内閣府・新着情報

日時

2023年2月14日(火)14:00~16:05

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

  • (構成員)
    【会議室】
    後藤座長
    【テレビ会議】
    飯島座長代理
    清水委員
  • (オブザーバー)
    【会議室】
    大石委員
    消費者庁取引対策課
    【テレビ会議】
    木村委員
    黒木委員
    板倉陽一郎 ひかり総合法律事務所パートナー弁護士
    坂下哲也 一般財団法人日本情報経済社会推進協会常務理事
    丸山絵美子 慶應義塾大学法学部教授
    万場徹 公益社団法人日本通信販売協会専務理事
    独立行政法人国民生活センター
  • (参考人)
    【会議室】
    山田茂樹氏 司法書士
    【テレビ会議】
    池本誠司氏 弁護士
  • (事務局)
    小林事務局長、岡本審議官、友行参事官、田村企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 有識者ヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1.開会》

○後藤座長 皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、第11回「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」を開催いたします。

本日は、大石委員、私が会議室にて出席、それから、消費者庁取引対策課の奥山課長にも御出席いただいております。

飯島座長代理、清水委員、木村委員、黒木委員、板倉委員、坂下委員、丸山委員、万場委員、独立行政法人国民生活センターがテレビ会議システムにて御出席いただいております。

一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構が御欠席です。

本日は、有識者ヒアリングのため、弁護士の池本誠司様にはテレビ会議システムにて御出席いただき、司法書士の山田茂樹様に会議室で御参加いただいております。お忙しいところ、誠にありがとうございます。後ほど改めて御紹介いたします。

開催に当たり、会議の進め方等について、事務局より説明をお願いいたします。

○田村企画官 本日も、お忙しいところ、ありがとうございます。

本日はテレビ会議システムを活用して進行いたします。発言時以外はマイクの設定をミュートにしていただきますようお願いいたします。

また、画面は、皆様、差し支えない範囲でオンにしていただければ幸いでございます。

御発言の際は、混線を避けるため、チャット機能を使用して発言する旨をお知らせいただき、それを確認した座長から指名がありました後に発言をお願い申し上げます。

本日は、報道関係者を除く一般傍聴者の皆様にはオンラインにて御参加いただいております。

議事録については、後日公開することといたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりです。

お手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

私からは以上でございます。


《2.有識者ヒアリング》

○後藤座長 1月からオブザーバーとして御参加いただいております、一般財団法人日本情報経済社会推進協会常務理事の坂下委員から、本ワーキング・グループで検討対象にしておりますチャット機能について、技術的な側面から解説をお願いいたします。

それでは、よろしくお願いいたします。

○坂下委員 では、よろしくお願いします。日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の常務理事の坂下でございます。1月からオブザーバーで参加させていただいています。

当協会はプライバシーマークの付与を事業としている団体です。電子情報利活用研究部という政府の政策の企画や推進などにご協力している部署の担当常務理事です。

本日は、チャット機能について、この委員会では議論されておりますので、技術的な面につきまして御説明を差し上げたいと思います。

この資料につきましては、チャット機能の御説明をします。仕組みがどうなっているか、メール機能と電話機能と何が違うのか、SNSの動向とチャットは何が違うのだ、どう定義されているのかということを御説明していきます。ただし、チャット機能の構成する技術的な詳しい部分は、ここでは割愛をしているところを御了承ください。

チャット機能の定義です。日本のシステムの定義例では、“ネットワークを介してリアルタイムにメッセージを交換すること“となっています。

消費者向けには、総務省が幾つか定義を出しています。国民向けのサイバーセキュリティーサイトの中では、“インターネットにおいて、複数の利用者がリアルタイムにメッセージを送信し合うシステムだ”ということが定義されていますし、暮らしを支えるインターネットのサイトでは、“離れた場所にいる人同士がリアルタイムに短い文章のメッセージを送り合うことで会話のようなやり取りを行うこと”がチャットだとしています。

海外では、1例ですけれども、Techopediaというサイトでは、“インターネットを介したメッセージのやり取り、またはメッセージ交換のプロセスを指している。チャット対応のサービスまたはソフトウエアを介して通信する2人以上の個人が関与する。チャットは、チャット、オンラインチャット、インターネットチャットと呼ばれている。”とあります。海外の定義のほうが非常にしっくりくるのですけれども、こういうものが定義になっております。

チャットの仕組みについて、総務省が公開している図で説明します。Aさん、Bさん、Cさん、Dさんというのがおりますが、これは、デバイスはスマホでもパソコンでもいいのですが、チャットのアプリケーションは同じものが入っています。ここから何か文字を入れるとチャットサーバに送信されて、効率的にメッセージを送り合うというのがチャットの仕組みです。では、何をもって宛先を識別しているかというと、これはアプリケーションですから、アプリケーションを登録したときに、Aさん、Bさん、Cさん、DさんにはユニークなIDが振られています。このIDを使って送受信を可能にしています。

ですから、例えば私がメッセンジャーソフト、委員のどなたかがチャットソフトを持っていて、それが他社製だった場合には、その通信は行えません。これが特徴です。

次に、チャットの利便性から見た特徴ですが、まず、チャットでは、皆さんも様々なアプリで使っていらっしゃるかもしれませんが、定型文が要りません。Toで相手を指定するとか、送信までの時間を長く取らなくてはいけないとか、そういうことがありません。

これは、アイ・コミュニケーション社が2018年に実施した企業アンケートでは、電子メールを1通作成するのにかかる平均時間は5分だというのが36.92%となっていますが、チャットの場合には即時に送ることができます。

また、複数人でのやり取りが可能なグループチャットがありますので、そのグループに入っている人に一斉にメッセージを送ることができます。

また、一度送信したメッセージを後で編集したり、なかったこととして削除することができる。そこで誤送信のリスクも減らせます。

それ以外、送られた者以外はそのメッセージは閲覧できません。また、読んだかどうか確認ができます。また、送信時間が分かるというところが利便性上の特徴になります。

また、チャットの場合には、プッシュ通知というものがあります。スマホ等から端末に直接送信できるメッセージ機能をプッシュ通知と言います。送信されたメッセージは、ユーザーによって開封とか消去されるまでの間、スマホの場合ですと、必ず皆さんの画面上にメッセージが来ていますというのが表示されていると思います。これによって、開封率・既読率が高まります。そのため、チャットアプリケーションというのはプッシュ通知機能を備えている場合がとても多く見られます。お店に行ったときに、お友だち登録をしてくれるとサービスしますよと書かれていますがこのようなプッシュ機能を使ってお店の案内ができるためです。

では、ここでチャットと電話とメールを全体的に比較してみます。

電話は、電話番号という宛先に電話局の交換機を介して接続します。電話機の中に薄い鉄板と電磁石の炭素の粒がありまして、これが振動することで音が電気信号に変わって、皆さんの職場や家にある電話機の中で、その電気信号を音に戻して電話というのは会話をします。会話というのは、録音されることがなければ揮発性の情報と言えます。消えてなくなってしまいます。

メールは、電子メールというのはメールアドレスという宛先を用いて送受信されています。メールアドレスは、(名前)@(ドメイン)で構成されていると思います。ドメインはサービスプロバイダなどのメールサーバの場所を指しています。電子メールが送信されると、契約しているサービスプロバイダや企業にあるメールサーバにデータが送信されます。電子メールを受け取ったサーバは、受取人が電子メールを取りに来るまでサーバ内にデータを保管します。利用者はサーバ内のメッセージを見に行って、皆さんは職場や家庭でメールを見ているわけです。

チャットは、先ほど御説明しましたが、サービス事業者が提供しているアプリケーション同士で送受信されます。そのときには、利用者IDが宛先になってやり取りがされます。リアルタイムでメッセージのやり取りが行われまして、リアルタイムに表示されますので、メッセージを取りに行く必要はありません。一方、ソーシャルネットワークの投稿とか電子掲示板のようなサービスは、利用者が、私たちが自ら見に行く必要があります。ここがチャットと投稿のようなSNSの違いです。また、利用人数は、グループチャットができるように、多人数でもいいわけでございます。

前回のワーキングに参加させていただいて、特定商取引に関する法律施行規則というものを拝見させていただきました。この法律施行規則の中で、今ご説明した通信の機能を持つものを分類してみました。

電話番号を送受信のために用いて電磁的記録を相手方の使用に係る携帯して使用する通信端末機に送信する方法というのは、電話番号をIDにしたショートメッセージのようなもの。これでURLを送ったり、ショートメッセージで決済を行うというものを指しているのだろうと思いました。

電子メールで送信する方法は、電子メールを用いてPDFとかURLを送る方法なのだろうと思います。

今回のチャットは、「この前号に規定するもののほか」というところに属するのではないかと思います。受信する者を特定して情報を伝達する方法です。同じプラットフォーム、アプリケーションを含みます。これを利用する者同士のIDを利用して情報を伝達するものとして、ここに属するものではないかと思います。

前回のワーキングでもLINEという言葉がたくさん出ておりましたが、それ以外にも、Facebook、Twitter、Slack、Teams、Tiktok、WhatsApp、Instagram、Discord、Paypay、LinkedIN、Eightなど、様々なものがこの機能を持っています。ですから、チャット機能を持つアプリケーションといった場合にはかなり多くの種類があります。

非常に簡単ではございますが、チャット機能につきまして、私のほうから御説明させていただきました。ありがとうございました。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、御質問などある方がいらっしゃいましたら、チャット欄にてお知らせください。よろしくお願いいたします。

いかがでしょうか。

木村委員、よろしくお願いいたします。

○木村委員 木村です。御説明ありがとうございます。

前回出ていなくて、不勉強で申し訳ないのですけれども、いわゆるチャット機能というのは、LINEとかSNSに付随してついているというものを想像したらよろしいのでしょうか。私が今までチャット機能と想像していたのは、例えばFacebookなどによくショートメッセージについてやり取りするようなことがあるのです。イメージとして、チャット機能というもののイメージがお互いに違っていたら困るので、チャット機能そのものというのはどういうものか、もう少し具体的に説明していただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

○坂下委員 木村先生がおっしゃっていたのは、Facebook、いわゆるメタ社が提供しているメッセンジャーのことを言っていると思います。これはFacebookというアプリケーションとチャットをするアプリケーションが分かれて提供されているもので、私もそれは使っております。LINEの場合には、LINEのアプリの中にチャット機能がついていて、それを私たちは使っています。

先生からお話があったように、SNSを提供している事業者が一つの機能としてリアルタイムにやり取りをするものを提供している。それが一つのアプリケーションの中に包含されているものもあれば、別のアプリとして提供されているものもあるとお考えいただいてよろしいのではないかと思います。

○木村委員 分かりました。ありがとうございます。

私が一般的にイメージするチャット機能という言葉と少し違っていたので、今ので理解いたしましてありがとうございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。

大石委員、よろしくお願いします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

私もチャットはLINEで少し使うぐらいなので、ほかにこれだけあるというのを知らずに驚いたということがまず感想なのですけれども、チャットの定義というのが、今、日本と海外であるという御紹介があったのですが、SNSの定義というのが、前に消費者庁さんとお話をしたときに、日本ではSNSの定義がないというようなことだったと思うのですけれども、SNSについての定義というのがもし日本とか海外であって、それを御存じであればぜひ教えていただきたいなと思ったのですけれども、いかがでしょうか。

○後藤座長 いかがでしょうか。

○坂下委員 SNSの定義も総務省のほうで一般の皆さんが分かるように公開しておりまして、登録された者同士が交流できるウェブサイトの会員制サービスというのが総務省の定義として公開されています。

海外の場合ですと、社会的なネットワーキング、これはソーシャルなつながりということを指していますが、社会的なネットワーキングを提供するサービスというのがSNSの一般的な定義になっていると思っています。

○大石委員 ありがとうございました。

○後藤座長 よろしいですか。

ほかにございませんでしょうか。

課長、よろしくお願いいたします。

○消費者庁取引対策課 特商法を引いていただいていますので、補足めいたことを申し上げます。

ここで御指摘のとおり、いわゆるチャット機能が11条の2の3号に該当する場合が多いとは思いますけれども、最近、技術的に、例えば日本の携帯事業者ですとプラスメッセージというサービスのように、チャット機能がありながら、識別子としては電話番号を使っている場合があったり、それから、メールアドレスを識別子としてチャットのようなインターフェースで通信しているような場合がありますので、それは恐らく2号に該当してくるのかなと。技術的にいろいろな識別方法を使いながら、裏でいろいろなことを使いながら通信している場合はありますので、それは3号には限らないというのが私どもの今の認識でございます。

それから、正に定義のところにありますけれども、交換される情報というのはメッセージとなっているのです。これは実は文章に限らないというのがございまして、ただ、多分議論が非常にややこしくなると思うのです。音声メッセージとか、それから、画像をやり取りしたりというのもチャットであるのですけれども、例えばスマートスピーカーなどは音声チャットと呼ばれていますけれども、多分ここで議論なさりたいのは、もしテキストデータとかのビジュアルであれば、それをここの場の検討対象とされるというところははっきりなさったほうが、恐らく議論の焦点がはっきりしていいように思いました。

以上でございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

この資料の6ページですけれども、特定商取引に関する法律施行規則の11条の2の3号のところですが、特商法の解説書などを見ますと、この3号のところにSNSなどというように書いてあると思いますけれども、今おっしゃったのは、SNSというのはこの3号に該当する場合だけではないということでよろしいですか。

○消費者庁取引対策課 今、いろいろな通信規格を使いながら社会的なつながりを実現する手段が出ていますので、それぞれの場合があり得ますというところで、もし何らかこの施行規則にのっとった議論をすることが必要な場合は、それぞれあり得るとお考えいただくことが必要ということです。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。チャット機能の定義や仕組み、それから、特徴について共通の認識を持つことができたと思います。

それでは、次の項目に移りたいと思います。

本日は、チャット機能を利用した商取引について、法的な課題と法制度の在り方に関し、有識者ヒアリングとして弁護士の池本誠司様と司法書士の山田茂樹様にお越しいただいております。本日は、お忙しいところ、誠にありがとうございます。

山田様、池本様の順に御説明をいただきました後に、併せて意見交換をさせていただきたいと思います。

それでは、山田様、御説明をよろしくお願いいたします。時間は30分程度を予定しております。よろしくお願いいたします。

○山田氏 よろしくお願いいたします。ただいま御紹介いただきました司法書士の山田と申します。

今日は30分ということで御説明をさせていただきたいと思います。

それでは、資料2の順番に従って説明をさせていただきたいと思います。

なお、資料は詰め込んで作成しておりますので、資料の細かい点につきましては今日は割愛して、主に要点をお話するということにせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

では、まず1枚めくりまして、1ページ目、本日の報告についてということで、今日、私の報告する流れについてまず確認をさせていただきたいと思います。

2段階に分けて説明をさせていただこうと思っておりまして、まずは近年トラブルになっております副業関係のいわゆる情報商材に関する相談事例の取引過程の整理ということで、まず現状の部分についての契約締結過程の確認をし、その特徴を整理した上で、改めてその問題点を抽出していこうと思います。

次の2段階目になりますけれども、具体的な検討課題の例示と課題に対する私見ということになりまして、まずは私の私見の全体像をお示しし、その後、この問題を考えるに当たって考えられる検討の手順について私の考えを述べ、最後に、具体的な検討課題ということで、こちらに書いてあります(1)~(7)という合計7項目について時間の許す限り御説明をさせていただこうと思っております。

では、時間のほうもございますので、次に2ページ目に行きまして、まず1つ目の情報商材に関する相談事例の取引過程の整理というところから見ていただきたいと思います。

スライドの3枚目の「1 典型的な事例における契約締結過程」というところを御覧ください。こちらにつきましては、本ワーキング・グループにおいて国民生活センターさんをはじめ御紹介される、今、恐らく相談の中で最も多い典型例と呼ばれる、いわゆる二段階型のケースを改めて図示したものであります。

6つのフェーズに分けて見ていきます。まず最初のフェーズ1です。検索サイトによる検索等という形で、この例でいきますと、まず「副業」という形で検索をします。

次のフェーズ2ですが、例えばランキングサイトに飛びまして、副業の紹介欄にQRコードが幾つも出ていますので、そのうち、これがよさそうだというところに、例えばLINEさんの「友だち追加」ボタンなどがあったり、QRコードが貼ってあります。そこで、こちらを押下しまして、特定のアカウントとつながる。これでフェーズ3に移行します。

このフェーズ3につきましては、まず、いわゆるチャットのやり取りがひたすら繰り返されるというパターンがあります。この場合、いろいろな具体的な事例を見ておりますと、内容としては、確かに副業に関しての説明というものも出てくるのですけれども、特定アカウントのメッセージは、見る限りは抽象的に何だかもうかりそうだとか、そんなような表現に終始しているという印象を持ちます。また、特定アカウントとのチャットのやり取りは、かなりの時間と通数でやっていますので、生活状況や消費者の方の悩みとか、その辺の様々な話についても、やり取りがされているという状況が見られます。

また、チャットのやりとりに際して、適宜、事業者のウェブサイトや動画共有配信サービスとのリンクが張られまして、事業者のサイトや、例えば動画共有配信サービスに遷移するように誘導し、副業に関する表示のある事業者のサイト、あるいは、動画共有サイトの表示などを閲覧させるケースもあります。

この次に行きまして、フェーズ4で、最終的に契約の申込み場面ということになりますけれども、事業者あるいは決済代行業者のサイトに画面遷移しまして、まず1段階目の低廉な情報商材の購入契約を締結する。

ここでいわゆる1段階目の契約締結が終わりまして、その後、次のフェーズ5では、低廉な情報商材について「サポート案内などをするために電話をかけるから、予約を取ってほしい」とか、こんな話になりまして、次の最後のフェーズ6に行きまして、フェーズ5を受けて、事業者のほうから電話をかけまして、消費者は高額の情報商材の勧誘を受けるということで、契約の2段階目の契約も成立する。

これが典型的な流れかと思います。

では、次の4枚目に行きまして、この典型的な契約締結過程につき、幾つか特徴を見ていきたいと思います。

まず、4ページ目は各段階ごとのツールの特徴というところになります。専門的な部分につきましては、さきほど、坂下委員のほうからチャット機能についての特徴についてご説明をいただいたところですが、若干そこも踏まえて整理をいたしますと、このような整理になるのかなと思います。

時間もありますので、一々読み上げるということはいたしませんで、特にここで私のほうで強調しておきたい点を述べておきますと、フェーズ1、2、3と来るわけですけれども、とりわけ2から3のところで何が変わるのかというところですが、チャット機能というところのセルの③事業者の受動/能動という欄をご覧ください。1番、2番のところはどちらかといえば事業者のアクションとしては受動的だったものが、この3番のところに来た時点で、能動的なアクションに切り替わるという側面がまず指摘できるだろうと思います。

それから、④の公開/密室性というカテゴリーのところですが、この段階になっていわゆる密室性という状況が生まれるということがあろうかと思います。

その他の特徴につきましては、先ほど消費者庁の取引対策課長からもお話がありましたけれども、チャットという機能の中では、様々な文字だけではなくて、画像とかといったものを送ることが可能です。その他、ここに記載された特徴があると言えます。

また、当ワーキング・チームにおいて、昨年の議論のときにも出てきましたけれども、電話等との類似性というところで、この表では、「②コミュニケーション」とか「③事業者の受動/能動」、「④公開/密室性」など、チャット機能は、一定程度、電話と類似の性質を有しているというところも今後検討していくに当たっては重要なポイントにはなるのかなと思います。

続きまして、5枚目のほうに移ります。

次は、こういった契約締結過程の着目すべき点として何があるのかということを5つほど整理してみたものになります。

まず1つ目の点でありますけれども、やはり先ほども申し上げたフェーズ2とフェーズ3の間の線の部分でありまして、いわゆる双方向性や同時性を有するコミュニケーション、ここはチャットになるわけですけれども、端緒において、実例を見ておりますと、事業者の氏名や勧誘目的等が明示されていない、いわゆる不意打ち性が存在するケースというのが多数見られるところだと。これがまず特徴として挙げられるかと思います。

続きまして、チャット機能、フェーズ3の段階の問題点として3つほど挙げさせていただいております。まずは、そもそもこの契約を締結するか否かを合理的に選択するために必要な契約の目的物の性質等の具体的情報提供が不十分という点です。実例を見ますと、長々とチャットのやりとりが続く中で、本当にこの商品をこの対価を払って買うかどうしようかと判断できるだけの合理的な情報が提供されていないケースが多いと感じられます。これが1つ目です。

それから、③としまして、チャットの相手方との継続的コミュニケーションということでありまして、例えば、直接的な勧誘は避け、とにかく、副業に関して頻繁にチャットのやり取りがされます。それこそ5分間の間に何回もやりとりがなされるわけです、そういった関係で、人間関係がつくられていったり、事業者のほうの側面から言うと、勧誘相手の消費者が例えば今、経済的に困窮しているとか、あるいは過去こういうことをやったけれどもうまくいってなかったとか、そういう話というのも実は会話の中から巧みに聞き出しているなと思われるような事案というものも目にしているところであります。

4番目がチャット機能の性能そのものについてです。すでに述べたように密室性・双方向性・匿名性、事業者が能動的であることが挙げられると思います。

最後でありますが、5番目として、水色の横棒が1本引いてある時間的連続性というところも着目すべき点かなと思っております。例えば現在の通信販売の規律というのを見てまいりますと、基本的には広告表示の内容が正確になされているか否か、その表示によって、消費者が合理的に選択ができるのかという考え方が恐らくベースにあるように思います。ただ、実例を見てまいりますと、表示そのものだけではなくて、むしろ時間軸、時間の経過によって消費者の意思形成が影響されていくという過程自体も大きな問題としては捉えていかなければいけない点かなと思っておりますので、これを5点目として上げさせていただいているということになります。

では、6枚目のほうに参ります。

今度は特徴の③ということで、認知心理学等の観点というところで見てまいりたいと思います。こちらにつきましては消費者庁の別の会議体などでもたびたび指摘されていることではありますけれども、今の典型的な情報商材事案の契約締結過程、すなわち、どうして消費者はこの契約をするに至ったのかというところを見てまいりますと、1つ言えそうなのは、虚偽表示等の誤認惹起行為によって契約締結の意思が形成されるという場合だけではなくて、抽象的な誤認惹起表示に加え、ぜい弱性を作出する行為が加わることによって、二重の過程論でいうところの直感的で便宜的な思考、いわゆるヒューリスティックな判断に基づいて、最終的に消費者が意思形成をし、契約締結に至るのだというような形になっていくと思います。

そして、ここで契約をしてしまった以降、結局、何らかの対価を投じてしまいますので、その後、少なくともやったことに対する投下資本の回収をしなければという心理が働いてしまうことから、1段階目の契約を締結した場合は、次の2段階目の契約締結に行ってしまいがちであると言えると思います。したがって、認知心理学的な観点もこの問題を捉えていくに当たっては重要な視点かなと思っております。

では、7枚目に参りまして、以上のような問題点がある中で、現在、特商法の区分けという形で見てまいりますと、どういうことになるのかということでございますが、これはもちろん内容に着目した場合は、例えば業務提供誘引販売になるとか、連鎖販売になる場合もあるわけですが、あくまでも行為着目型でみた場合は、1段階目の契約が通信販売になり、2段階目の契約が電話勧誘販売になる。これはこのワーキング・グループでもこれまで整理されてきた点かと思います。

8枚目に参りまして、近年の事案における主な特徴及び問題点の整理に入りたいと思います。

まず、グレー部分につきましては、前回会議の事務局資料の中で挙がっていた問題点ということで、9項目挙がっておりました。それに加えて、黄色の部分は、私が実務を通して、近年の事案の特徴として気になる点を、さしあたり、あげてみたものです。まず、最初の1段階目の特徴としましては、不自然によい評価が記載されているサイトが上位に幾つも表示されるケースがあります。最近の消費者の行動として、ある情報商材を見ますと、本当に大丈夫かということで、例えば商材名で検索サイトで検索などをするわけです。そうするといわゆる広告表示ではなくてオーガニック検索表示のほうであっても、検索結果の上位は、そのスニペット欄を見ると、当該商材につき、肯定的な見解の表示のあるものが占めているというケースもあります。消費者としては、検索結果に表示されたウェブサイトを個々に閲覧することなく、このような検索結果をさらっとみたうえで、ここはいいじゃんと思ってしまうというようなことも実例としては起きているということが言えます。

それから、チャットの場面になりますけれども、チャット上の表示につきましては、これは繰り返しになりますが、目的物の性能等に関しては抽象的な表示と、例えば自分も同じ境遇でしたとか、いわゆるダークパターン的な、現在何人申し込み、残り何人とかというものが出たり、そのような環境的な事項に関する記述によって構成されているというケースがあります。

それから、③が、前回の国民生活センターの報告でも若干出ておりましたけれども、画像共有、遠隔操作アプリというものがありまして、これを最近ダウンロードさせて、消費者金融等の借り入れについてもかなり突っ込んで業者側が指導というか誘導させて借りさせてしまっているケースなどもあるもようです。これも非常に問題がありまして、例えば口座振込のケースなどでも、口座の振り込みの振込先まで全部その場で指示を与えますので、要は消費者のほうがどこの口座に振り込んだのかという手持ちの資料を残していないというケースすら近年出てきてしまっているという問題点がございます。

それから、4番目でありますけれども、これは2段階目の話にはなるのですが、今までのパターンですと、1段階目の情報商材のダウンロード用のURLが提供されてから1日、2日後ぐらいに次の2段階目の勧誘という場合多かったと思いますけれども、近年では、1段階目の情報商材のダウンロードのタイミング自体につきましても、サポートの電話をしたときに、例えばスマートフォンをスピーカーにさせまして、そこで今からURLを送るから、それを見ながら説明していきますと。正に2段階目の契約についての勧誘に際して、これを提供しているというようなケースなども見られるということが言えると思います。

そして、契約締結後の話なのですけれども、これは2つ大きな問題があります。第1に、契約締結後にチャット上のやり取りを消去するように事業者側から指示されて、指示に従って消費者が消去しているケースです。なぜ、消費者がそのような指示に従ったしまうことになったのか、そこにも何か心理学的な要因があるのかもしれません。こうしたケースでは、結果として後で取引自体の再現をするということが極めて困難になってしまっているという現状の問題点がございます。

そして、6番目でありますけれども、昨年の秋に消費者庁が消費者安全法に基づく注意喚起として公表した事案にも、あったように記憶していますが、消費者が十分に理解しないまま不合理な合意書、例えば、事業者が消費者に対し、数万円のお金を払う、あるいは、対価の一部の支払いを免除するかわりに、以後、一切文句は言いませんといった、いわゆる和解合意書みたいなものを取り交わされているケースというものも目にするところです。

このような問題点が現在の情報商材案件では出てきているのかなと思います。

それでは、以上述べた前半の整理を含めまして、9ページから具体的な検討課題の例示と課題に対する私見について述べていきたいと思います。

では、10ページ目を見てください。

まず、私見の全体像ということでありますけれども、この表の一番左が事務局作成の前回のワーキング・グループの説明資料で挙がっていた項目、真ん中が私が本報告で、問題となる行為等として紹介した6項目です。これを全部グループで整理をいたしまして、まず、事務局資料の①~③の項目については、右端の「課題の例示と私見」というところで言いますと(2)に行くとか、こんなような整理をしておりまして、最終的に冒頭で申し上げた7つの項目について私の私見を述べさせていただくということになります。

さて、7つの項目につき、ここで御紹介いたしますと、1点目は、チャットを契約締結過程に利用する取引の位置づけについて改めて考える必要があるのではないか。

2点目は、「販売業者の氏名以外の名称を使用する契約締結過程に登場する者の位置づけ」をどうするのか。

3点目は、「接触開始時点で販売業者の氏名や勧誘目的を告げられていないこと」をどう捉えるのか。

4点目は、いわゆる「勧誘メール規制(オプトイン規制)」というものが通信販売ではありますけれども、この辺りを改めてどう考えていくのか。

5点目は、「民事規定」をどうするのか。

6点目は、「広告表示として商品等の内容の情報表示が不十分」だという問題をどうするのか。

最後に7点目は、様々、幾つか指摘したような不当な行為というのが散見されるわけですけれども、これらの行為に対して「禁止行為等の規定の新設」というものも考える必要があるのかどうなのかと。

以上につき、若干の考察をしたものが14ページ以下からの記述になります。

次に、11ページになりますが、では、こういった問題への対応に関する、の検討の手順について整理をさせていただきたいと思います。

まずは、既存の規定等による対応で可能かどうかということは最初に確認すべきだと。これは言わずもがなかなと思っておりまして、例でありますけれども、前回万場委員のほうからもありました業務提供誘引販売に該当する場合があるのではないかといった点も含めて、まず既存の取引でうまく当てはまるものがあるならば、それで速やかに対処していくということは考えられるだろうと思います。業務提供誘引販売取引に関する資料につきましては、本日は報告を割愛しますが、スライドの12ページ以下で若干まとめさせていただいております。

それから、先ほどの1段階目の契約の電子書籍のダウンロードのタイミングが第2契約の勧誘時と重なっている、同時だとかというケースもありますけれども、そういう実質上一つの電話勧誘販売を形成していると考えられる場合については解釈を明確化して、この場合は一体として例えば電話勧誘販売になるのだとか、こういったことを明らかにすることによっても十分対応できる案件が出てくるのではないかと思います。

それから、検索サイトで検索した結果、その表示が虚偽である場合も少なくないように思いますが、ある意味、不自然なほどに肯定的な表示ばかり出てしまうといった問題に関しましては、景表法によるステマの規制がこのたび新しく入りますけれども、この規制であるとか、あるいは事業者単体の自主規制等、この辺りも駆使していくことなのかなと思っております。

それで難しい場合は次のステップ2に進みまして、既存の規定の改正による対応が適切かということになりますが、この場合、差し当たって先ほどの整理のとおり、1段階目の契約は現在の特商法でいうと通信販売に当たるという整理になりますので、通信販売全体にそもそも規律するということがいいのかどうなのかという問題も考えていく必要があるのかなと思います。

それから、先ほど今の取引の特徴を幾つか述べさせていただきましたけれども、そもそも昭和51年に訪問販売法が施行された当時の通信販売の想定していたものと現在の在り方というものも大分違っているところもあります。その辺りはどう考えるのかと。参考に令和3年改正とありますけれども、令和3年改正は、いわゆるお試し定期購入の案件などは、アグレッシヴな側面があるわけですが、通信販売の規律の中に一定の行為規制などを民事規定も含めて新設しているわけです。こうした過去の法改正も参考になるのかなと理解しております。

それでも厳しいということになってきますと3番目ということになりまして、通信販売の枠組みでの対応が厳しければ、一定の問題のある取引類型を抽出して、その抽出した類型について新たな行為規制等を考えていくというステップになっていくと思います。その場合につきましては、どのように絞り込むのか問題というものが出てくるわけでありまして、それは特商法の今の区分けでいきますと、行為に着目するのか、内容に着目していくのかと。この辺りが差し当たっての問題ではないかと思います。

その場合ですが、具体的にどのような規律が必要なのかということで、期待される効果を見込むことができるのかという観点に加え、他方で、いわゆる過剰規制になってはいないかといった観点もあるわけです。この辺りのバランス問題というものを見ていく必要があろうかと思います。

ということで、レジュメは若干飛びまして、具体的な検討ということで、14枚目から簡単に見ていきたいと思います。

まず1つ目でありますけれども、チャットを契約締結過程に利用する取引の位置づけというところでございます。

問題の所在を御確認ください。まず、デジタル化の進展に伴って、チャットを用いるなど、積極的な勧誘行為と評価し得る手段が用いられています。通信販売の定義規定は専ら申込み方法に着目したものということでありまして、16ページ目に現行法の通信販売と電話勧誘販売の定義をビジュアル的に整理したものがありますのでご参照ください。

戻りまして、14枚目ですけれども、3つ目です。つまり、現行法上は、例えばSNS上のチャットによって、積極的な勧誘行為と評価し得る手段を用いられた取引であったとしても通信販売として整理をしているというところで、若干居心地が悪い感じに今はなっているかなというところがあるかと思っております。

そういうことになりますと、つまり、特商法が規定する通信販売の規定は、基本的には販売業者が受動的な販売方法をするということを前提につくられている。もちろん一部例外は令和3年改正などでありますが、原則としてはそういう考え方に立っておるのだろうなと思います。

具体的なコメントのところになりますけれども、これまで見てきましたとおり、申込み前の事業者の申込み誘引行為であるチャット利用時の事業者の行為が不当な取引に至る要因になっていると考えられわけです。

その問題状況の対処として、先ほど順番で見たとおりですけれども、まず一つは、通信販売の枠組みの中で新たな法制度を導入することというのも考えてもいいのかもしれない。それが正に令和3年の改正のときであります。

他方ですけれども、時間軸とか取引の特徴、あるいは通信販売全体を対象とすることの相当性などから見ていきますと、対象となる取引を絞って、ある意味思い切った規律を設けるという方向性というのも考えられてよいだろうと思うところであります。

次の15枚目に行きまして、もう少し中身に詳しく入っていきたいと思います。

その際に、絞り込みとして、行為に着目するのか、内容に着目するのかというところでありますけれども、黒マルの3つ目のところです。まず、行為に着目した場合です。例えばということで、チャットを利用した申込み誘引行為等、つまり、申込み前の行為を要件として付加するという形で定義要件を設ける方法が考えられます。さっき見ていただいた16ページにあります電話勧誘販売の定義規定ですが、これは歴史的な背景で言いますと、もともと電話勧誘販売は通販の一種ですという整理の中で、前提部分の勧誘行為に問題があったことから、その要件として申込みの前提部分の勧誘行為を定義に取り込んだ形で現在の「電話勧誘販売」の定義規定になっている。こういう前例がございます。こうしたケースのように対象範囲の絞り込みをするやり方が一つあるのだろうと思っております。

ただ、その場合だと、どの段階から定義要件とすべきかとか、先ほど坂下委員のほうから御説明がありましたけれども、そもそもチャットを利用した行為の定義の明確性という問題もクリアしていかなければいけないだろうと思います。

次に、内容に着目した対象行為をどのような要素から抽出すべきかという点がございまして、業務提供誘引販売取引や特定継続的役務提供や連鎖販売取引のように取引の内容で絞っていくというやり方もあると思うのですけれども、15ページの黒マルの4つ目にあるように、いろいろ考えてみたのですけれども、こちらは厳しいのかなという印象を若干持っておりまして行為着目型で考えていくということのほうが現実的なのかなと気はしておるというのが今の現時点の考えになります。

その上でということになりますが、17枚目に行きまして、更に行為着目型の場合にどういう類型分けができるのかということを、取りあえずマトリックスで簡単に作ってみたものが17ページの中ほどのA、B、C、Dと書いてあるものとなります。これを整理してみた場合に、これら類型のどこまでを対象取引とするのかという話になってきまして、これは横軸でまず勧誘前の氏名・勧誘目的とか明示されていた場合と非明示であった場合、縦軸のほうでチャット開始行為の主体が消費者側なのか、販売業者側なのかという形で、4グループに整理をしたものとなります。

ちなみに、今、ここは便宜でチャット開始行為と書いてあるのですけれども、例えば電話勧誘販売で言えば、「電話をかけ」という定義部分になってきていて、この電話をかけについても、「従来の電話機を用いて、電話をかける」行為だけであれば、「電話をかける」行為は一義的に明確だと思います。しかしながら、近年のようにウェブ会議システムも含めて電話と含まれることになりますと、先頃出されたQ&Aとかにもありますとおり、「電話をかけ」ということ自体、つまり、開始行為自体が具体的に何なのかと。場合によっては、ここまでも緻密に考えていかないといけない問題なのかなと。その辺の難しい問題はございますが、差し当たっての整理ということでこういう区分けができるかなと思います。

続きまして、18ページ目に行きまして、次の論点になりますけれども、販売業者の氏名以外の名称を使用する契約締結過程に登場する者の位置づけをどうするのかという問題であります。

問題の所在ですけれども、契約締結過程において、SNS上のアカウントやアフィリエイター等、販売業者の氏名以外の名称をかたる者が存在している。これは消費者庁の消費者安全法に基づく注意喚起事例でも出てまいりました。その中には、表示主体が販売業者等であるか否か、にわかには明らかではないケースも存在しているということで、その場合2つほど問題があるように思います。

第1として、消費者の意思形成の問題です。例えば、特定のアカウントから「私も同じ境遇です」と言われてしまうと、これを受けた当該消費者は、自分と同じ思いをしている人がいるのだということで、仲間意識が芽生え、最終的に契約締結に至るということもあり得ることです。

それから、第2として、特商法の適用関係という問題でございまして、ここは現在の特商法の被規制者が販売業者等になっているということでありまして、通達では、いわゆる提携リースの関係で一定の考え方が示されているところではありますが、個別の取引の対応に際しては、販売業者と販売業者の氏名以外の名称をかたる者の関係まで必ずしもこちら側で分かるわけではないといった問題点もあるというところであります。

コメントになりますけれども、差し当たっては、やはり主体の明確性を確保することが重要なのだと考えます。そうしますと、氏名明示義務等を新設するということは考えられないのかと思う次第です。

実際にその結果、本当に販売業者等にも該当しないような第三者が出てきた場合に関しては、矢印で書いてありますけれども、景表法的な考え方を取って、結局それはイコール販売業者の行為だという形で、販売業者を処分の主体とするというやり方もあるでしょうし、あるいは第三者自体を特商法の被規制者という形で考えていく方向性もあるのではないかなと思います。

では、次の19ページ目に行きます。接触開始時点で勧誘目的を告げられていないケースについて触れていきたいと思います。

問題の所在です。SNS上のチャット開始時には、販売業者の氏名や、その後に購入される情報商材の勧誘目的であることは告げられていないケースが見られるところであります。こうした中で、抽象的な利益となる旨の表示と相まって、同じような境遇だったので共感したなどの意識もあって申込みに至るケースというのが見られる、先ほど来申し上げているところであります。

そもそも特商法の訪販・電話勧誘等の類型には、氏名・勧誘目的等の明示義務が規定されているわけでありまして、その規定の理由としては、勧誘の端緒において目的を告げないことは、相手方がそのような勧誘を受けるか、拒否するかを判断する最初の重要な機会を奪うのだということで明示義務を規定しているという説明をされております。

さらに、最初が重要であるということは、認知心理学であるとか行動経済学、更にはマーケティング、様々な観点からも指摘がなされているところであります。

しかしながら、現行法上では、通信販売にはそういった規律というのは現在はないというところであります。

以上を踏まえてみますと、特商法の他の類型に準じて、氏名・勧誘目的等を明示する旨の行為規制というものを置くことも有用ではないかと考えられるのではないかと思っております。

あとは、具体的に氏名等を明示する場面を、例えば事例で見たようなランキングサイトのQRコードの表示の場面に置くのか、それとも例えばLINEの友だち登録をした後のように、実際に双方のチャットのやりとりが開始される状況となったトーク冒頭で言うのか、その辺りの問題など細かい論点はありますが、大枠で申しますと、この氏名・勧誘目的等の明示義務というものを設ける必要性があるのではないかと思います。

加えて、契約を締結しない旨の意思表示をしたにもかかわらず、再勧誘が行われている実態があるということであれば、これは同様に再勧誘の禁止というものを訪販・電話勧誘販売等に倣って規律するということも考えられてもよいのではないかと思っている次第です。

では、続きまして22枚目に参ります。勧誘メール規制というところであります。

現行法は、若干不正確な表現かもしれませんが、勧誘メール規制の対象をいわゆるSMSとeメール等に限定しています。

しかしながら、上記のとおり、消費者とSNS上のチャット機能によるやり取りが可能な状態を作出し、これを利用して消費者に申込み誘因行為をするケースも存在しているところであります。

コメントになりますが、この勧誘メール規制を導入した趣旨というのは、SNS上のチャットにおいても共通するのであろうとまず言えること。そういたしますと、勧誘命令規制の対象にチャットを加えることも考えられてもよいのではないかと思います。

ただ、もし加えた場合、問題は少なくとも3つほどありまして、第1として氏名・勧誘目的等明示義務との関係をどうするのか、第2として、例えばLINEの友だち登録ボタンの押下が勧誘メール送信を可能となる承諾に該当するのか、第3として、対象行為との絞り込みの関係でどのような整理が必要なのかであります。

私の現在の整理については※1、※2に記載しておりますが、少なくともこういったところについても考えていかなくてはいけないのかなと思っている次第でございます。

次に参りまして、26ページに飛びます。

広告表示としての商品等の内容の表示が不十分というところについて言及させていただきます。

例えば情報商材の事案等では、「3ステップで簡単に報酬GET」など抽象的な利益を得られる旨の表示に終始し、その前段階であるSNS上でのチャット等のやり取りなどと相まって、必ずしも契約内容を十分に理解しないまま契約の申込みに至るケースが存在しております。

現行法の通信販売の規定は、商品の性能や種類等、契約の目的物の内容について虚偽誇大表示をすることは禁止をしておりますが、他方で、11条の表示が義務づけられている事項の中にはこれらの事項は入っていないという関係があります。詳しくは資料の27ページに整理をしてございます。

コメントでありますけれども、表示義務の対象として積極的に契約の目的物の内容に関する事項を追加するという意義も考えられるのではないかとも思います。現に、現行法でも連鎖販売や業務提供販売誘引取引については表示義務の対象になっています。他方で、これらの取引に入っている理由というのは、やはりそれらの特殊性に鑑みて規定されたとも考えられるところでありまして、通信販売一般として表示義務の対象とすることが妥当であるかというところは整理していかなければいけないのだろうと思います。

更に別の角度からの考えということになりますが今、述べていた広告表示のところではなくて、令和3年の改正で新設された特定申込み画面の概念の導入とそこでの行為規制、さらには、そこでの不当な表示との因果関係があった取消権の創設に着目する考え方もあるのではないかと思います。こうした特定申込みに関する違反があった場合の効果等からすれば、この特定申込み画面の対象事項のほうにこれらの契約の内容に関する事項を追加して入れるという方向性も考えられるのではないかなと思う次第です。

30枚目に行きます。

禁止行為規定の新設ということでありまして、上述の情報商材に関する相談事例における事業者の不当行為は、必ずしも現行法の行為規制の対象とはなりません。こうした不当行為につきまして、広告表示に関する行為規制としてそもそも通信販売全体を対象とすることの是非というものを考えなければいけないというところもありますが、今のチャットを利用する取引類型で見られるものに関しては、例えばですけれども、チャットを利用する取引類型に絞って行為規制を新設するということも考えられないのかということでありまして、差し当たってⅰ、ⅱ、ⅲの点を挙げさせていただいているところであります。

2番目の勧誘目的を隠匿して閉鎖的なデジタル空間において勧誘する行為についてですけれども、勧誘目的を告げないでチャットのやり取り等が可能なデジタル空間に呼び出す行為とリアルなところに呼び出す行為は果たしてどの程度消費者の心理的な影響に差異があるのかという視点からみた場合、両者に心理学等の観点からは、あまり差異がないという考え方も一方では存在するようでありまして、そうであれば、新たに行為規制として規律する必要があるのではないかと思います。また、3番目のいわゆる適合性の原則の部分ですけれども、これは実例において、当該消費者にはこの取引を勧めてはいけないと思われるような事例というものが散見されますし、先ほど申し上げたとおりで、事前のチャットのやり取りの中で、当該消費者がそのような状況にあるということを知りながらあえて勧誘をするケースなども見られるというところから踏まえますと、このような、おそらく当初の通信販売では想定していなかったような行為につき、別途きちんと規律をしていく必要性が高いのではないかと思います。

その他の細かいところにつきましては、将来的な課題ということで細かくフォントのサイズを落として書いてありますので、また御参照いただければと思います。

最後になりますが、民事規定のところということで御確認ください。33枚目になります。

現行法につきましては、通信販売に関する民事規定として、いわゆる法定返品権、更に、特定申込み画面を対象とする不実告知等に係る取消権があります。しかしながら、いずれも情報商材の事案においては十分に機能していないと言わざるを得ません。例えば15条の4の表示内容というのは、分量とか解約条件という事項に関する不実告知等が対象でありまして、契約の目的物の性能や内容等というのは対象事項には含まれていません。

ですから、現行法では、この情報商材案件に関しては、消費者契約法の取消しなどによることになるのですけれども、コメント欄にありますとおり、確かに今、消契法で対応できるということも十分にあり得る。ただ、例えば、ここは解釈に若干争いはあるかもしれませんが、消契法の不実告知の対象範囲と特商法の取引権の不実告知の対象範囲を比べてみますと、文字どおりで解釈をしますと、特商法のほうが若干広く考えられる余地もあるなというところもあるところでありまして、そういたしますと、消契法があるから取消権は別途設ける必要はないということには必ずしもならないだろうと思います。

それから、4つ目ですけれども、もちろん被害回復の観点から、行政による法の厳正な執行はもちろんありがたいことではあるのですが、加えて、個々の取引における紛争解決の円滑化に資するスキームの構築というものを併せて考える必要があるのではないかという整理になりますと、民事規定についても改めて検討する必要があるのではないかと思っている次第でございます。

以上、若干駆け足になりましたけれども、私の報告は以上とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

「デジタル化に伴う消費者問題の課題と法制度についての一考察」というタイトルで、特に情報商材につき、副業とかもうけ話等の事案を題材として説明をしていただきました。

情報商材に関する相談事例の取引過程の整理ということですけれども、この整理の結果として、近年の事案における主な特徴及び問題点を御指摘いただきまして、それから、具体的な検討課題の例示と課題に対する私見ということで、具体的な検討課題を7項目挙げていただきまして、それに対する私見を述べていただきました。

それでは、池本先生の御報告に移らせていただきます。御説明を30分程度でよろしくお願いします。

池本先生、よろしくお願いいたします。

○池本氏 池本でございます。

レジュメを示して説明させていただいたほうがよろしいかと思いますので、共有します。

今、山田さんが、非常に詳細に特商法の体系的な位置づけの中から問題点を分析されました。方向性はあまり違いはないので、私の場合は、適用対象の要件として絞るならこういうことではないか、あるいは規制内容として設けるならこういうことではないかというのをある意味でえいやと決め打ち的に提案した上で、説明の中で少し悩みが入れてあるという構成になっております。

まず、チャット機能を利用した勧誘を伴う通信販売という中で、要件を2つに絞る形にしました。

第1の要件は、チャット機能を利用する特定の相手方との間でのやり取りを通じて通信販売の契約に至ると。ここの正に個別勧誘があるのだというところです。それを、先ほど冒頭で坂下様からチャット機能というものの特徴で説明いただきましたし、前回、国民生活センターの事例の中でもチャット機能で個別に勧誘しているというものの特徴と問題点が示されました。そこの特徴としては、短文で複数のやり取りを積み重ねていって意思形成をしていく、働きかけるという意味で電話勧誘に近いものがあるのではないか。

特に、チャット機能はメッセージで送っても無視すればいいではないかという受け止め方が一方にあるかもしれませんが、先ほどの御説明にもありましたけれども、プッシュ通知で今届いたよとか、あるいは既読機能もある。若い人にとっては即レス、すぐに返信が常識なのだというようなイメージで捉えられている。すぐに返信を迫られる。そういう性質のものだとすると、電話勧誘と本当に近い。この辺りが、不特定多数の者に対してメッセージを送って、関心のある方はどうぞというような投稿とはやはり本質的に違うと言っていいのではないか。

そして、特徴の3番目として、SNSのチャット、これはSNSそのものの問題ですが、匿名でそもそも個人の無料のアカウントもつくれるし、メッセージを送るときにも、名前も入れない、あるいはメールアドレスのような特定できるものも必要ない。電話の場合には、それでも声でこの前と同じ人だなという判別もできるし、あるいはトラブルになったときには、弁護士などが弁護士法に基づく照会で発信者情報を電話会社から取ることもできます。現在のSNSでは全くそういうところができない、判別できないという意味では、電話勧誘以上に匿名性、覆面性が非常に強いのだと。これが今、トラブルが多発している一つの温床になっているのだろうと思います。

2点目として、そうは言っても、チャット機能を全てと考えるのか、やはりそこには不意打ち性の要素も考慮しておく必要があるのではないか。

事業者からチャット機能でやり取りをする。これは、現象的にはむしろ不特定多数に呼びかけて、友だち登録をして、そこから個別のチャットに入るという意味では、後段の「または」以下の勧誘目的を告げないで消費者にチャット機能によるやり取りを開始させる。こちらのほうが現象的には多いのではないかと思います。

国民生活センターの1月16日の資料でも、ここに書いておきましたが、稼げる副業ランキングとか、もうける方法を教えますとか、スタンプ送信でお金になるとか、勧誘目的を告げないでチャット機能に入らせるというのが多いと例として挙げられました。

ただし、それだけではなくて、何らかの別のグループ、全く違う既存のグループなどで入手した消費者のアカウントに対してチャットの形で個別に呼びかけるということもあるでしょうから、ちょうどこれは電話勧誘販売における定義に似た構図になるのではないか。こうすることによって、相対でのやり取りであり、しかも不意打ち性の要素まで絞っていくというふうにすると、電話勧誘販売と同様の規制が必要であるという一つの枠組みができるのではないかと思います。

ただ、そうは言っても、少し特徴的なところを分析しておく必要があります。先ほどの国センなどで出ている典型的な例でいうと、ウェブページなどで副業とかもうけということで検索して、そこからチャット機能に入っていく。あるいは、それでチャット上で勧誘をして契約締結に至る。一番シンプルな形というのはこういうことになろうかと思うのですが、この場合に、勧誘目的をちゃんと明示していないところが一つの引き込んでいくきっかけになっている。そこへつながるというのは間違いないと思いますが、このチャット機能に誘引していくというのが、これはむしろ後で坂下様にも助言をいただきたいのですが、SNSの機能というだけではなくて、例えば今日やっているような電話会議システム、ZoomとかWebexという中にも並行して個別に送る、あるいはグループで送るチャット機能がありますし、あるいはウェブサイトの広告の中で何か質問をすると、個別のやり取りに入っていくというものもあると聞いております。この辺りも、むしろ機能からすればチャット機能という位置づけになっていくのではないかと思うのですが、そういう理解でよろしいのかどうか。

そして、これは特商法の規定で、ついこの前の政令改正の中で、勧誘目的を告げないで電話をかけることを要請した場合には、それが不特定多数に向けた新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、ウェブページで呼びかけて電話をかけさせる方法も電話勧誘販売の誘引手段になるのだという改正となって、6月1日から施行されることになります。この解釈を前提にすれば、今のような形でチャットに引き込むというものもすんなり入ってくるのかなと思います。

それと、もう一つ悩ましいこととして、これは先ほどの山田さんの整理の中にもあったのですが、最初の導入がSNSだけではなくて、ウェブページ、ランキングサイトだとか、あるいは動画配信サイトで、そこで関心を持った人がつながっていく、友だち登録をしていくというものもあります。もっと悩ましいのが、チャットだけではなくて、チャットに誘引して勧誘するその後、詳しくは電話で勧誘をしたり、あるいはまたウェブ会議システム、オンラインサロンのようなものを使ったり、そういうふうなものを取り混ぜて勧誘しているというものがあります。被害救済をやっている具体的な事例で、ほかの弁護士からも幾つか聞いたのですが、一番決め手になる誇大な説明は、むしろ文字に残らない電話でやるのが多いのだよとも聞いております。

そして、最終的にはそれがウェブ上の申込みあるいはチャットによる申込み、中には呼び出して対面で契約に至るというものもあります。ただ、これをチャット会議の類型、電話勧誘の類型、それぞれの場面で勧誘目的を告げないで不意打ちが始まったと区切ったら簡単に脱法されてしまう。むしろ、こういった手法を取り混ぜて勧誘している一連の勧誘行為によって意思形成を図っているのだと捉える必要があるのではないか。これは、規定の上で書けるのか、解釈で定めるのかは検討課題です。

それから、もう一つは、例えば無料のサポート契約、あるいは3,000円でサポート契約というような感じで、少額あるいは無償の会員登録をして、そのサポートのために電話をかけたり、ウェブ会議に参加したり、あるいは個別のメッセージを送っている中で、チャット機能であったり、様々な方法で契約締結に至るというものがあります。

これについては、実は以前から少し話題になっていて、どこかにちょこっと書いてあればそれでいいのではない。打ち消し表示に関する表示方法の留意点にもありますし、先般、電話勧誘販売の適用除外について、消費者庁のQ&Aにもありますが、やはり主たる契約、後ろの高額契約について明示的に触れないで、あたかも少額の契約が主であるかのようにして、それのサポートのための電話であったり、ウェブ会議であったり、あるいはチャットであったりというようなものに引き込んでいくというのは、やはり一連の契約の中で不意打ち勧誘なのだと捉えるというところがあろうかと思います。

もう一つ悩ましい論点として、チャット機能で勧誘している者自体の責任と最終的に契約を受ける販売者の関係をどう捉えるかの問題が残ります。特に今やっているSNSというのは発信者情報が表示されていないので、同じ業者なのか、第三者かすら分からないというところがあります。もちろんそこを明示させるということが必要なのですが、SNSの発信者の責任をどうするか。例えばそこに不実表示があるとか、それをどうするかという論点が出てくるのですが、現行法でいうと、景品表示法は前にアフィリエイト広告について検討した資料の中では、他の事業者にその表示内容の決定を委ねた、いわば広告主が委託先のやった不当表示についても責任を負うのだと。商品の供給者ではなくて、受託した人が独立した責任主体というよりは、委託元が責任を負うのだという捉え方になっていると思います。

特商法も考え方としては共通ではないかと思います。特商法の場合には、特に悪質業者がいろいろ入り込んでいる中で、行政処分の事例を見ると、一定の仕組みの下で複数の者による勧誘・販売であるが、総合してみれば一つの訪問販売を形成していると認められるような場合には、その複数の者がいずれも訪問販売業者に該当する。いわば共同して事業を展開しているのだという捉え方です。ただ、これも、基本の考え方は販売主体、販売業者が責任主体で、役割分担した場合には共同主体になるという捉え方だと思います。したがって、販売主体とは別に勧誘者だけを特商法の責任主体という捉え方とちょっと違うのです。

そういうところがあって、ここをどうするかはまだ悩ましいところなのです。特にSNSの場合には主体がはっきりしないという問題はあるのですが、このレジュメの中では、取りあえずはチャットの勧誘の問題は、一定の仕組みの下で複数業者が行っている場合は一つの通信販売というような捉え方もあり得る。ですが、取りあえず以下においては、委託した先の問題は販売業者が責任を負うというところを原則にしながら、役割分担の下で共同でやっているときには両業者が責任を負うという、ちょうど今の特商法の考え方を前提に組み立ててみました。

それを前提に、駆け足で申し訳ありませんが、ではどういう規制が必要か。これは、ここまでかなり絞り込んで電話勧誘販売との類似性などを整理してきましたので、電話勧誘販売による一連の規制を参考にしながら、多少付加したりするところを紹介していきます。

まずは、勧誘目的の明示義務であります。販売業者名とか商品の種類、勧誘目的を明示するとなっているのですが、特にここで付加しているのは、販売業者の名称だけではなくて、その連絡先、勧誘者の氏名は、訪問販売とかで分かる場合にはここまでは書いていないかと思うのですが、やはりSNSの匿名性が非常に強い。しかも、メッセージのやり取りというのは断片的に切り取ったものが何回にも分かれていますので、少なくとも誰が送っているのか、定型でその文字だけは表示されるようにしておく必要があるのではないかということで、勧誘に先立っての表示義務をメッセージの都度入れるというぐらいになっていていいのではないかという考え方です。

それから、拒否者に対する勧誘禁止というのが訪問販売、電話勧誘販売にあります。ここでいうと、2)がそれに当たるものです。拒否した者に対して勧誘を繰り返してはいけない、メッセージの提供、チャットを繰り返してはならないということは異論がないところですが、どうも実際の匿名性の悪用というところもあるのだと思うのですが、あらかじめ承諾あるいは請求していない消費者に対して、チャット機能によって勧誘に係るメッセージを送っていく。つまり、それで着信の通知があり、既読の確認があり、そして、返事をすると、すぐまたAIによってそれに次の返信が来るという引き込み方の特徴からすると、入り口の規律というのはもう一段厳しくしておく必要がある。承諾していない者についてのチャット機能による勧誘メッセージは禁止するということがまずあっていいのではないかという一つの提案であります。

それから、申込みを受けるときの表示事項の義務づけ及び誤認表示の禁止、これは通信販売における申込み確認画面あるいは特定申込み画面に相当するものをここに引用しております。特に、チャットのやり取りというのは断片的なメッセージのやり取りですから、要するに、何をいくつ幾らで、どういう条件で契約しているのか、というのが非常に曖昧なままになってしまいます。正に断片的な勧誘の積み重ねであります。

通常であれば、後で紹介する書面交付義務につながるのですが、まずチャットの画面上で申し込むところですから、そこで必要最小限度の項目だけは、一体今、何をいくつ幾らでどういうことで契約しようとしているのかが一覧で確認できるようにする。書面交付義務の全部の情報を入れたのでは分かりにくいですから、必要最小限度の要素だけをまず示す。そこで被害の防止にもつながるし、適正さの確保にもつながるのではないかと考えます。

ちなみに、通信販売では、ネット上のものは特定申込み画面という販売業者が定めた様式による場面を前提にしていますが、チャットのやり取りは、最終的にウェブ上の所定の様式で申し込ませるケースもありますが、ではいいですね、申し込んでください、支払いの手続に進みますというようにして、事業者が定めた様式によらない申込みをさせるケースもあります。そういう場合にも、その直前に必要要素をきちんと表示したものでなければ受けてはならないという形にしておく必要があるだろうと思いますので、ここは特定申込み画面に限定しないで、申込み直前のメッセージのところで要素を必要最小限度は並べるということが必要だと思います。

特に特定申込み画面で要求されている6項目と違うのは、連絡先というところもですし、商品の種類・名称・内容など、これは通販の場合には広告画面で商品は特定されているという前提があるので入っていないのですが、やはりここは不可欠であるし、連絡先も不可欠であると考えます。

それから、チャット機能を利用した不当勧誘行為の規制と意思表示の取消しに関するものです。ここも不実告知とか断定的判断提供とか電話勧誘販売にあるような不当勧誘行為を、ここに全部は書いていませんが、そういうものが必要になるでしょうし、その中の意思形成をゆがめる内容については、意思表示の取消しの規定が必要ではないかと思います。

実は、通信販売では広告画面の虚偽・誇大広告は取消権がなくて、特定申込み画面だけがついているのですが、実際には広告画面を見て誤認をし、特定申込み画面に簡単に書いてあるけれども、そこでその誤認が是正されないままに進んでいくというのがあります。チャットの場合は更に勧誘の色彩が強いわけですから、先ほどの申込み画面に必要事項を書くというのは本当に必要事項が確認的に書いてあるだけで、それまでの誤認に至ったものについて是正されるとは限らないので、そこに不当表示、不当な勧誘があれば取り消せるということは不可欠ではないかと考えております。

それから、書面交付義務及びクーリングオフです。先ほど、要件を絞って議論しますと適用対象のところを絞ったというのは、相談の現場などで被害救済をやりやすくしていくというためには、やはりここが不可欠であろうと。一体自分はどういう契約をしたのかという要素を申込み画面に書いても、それはしばらくたつと消去されるおそれもあるし、あるいは自分で別に更に保存をしておかないと、いつの間にか消えるということでも困るわけです。きちんとそこへ書いた要素プラスアルファの契約条件、法定記載事項をそろえて、それを消費者にちゃんと交付する。書面でなくてはいけないのか、あるいは契約締結手続とその後の情報提供がオンラインで完結する場合には電磁的な承諾と電磁的な提供でよいという、先日の書面の電子化の議論がここにもかぶってくるのだろうと思うのですが、少なくとも申込み画面だけではない、その後で改めて正式な契約内容を記載した情報を提供し、不意打ち勧誘型ですから、そこから8日間のクーリング・オフということになろうかと思うのですが、それを加えていくというふうにしていく必要があるのではないかと考えます。

電話勧誘販売の規律と両方を含めて、1点だけ補足しておきます。これはいいかな。時間もありませんので、チャットで来る匿名性の違反に対してどうするかという辺りは、また議論ができればと思っております。

取りあえず私の説明はここまでといたします。ありがとうございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

ただいまの御報告は、まず適用対象を絞るというところから始まりまして、レジュメの6ページからでありますけれども、チャット機能を利用した勧誘に先立って、勧誘目的物等の明示義務、あるいは承諾していない者へのチャット機能を利用した勧誘メッセージ提供の禁止、及び拒否者に対する勧誘メッセージ提供の禁止等、具体的な提案も含めて御報告いただいたと思います。

それでは、山田先生の御報告でも池本先生の御報告でもどちらでも結構ですので、質問、あるいは意見等を出していただくとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

丸山委員、よろしくお願いいたします。

○丸山委員 山田先生、池本先生、ありがとうございます。丸山でございます。

先生方の御報告をベースにしまして、お二人の先生に共通の質問を3点させていただきたいと思います。

まず第1点なのですけれども、チャットでの勧誘に先立って、氏名であるとか勧誘目的等を明示していくべきであろうということは共感しております。具体的に確認したいというか意見をお伺いしたい点としましては、商品とか役務の内容の表示というのも事前にさせていくべきだろうというお話があったと思うのですが、例えば情報商材などはノウハウ自体が対価の対象となっております。そういった情報商材について具体的に内容を示すと考えた場合に、どういった表示をさせることが理想的となるか、この点について何かアイデアがあれば教えていただきたいというのが第1点でございます。

第2点としましては、民事救済に関してなのですけれども、先生方にいろいろ御提案していただいたところなのですが、1つ、実務に強い先生に御意見をお伺いしたい点としましては、例えば稼げる副業の方法とかノウハウというのをうたっていて、多くの人がそれでは稼げないというような場合であれば、民法的には契約不適合責任というのも本来は問題となりそうな気がするのですけれども、そういったうたっているほどの価値がない商品につきまして、契約の不適合責任というものを活用していくというのは無理なのでしょうかというのが第2点です。

第3点、最後になりますけれども、こういったチャット勧誘というものを契機とする通信販売の行為規制というものを強化することによって、決済業者に対して言っていけること、対応を要請できることが違ってくる可能性がありますでしょうかという点を教えていただければと思いました。

以上です。

○後藤座長 それでは、3点質問が出ていますが、山田先生からいかがでしょうか。

○山田氏 丸山先生、3点目の御質問をもう一度お願いしてもよろしいでしょうか。失礼いたします。

○丸山委員 3点目なのですけれども、チャットの勧誘というのを契機とする通信販売の規制を強化することによって、今以上に何か決済業者に対しても言っていけることは増えるでしょうかという確認でございました。

○山田氏 ありがとうございます。

3点の御質問ありがとうございました。お答えをさせていただきたいと思います。

まず、1点目の指名等の明示義務の具体的なイメージの話でありますけれども、これは現時点ということにはなりますけれども、今日の私のほうの資料で説明させていただいた事案のように、そもそも副業をするつもりで入っていったのに最終的に例えば投資関係のものを買わされたケースなど、もともとの内容以前に対象物が全く異なるケースがあるわけであります。例えば本件で考えると、そもそも副業ではなくて、これは具体的な内容はさておき、FXに関するものですよとか投資に関するものですよということが明示されるようになれば、当然投資するための軍資金も要るわけですから、そもそもこれはアルバイトではないのねということは分かると思いますので、最低限という意味でも、副業なのか、これは例えば投資関係の商品なのかといった、種類が判別できる程度であればノウハウを教えるということにもつながりませんので、最低限この辺りの区別というものは必要なのかなと理解しております。

民事規定のところですが、情報商材等の事案への対応に際して、契約不適合責任は考えたことはなかったのですけれども、実際の案件を扱っていると、そもそももともとどういう内容を標榜しているのかについての説明も抽象的であって、さらに、実際に目的物自体が表示されていたものと適合しているかどうかの確認をするための基準自体を設置し難いというものもありまして、実務的な捉え方としては、消契法で言えば、例えば不実告知的な内容の真実性というよりは、むしろ断定的に稼げるということを告知したという部分で捉えて、誤認における取消しを構成していたり、そもそも確実性がないものについて確実性があるかのように誤認をさせて、あとは全体の一体性、こういう全般を考えて、不法行為構成を組んだりということがありましたので、今の質問の答えになっているかどうかは定かではないのですけれども、契約不適合という形でストレートに当てはめていって対応できる事案というのは、現時点ではこちらとしては考えたことはなかったかなというところであります。

3点目なのですけれども、チャットの行為規制への強化に伴って、決済事業者への対応が何か変わるのかという点ですが、例えば実際の現場で決済方法としてクレジットカードで決済をしていた場合で考えますと、クレジットカード会社であるとか決済代行業者等に対して何か言えることが増えるのかという事で考えますと、クレジットカード決済の方法がいわゆる包括信用購入あっせんに当たるのか、2月払いになってしまうのかというところで、実際の当てはめ問題のところはあるのですけれども、ただ、特商法の行為規制と絡めて考えますと、イシュアのクレジットカード番号等取扱契約締結事業者に対する苦情伝達を含む、業務の運営に関する措置という規律との関係の影響が恐らくあり得ると考えています。と申しますのも、業務の運営に関する措置、いわゆる苦情伝達に関しましては、イシュア側のほうが、カード会員が特商法の例えば6条の訪問販売の禁止行為とか、こういう禁止行為に該当したと認めるときには、1件でも苦情伝達をしなければいけない。苦情伝達を受けたクレジットカード番号等取扱契約締結事業者、ですから、海外アクワイアラーが介在する国内PSPなどが対象になりますけれども、そちらに関しては、その苦情伝達を受けた上での加盟店調査措置義務をしなければいけないというスキームになっているというところからいたしますと、例えばチャットの勧誘行為についての行為規制を強化した場合、規律の平仄性という点からいうと、電話勧誘販売の禁止行為同様に、チャットの勧誘行為に関する禁止行為も恐らく同じ類型に上がってくるのが相当だと考えます。ということになりますと、カード決済を利用した場合の解決スキームということで、有益に働き得る可能性があるのではないかと考えます。

以上でございます。

○後藤座長 よろしいでしょうか。

池本先生はいかがでしょうか。

○池本氏 御質問ありがとうございます。

今、山田先生からも出てきたところとほぼ共通ですが、まず、勧誘目的の明示は、何も情報商材のノウハウそのもの、役務提供の内容を全部説明せよというものではないと思います。むしろ、どういう役務提供なのか、あるいは種類をというのが、例えば1週間程度のものを言っているのか、1年契約、3か月契約という要するに高額契約を指しているのか、簡単な契約を指しているのかという種類の明示によって、最初と違うということが分かればよいというところです。

2番目の民事救済との関係で、契約不適合責任の検討はどうかという点、実はこれはチャット関連だけではなくて、訪問販売、電話勧誘販売でも相談の現場の事例検討をやっている中で痛感するのですが、特商法には不実告知とか不当勧誘行為取消の特別規定はあるのですが、債務不履行型あるいは契約不適合型がないのです。そのために、相談員さんはどうしても不実告知に結びつけようとするのですが、不実告知という勧誘時に虚偽だったかどうかではなくて、約束どおり実行していない債務不履行で捉えるべきだろうと。ただ、民法の抽象的な規定のままでは使いにくいので、特商法の中にも商品の数量とか幾つかの要素を列挙して、こういうものについて不履行あるいは不適合があった場合は、これなら解除できる、こういう場合は減額できるという債務不履行あるいは契約不適合責任の特則を設けるべきだというのは、以前から私、研修などでは言ってきているところなのですが、チャット勧誘に限らず、これは大事な課題だと感じます。

そして、3点目、決済業者については、これは山田さんの説明にもありましたが、ルールを明確にして、違反行為が判定しやすくなれば、苦情の適切処理の一環としてアクワイアラー側の加盟店調査の対象がはっきりしますし、そうすると、解約処理にもつながり得る。さらには、書面交付、クーリングオフのような外形的な判断ができるとなれば、それによる救済もできるというふうにつながっていくのではないかと思います。

以上です。

○後藤座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。

板倉委員、よろしくお願いいたします。

○板倉委員 ありがとうございます。

いつもながら、両先生の資料の緻密さには感服するばかりですが、具体的な解決方法の一つとして、山田先生のほうだと19ページに、池本先生のほうですと6ページに、勧誘の際に、氏名、販売業者とか、それから、勧誘目的であることを告げてはどうかというような解決が提示されていますが、昨今、今パブコメにかかっておりますが、勝手に共有しますが、ステルスマーケティングの規制が景表法で進んでおり、こちらの規定の仕方が割と我々がふだん議論するよりも更に一般的に案が提示されておりまして、これが事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるものと。景表法なので、そういう表示をしてはいけないよという規定になっておりますが、先生方が御提案のように、勧誘の際に氏名を表示せよ、勧誘目的であることを表示せよと決めるのと、もしくはそれに加えて、事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う勧誘であって、一般消費者が当該表示であることを判別することは困難であると認められるというステルス勧誘の規制を入れるというのは有効でしょうか。規定の仕方で具体的にどういうものが違反になるのかなと考えつつ、先に先生方に聞いてしまったのですが、このステルスマーケティングの規定をステルス勧誘にも加えるというのはいかがでしょうかという質問です。よろしくお願いします。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、山田先生からお願いいたします。

○山田氏 板倉先生、御質問ありがとうございます。

私の回答といたしましては、1枚戻りました18ページに若干ステマと関連するような記述をさせていただいてございます。本質としては、要は広告主との関連性が分からないまま、同じような仲間だと思って勧誘されたというケースも想定しておりまして、ステマと同じように、つまり、広告主の表示であればそのことを明らかにしておくということに意義があるだろうと考えておりまして、その点からいたしますと、私のほうの今の考えとしては、ステマ規制的な考え方でいいますと、販売業者の氏名以外の名称を使用する場合ですけれども、これを結局ステマ対策の中でも同じように取り入れる形を取りまして、要はきちんと事業者名、商号とかを名乗っていないアカウントのときに、その人が一体広告主、販売業者とどういう関係にあるのかということを明らかにするということを考えてはどうかと思っております。

その意味で、具体的に何を表示するのかというイメージの話になるのですけれども、例えば20枚目に現行法の特商法の氏名・勧誘目的と明示義務の概要が整理してございますが、ちょうど電話勧誘販売を見ていただきますと、②に販売業者以外に加え、その勧誘を行う者の氏名も明示すべき事項となっております。すなわち、具体的に勧誘した者を明示義務の対象とする規定もありますので、この辺りも含めて考えていくといいのではないかなと思っている次第です。

以上です。

○板倉委員 ありがとうございます。

○後藤座長 池本先生はいかがですか。

○池本氏 大切な質問項目だと思っています。

私は、むしろ景品表示法はあらゆる広告についての一般ルールとして、先ほどのように販売業者との関係が分からないような形で広告をしてはならない、要するに、主体について誤認を招くような表示をしてはいけないというネガティブな規律の書き方ですが、今回のチャット勧誘は、特商法上は、もう一歩踏み込んだ積極的な表示義務の規律で、販売業者の名称と勧誘者と名称を両方積極的に書きなさいと。勧誘目的の明示義務のところに両方をちゃんと表示せよということで、誤認するようなものを禁止するというもう一歩踏み込んだ形にしたほうが、よりクリアではないかと私は考えます。

以上です。

○板倉委員 ありがとうございます。先生方のお示しのように、こういうものを表示しなさいと書くのがいいのか、誤認を招くようなものが駄目だと書くのがいいのか、両方がいいのか、どうしたらいいかなと思って、頭の体操で先生方の御意見をいただきました。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、万場委員、よろしくお願いいたします。

○万場委員 ありがとうございます。

皆さんの悪質商法の撲滅に対する情熱というのは非常に感服した次第ですけれども、池本先生に質問なのですが、資料の6ページ以降の通信販売業者に対する規制事項というところは、販売業者等がチャットを利用した勧誘によって通信販売を行うとするということになると、これは通信販売事業者全体を規制対象にするということでしょうか。まずそれをお聞きしたいのと、仮にそうだとすると、今回の問題というのは非常に不意打ち性が高くて、内容についてももうけ話だとか副業の話ということなのですけれども、通常の我々の物販を対象としている通販とは似て非なるものだと思うのですけれども、結局、通信販売事業者全体に規制をかけていくというお考えなのでしょうか。そこをまずお聞きしたいと思います。

○池本氏 御質問ありがとうございます。

まず、結論的に言うとそうではないのです。規定の位置づけとして言えば、通信販売という章の中に幾つかの禁止規定とか義務規定がありますが、その中にただ単純にこの規定を入れるというのではなくて、ちょうど通信販売とは別に電話勧誘販売があるように、通信販売とは別にチャット勧誘販売的な規定を設けて、チャット勧誘が最後の申込みの手続は通信手段で申し込むので、通信販売に似ているところもありますが、チャット勧誘販売という類型に絞った規律です。したがって、通販事業一般に対する義務を議論しているわけではありません。よろしいでしょうか。

○万場委員 ありがとうございます。

ただ、普通の通販事業者でも、既存のお客さんに対してSNSだとかチャット機能を使って勧誘するということはあり得るのかなと思うのですけれども、それに対してはどうなのでしょうか。少なくとも、顧客に対するチャットの勧誘についても同等の規制が必要だとお考えなのでしょうか。

○池本氏 これも、結論的には私はそこは線引きをして、そこは除外しているつもりです。つまり、広告に例えばこれこれの健康食品でコース契約でこういうものがいいですよと。ただ、その商品の使い方とか幾つか分からない点はお問い合わせくださいというのを、従来電話でのお問合せをチャットでお問い合わせくださいというふうに、正に販売目的を明示して、それに関する補足的な質問をするチャットというのは不意打ち勧誘でもないですから、それは今回は除外しようと。あくまでもチャット勧誘の中でも更に不意打ち的なものに絞ろうと。第2の要件がその趣旨です。

○万場委員 ありがとうございます。

○後藤座長 池本先生に御質問なのですけれども、今の6ページ以下のところで、例えば1)としてチャット機能を利用した勧誘に先立って勧誘目的等の明示義務とか、2)で承諾していない者へのチャット機能を利用した勧誘メッセージ提供の禁止及び拒否者に対する勧誘メッセージ提供の禁止とか、それぞれ四角で囲んであるところがありますけれども、この部分について、今おっしゃった線引きをするというのは、どこの文言でそういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。それとも、線引きというのは、今後また線引きする方向で考えるということなのでしょうか。

○池本氏 私のレジュメで言いますと、1ページ目、適用対象という大きな1ポツで要件1と2を設定し、論点をその後に幾つか示した上で、6ページ目からSNS勧誘、ここはSNSというよりはチャット勧誘に対するチャット勧誘販売とでも呼べばよかったのかもしれませんが、5ページまでで枠づけた取引に対する規制事項という提案です。そこの相関関係が見えにくくなっているとすると申し訳ありませんが、適用対象の限定が6ページ以降に全てかかっているという理解で受け止めていただければと思います。

○後藤座長 分かりました。どうもありがとうございました。

それでは、黒木委員、よろしくお願いいたします。

○黒木委員 ありがとうございました。非常に詳細な資料をいただきまして、昨日からずっと読んでいるのですけれども、特に山田先生と池本先生の資料は大変示唆的だと思っていて、勉強になりました。ありがとうございます。

その関係で、私は池本先生の4ページ目から5ページ目にあります、チャット機能による勧誘者の責任の考え方というところについて。より詳細に教えていただきたいと思っております。

SNSサービスにはいろいろなものがあり、SNSを利用するに際しては必ずしも本名を登録しなくても利用できるというものが結構あると思っています。このようなSNSを利用している場合に、勧誘をしている人たちが販売事業者とどういう関係にあるのかということについて検討が必要であると指摘されていますが、ここの具体的な勧誘者というのが、本当に何も考えずに勧誘しているだけなのか、正にアフィリエイト広告とかそういうような形で裏でつながっているのかということをどうやって仕分けをしていくのでしょうか。要するに、SNSを利用されているプラットフォーム事業者との関係で、SNS利用者の本人確認辺りをどういうふうに考えていったらよいのかということについて、池本先生のお考えがありましたら教えていただければありがたいと思います。

以上です。

○池本氏 御質問ありがとうございます。

実は私、先ほど自分の発言開始時間を勘違いしていまして、焦って25分ほどで終わって、ここは後にしようという感じで飛ばしてしまったところ、大事な論点です。

レジュメを再度確認いただきながら説明したいと思いますが、チャット機能による勧誘者の責任の考え方ということで、基本はチャット機能の勧誘をするチャットの発信者そのものを特商法の適用対象に据えるのかということは、少なくとも特商法の枠組みの中では販売業者を基準にすると考えていくのが穏当かなとしております。

その代わりと言ってはなんですが、6ページ目の③のところなのですが、メッセージを送る者がちゃんと誰のどういうものを勧誘しようとしているのかというのをそのメッセージにきちんと表示しなさいということをルールとして法的な位置づけで入れれば、これはいわばチャットでやり取りをして、最終的にはどこへつないでくださいとつないでいる。それがアフィリエイト広告のように報酬対価を払っている人間なのかどうかはともかく、そういうつながりを持った説明をしている。チャットの場合には文字をスクリーンショットすれば残りますから、そういうつながりがあるとすれば、基本はそこについて漫然とチャットによる勧誘を受けて契約を受けている販売業者の側に責任が及びますよと。及ばないようにするためには、そういうチャットに出している不当な表示なり、あるいは表示事項が入っていないものについてやめてくださいと手配してもらわなければいけないのだと。

しかも、これは昨年のこの委員会の委員会意見のほうに書いてありましたかね。その中で、SNSの運営事業者が自主規制の中で、不適正なSNSのメッセージについて、それを禁止したり、是正をしたりという取組が求められるということがあったと思います。ただ、SNS事業者からすると、そのSNSのメッセージそのものが常時見える状態ではないので、なかなかできないのだと。通信の秘密もあるしということでなかなか動いてくれないところがあるかと思うのですが、法的なルールの中に入れておけば、例えばそのトラブルに巻き込まれた消費者がこんなメッセージで勧誘を受けたのですというのを1枚でも2枚でもスクリーンショットして、それを提供する、あるいは消費生活センターでスクリーンショットしたものを添えてSNS事業者に持っていけば、これは法律違反行為になりますよと。これは、その発信者自体が処分ではないけれども、そういう過程を経て契約に至っている販売業者に責任が行きますよということと、自主規制で言えば不適正な発信をしているとなると、それをやめてくださいということも言いやすくなるのではないか。

それでも駄目な場合に、SNS事業者に対してデジタルプラットフォーム消費者保護法を参考にして何か規定を設ける必要があるのではないか、検討が求められるということで、これは特商法そのものではなくて、別の課題になるかと思うので、私のレジュメではここはそれ以上は検討していないところですが、消費者委員会はせっかく昨年ああいう意見を出されたので、むしろSNS事業者が自主的な対応できちんとやっておられるのかどうかフォローアップしていただき、必要に応じてそこも更に踏み込んだ検討をしていただけるとうれしいなというところがあります。

○黒木委員 ありがとうございました。また考えさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。

山田先生にお伺いしたいのですけれども、資料の30ページに禁止行為規定の新設というところがあるのですが、ここについては、例えばチャットを利用する取引類型に対象を絞って以下のような行為規制を新設することが考えられないかという御提案をされているのですけれども、ほかの部分はチャットを利用する取引類型に絞らないより広い御提案と理解してよろしいのでしょうか。

○山田氏 後藤座長、御質問ありがとうございます。

本日の報告で取り上げました7つの課題に対する私見につきましては、基本的には、この規定については、通信販売全体を対象とすべきであるとか、この規定についてはチャット行為を利用する取引に限定するべきだというところを決め打ちをしない作り込みをさせていただいております。といいますのも、今日の11ページの検討の手順というところにまとめておりますけれども、範囲のかけ方として、例えばチャットを利用した取引行為に限定することが妥当なのか、それともある程度広めに通信販売全体に関しての規律としてかけたほうがいいのかというところは、実際に起きているトラブルの実情とか、あるいは過剰規制の観点も踏まえて考えていかなければいけない問題だという整理に立つからです。

その中で、禁止行為のところに関しましては、このように明確に書いているのは、差し当たってこういった行為が今日御報告させていただいたようなチャット行為を利用したような類型に関して多く見られる類型だったものですから、ここに関しては、対象範囲をある程度絞り込んででも、規制する必要性が高いという理解で書いた次第でございます。

○後藤座長 理解しました。ありがとうございました。

それから、いろいろ御提案をいただいているのですけれども、全体として問題点を広く収集していただいて、その問題点に関して、必ずしも結論を示すということではなくて、選択肢を示すという部分が今日の御報告では多かったと思います。例えば民事規定のところに関して、33ページでありますけれども、消費者契約法の取消権等によることになるというコメントをなさっているのですが、池本先生の資料では、そこのところについて、取消しの規定とかあるいはクーリングオフということを具体的にお書きになっているのですが、池本先生が具体的に結論をお書きになっているところに関して、民事規定のところだけではなくて、ほかの部分も含めてということですけれども、何か御意見があればお願いします。そこまで細かく結論を出すというのは現時点では難しいのではないかとか、あるいはこの結論については、方向性としては山田先生も賛成なさるというようなことで、何か今おっしゃっていただけることがありましたら、コメントしていただけたらありがたいのですが。

○山田氏 ありがとうございます。

池本先生の御報告につきましては、基本的には方向性はほぼ同じ方向を向いているという理解です。

1点、最後の9ページの書面交付義務とクーリングオフの導入のところに関してでありますけれども、この辺りというのは、昨年の当ワーキング・グループの議論の中でも電話勧誘販売との類似性という話が出てきているわけでありまして、本当に類似性があるという話になってくれば、電話勧誘販売におよそ規律されている規定自体については、全部入っていてもある程度平仄を合わせておかしくないだろうという結論になるだろうとも考えられるところです。他方で、現時点では、チャットを利用する等の新しい勧誘手段に関して、電話勧誘販売と同じだと言い切れるのか、あるいは、別の特徴から同様の規律を設けることが相当であるのか、といった点についてはさらなる精緻な検討が必要であるとも考えておりまして、諸外国の法制とかも含めた上で更に検討をすすめていくということも必要ではないかと思っているところではあります。

ただ、いずれにしても、一実務家としましては、最終的な絞り方とかその辺りは別としても、現に発生しているチャットを利用しているような情報商材のトラブルの問題点などについては、電話勧誘販売の深刻な被害状況と同じ状況であると言えるわけでありまして、そうであれば、このような事案に関しては、クーリングオフなど、消費者に対する救済手段はできる限り多く規律すべきだとは考えているというところになります。

以上でございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

池本先生に御質問したいのですけれども、資料の8ページの4)チャット機能を利用した不当勧誘行為等の規制及び意思表示の取消しのところで、(2)のところなのですが、「不実告知・故意の不告知・断定的判断の提供により誤認した契約の申込みの意思表示は取消しができるものとする」とあります。この中に断定的判断の提供が入っているのですけれども、これは断定的判断の提供というのが入るということで、積極的にそういうふうにお考えだということなのでしょうか。

○池本氏 現在の特商法で、訪問販売の勧誘販売は不実告知と故意の不告知だけにして、断定的判断の提供は、事案によっては不実告知の中で読み取るというような運用をしていると理解しております。

ただ、昨今の情報商材の案件などでは、断定的判断の提供型のものが現実に多いということと、不実告知で読み込むというのは断定的判断の提供の基礎的な事実が何かうそがあるとか、どうしてもやはり限られてしまう。他方で、例えばマルチ取引のようなもうけ話の話のところでは断定的判断の提供というのがもっと明示的に議論されているとなれば、被害救済の実効性や、あるいは抑止効果ということからして、断定的判断の提供を明示的に禁止行為だけではない取消権の対象として位置づけておくというのがいいのではないか。特に消費者契約法の中での次のような事項についてというのを、もう一歩特商法で具体的な事項を加えることによって、使いやすいものにすることができるのではないかというような問題意識を持っています。

以上です。

○後藤座長 どうもありがとうございました。よく分かりました。

坂下委員にお伺いしたいのですが、先ほど池本先生の御報告の中で、チャット機能としての位置づけに該当するかどうかということで、後で御助言をいただきたいというお話がありましたので、その辺について何かコメントがありましたらお願いしたいと思います。

○坂下委員 ありがとうございます。

ウェブ会議のチャット、今ここで使っているのがWebexですね。ここにもチャットが提供されています。各委員の名前出てきています。これはいわゆるチャット機能です。しかし、このチャット機能とLINEやFacebookなどのメッセンジャーとの違いは、このチャット機能はこの会議でやっている時間帯しか使えません。今参加している人しか使えません。そこが、同じチャット機能なのですけれども、大きく違うところです。先ほどの池本先生の御質問に対しては、チャット機能なのだけれども、LINEなどの提供しているものとは使える範囲が違うというのが回答になります。

また、先生方のレジュメを見ていて思いますのは、メールアドレスや電話番号、アカウントなどというものでデジタルの世界ではつながるわけです。ですから、電話番号やメールアドレス、アカウントというものが本物なのかどうか、実在しているかどうか。そこがデジタルでつなぐときには一番重要なところだと考えています。そこの実在性をきちんと担保した上で、そのデータが正しいのか、そこに書かれている内容が正しいのかという順に整理していかなくては、デジタルの場合には制御が難しくなるのではないかと考えております。

私からは以上ですが、池本先生、こんな感じで大丈夫でしょうか。

○池本氏 ありがとうございました。

特に後半部分は非常に大事な視点ですし、前半部分も、その場限りで言えばチャット機能である。ただ、それが閉鎖されてしまうという意味では、ますます取扱いには苦しいけれども、メッセージはオンタイムでやっているという意味では、勧誘の性質があるのだなと私は受け止めました。ありがとうございます。

○坂下委員 ありがとうございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

ほかに御質問や御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日の検討はここまでとさせていただきます。

御説明いただいた池本様、山田様におかれましては、本日の会議に御出席いただき、有益な御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。実務上の問題点、法的課題について御報告をいただきました。法制度の在り方について、具体的な御提案とともに検討すべき観点等の御示唆をいただきまして、大変参考になりました。引き続き、これを踏まえまして検討を深めていきたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは、本日は以上になります。


《3.閉会》

最後に、事務局から今後の予定について説明をお願いいたします。

○田村企画官 本日は大変ありがとうございました。

次回の開催につきましては、日程が決まり次第、消費者委員会のホームページを通じてお知らせいたします。

事務局からは以上でございます。

○後藤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)

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