財務省・新着情報

令和5年1月23日

令和五年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)

日本経済につきましては、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いております。一方、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、日本経済を取り巻く環境には厳しさが増しております。

こうした中、足元の物価高を克服しつつ、日本経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せていく必要があります。そのため、先に成立した令和四年度第二次補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、同補正予算と一体的に編成した令和五年度予算、そして令和五年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応や累次の補正予算の編成等により、過去に例を見ないほど厳しさを増しております。財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠であると考えております。責任ある経済財政運営を進めるに当たっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要であります。引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二二」等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革を着実に推進してまいります。

(令和五年度予算及び税制改正の大要)

続いて、令和五年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 令和五年度予算は、歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算としております。

 具体的には、新たに策定された国家安全保障戦略等の下での防衛力の抜本的な強化やその裏付けとなる財源の確保、本年四月に新たに設置されるこども家庭庁を司令塔とした、こども・子育て支援の強化、GXの実現に向けた「成長志向型カーボンプライシング」による民間投資を支援する仕組みの創設、デジタル田園都市国家構想の下での地方公共団体のデジタル実装の加速化や地方創生に資する取組への支援など、現下の重要課題に正面から向き合い、一定の道筋を付けております。

 また、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費を四兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費を一兆円措置し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や物価高騰、世界的な景気後退懸念など、予期せぬ状況変化に引き続き万全の備えを講じることとしております。

 同時に、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二二」等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成するとともに、社会保障関係費以外について、防衛関係費の増額を達成しつつ、経済・物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行うことを通じて、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しております。

 一般歳出につきましては、約七十二兆七千三百億円であり、これに地方交付税交付金等約十六兆四千億円及び国債費約二十五兆二千五百億円を加えた一般会計総額は、約百十四兆三千八百億円となっております。

 一方、歳入につきましては、租税等の収入は、六十九兆四千四百億円、その他収入は、約九兆三千二百億円を見込んでおります。また、公債金は、約三十五兆六千二百億円であり、前年度当初予算に対し、約一兆三千億円の減額を行っております。

 次に、主要な経費について申し述べます。

 社会保障関係費につきましては、出産育児一時金の増額や、出産・子育て応援交付金の継続実施など、こども政策の充実のために必要な経費を確保しつつ、国民負担の軽減のための毎年薬価改定の実施など、様々な改革努力を積み重ねた結果、先に申し上げたとおり、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成しております。

 文教及び科学振興費につきましては、小学校高学年における教科担任制の推進等のため、教職員定数の合理化等を図りつつ必要な措置を講じるほか、「科学技術立国」の観点から、量子・AI分野等の重要先端技術の研究開発を戦略的に推進するとともに、基礎研究・若手研究者向け支援を充実することとしております。

 地方財政につきましては、臨時財政対策債の発行額の縮減や、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金償還額の増額を行うなど、地方財政の健全化を図りつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしております。

 防衛関係費につきましては、新たに策定された国家安全保障戦略等に基づき、スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、施設整備などの重点分野を中心に、防衛力を抜本的に強化するとともに、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしております。

 公共事業関係費につきましては、新技術を活用した老朽化対策やハード・ソフト一体となった流域治水対策など、防災・減災、国土強靱化に資する総合的な取組を推進するとともに、生産性向上のためのインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。

 経済協力費につきましては、国際情勢が激変する中、G7広島サミット等を見据え、「自由で開かれたインド太平洋」をはじめとする取組を強化しつつ、ODAは現下の国際情勢にしっかりと対応できる予算を確保することとしております。

 中小企業対策費につきましては、価格転嫁対策を強化するほか、生産性向上や事業再生・事業承継に対する支援など、中小企業を取り巻く現下の課題に対応することとしております。

 エネルギー対策費につきましては、エネルギー対策特別会計において、カーボンプライシングで得られる将来の財源を裏付けとした公債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援していくこととしております。

 農林水産関係予算につきましては、食料安全保障の強化に向けた畑地化などの対策を講じるほか、農林水産物の輸出拡大、森林資源の適正な管理による林業の持続的成長の推進、さらには水産資源管理を行う漁業者の経営安定対策等に取り組むこととしております。

 東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間において、復興のステージに応じたニーズにきめ細かに対応するとともに、福島国際研究教育機構の設立などの取組を通じて「創造的復興」を成し遂げるため、令和五年度東日本大震災復興特別会計の総額を約七千三百億円としております。

 令和五年度財政投融資計画につきましては、新型コロナウイルス感染症に加え、物価高騰の影響も重なって厳しい状況にある事業者への資金繰り支援に引き続き万全を期すとともに、「新しい資本主義」の加速や外交・安全保障環境の変化への対応等に取り組むため、総額約十六兆二千七百億円としております。

 国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約二百六兆円と、依然として極めて高い水準にある中で、引き続き市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。

 令和五年度税制改正につきましては、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行うとともに、スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化するための税制上の措置を講ずることとしております。また、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバル・ミニマム課税の導入及び資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行うこととしております。

(むすび)

以上、財政政策の基本的な考え方と、令和五年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。

我々の行動と選択は、現代にとどまらず、次の世代へと引き継がれ、後世に生きる人々の生活に大きな影響を与えることになります。歴史の転換期を生きる我々の責務として、戦後日本が直面し、積み残してきた多くの難しい問題の解決を図っていくとともに、日本経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいくことで、豊かな日本社会を次の世代にしっかりと引き継いでいかなければなりません。

そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。

何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

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