしてきました。今こそ若い世代の未来を切り拓(ひら)き、少子化のトレンドを反転させる。これは、経済活動や社会保障など我が国の社会全体にも寄与します。何とぞ世代を超えた国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これからプレスの皆様より御質問いただきます。
 指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。
 まず、幹事社から御質問いただきます。
 では、毎日新聞、高橋さん、どうぞ。

(記者)
 毎日新聞の高橋です。よろしくお願いします。
 こども政策についてお伺いいたします。今月末にこども政策のたたき台をまとめられるということでしたが、児童手当の所得制限撤廃や年収の壁の是正などの具体的な制度設計にも踏み込んで提示するお考えはあるのでしょうか。
 また、先ほど様々な方針が示されましたが、その財源について、6月の骨太の方針という話も今ございましたけれども、どの程度詳細にお示しされるのでしょうか。
 また、総理は将来的なこども予算の倍増ということを掲げておられますが、何を基準に倍増し、いつまでに倍増するイメージなのか、めどについて教えてください。

(岸田総理)
 まず、たたき台については、小倉大臣に指示しました3つの基本的方向性に沿って、今必要とされる子育て政策の内容、これをパッケージでお示ししたいと思っています。本日の会見で申し上げたように、若い世帯の所得を増やすことが重要だと考えています。構造的賃上げに向けた取組を大きな社会経済政策として進めるとともに、たたき台の中で、経済的支援の強化に向けて、今、御指摘のありました年収の壁の見直しあるいは児童手当の強化・拡充、また、高等教育費の負担軽減、さらには若い子育て世帯への住居支援、こうしたことについて包括的な支援策を示したいと思っています。
 そして、財源、あるいは倍増の基準といったことについても御質問がありました。これについては、これまでも申し上げておりますように、まずは政策の中身が重要です。政策の中身を詰めなければ、倍増の基準や時期を申し上げることは適当ではないと思っています。まずは、充実する内容を具体化し、そして、その内容に応じて社会全体でどのように安定的に支えていくのか。こうしたことを考えていかなければいけない。予算や財源について考えていかなければいけない。このように思っています。ですから、こども政策担当大臣の下、3月末をめどに、こども・子育て政策として充実する内容をパッケージとしてお示しし、その上で、骨太方針までに政策内容の更なる具体化を進めるとともに、将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示したいと思っています。
 以上です。

(内閣広報官)
 続きまして、幹事社の中国新聞、樋口さん、どうぞ。

(記者)
 中国新聞の樋口と申します。よろしくお願いします。
 総務省の放送法をめぐる行政文書に関して伺います。この文書をめぐっては、連日、国会審議が続いておりますけれども、ポイントとなっているのは政治的公平性というところで、この解釈について、当時の官邸が都合のよい解釈をしたのではないかという懸念が持たれております。この点について、現政府として何か検証する考えがないのか。これをまず総理に伺います。
 あわせて、当時の高市総務大臣が、一部の文書について、捏造(ねつぞう)だと主張しておりまして、この考えは今日の時点でも変わっていないということであります。この点に対しては批判というのもかなり出ているのですけれども、総理としての見解を併せて伺います。

(岸田総理)
 まず、放送法の解釈についてですが、これは総務省が放送法を所管する立場から、責任を持って、従来の解釈を変更することなく、補充的な説明を行ったものである、このように承知しております。この考え方は一貫して維持されております。あわせて、この行政文書の正確性について、総務省において精査を行っていると承知しております。
 そして、高市大臣の発言について御質問がありました。高市大臣は、当時の大臣としての知見に基づき、国会や記者会見で説明を続けており、総務省において放送法をめぐる一連の経緯に関して精査を行っている、こうした対応が行われていると承知しております。
 以上です。

(内閣広報官)
 ここからは、幹事社以外の方から御質問をお受けします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
 それでは、NHKの清水さん。

(記者)
 NHKの清水です。お願いします。
 教育費と国債について伺います。総理も触れられましたが、少子化対策をめぐっては、教育費などの負担軽減が重要だという指摘があり、自民党の調査会は、子育ての時期の奨学金の返済の負担軽減などを盛り込んだ提言をまとめています。少子化対策を進めるに当たって、教育費についてはどのような施策を考えているのか、お考えをお聞かせください。
 また、一部の財源について、教育国債を検討すべきとの意見もあります。教育費への対応や少子化対策を進める上で、使い道を限定した国債を発行する選択肢はあるのか、総理のお考えをお聞きします。お願いします。

(岸田総理)
 まず、先ほども申し上げたように、若い世帯の所得の向上が重要であり、人への投資として、大きな社会経済政策として取り組むとともに、これと併せて、今回のこども・子育て政策の第1の柱として、子育て世帯に対する経済的支援の強化を行うこととしています。その中で、御質問の教育の分野ですが、教育の分野においても、子育て世帯に対する経済的支援として、令和6年度から給付型奨学金等について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象拡大をするとともに、出世払い型の奨学金制度の導入、こうしたものに取り組むこととしております。さらに、結婚や出産などライフイベントに応じた柔軟な返済が可能となるよう、減額返済制度の見直し、これも行うことを考えています。
 御質問は財源の部分ですが、財源については、まずは充実するこども・子育て政策の内容、これを具体化した上で、その内容に応じて社会全体でどのように安定的に支えていくか、これを考えていきたいと思います。
 教育国債については、これまでも申し上げているとおり、安定財源の確保あるいは財源の信認確保の観点から慎重に検討する必要があると考えております。これは従来から申し上げているとおりであります。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 テレビ朝日の千々岩さん。

(記者)
 テレビ朝日の千々岩です。よろしくお願いします。
 日韓関係について伺います。昨日、尹(ユン)大統領が来日されて首脳会談、それから夕食会と、関係改善に向けた動きが続いている一方で、韓国国内では特に元徴用工問題で反発の声も出ています。こうした反発の中で尹大統領が解決策を決断されたことについて、岸田総理はどう評価され、どう受け止めていらっしゃるか、これを1点お聞きしたいのと、総理が外務大臣時代に正に取り組まれた慰安婦合意もそうですが、こうした反発の中で韓国側が態度を変えると、姿勢を変えるということもありましたが、今回、そうした懸念、不安みたいなものはお感じにならないかどうか、これもお聞きしたいと思います。
 それから、すみません、もう一点なのですが、昨日、夜は2軒はしごされたと伺っていますが、どんなお酒を飲んで、どんな会話をされたか、また、尹大統領は一緒にお酒を飲んでどういう印象を持たれたか、これも率直なところをお聞かせいただければと思います。

(岸田総理)
 まず、昨日は、日韓関係において、正常化に向けて大きな一歩となる前向きな会談を尹大統領と行うことができたと感じています。そして、日韓間には隣国であるだけに、様々な経緯や歴史もありますが、それを乗り越えて困難な決断と行動をされた尹大統領には心から敬意を表したいと思います。私自身も、困難な時期を乗り越えてきた先人たちの努力を引き継ぎ、未来に向かって尹大統領と共に歩んでいきたいと思います。そして、両国の間には乗り越えなければいけない課題、まだ幾つもあると認識しています。これを一つ一つお互いの信頼関係に基づいて乗り越えるべく、努力を未来に向けて行っていきたいと思っています。
 そして、御質問の昨晩の会食、どんな酒を飲んだか、大変楽しいお酒を飲ませていただきました。それから、会話、中身につきましては、個人的なことも含めてお互いの信頼関係を深める意味で、大変有意義な会話をさせていただいたと感じています。こうしたトップ同士の信頼関係を基に、両国関係を前に進められることができればと期待しています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 では、ロイター、杉山さん。

(記者)
 ロイター通信の杉山と申します。よろしくお願いします。
 国際金融市場に関する質問です。シリコンバレー銀行など米国銀行の破綻に続き、欧州でクレディ・スイスの経営不安が起きました。各国当局の迅速な対応で懸念はやや和らぎましたが、金融市場で不安がくすぶる展開も続きそうです。海外経済が日本の金融機関や実体経済へ与える影響をどのように見ていますでしょうか。世界的な金融の動揺が継続した場合、リーマン・ショック級の危機に発展する可能性はないのか、御見解を伺えればと思います。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 シリコンバレーバンク等の経営破綻を受けて、足元の金融市場ではリスク回避的な動きが見られますが、流動性供給策など、欧米の金融当局が信用不安の影響を拡大させないための迅速な対応を講じていると承知しています。現在、日本の金融機関は総じて充実した流動性あるいは資本を維持しており、金融システムは総体として安定していると評価しています。その上で、政府としては、様々なリスクがあり得ることを念頭に置き、日本銀行を始め、各国の金融当局とも連携しつつ、内外の経済金融市場の動向、また、それが実体経済や金融システムの安定性に与える影響等について、強い警戒心を持って注視してまいりたいと思います。
 その一環として、本日、財務省、金融庁、そして日本銀行の間で、最近の市場動向について意見交換を実施いたしました。政府と日銀の緊密な連携、これを確認したところです。こうした姿勢を持って引き続き注視していきたいと考えています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、日経新聞、秋山さん。

(記者)
 日経新聞の秋山です。
 総理、先ほど、子育て世帯への住居支援ということも言及されましたが、今、政府・与党で住宅支援というのは主に低所得者層を対象にした議論になっていると思うのですが、都市部の住宅、マンション価格などが高騰していて、住宅費は中間層を含めて幅広い子育て世帯の負担になっています。コロナで地方へ若い世帯が移住する動きも一時期注目されましたが、コロナが落ち着いてきて、再び都市へ回帰するというような傾向が見られます。こういう都市、地方、また住宅の問題、この辺についての総理のお考えをお願いします。

(岸田総理)
 まず、子育て世帯にとって必要な広さ、あるいは利便性等が確保された住まいを確保すること、これは大変大きな負担であり、特に近年、都市部を中心に住宅価格が上昇傾向にあることから、課題はますます大きくなっていると認識しています。
 このため、子育て世帯に対する経済支援の一環として、公営住宅や民間空き家等の活用、また、子育て世帯等への住宅取得支援の充実、そして、子育て世帯に関する住まいの環境づくり等に取り組んでいきたいと考えています。
 また、都市と地方の関係については、デジタル田園都市国家構想に基づいて、デジタルの力を徹底活用するため、光ファイバー、あるいは5Gといったデジタルインフラの整備を行い、地方におけるデジタル実装を推進することで、企業立地、テレワーク、あるいは二地域居住、こうしたものを通じて、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会、こうした社会の実現を図り、大都市圏への過度な集中の是正に取り組んでいく、こうした方策も進めていきたいと考えています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次に、フジテレビの瀬島さん。

(記者)
 フジテレビの瀬島です。よろしくお願いします。
 総理は先ほど子育て支援の中で中小企業の役割を言及されましたけれども、先日、政労使会議の場では、中小企業の賃上げができる環境づくりについて強調されました。中小企業では厳しい現状も指摘されていますけれども、賃上げの波をどのように広げていくのか、また、来年以降どういうふうに継続させていくのか。今後、経済団体や労働組合との連携とをどのようにお考えでしょうか。また、この賃上げと、今おっしゃった子育て政策との両立というのは可能だとお考えでしょうか。

(岸田総理)
 最後の質問は、賃上げと子育て政策。

(記者)
 中小企業の重要性という意味で、両方。

(岸田総理)
 この2つを両立できるか。

(記者)
 はい。

(岸田総理)
 まず、我が国の雇用の7割を占める中小企業の賃上げを実現する、これは大変重要な課題だと考えています。昨日の春季労使交渉の集中回答日においては、多くの大手企業が高い支給水準の回答を出しました。こうした動きを中小企業、あるいは小規模事業者等に広げていくことが重要であり、そのためには取引適正化、これを進めていく必要があると考えます。
 これまでも価格転嫁対策をより実効的なものにするため、中小企業庁や公正取引委員会の大幅な増員ですとか、親事業者の交渉と転嫁の状況の公表、指導、助言、こういったものを進めてきたところですが、労務費など価格転嫁が十分できていないといった状況もあります。15日に政労使の意見交換の場を設けたわけですが、中小あるいは小規模企業の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠であるという点において、基本的に合意がなされたことを評価しています。
 政府としても、公正取引委員会の協力の下、労務費の転嫁状況について業界ごとに実態調査を行った上で、これを踏まえて、労務費の転嫁の在り方について指針をまとめていきたいと思います。
 また、業界団体にも、これまで政府で実施した各般の価格転嫁に関する調査の結果を踏まえて、自主行動計画の改定あるいは徹底、これを求めてまいります。
 こうした取組に加えて、最低賃金の引上げ、あるいは同一労働同一賃金の施行の徹底、これを進めるとともに、中小企業の賃上げの原資を確保するため、生産性向上支援、これも進めてまいりたいと考えています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。文化放送、山本さん。

(記者)
 文化放送の山本です。よろしくお願いします。
 物価高対策について総理にお伺いします。先日、自民党が、総理に低所得世帯に一律3万円、低所得の子育て世帯に一律5万円の給付を求めました。月末にも取りまとめる物価高対策に、この支給、給付というのは盛り込まれるお考えなのかということと、この物価高、一体いつまで続くと総理は想定されていらっしゃるのか。その上で、今回取りまとめる物価高対策というのは、どれぐらいの期間を想定して打たれるのでしょうか。
 あともう一つ、総理はマスクを外されて今日でまだ5日なのですけれども、マスクを外す生活、5日間体験されて、どのような今、印象を持たれているのかというのもお聞かせください。

(岸田総理)
 まず、物価高対策については、エネルギー、食料品価格の影響緩和について、15日の与党からの提言を踏まえて、コロナ・物価予備費の使用を含め、追加策を講ずることといたします。
 御指摘の低所得者世帯への支援について提言を受けておりますので、そうした支援、考えていきたいと思っております。そして、その上で、それ以外にも、エネルギーについて、電力の規制料金の改定申請の厳格かつ丁寧な査定による審査を進める。その上で電力料金の抑制に向けた取組について3月中に検討結果をまとめる。さらには食品について、飼料、あるいは輸入小麦について対策を講じるなど、必要な追加策、早急にまとめて迅速に実行することで、国民生活、あるいは事業活動を守っていきたいと思っています。
 そして、もう一つ、マスクを外して印象はどうかという御質問を頂きました。私自身の印象は、マスクを外すことによって、息苦しさを感じる場面も少なくなったような気がいたしますが、いずれにせよ、マスクについては、それぞれの国民の皆様の判断にお任せするということであり、政府から何か強制するものではありません。
 そして、お一人お一人いろいろなお立場の方、持病を持っておられる方など、様々なお立場の方々がおられるわけですから、それぞれの場面において適切にマスクの着脱は御判断いただくべきものであると思っています。
 ただ、政府として、高齢者施設等へ足を運ぶなど、重症化リスクの高い方々との接触場面についてマスク着用を推奨するというような例を示すなど、できるだけ混乱を来さないよう、国民の皆様にマスク着脱について適切に御判断いただけるような材料を用意しておくことも大切なことではないか、このように思います。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、大変恐縮ですが、あと2問とさせていただきます。
 それでは、西日本の河合さん。

(記者)
 西日本新聞の河合です。よろしくお願いいたします。
 4月23日に投開票される衆参5つの補欠選挙について伺います。岸田政権として、昨年夏の参院選以来の国政選挙となりますが、勝利数の目標を理由とともに教えてください。また、岸田政権への評価も今回の有権者の投票行動に影響すると考えますでしょうか。どう訴えていくかについてもお答えください。お願いします。

(岸田総理)
 統一地方選挙とともに行われる今回の衆参5つの補欠選挙ですが、これは党大会でも申し上げたとおり、今後の国政にも影響を与える可能性もある、こうした重要な選挙であると認識しています。
 勝敗ライン、目標についてお話がありましたが、大切な選挙でありますので、自民党の議席をしつかり守り抜き、更に拡大していくべく全力を尽くしていきたいと思っています。
 そして、補欠選挙ですので、これは、補欠選挙に至るまでの様々な経緯ですとか、地域の実情が問われる選挙でもありますが、あわせて、国政上の課題、そして、それに対する対応なども総合的に見極めた上で、有権者の方々は投票されるものであると認識しております。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、読売新聞、仲川さん。

(記者)
 読売新聞の仲川です。
 明日18日、ドイツのショルツ首相が来日されます。総理は、明日、日独首脳会談に臨まれることになるわけです。総理は今年のG7議長として、年初から欧州、北米を歴訪され、G7メンバーのフランス、イタリア、英国、カナダ、米国の首脳と会談されました。明日のショルツ首相との首脳会談をもってG7全メンバー国の首脳との会談が一通り終わることになります。
 広島サミットは、5月19日からの日程ですので、あさって3月19日で残り2か月となると思います。準備が進んでいることと思いますけれども、広島サミットでどのような議題を設定して、何を発信したいお考えでしょうか。理由も併せてお答えいただければと思います。また、招待国、広島での日程で固まったものがあれば教えてください。
 以上です。

(岸田総理)
 まず、G7広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試み、あるいはロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用、これはあってはならないものとして断固として拒否し、そして、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く、こうしたG7の強い意思、これを力強く世界に示したいと思っています。
 そして、同時にエネルギー、食料安全保障を含む世界経済、そして、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題へのG7としての対応を主導し、また、こうした諸課題への積極的な貢献と協力を通じて、グローバル・サウスへの関与、これも強化したいと思っています。
 また、広島サミット、これはアジアで開催されるG7サミットですので、自由で開かれたインド太平洋に関するG7の連帯についてもしっかり確認する機会としたいと思っています。
 それに加えて、G7首脳を含め、世界に被爆の実相をしっかりと伝えていくこと、これは核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要であり、この観点から広島サミットの日程についても、平和記念資料館への訪問を始め、しっかりと検討しているところです。
 招待国あるいは詳細な日程については、今現在まだ決まってはおりません。検討を続けているところであります。
 以上です。

(内閣広報官)
 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
 御協力ありがとうございました。

(注)冒頭発言では「2.9万人」と発言しましたが、正しくは「2.6万人」です。

発信元サイトへ