内閣府・新着情報

日時

2022年11月1日(火)13:00~15:09

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(構成員)
【会議室】
後藤座長
【テレビ会議】
黒木座長代理
木村委員
(オブザーバー)
【会議室】
中川丈久 神戸大学大学院法学研究科教授
板谷伸彦 特定非営利活動法人消費者機構日本専務理事
【テレビ会議】
大石委員
丸山絵美子 慶應義塾大学法学部教授
川出敏裕 東京大学大学院法学政治学研究科教授
山本和彦 一橋大学法学部教授
(参考人)
【会議室】
大森景一 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会・弁護士
鈴木敦士 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会・弁護士
(事務局)
小林事務局長、岡本審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 行政による被害回復制度についてのヒアリング等
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○友行参事官 それでは、大変お待たせいたしました。

本日は、皆様、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまから消費者委員会第41回「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を開催いたします。

本日は、後藤座長、中川委員、板谷委員は会議室にて御出席、その他の委員の皆様はテレビ会議システムにて御出席でございます。

議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。もし不足等がございましたら、事務局までお知らせいただきますよう、お願いいたします。

なお、感染症拡大防止の観点から、報道関係者を除く一般傍聴者の皆様には、オンラインにて傍聴していただいております。議事録については、後日公開いたします。

ウェブ会議の留意事項を申し上げます。

ハウリング防止のため、御発言いただく際はマイクをミュートの状態にしていただきますよう、お願いいたします。

御発言の際は、あらかじめチャットでお知らせいただければ幸いです。座長に御確認いただき、発言者を指名していただきます。指名された方は、マイクのミュートを解除して、冒頭でお名前をおっしゃっていただき、御発言をお願いいたします。

御発言の際、配付資料を参照する場合は、該当ページも併せてお知らせいただきますよう、お願いいたします。

御発言の際には、可能であれば、カメラのマークをオンにしていただけましたら、どなたがお話しになっているのか分かりやすくなりますので、御協力をお願いいたします。

音声が聞き取りづらい場合などについては、チャットでその旨をお知らせいただければと思います。

それでは、後藤座長、以降の進行をよろしくお願いいたします。


≪2.行政による被害回制度についてのヒアリング等≫

○後藤座長 座長を務めております後藤と申します。よろしくお願いいたします。

本ワーキング・グループは、本年8月に中間取りまとめをしたところですが、本日から後半の議論を開始することにいたします。

後半の開始に当たって、新たにオブザーバーとして特定非営利活動法人消費者機構日本の板谷伸彦専務理事に御参加いただいております。

板谷委員は、特定適格消費者団体の専務理事として、消費者裁判手続特例法に基づく活動等に携わっておられます。消費者団体としての活動の実務で培った御知見をお貸しいただけたらと考えております。

板谷委員から一言御挨拶をお願いいたします。

○板谷委員 後半から参加させていただくことになりました板谷伸彦と申します。

私は、消費者裁判手続特例法が国会で制定された2013年頃に、消費者団体の一員として活動しておりました。その後、しばらく消費者運動を離れたのですけれども、縁があって、昨年2021年度から、その特例法を実際に扱う特定適格消費者団体に籍を置いた者であります。

今年6月のヒアリングでも御紹介させていただいたとおり、COJが検討する案件の半数程度は回収可能性が壁となっていて、言わば悪質ほど見逃さざるを得ないような状況にあるということです。このワーキングで取りまとめられる報告が一つの種になって、近い将来、そういう悔しい状況を行政的手法でもって解消する仕掛けができればいいかなと思っております。

私自身は特段の専門分野はありませんので、貢献できる場面というのは限られると思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

○後藤座長 板谷委員、ありがとうございました。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。

まずは、中間取りまとめで提示しました後半に検討すべき課題について、事務局より簡単に御説明をいただきます。よろしくお願いします。

○友行参事官 今年8月に公表しております中間取りまとめでは、多数の消費者に回復困難な被害を発生させる事案の本質として一定の整理を試みております。この点について、適切な類型化を図る観点から、中間取りまとめにおいて取り上げていない事案についても検証し、さらに、この整理を精緻化することにより、既存の制度の運用や足らざる点を補う制度的な手当ての検討にもつなげるとされております。

また、破綻必至の悪質商法に対応する制度に必要な要素としては、事業を停止させて被害の拡大を防止するという公益的観点からの対応や、財産の保全を早期に行うことなどを挙げておりますが、これらも踏まえ、どのような仕組みが必要であるか、今後、議論していただきたいと考えております。

事務局からは以上でございます。

○後藤座長 ありがとうございました。

中間取りまとめにおいて整理したことを踏まえまして、ワーキング・グループ後半の議論を行ってまいりたいと思います。

本日は、前半で日本弁護士連合会の「詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書」について、同連合会・消費者問題対策委員会の大森弁護士と鈴木弁護士へのヒアリングを行いたいと思います。

後半では、事務局提出資料に基づいて、過去の消費者被害事例を基に、破綻必至商法の類型化について議論を行いたいと思います。

それでは、早速、前半の議題に入りたいと思います。

本日は、参考人として大森景一弁護士と鈴木敦士弁護士に御参加いただいています。

本日は、お忙しい中、ありがとうございます。

それでは、25分程度で御説明いただきますよう、お願いいたします。

○大森弁護士 弁護士の大森と申します。

今回、日弁連のほうで2021年に出した「詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書」について、お話をするということで参りました。

この意見書なのですけれども、私が日弁連・消費者問題対策委員会で所属しています、違法収益吐出部会という部会が中心になってまとめたものになります。

まず、資料2を御覧いただきながら、お聞きいただくのがいいかと思います。資料2のほうでこの意見書の概要を1枚にまとめておりますので、こちらを御覧いただきながら、お聞きいただければと思います。

まず、この意見書なのですけれども、いわゆるポンジ・スキーム事案というものについて、行政による被害回復制度の導入を求める意見なのですけれども、ここでは大きく違法収益吐出型と破産型という2つの制度を提案するということをしております。

ここで言うポンジ・スキームとは何かということですが、これについて、この意見書の中で厳密な法的な定義をしているわけではありませんが、いわゆる一般にポンジ・スキームといわれている詐欺的商法に共通する要素として、一般的な説明を「ポンジ・スキームとは?」と書かれているところでまとめております。

説明しますと、利益の還元や配当等を装って多数の者から資金を集める。ただ、実際にはそれを運用する事業や運用対象となる物品が存在しないか、形骸化又は著しく不足しており、別の者から集めた資金の一部を他の者に分配する構造になっているものという形で説明しておりますが、これは法的にこれが必要十分かという議論ではなくて、一般的にどういうものかという説明ですので、その点は御留意いただければと思います。

ポンジ・スキームの何が問題かということにつきましては、次の「被害回復の困難性」と書いてあるところに大きく3つ挙げておりますが、ここにつきましては、このワーキング・グループの中間取りまとめの中でもほぼ同様の内容が記載されていたかと思いますので、割愛させていただこうかと思います。簡単に言うと、民事的にも、刑事的にも、行政的にも、現行法では対応がなかなか難しい状態になっているということです。

今回、この意見書では、どういう行為を対象の取引とするかというところについて、2つの要件を提示しております。

1つは、利益供与誘引取引であるということ、それから、もう一つの要件が、流用型又は分別管理義務違反型であるということで、利益供与誘引取引であるということと、次の流用型と分別管理義務違反型の両方の要件を満たしている場合には、対象としていいのではないかと考えております。

次に、そういう取引に対してどういう対応をすべきか、どういう制度を設けるべきか、ということについて、右側のほうに書いてあります。

こちらは大きく違法収益吐出型と破産型ということで2つの制度を提案しているわけですけれども、この2つの制度は、両方がなければいけないとか、そういう趣旨で書いているものではなくて、あくまで現在、我が国でそこまで議論が煮詰まっている状況ではないと思いますので、あくまで議論のきっかけとして、想定が比較的実現しやすい、する余地があるだろうと思われる2つの類型を提案したものになります。

ですので、これがどちらか択一的だとか、両方が補完する関係にあるとか、そういうものではなくて、こういう制度が考えられますよという趣旨で2つ挙げたものになります。

違法収益吐出型という制度は、簡単に言うと、行政、内閣総理大臣という形にしておりますが、内閣総理大臣が裁判所の許可を得て賦課金の納付を事業者に命じるという制度になります。

賦課金納付命令については、国税滞納処分の例によって徴収するということで、優先的な回収を実現しようということで提案しています。事業者だけでなくて、この手の詐欺事案においては、実質的な支配者に財産が流出していることが非常に多いかと思われますので、そちらも対象にしないと実効性がないのではないかと思われますので、そういう実質的支配者も対象にすべきであるということを主張しております。

このような賦課金納付命令ですけれども、実際に裁判所の許可を得るまでに多少時間がかかることも想定されますので、保全管理命令ということで保全する制度を設けたりとか、あとは、通常、詐欺的な事業者に対して、申立費用とか、そういうものを被害者側が負担するのが非常に困難な場合もありますので、費用の国庫負担とか、そういう規定も設けるべきだということで、そういうものも挙げております。また、資料提供ですが、これは行政から資料を融通するということで、そういう制度を提案しております。

分配手続につきましては、このような形で賦課した賦課金について、損害賠償で被害者に対して分配するということで、被害救済も図るべきではないかということで、これもそういう立て付けにしたものを提案しております。

次に、破産型についてです。こちらについては、現行法の破産手続と基本的には大きく変わるものではないかなと思いますので、イメージはしやすいかと思います。基本的には、破産申立てをして、裁判所が破産の開始決定をして、管財人が財産を処分して配当に回すという手続になります。

ただ、現行の破産手続には、消費者被害の回復とかに関して、あまり適していない立て付けになっている部分もありますので、その辺りについては、修正する条項を入れる必要があるのではないかということで、幾つかの提案をしています。

1つ目の対象取引を私法上無効にするということですが、これはこのポンチ絵でいうと、左下の部分に書いてある対象取引のことですけれども、こういうものは私法上無効であるということを法律で明記することによって、破産の要件を認定しやすくすべきである。債務超過であるとか、そういう破産の要件を認定しやすくするということと、あとは、被害回復に際して認定がしやすくなるということで、こういうことを明記すべきであると提案しています。

また、今回提案しているのは内閣総理大臣に破産申立権を付与するという制度になりますが、行政、ここで想定しているのは消費者庁になるのかなと思いますが、消費者庁が調査をして、内閣総理大臣の権限で破産申立てをするという制度になっています。

先ほどの違法収益吐出型と同じように、実質的支配者についての破産申立権を付与すべきであるということ。それから、破産手続による被害回復は、先ほど説明しましたように、管財人によって財産を換価して、それを配当することによって被害を回復するという立て付けになっています。

ただ、このポンチ絵でははっきり書いていないのですが、破産手続を使う場合に、被害回復の一番のネックになるのは、被害者の債権というのは優先順位が非常に低くなってしまっているということがあるかなと思います。その点について、財団債権とか、優先的破産債権とか、そういうものが先に弁済を受ける形になりますので、被害者のところに戻ってくるお金は非常に少なくなってしまうというところが実際の運用としては問題になることが多いかなと思います。

この点についても、今回の意見書でははっきりとした方向性は示せていないのですけれども、何らかの対処をすることが望ましいのではないかと考えております。

鈴木弁護士、よろしければ補足をお願いします。

○鈴木弁護士 弁護士の鈴木です。今日は、御説明の機会をいただきまして、ありがとうございました。残された時間を使いまして、補足を若干させていただきたいと思います。

まず、違法収益吐出型のほうなのですが、意見書ですと10ページ以下に幾つか制度の骨子を述べておるところなのですが、違法収益吐出と言いましても、基本的には、顧客が払ったお金から配当を除いたお金、実質被害額を吐き出させるということを想定しております。違法収益と言いますと、収益だからどういう経費を引くのか、みたいな議論になる可能性があるわけなのですけれども、経費を引くということはあまり考えていないので、そういう意味では違法収益と言わないのかもしれません。一応、利益吐き出しと言ったりしますので、イメージしやすいようにこういう表現をしております。

制度設計の大枠としまして、課徴金のように行政手続で納付を命じてしまって徴収する。その納付命令の適否については、行政訴訟で争うという立て付けも考えようによってはあると思っています。

ここでそのようにしなかったのは、課徴金ですと、例えば、表示が誤っていた、それに関する売上の3パーセントだという話ですから、会社が潰れるということは普通は想定し難いわけなのですけれども、利益吐き出しでは、もともとポンジ・スキームをやっているような業者ですから、そればかりやっているわけで、結局、利益吐き出しが命じられるということは、要するに、会社にとっては破綻するということに等しいわけです。そうすると、事業者に及ぼす影響が大き過ぎるだろうということで、そこは裁判所の許可を事前に得るということにしたほうが手続保障的にいいのではないかということを考えてのことであります。

逆に言うと、時間がかかり過ぎるのではないかという問題はもちろん出てくると思いますので、バランスだと思っていますが、一応、考え方としては、そういうところです。

裁判所の許可としても非訟手続で行うのかなとは考えておりまして、これを書いたときに念頭に置いた、実質行政処分をやるのに裁判所の許可が要るという立て付けになっているものとしては、児童福祉法の施設入所の承認とか、生活保護法の施設の入所の許可とか、そのようなものがありまして、全然種類が違うのですけれども、実質行政処分もそういう許可が要るようなものというのは、ごくわずかに幾つか例はありますので、そのようなことを少し参考にしたということでございます。

あとは対象事案の件なのですけれども、この意見書では特に悪質なものをまず俎上に上げて、対処をすること自体が過剰であるとか、行政の過剰介入であるとか、あまり言われないような悪質な事案で、他に救済手段があまりないようなものをまず俎上に上げるという観点で、ポンジ・スキームに絞ったということであります。

前半の議論で消費者機構日本から報告がなされたように、別にポンジ・スキーム以外でも、例えば、情報商材みたいにもともと商品の対価が全然均衡していないものと、重大消費者財産被害事態の一つの要件にもそのようなメルクマールがありますが、対価的に全然均衡しないようなものを売るとか、単に投資の勧誘をしているだけで、別に配当とかはしていない、投資勧誘をしているのだが、何をしているか分からないみたいなものもあります。

他にも、定期購入みたいに消費者にとっては要らないものを無理やり押しつけられるみたいなものもあったりするわけですけれども、特に被害回復が困難で、かつ、行政が対応するべき必要性が強いものということでポンジ・スキームに絞って提案しただけで、それに限るべきだということでもないわけであります。

そういう意味では、ワーキング・グループの中間取りまとめを拝見しましても、基本的には、利益を収受できることを誘引にしてお金を払わせるというものを、幾つも「近年の多数消費者被害」として事案を挙げて、その事案に共通する点ということで、マル1高配当・高利益が得られることによって、多数の消費者を誘引するもので、マル2もともと事業による利益が上がらないから、約束した配当ないし利益の提供ができない状態になると、他の消費者からの出資金を配当に充てる。マル3だんだん出資が増えるほど被害が拡大する。この3つの本質というのが14ページに書かれているのですけれども、基本的には同じようなものを念頭に置いています。

ただ、この本質をそのまま要件にしてしまうと、事業者がやっていること自体を全部解明しないと分からないということになってしまうので、そうすると、このスキームを使うことが遅くなってしまって、命令できたときには、ほとんど事業者が支払いできないような状態になっていて、事業者は逃げかかっているということになりかねないのです。

そこで、上記の本質と言われているもののうち、マル1はそういう事案ですというだけだから、そうなのですけれども、マル2の中の一部を切り出して、当初標榜していた事業に使っていないということとか、分別管理をしていないというところを要件とし、その結果として、次の出資者から来たものを前のお客さんに配っているとか、それがどんどん累積していっているというところまで見なくても、当初標榜している事業に充てていないということであるとか、分別管理していないということで、違法だということで一定の手続が取れるようにしようということを考えたのです。

なぜこういうものをメルクマールにしたかといいますと、よく使われるポンジ・スキームの仮装している業態というのは、例えば、集団投資スキームというのがよくあると思うのですが、金商法上、集団投資スキームは、当該金銭を充てて行われる事業にその金銭を充てていないということは違法だとされており、分別管理をしないのも違法だとされていますから、そこから取ってきていまして、集団投資スキーム以外にも、例えば、不動産特定事業みたいなものとか、信託みたいなものとか、そのようなものを仮装することもあるわけですけれども、そこでも分別管理しなければいけないというのは、業法上も当然の義務になっていますから、そのようなことを加味して考えて、まず、こういう2つの類型を要件に持ってきたというところでございます。

補足としましては、以上でございます。

あと一点、比較法的なことを申し上げますと、違法収益吐出型に着眼したのは、アメリカにディスゴージメントという制度があるからです。

特に日本の多数の消費者が被害に巻き込まれた、中間取りまとめにも12ページ以降にMRIインターナショナルという事件がありますが、首謀者はたまたまアメリカにいるのですけれども、被害者はほとんど日本にいる人という事件でございまして、アメリカの手続を使って一定の被害回復ができたということがありました。やはりこういうものが日本にも要るのではないかというところで、我々日弁連も2015年にSECを訪問して調査したということもあり、そこから考えていったということがありますので、ちょっと補足します。

SECは証券取引を監視しているところですから、こういうポンジ・スキームみたいなものもありますし、他にもインサイダー取引とか、いろいろ日本でも証券取引法違反になるようなものはあると思うのですけれども、そういうもので得た利益を吐き出させるという制度があるわけでありまして、別にポンジ・スキームに限りません。

大きな類型としてはもう2つぐらいあって、FTCという公正取引委員会みたいなものがありまして、そこが、例えば、カルテルとか、不当な勧誘行為とかを取り締まっているわけですが、不当な勧誘行為で得た利益を吐き出させるということもしています。ただ、それはポンジ・スキームとは全然関係ない話なのですけれども、そういうものもある。

アメリカは、御案内のとおり、幾つもの州に分かれていまして、州ごとに裁判所もあれば、検察組織もあれば、行政組織も議会もあるということでございますが、司法長官という人がいまして、その司法長官が不当勧誘行為について訴追して、違法な利益を吐き出させるという、ミニFTCみたいな機能がありまして、州法に基づいてそういうことをやっているというものもあります。

別にポンジ・スキームに限られるわけではないのですが、そういった制度があるものですから、そういうところに着眼して、少し日本風にアレンジしたのだけれども、こんなものは日本で見たことがないと言われるかもしれませんが、それでも日本風になるようにある程度行政手続に寄せて、制度提案を少し考えてみたということでございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、これより45分程度を質疑応答の時間とさせていただきます。ただいまの御説明及び御報告を踏まえまして、御質問、御意見がある方は御発言をお願いいたします。

御発言をされる際には、チャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。

では、板谷委員、よろしくお願いいたします。

○板谷委員 では、私のほうから2点ばかり質問させていただこうと思います。

鈴木弁護士の御報告の中では時間がかかり過ぎるのが難点とのお話しがありました。また、大森弁護士からは、破産手続の債権回収に優先順位があり、被害回復という意味では結構苦しいものがあるというお話がありました。

実際の被害回復という観点からいいますと、やはり迅速さということをどのように実現するかがすごく重要になってくると思うのです。例えば、景品表示法には不実証広告規制がありますけれども、あのようなイメージで、そんなに厳しい要件ではなくて、端緒が現れたらまず行政機関が一時的な差止めみたいなことをして、調査に入って、調査の結果、必要であれば措置を採り、問題がなければ解除するという、そんな迅速化を確保するようなスキームは考えられないのかなと思います。そういうことがあり得るのかどうかということを専門家に聞いてみたいと思っています。

それから、もう一点なのですが、これは自明の話かもしれないのですけれども、違法収益吐出型と破産型という2つの制度を御提案される中で、択一的ではない、補完的ではない、考えられる制度を2つ挙げたのだというお話でしたけれども、それぞれマッチする対象取引の特徴みたいなものがあるのかどうかというのをお伺いしたいなと思っています。

吐き出しというのはその後の事業継続が想定されているようにも思われますし、破産は事業そのものを解消するものだと思うのです。この2つの措置を使い分ける種別というか、基準みたいなものがあるのかどうかということをお伺いしたいと思います。

○鈴木弁護士 御質問ありがとうございます。

まず、1点目の質問で、時間がかかり過ぎて困るではないかということなのですが、確かにこの日弁連の提案というのは、賦課金の納付命令をして、そのときに保全の申立てもするから、賦課金の納付命令が確定するまでの間には保全はできるのですけれども、納付命令まで出すということですから、金額もある程度計算しなければいけないわけでありまして、そういう意味で、確かに着手が遅くなるという側面はあるのだろうと思うのです。

もともと着想を得たディスゴージメントというのは、中川委員のほうがお詳しいかもしれませんけれども、もともとディスゴージメントだけがあるわけではなくて、基本的に法律上、違法行為が決まっていまして、違法行為について差し止める。差し止めるだけでは被害回復が図れないようなときに、あるいは利益を吐き出させるなり、被害回復をさせるなり、その他にも、それに伴って資産を凍結するとか、管理人を送り込むとか、いろいろ適切な救済方法を採ることができるという制度です。もともとのアメリカの制度においては、最初に止めるだけ止めるというのも、当然、選択肢としてはあるのです。

ただ、そういう何でもできますよみたいなことはちょっと無理で、日本的にはそれぞれの場面に分けて要件と効果と手続を設定しないと無理だろうと思っておりますので、最終的な吐き出しというところに着目してそういう制度設計をしているわけですが、まず最初に違法行為を止めるという、行政処分でなくてもいいのかもしれませんけれども、そのような段階をプレ段階としてつくって、そのときに止めるだけでは言うことを聞きそうにもないとか、違法行為しかやっていないから、止めたら、当面、会社が破綻して財産が流出しかねないので、保全も一緒にやるとか、そういう制度設計はあり得るのかなと思いました。

2番目の破産型と吐出型の関係なのですが、結局、この日弁連の意見書では、ポンジ・スキームとなるようなものを念頭に置いて、2つ並列的に制度設計をしているので、使い分けとか、そういうものもないわけなのですけれども、このような制度というのは、ポンジ・スキーム以外にも対応すべきものがあるかもしれなくて、対象を広げていくというときに、債務超過なり、支払停止になった場合は、破産するのはしようがないというところがありますので、もしかしたら、破産のほうが対象事案は広げやすいのかなと個人的には思っているところはあります。

そういったところでしょうか。

○大森弁護士 では、私からも補足させていただきます。

2つ質問をいただいていまして、1つ目の質問の中に景表法の不実証広告規制のようなものは考えられないかというお話がありましたが、基本的に破産型については、裁判所の認定と裁判所の判断・決定によって行う形になりますので、どちらかというと、法律上の推定規定のようなもののほうが親和性はあるのかなと思います。

違法収益吐出型については、最終的に処分は行政処分という形になりますので、景品表示法という実例がありますので、どちらかというと親和性があるのかなとは思いますが、景品表示法の不実証広告規制も、課徴金に関してとか、そういうものには使えないという形になっていたと思いますので、そういう意味で、どこまでそれを違法収益吐出型の制度に実際に盛り込むことができるかというところは、ある程度限定的なものにならざるを得ないかもしれません。

次に、違法収益吐出型と破産型について、対象取引の中でどういうものがマッチするかというお話がありましたが、先ほど鈴木弁護士からも話がありましたように、今回はポンジ・スキームに関しての意見ですので、この2つを並列的に並べておりますが、基本的に破産型というのは、破産の要件を満たさない場合にはなかなか難しいのだろうと思います。

ポンジ・スキームの場合は、そもそも実体がなくて、自転車操業でぐるぐる回しているだけですので、財産関係を調べれば、破産状態になっていることは恐らく間違いないだろうということで、親和性はあると思うのですけれども、違法収益吐出型は、別に債務超過になっていなくてもできるはずのものですので、違法な収益を事業者が得ていれば、それを吐き出させて、それを分配するというのは制度としては考えられるのかなと思います。ですので、より詐欺的な商法一般に拡張する余地はあるのかもしれません。

○後藤座長 よろしいでしょうか。

それでは、丸山委員、よろしくお願いいたします。

○丸山委員 本日は貴重な報告をありがとうございました。丸山でございます。今も説明していただいた違法収益の吐き出しの関連で、2点確認をさせていただければと思います。

提案されている違法収益の剥奪のところの違法行為に関してなのですけれども、頂いております説明のプリントの8ページ以下のところを参照しますと、違法性の認定に関しましては、既存の出資法とか、預託法などの法令違反ということではなくて、別に何か法令をつくって、ここに書かれているような流用型とか分別管理型の要件を立てて、それに該当するということをもって、ここでの違法収益剥奪でいう違法行為と認定するイメージという理解でよろしいのかというのが第1点目の質問になります。

第2点目としましては、例えば、様々な消費者法令において現在も禁止行為とされている行為があると思います。禁止行為とされているものの中には、民事法的にも無効・取消しとされるような行為と表裏のものもいっぱいあります。

そういう場合につきましては、利益の吐き出し、消費者が支払った金額を行政が取り戻すというのは言いやすいイメージがあったのですが、分別管理義務違反ということをもって消費者が支払ったお金を取り戻すというのは、例えば、金商法が対象としている他の取引類型とか、分別管理義務が課されている他の取引類型も念頭に置いた場合に、大丈夫なのかという、お伺いの仕方が難しいのですが、これをもって違法収益の吐き出しにつなげるというところの理論的な正当化というのは大丈夫そうだという御感触なのか、この辺りを教えていただければと思いました。よろしくお願いいたします。

○鈴木弁護士 丸山委員、御質問ありがとうございました。

検討がやや不十分なのかもしれないのですが、前者の質問としては、イメージとしては、何らかの特別法なりで違法行為を定めた上で、それに対してこういう違法収益吐出型の制度が使えるという、違法収益吐出型制度自体の法律の中に定めるのだと思っているわけです。それは既存の法律の改正でも別にいいのですけれども、既存の法律に入れられる法律があるかどうかという問題だと思います。

2番目の御質問で、消費者法令でいろいろ禁止行為があって、民事的にも無効となり得るようなものがありまして、それに対して吐き出しができるようなものにしていくというのは、そのとおりだと思っています。

そういう発想で考えていって、集団投資スキーム、不動産特定共同事業、預託商法とか、ポンジ・スキームに使われるようなスキームを幾つか考えた上で、そこで違法行為となっているものは何なのだろうかと見てみると、分別管理違反というのが大体規定されていたり、あるいはそもそも事業に使われていないというのが問題視されているので、それらを抽出してきたという過程を取っています。

では、全ての場合に分別管理違反だけでいけるのか、検証が不十分だと言われると、そうかもしれないのですけれども、もともとは消費者法令で禁止行為になっていて、民事的にも無効になり得るようなものを抽出してきたという過程でございます。

○後藤座長 大森弁護士はいかがですか。

○大森弁護士 では、私からも少し補足させていただきます。

まず、1つ目の質問として、違法行為について、新しくこういう形で定めるのかということですけれども、当然、ポンジ・スキームであっても、既存の法令に違反する部分はたくさんあると思うのです。端的に言えば詐欺ですし、他人の財産を流用しているという意味では横領的な面もあると思いますし、それ以外にもいろいろな規制に抵触している部分はあるかと思うのですが、その中でも我々が要件を検討する際に1つ考えていたのは、実際に使いやすいように、なるべく判断がぶれないような、認定しやすいような要件を立てる必要があるのではないかということです。

ですので、この要件が曖昧であればあるほど、認定には時間や労力がかかるということになってくるかと思いますので、なるべく端的に、ゼロか一かのような形で認定ができるような要件のほうが、特にこのポンジ・スキームについては、早く止めることが一番重要かと思いますので、その点でなるべく判断しやすい要件であり、かつ、違法性を端的に表しているような部分を要件として抽出するということで、こういう形で要件化をしてみたところです。

どのように正当化できるのかというお話もありましたが、これについては、最終的に民事的な話でいえば、公序良俗に反するということになっていくのかなとは思うのですが、どこまでの要件があれば十分なのかというところはなかなか判断の難しいところかもしれません。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

丸山委員、よろしいでしょうか。

○丸山委員 大丈夫です。ありがとうございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、山本委員、よろしくお願いいたします。

○山本委員 ありがとうございます。1点だけコメントです。

違法収益吐出型というのはなかなか興味深い構想だと思いましたが、私の観点からすれば、1つのポイントは、これが国税滞納処分の例によって徴収できるということで、すなわち、これは恐らく事業者が破綻状態になっているという前提だと思いますが、そうすると、財団債権としてそれが回収できるということなのかなと思います。

実質は最終的にはこれは被害者に配当されることになるとすれば、これは消費者・被害者の債権に国が徴収するという衣をつけて、それを財団債権化するという一種の構想なのかなとお見受けしました。

そういう意味では、これは破産型のところで指摘されていた、消費者の損害賠償債権の優先順位が低いという問題点を、こういう構造を取ることによって実質的に解決しようという、ある種、巧妙なプランなのかなと思いましたが、巧妙であるだけに、なぜそんなことができるのかということはやはり理論的には大きな問題だろうと思っています。

資料の中では、このポンジ・スキームというのは社会的に禁圧すべきもので、そもそも被害者から奪い取った財物で、被害者に返還すべきものなのだという説明がされていますけれども、これが言えるのだったら、そもそも被害者の債権を優先化することができる。一種の取戻権的構想だと思いますが、そういうことができるはずで、そこがなかなか説明できないので、みんなが苦労しているところなのだろうと思いますけれども、国を債権者にすることによってハードルを越えようとすることができればいいのですが、私自身は、同じようなハードルを越えないと、これを言うのはなかなか難しいのではなかろうかなという印象を持ちました。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

中川委員、よろしくお願いいたします。

○中川委員 中川です。御報告をありがとうございました。幾つかコメントをさせてください。

まず、1点目ですけれども、このタイプは早めに発見することが重要だということで、端緒をどのようにどこから得るかについて、幾つか候補を挙げていただいている点が重要かなと思いました。

その1つとして、先ほど板谷委員からも御発言がございましたけれども、景表法の優良誤認の不実証広告規制は意外に使えるのかなという気がしております。例えば、どこかの国でエビの養殖をやっていますとか、養殖の写真が載っているのだが、これはどこの写真ですかと問い合わせても答えが返ってこないとなると、優良誤認になる可能性があると思うのです。本当にそんなに簡単にいくかどうかは景表法の担当課に聞かなければ分かりませんけれども、優良誤認の不当表示となれば、景表法上の優良誤認の不当表示になって、措置命令がかけられるのですよね。

そういういろいろなもうけ話について、あなたが言うだけの物や量を扱っているのですかという感じで一々聞いていくだけでも、かなり端緒の発見になるのではないかと思うのです。景表法は表示対策課でしょうけれども、そこから情報を共有するという形で、今回提案されている権限を持つ行政担当と情報共有するという仕組みが報告書に描かれていて、非常に面白い、非常に重要なところだろうと思いました。

これが1点目で感想です。

2点目ですが、違法収益吐出型について、何を命ずるのかというところはもう少し他の形もあり得るかなと思いました。今回は賦課金の納付命令という提案があります。先ほど鈴木弁護士がおっしゃいましたとおり、納付命令にしてしまうと、なぜこの額なのだということを行政が立証しなければいけないという面倒なことになってしまうのです。それはできれば避けたいという気持ちがあります。

独禁法等の課徴金納付命令は、それを避けるために、売上額の何パーセントという外形的に分かるようなことをやっているわけなのですけれども、今回、違法収益が幾らか。基本的にはこれは全額ということを想定されているという御説明でしたけれども、それでもいろいろ調査しないと分からないことなのですよね。

ですので、この取引は違法だと禁止するという説明がありましたので、納付命令というよりは、まずは停止命令や禁止命令だと思うのです。その上で、ここからは私の考えになりますが、原状回復しろという命令、これは措置命令だと思いますけれども、この違法な取引の前の状態に戻しなさいという命令をするというのが1つのアイデアとしてあるかなと思っているのです。

違法行為がなかった状態に戻すということは、要するに、払い込んだ金を全部返しなさいということです。既にあった契約を私法上無効にするかどうかは、どちらでもよい。新たに契約を結んでもいいし、契約の形を取らなくてもいい。とにかくこういう誘いがあって払い込んだという事実があるが、それは何しろ違法なのだから、時間を巻き戻して、その事実関係を全てなかった状態に戻しなさいという形の原状回復命令をしておく。それは実質的には全額返金しなさいという命令になるわけなのですよね。

最初は事業者は命令を聞くかもしれません。ただ、だんだんお金がなくなってできなくなってくるだろう、あるいは隠してくるだろう、うそをついてくるだろうとなると、今度は原状回復命令を履行していないということで行政上の強制執行ができるように規定する。

そんな規定例、立法例はないのですが、代執行的な直接強制なのですけれども、代わりにこちらであなたの財産を取り上げて、つまり、没収してそれを被害者に返還するという形の原状回復命令と強制執行という形に仕組むほうがよいのかなと感じました。

最初に命令をして、少しでもその命令に従うそぶりをしてくれれば、行政としてはその段階で誰に幾ら払ったのだという帳簿を出させて、ちゃんと命令に従いそうかを確認する。原状回復命令では必ず原状回復のための計画書を出させますので、そのやり取りの中で行政が一定の情報を得られると思うのです。

でも、命令の相手方がそれも全然やってくれないような場合には、命令を抜かした直接強制というか、即時強制というのですが、そのような方法も考えられるのですが、これは別の規定を置く必要があるかと思います。差し当たり少しでも命令に応じてくれそうな人であれば、その段階で最初に関係をつくって、向こうがだんだん倒れてきたら強制するという構造が考えられるのではないかなと思いました。

これが2番目のコメントといいますか、私だったらこう考えるというコメントです。

3番目は、その命令についての手続です。今の御提案は、裁判所の許可というのがございますが、これは令状主義的なタイプの裁判所の許可でしょうか。行政が実力行使をするときに、濫用がないように事前に裁判所に見ていただくというパターンかなと思うのですけれども、納付命令をする場合は、一応、行政手続法の意見聴取ぐらいはするように規定しておけば、裁判所の許可までは別段要らないのではないかなという気はいたします。

例えば、営業停止命令とか営業許可取消しなんて、完全に息の根を止めるのですけれども、それだって、別段、裁判所の許可があるわけではありません。そういう意味ではそんなに神経質になる必要はないのかなと思います。

あり得る別の選択肢としては、裁判所の許可ではなくて、行政が裁判所に提訴して、判決でやってもらうというのはあるかもしれません。なのですが、それをやるのか、それでも単に行政処分でやるのか、どちらもあり得ると思いますけれども、裁判所の許可というのはちょっと中途半端かなという感じがいたしました。

4番目ですけれども、私が言ったような原状回復命令をするのであれば、保全が一番重要で、場合によっては、保全こそ裁判所に申し立てる。つまり、民事保全法を行政が使うという特別立法をするという手はあるのかなと。端緒の段階で保全しますので、原状回復命令がちゃんと履行されるように財産を保全するということですので、放っておくと危ないのはここの部分なのです。

恐らく命令までいくとなると、行政は証拠を持っているはずですので、そんなに神経質に裁判所の許可が要るなんていうことはないと思うのですが、ビジネスをやっている真っ最中に何かをやるという場合は神経質になる必要があって、かといって何もしないといけないので、裁判所を巻き込む。裁判所は嫌がるかもしれませんが、民事保全というのはあり得るかなと思いました。

最後に1点ですが、これは先ほど鈴木弁護士がおっしゃった何を返させるのかというので、民事でいう不当利得とか、損害賠償のようにきっちり計算するのではなくて、払ったものは全部ということだと理解いたしましたが、私もその発想で原状回復と申し上げたのです。

もちろん被害者によっては、初期からなんらかの法的救済手続に参加していたので、一部払い戻されたということがあり得ると思うのですが、払った額を全部返させるという制度作りなので、当然、すでに返ってきた分は二重取りにならないように、最終的にマイナスされるということで、それはどこで計算すればいいかというと、そういう細かい計算は分配手続でゆっくりやればいいのではないかと思います。最初にかけるときには、とにかく全額返せという大ざっぱな命令でいいのかなと考えております。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

先ほどの山本委員の御発言とただいまの中川委員の御発言について、参考人から何か御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。

○鈴木弁護士 山本委員の御指摘は誠にそのとおりで、基本的に違法収益吐出型というものを構想した1つの理由はそういうところにあるわけですが、国が徴収するという衣をつけてごまかしているではないかと言われれば、破産法のほうから見るとそういうことになるのかなという気もします。

一方で、独禁法上の課徴金は国税徴収の例によって徴収できるということになっていまして、金商法の課徴金は民事執行の例によるとなっていまして、それはなぜ違うのかというと、被害回復を優先させるためだみたいなことをそこでは言っているから、賦課金的なものを国税徴収の例によって徴収するということは、制度としてはあり得ることなのだろうと思っています。要するに、国の衣を着せたときに、この被害債権にだけ国の衣を着せる合理性があると言えるかどうかということなのかなと思っています。

課徴金はもともと国の債権で、税金みたいなものだから、当然、民間の債権より優先するのですということに多分なっているのだと思うのですが、特に違法収益吐出型の制度を作ったときに、吐き出させるということは、被害者の救済をもちろん目的にしているのだけれども、それ以外にも公的な秩序を維持すると。こういうことをやって利益を得ていて、どこかに財産を隠して逃げるというのだと、また同じようなこともやりますし、そういうことを許しておくと社会秩序が維持されないのだということで、吐き出させること自体、公益的な要素がすごく強いのだということになれば、国の衣を着せる理由も出てくるのかなと思っているところではあります。

中川委員がおっしゃっているような制度設計ももちろんあると思っていまして、基本的には、いろいろなことを盛り込むと意見書として分かりにくくなるという問題がありまして、とにかく違法収益吐出型の機能のところに着目して、違法行為の禁止命令とか、停止命令とか、そういう前提的なこともすっ飛ばして吐き出させるところだけを構成して意見書にしているので、やや不十分なところはあるのかもしれないですけれども、幾ら払ったものを取り返すということだとしても、計算するのには時間がかかるということがありまして、先に停止だけをするとか、原状回復を命じて一緒に保全をするとかもあり得ると思います。

中川委員も、保全をするときに行政だけでいいかどうかというのは、裁判所を関与させる必要もあるのではないかとおっしゃっていたのですけれども、保全で裁判所を関与させるのなら、元の命令も裁判所の関与が要るのかなとぶれていってしまったのがこの日弁連の意見書でありまして、いやいや、元の命令は別に裁判所の許可なんか要らないのだという考え方もあり得るということであれば、それで制度設計していただくというのもいいのではないかなと思います。

○大森弁護士 大森のほうからも一言言わせてもらいます。

山本委員、中川委員、貴重な御意見をありがとうございました。

私のほうからは、1点だけ補足で言わせていただければと思っているのですが、中川委員から、まず禁止命令をして、原状回復命令をして、場合によっては、その後、直接的に強制するという制度も考えられるのではないかというお話がありましたが、多分、これは類型によるのではないかなと思っています。

特に今回の意見書はポンジ・スキームについて意見を述べているわけですけれども、ポンジ・スキームのように事業の実態が空っぽの場合、原状回復命令をしても回復できないし、直接何らかの方法で強制するというのもなかなか難しい場合も多いのではないかなとは思います。

結局、言ってみれば債務超過の状態ということで、それを命令で何か解決しようとすると、どのようにするのがいいのかというのは考えないといけないかもしれないです。ただ、一般的な実体が一定程度あるような詐欺的な商法の類型については、こういう形で直接強制するというのも有効なのではないかなという気はします。

○後藤座長 中川委員、よろしくお願いします。

○中川委員 中川です。追加して2点ほどです。

1点目は、鈴木弁護士がおっしゃった、保全に裁判所が関わるならば、本体も裁判所が関わったほうがいいのではないかということです。独禁法と労働組合法だったか、本体の命令は行政処分ですけれども、緊急停止命令という非訟で裁判手続でやっている立法例があります。あれは保全ではないのですけれども、似たような形ですよね。本体は処分だが、仮の行政処分みたいなことをやるときに裁判所を使うという例です。これは民事保全法ではないのですけれども、いわゆる保全ではないのですが、参考になるかなと思います。

もう一点は、山本委員がおっしゃった債権の順位の話ですが、これは税法の人に聞かなければ分かりませんが、原状回復命令をすると、それを履行すれば売上がなくなるので、それでも税金がかかるのかなというところが気になります。原状回復命令を履行した事業者に対して、課税処分は撤回されることになるのではないか、思いつきですけれども、そうすると、国税とか地方税はなくなるのではないかと思いました。この点は検討してみてもいいかもしれません。そうすると、少なくとも違法収益に関しての心配はなくなるということになります。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、黒木座長代理、よろしくお願いいたします。

○黒木座長代理 黒木です。

私も日弁連の消費者問題対策委員会の委員でしたし、この意見書は内部的にもかなり難産だったので、議論の経過も知っているのに、それに関して質問させてもらうという点で申し訳ないのですが、ルール形成ワーキング・グループが前回取りまとめをした中で、14ページのところと同じような話なので質問します。端的に言うと、高配当・高利回りで勧誘し、事業の実体はあまりない。結局、消費者からの出資で配当のようなものを提供している。出資が増えるごとに配当なし、利益の提供にならない金額が増えて、また人を集めなくてはいけないというものが今回の対象となる事業者ではないかということを中間取りまとめの中の14ページで言っているのです。

それと、今回、日弁連が言っているポンジ・スキームについての整合性というか、この2つをどのように考えるのかということについて、同じなのか、違うのか。とりわけ流用型というのは完璧に同じではないかなと思っていて、分別管理型というものが別個に考えられるとしたら、それは分別管理を求められている業法との関係が出てくるのかなと。この辺りのところについて、ワーキングの中間取りまとめとの間でどのように考えたらいいか教えていただければ、有り難いと思います。

次に、結局、このように特に流用型みたいな話になってくると、顧客に対しては、配当についての期限の利益を事業者が持っているだけであって、期限の利益を喪失してしまうような事由が発生していることを行政が考えれば、直ちに債務超過ではないかということになると、破産手続の申立てが極めて容易になるのではないかと考えられると思っているのですけれども、その辺りについての御意見がどうかということが2つ目です。

3つ目の質問なのですけれども、行政庁に破産の申立ての権限を付与することについての法形式です。現行破産法の改正のときにも、これは山本委員のほうがもっとお詳しいと思いますが、行政庁に破産の申立ての権限を与えるかどうかというのはずっと議論がありましたけれども、結局、要件立てができないし、なぜそれができるのかということも難しいということで見送りになっています。

そういうことを考えると、仮に内閣総理大臣、現実的には消費者庁ということなのでしょうけれども、破産の申立権限を付与するとしたときは、ある意味で業法で取りこぼれてしまっている隙間事案に対して、最終的な方法として破産の申立権限を付与するということになると考えていらっしゃるのか、それとも、もっと強力に他の業法上の権限があったとしても破産の申立権限を付与すると考えていらっしゃるのか、その辺りのところです。

最後ですけれども、結局、日弁連がおっしゃっているポンジ・スキームみたいなものというのは、最終的には業務を停止させるということが主目的にならざるを得ないのではないか。すなわち、事業者の中にある財産というのは、うそを言って被害者から持ってきたようなものが、たまたままだ配当していないものが残っているというだけなので、もしもこれで被害回復をしようと思ったら、新たな被害者を見つけてこなくてはいけないというスキームだと考えると、むしろ新たな被害者を生まないためには、法人格を剥奪するという形での究極の差止請求としての破産と考えることができるのか。

その辺りを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○鈴木弁護士 黒木座長代理、御質問をありがとうございました。

このワーキングの中間取りまとめの14ページに、事案の本質として3点挙げられているところとの関係ということなのですが、この事案として挙げているものがいわゆるポンジ・スキームの事案ですから、基本的には同じものを見ているのだろうなと思うのです。ただ、日弁連の意見書で流用型とか分別管理型としていたのは、先ほど大森弁護士も言いましたが、要件をある程度明確にして処分しやすいように、早く処分できるようにということなので、14ページでいうとマル2のところの要素をもう少し明確にした。だから、マル2のここまで言えなくても踏み込めるのではないかというところで、流用型と分別管理型というのを設定したということです。

ただ、それだけで本当に大丈夫なのかというのは丸山委員からも御指摘いただきましたけれども、14ページの事案の本質との関係としてはそういうことでございます。

破産事件との関係では、ポンジ・スキームになっているようなものは、実体として見れば、実際問題として債務超過になっているのではないかというのは、それはそうなのだと思っていまして、ある意味、そこをもともと取引は無効だと特別法で言い切ってしまって、例えば、高金利の貸付けであるとか、未公開株の取引とか、法律上無効だとしてしまっているものがありますので、一定のこういう類型は無効だとしてしまって、債務超過の認定をしやすくするというのはあるのかなと思っています。

あとは、破産申立権限を付与するのだとすれば、破産法に入れるなんていうことを言ったら、それはちょっと無理だろうと思いますので、何かの個別法に入れないといけないのだろうと思うので。そのときの入れ方として、隙間事案だけなのか、もう少し幅広に入れるのかというのはいろいろ難しい問題ではあるのですけれども、基本的に日弁連の立場としては、もちろん幅広く入れていただきたいということにはなるのだろうなと思っています。

隙間の捉え方もいろいろありまして、もちろん、分野としてはどこの分野の役所のものというのが分かれていて隙間はないとしても、例えば、破産に限っていっても、破産申立てを行政庁ができるようなことが措置されている分野があるのかと言われると、ごく一部の分野しかないはずなのです。だから、隙間に入れると考えたとしても、その行政作用との観点からは隙間になっているのだろうと考えて、隙間事案に対応するという発想から見ても、むしろ隙間のほうが多いというところがあるので、幅広に入れていただければなと思っているところであります。

○大森弁護士 私からもちょっと補足します。

今、隙間事案の話がありましたけれども、基本的には、隙間事案に限定するということになると、ちょっと使いにくくなってくるのかなという気はしますので、やはりもう少し広い対象範囲で定める必要があるのではないかと考えています。

その方法として個別法に入れるという考え方もあると思いますし、場合によっては、破産法の特例法のような形で新しく法律を作るということもあり得るのではないかなと思います。例えば、民事訴訟の特例法として消費者裁判特例法があるような形で、こういう事案についての破産の申立ての特例という形にすることもあり得ないこともないのかなと思っています。

こういう事案については、何より業務を止めることが重要というのは、正にそのとおりでして、今回も破産型というのは、正にそういう観点から、業務を止めて会社を潰してしまうというものですし、違法収益吐出型についても、結局のところ、こういう命令が出されるということになってくると、業務は止まっていくのかなと思いますので、正に黒木座長代理のおっしゃるとおりかなと思います。

○黒木座長代理 ありがとうございました。

○後藤座長 木村委員、よろしくお願いいたします。

○木村委員 木村です。御説明ありがとうございます。

基本的なところを教えていただきたいのですが、破産型の説明で被害者の債権の優先順位が低いということがあるのですけれども、このようなポンジ・スキームの場合の債権を持っているいろいろな人たちは、例えば、どういうものが考えられて、被害者の場合は、どういう人たちの次にというか、順番としてどのぐらい優先順位が低いのかというのを教えていただけますか。

○鈴木弁護士 破産法の専門家の山本委員の前で私ごときがしゃべるのはあれなのですが、一般的にもともとこういうポンジ・スキームをやっている会社で、想定される関係者としては、お金を貸して担保を取っている人がいるかもしれない。あとは、そこで働いている労働者がいるでしょう。その他にも、例えば、事務所を借りていて家賃を払っているということがあるかもしれない。

もちろん税金もあるかもしれませんが、普通はそれぐらいの関係者が想定されるわけですけれども、それぞれ払っていないということになってくると、被害者の債権は、担保付きの貸金、税金、賃金の後なのです。被害者の債権は一番最後のグループに入っていまして、そのグループの他の債権者との関係では、債権額で案分して配るということになりますので、順位が低いというのはそういったことでございます。

○木村委員 ポンジ・スキームにどういう関係者の債権があるのかというのがなかなか想像がつかなかったので、分かりました。ありがとうございます。

○後藤座長 よろしいでしょうか。

他に御質問、御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、大森弁護士と鈴木弁護士へのヒアリングにつきましては、この辺りにさせていただきたいと思います。

本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。

それでは、御退席ください。

委員の皆様は、準備が整うまで少しお待ちください。

(大森弁護士、鈴木弁護士退室)

○後藤座長 それでは、後半の議題に移ってまいります。

まず、事務局より資料3について御説明をお願いいたします。

○友行参事官 それでは、資料3を御覧いただけますでしょうか。こちらは「過去の消費者被害事件について」ということで、事務局においてまとめたものでございます。事案として、最初のページに投資ジャーナルから安愚楽牧場まで13個を掲載しております。

まず、資料3を御提示した趣旨でございますけれども、この資料では、過去の裁判例を調査いたしまして、中間取りまとめでの定義の記載が破綻必至商法を適切に定義しているか、類型化してそのようにできているかということを検証して、より精緻に定義化するということを目的に作成した資料でございます。

それでは、中身につきましては、簡単に御紹介いたします。事案ごとに分かれております。最後のところに【ポイント】というところがございまして、ここが内容を整理したものになっております。

最初の投資ジャーナルでございますけれども、こちらは株式投資家を装って消費者から株式の売買資金等の名目で多額の資金を集めたもので、詐欺罪が成立するとされた事案でございます。

2ページ目でございますが【ポイント】のところを御覧いただきますと、これはキャピタルとかキャピタルゲインを誘引としたものでございまして、配当とか利息による誘引ではないといったところが特徴となっております。実際には証券売買等の実体はなく、顧客からの入金と出金の均衡が崩れると、直ちに顧客への返済が困難となる自転車操業に近い状態という整理ができます。

2つ目が豊田商事でございます。こちらは有名な事案でございますので、詳しい内容は割愛いたしますけれども、4ページ目に【ポイント】がございます。配当による利益誘引が強力でございました。1年物で10パーセント、5年物で15パーセントとなっております。

こうした利回りの認定があるものについては、この後、裁判例の中に記載をしております。どれぐらいの利回りをもって消費者が誘引されているのかというのが1つの参考になる可能性がございますので、記載しているところでございます。

【ポイント】の2つ目ですが、当初より資金運用の実体はなく、顧客の入金を会社の経費や顧客への償還金の支払いに充てたという形でございます。

次が経済革命クラブということで、指定商品を購入することによって生じた利益を会員に還元されると高額の配当をうたっておりました。こちらも詐欺罪で起訴された事案という形で整理されております。

6ページ目に【ポイント】がございます。こちらも配当による誘引がなされておりますが、実際のところ、実体は過少でございました。会員の申込みを先順位会員へ配当していき、KKCというのは経済革命クラブでございますが、その傘下への手数料及び運営経費等に費消していたという事案であります。

次がオレンジ共済組合という名称の事案でございます。出資法2条に違反するものであるということが事案の概要の中に書かれております。

【ポイント】につきましては、8ページ目に記載がございます。こちらも配当による誘引がなされておりました。運用実体はなく、実際は負債の返済や遊興費、経費等に充当されていたものでございます。代理店希望者から契約金などを受領して、代理店に対し営業権を与え、新たな顧客から支払われる掛金の一部を代理店に手数料として支払う仕組みであり、いわゆる連鎖販売取引的側面を有しているという面がございました。

次が大和都市管財でございます。抵当証券商法といわれる組織的詐欺ともいうべき違法なものと認定されております。

【ポイント】につきましては、10ページ目でございますが、こちらも配当による誘引がなされており、また、実際には事業実体が過少であり、利払い、人件費、その他の会社経費を、顧客に新たな金融商品を購入させた代金で賄うといった形態となっておりました。

次がジーオーという事案でございます。詐欺商法の事案となっております。ある商品の宣伝広告費として金員を出捐させることによって、それが売れた場合、売上の30パーセントを配当するという仕組みとなっておりました。

11ページに【ポイント】がございます。配当による利益誘引で、年利12から20パーセントと記載されております。当初より事業実体がなく、顧客からの資金を配当金等の支払い、ジーオーグループの社員の給与等に充てているということでございました。

次の全国八葉物流事件でございます。健康補助食品の販売を偽装して、金銭配当を目的とするような仕組みということでございます。実質は無限連鎖講に当たる事案となっておりました。

13ページに【ポイント】の記載がございます。配当で誘引していたということでございます。実質は、繰り返しになりますが、無限連鎖講であったということ。それから、事業の実体が過少で、配当金等の支払い原資としては、ひとえに新規会員からの出捐に依存せざるを得ない構造となっていたということでございます。

次がファーストオプションという事案でございます。原告らが商品先物オプション取引への投資名目で金員を出捐させられたというものでございます。

こちらについては、14ページに【ポイント】が記載されております。配当による誘引で、途中から資金運用をしていない。新たに顧客から受け入れた資金を従前の顧客への配当や解約金に充てるといった形でございます。

15ページが近未來通信という事案でございます。こちらはこの通信社が行うIP電話サービスの基地局について出資するという事案でございまして、詐欺行為に当たるという記載がございます。

16ページに【ポイント】の記載がございます。こちらは配当で誘引し、事業実体が過少、他の顧客の金員をもって還元金等の支払いに充てたということと、代理店を増やして中継局のオーナーを拡大していくという連鎖販売取引的側面も有していたということでございます。

次がエフ・エー・シーという事案でございます。こちらは「起業コンサルティングセット」というCDセットの販売をするものでございまして、実体は組織的詐欺という形で記載されています。

18ページに【ポイント】がございます。配当による利益誘引があったということと、当初から資金運用により利益が上がっていなかったということ。顧客からの預り金を活動資金に充てていたということ。訴訟では特定商取引法の連鎖販売取引に基づくクーリング・オフが認められた例があるという指摘もあったというところでございます。連鎖販売的な側面も有していたということでございます。

次がワールドオーシャンファームという事案でございます。これはエビの養殖事業に出資すれば、その出資金が1年間で2倍になるといったうたい文句で消費者を誘引していた事案でございます。

19ページに【ポイント】がございます。配当による利益誘引で、当初より資金運用の実体はなく、顧客の出資金を組合員に配当するだけということでございます。他の投資家を紹介すると紹介料を得られる仕組みとなっていて、マルチ商法的要素との指摘もあったということでございます。

それから、エルアンドジーという事案でございます。こちらは出資法に違反しているという記載となっております。

21ページに【ポイント】を記載しております。高配当で誘引していることや、配当原資は新規会員の拠出金のみとなっておりました。マルチ又はねずみ講的な手法という認定がなされております。

最後は安愚楽牧場でございます。こちらは和牛の繁殖を委託すると、最終的には買い戻すという組織の内容となっておりました。

23ページに【ポイント】がございます。配当による誘引で、遅くとも平成8年頃からは自転車操業に陥っている。顧客への支払いのために、更にオーナーを集めるといった形を取っていたということでございます。

今、13個の事案を紹介いたしましたが、ほとんどが詐欺であったり、出資法違反という形で認定されているものでございます。

ここまで御覧いただきまして、23ページに「類型化について」という記載ぶりのところを改めて見てみますと、先ほどのお話でも何回か出てきましたが、中間取りまとめの14ページでいわゆる破綻必至商法についての本質的な問題は何かということを整理いたしました。

1つ目として、高配当・高利益が得られることをうたうことによって、多数の消費者を強力に誘引するということでございます。

2つ目としまして、事業による利益が上がらずに、もしくは当初から利益を上げられる仕組みではないが、約束した配当ないし利益の提供ができない状態になると、他の消費者から得た出資金から配当・利益の提供を行わざるを得ない。

3つ目は、出資が増えると、配当ないし利益の提供をしなければならない金額が増えるため、悪循環に陥る構造にあると考えられる。

中間取りまとめでは、このように整理したところであります。

今、13個の事案を見まして、改めてその様子を整理して考えてみた論点はその次からでございます。

まず「金銭的利得による誘引」のところでございます。配当・利息等の経済的利益による誘引は破綻必至商法の要素かどうか。必ずそれが必要なのか。それから、配当・利息ではなく、契約目的物の価値上昇、例えば、株式の価値上昇を誘引としている場合は、これに含めるのかどうかといったことでございます。

「事業の実体」でございます。当初から全くないもの、当初から本来なければならない規模と比較して著しく過少なもの、又は途中から事業が頓挫して過少になるものなど、事例によって事業の実体は様々でございます。

「消費者から得た出資金の使途」でございます。中間取りまとめでは、破綻必至商法の本質的な問題として、他の消費者から得た出資金から配当ないし利益の提供を行うということを指摘しました。実際、今の13個の例、又は中間取りまとめの本文で見てみますと、上記のような状況に陥っていたことが認定されていることが確認できたかと思われます。

他方、オレンジ共済組合のように、入口での利息による消費者への誘引はあるものの、現実には他の消費者から得た出資金から配当ないし利益の提供をするまでは至っておらず、負債の返済等への充当しか認定されていないものもございました。

ここで他の消費者から得た出資金から配当ないし利益の提供を行っていない事案も念頭に置くのであれば「消費者から得た出資金から配当ないし利益の提供を行ったこと」には限定されない要件立てを検討していく必要があると考えられます。しかし、これも含めてしまうと、経済的利益が得られることをうたう詐欺行為が広く対象となる可能性がございます。

最後ですが、マルチ商法的又は無限連鎖講的な形と、それから、破綻必至商法の関係がどのようになっているかということでございますが、マルチ商法的又は無限連鎖講的と評価されている事案は、本資料の13件中6件となっておりました。

ここで、中間取りまとめで整理したマル1マル2マル3という事案はこれでいいのかどうかということを改めて御議論・御確認いただきたいということが一つと、あと、最後のほうで申しました配当ないし利益の提供ということは必須なのかどうかということについて御議論いただければと思います。

御説明は以上です。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

それでは、これより25分程度を意見交換の時間とさせていただきます。

ただいまの説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。御発言をされる際には、チャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。

板谷委員、よろしくお願いします。

○板谷委員 先ほどの日弁連の意見書のところで質問し損ねたのですけれども、日弁連の意見書の9ページの最下段の辺りにマル4とあって「対象となる行為類型を政令で追加することができるようにする」ということが書いてあるのです。

基本的には、事業者の予測可能性を確保する観点から、要件を明確に定義しておくということが必要なのだと思うのですが、そうはいっても脱法的な行為が起こってくるということでいくと、政令で追加できるのであれば、それを予定して入口は広く網をかけるようにしておき、調査し、これは駄目でしょうというものが出てきたら政令で追加していくという手もあり得るのかなと思ったりします。そうしたやり方はどうかということを専門の皆さんに教えていただきたいなと思います。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

これについては、どうでしょうか。委員の方々、あるいは事務局から何かコメントはございますか。

中川委員お願いします。

○中川委員 委任立法で加えていく例としてすぐ思い浮かぶのは景表法です。5条の1号で優良誤認、2号で有利誤認、3号でいわゆる不当表示の一般的な定義を置きまして、そういうものであって、内閣総理大臣が指定するというものという規定振りです。省令に委任しているわけで、その意味では定義として広く書くことは十分に可能ですよね。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

他にございませんでしょうか。

取り分け資料3の23ページから24ページにかけての記述について、御意見、あるいは御質問等がございましたら、お出しいただきたいと思います。

黒木座長代理、よろしくお願いいたします。

○黒木座長代理 23ページ以下なのですが、まず「金銭的利得による誘引」の2ポツのところで「配当・利息ではなく、契約目的物の価格上昇を誘引としている場合はどうか」ということが書かれていますけれども、これについては、恐らく金商法でもうある程度整理されていて、いわゆる投資サービス法制、投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制のほうでかなりのところはもうカバーされているのではないかなと思っています。したがって、そこにはもう金商法による規定があるのではないかなと思います。

次の24ページのマルの3ポツ目でオレンジ共済事件のことが書いてありますが、オレンジ共済については、これを契機として少額短期保険という類型ができて、それについては保険法上の規制がかかっていますので、これもそういう特別法があるのではないかなと思っています。そうすると、やはり中間取りまとめでやっていたような金銭をぐるぐる回ししているものについて、何らかの行政庁の権限をもう一度付与することができないかということでいいのではないかなと私自身は思っておりますけれども、他の委員の方々の御意見をいただければと思います。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

いかがでしょうか。

中川委員、よろしくお願いします。

○中川委員 23ページから24ページの3つのマルなのですけれども、全てに共通していたのは真ん中の2番目の事業の実体がないというところかなと思いました。

1番目の誘引ですが、誘引があるから人が群がってくるので、定義に入れる必要があるのかというか、誘引がなかったら誰も来ないと思いますから、投資ジャーナルをどのように理解するかというのは問題なのですけれども、定義に誘引が必要なのかなという気がしました。

他方、3番目のマルですけれども、これはぐるぐる回しになってきたタイミングで行政が介入するという、被害がはっきりしてきた時点を指すのかなと。だから、定義としてはなかなか使いにくいような気もします。

そう考えると、事業の実体がないということだけが残るのかなという気がします。先ほど包括的に規定するというのはどうか、委任立法で指定などをしていくという方式を考えるのであれば、事業の実体がないのに顧客を呼んでいるという一般的な規定をした上で、例えば、典型的なものが挙げられるのであれば、幾つか景表法のように優良誤認とか有利誤認とかを書いていって、その他、指定するものという形にしてはどうかなと思います。

関係ないことですが、先ほど景表法で省令と言いましたが、省令ではなくて告示です。そこは間違いですので、修正いたします。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

他にいかがでしょうか。

大石委員、よろしくお願いいたします。

○大石委員 ありがとうございました。

私は、先ほどの弁護士会の意見を聞いておりましても、かなり難しくてついていけない部分もあったのですが、今御説明いただきました23ページ、24ページ、特に24ページの「消費者から得た出資金の使途」ということで質問をさせていただければと思います。今まで出された事例は明らかに最初から消費者をだますつもりの案件であったように思います。けれども、中にはまともに事業を行うつもりで、きちんと出資されたお金を運用して、消費者に利益を返そうとしていたが、結果的にそうはならなかったという事案もあるとした場合であっても、やはり最終的に消費者から得た出資金をどう使ったかということが問題になるということで、取り上げてあるのかなとお話を聞いていました。

そういう意味では、今、中川委員もおっしゃいましたが、そもそも最初から、まともな事業として行うつもりがないということであれば、それは問題事例として扱えると思うのですが、実際にはきちんとまともにやろうと思ったのだが、できなくて最終的に消費者被害を起こしてしまったものをどのように考えるのかというのが私の中ではよく分かりません。委員の皆さま方で、それをどのように考えればいいかというのが分かれば、教えていただければと思います。

○後藤座長 いかがでしょうか。事務局から何かコメントはございますでしょうか。

○友行参事官 委員の方より先に発言してしまって申し訳ありません。

ここのところは事務局でも実はすごく書き方などをさんざん悩んで、昨日まで悩んでいたところなのですけれども、例えば、明らかに事業をやっていなくて、お金を集めて他の人に配当しているというものであれば、いずれ破綻するということで、破綻必至商法ということで分かりやすいものであります。

ただ、集めたお金を他のことに使っていた。例えば、経費とか遊興費とかに使っていて、消費者に配当していなかった場合、これは将来は破綻するということで、これも一つの破綻必至商法と言えるのだと思います。

ただ、本来の目的に使っていても破綻してしまうものがあるということで、これは大石委員の今の御質問に近いかと思いますけれども、こういうものを含めるのか、含めないのかということでありまして、本来の目的に使っていても破綻しているものを含めてしまうと、ビジネスの見極めみたいなものになってしまって、内容に介入し過ぎ、広げ過ぎという感じもするという御意見も事前説明の中でいただいたところであります。

ですから、ここは結構難しいところでありまして、そもそも事業がないのは分かりやすいけれども、何らか他のものに使っていても破綻してしまう場合も含めるのか、含めないのかということなども併せて考えていただければと思いました。そこは最終的に整理しなければいけないのかもしれないと思っています。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

消費者から集めた金銭を他の人の配当に回すということが破綻必至商法の本質的な内容だと考えられると思いますので、そういう配当をすることによって消費者を信用させたり、より高額の投資に誘導したり、新しい顧客を紹介させるということにつながっていくというのが、ここでの特に問題関心として持っていることなのではないかと思います。

そのように考えると、最初から事業の実体がない状態で破綻必至の商法をするということは、ここで取り上げるべき典型的な事例だと思いますが、さらに、最初は事業としてそれなりにうまくいくと考えていて、その後、事業としてうまくいかない状態になったということを取り上げるかどうかというのは、私もここで直ちに結論的なことを述べることはできないのですけれども、仕方なく破綻必至になってしまったというのは、日本社会の大会社でもそういう例はあるわけであります。

そういうことを考えますと、事業の実体がないということを基本として、自転車操業的に顧客を獲得するということを行っている。そういうものを中心に考えていけばいいのではないかと思いますが、私はそのように考えましたけれども、御意見がございましたら、お出しいただくと有り難いのですが、いかがでしょうか。御指名をさせて頂きますが、黒木座長代理にこの辺についてのお考えをお聞かせいただけたら有り難いのですが、いかがでしょうか。

○黒木座長代理 これはものすごく難しい問題なので、もう少し他の委員の方からも御意見をいただいてから、その辺りも考えてと思っていたところではありますが、これが後藤座長のまとめのように考えられればいいかなと思うのですけれども、もう少し考えさせていただきたい。ここは正にこのワーキングの今回のターゲットにするべき対象事案の拾い出しのところなので、もう少し考えさせてくださいというのが今のところの私の考えです。すみません。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

事務局、よろしいですか。

○友行参事官 事務局です。

発言の申出をされている委員の方がいらっしゃいます。

○後藤座長 すみません。発言の希望は大石委員ですか。

○大石委員 山本委員が先に書かれていました。

○後藤座長 今、表示されているのは、丸山委員、よろしくお願いいたします。

○事務局担当者 丸山委員もコメントを残して退室されています。

○後藤座長 分かりました。

それでは、特に追加の御意見がないようでしたら。

○事務局担当者 木村委員だけ残っています。お願いしますというコメントがあります。

○後藤座長 では、木村委員、よろしくお願いします。

○木村委員 時間がないところをすみません。

今の整理なのですが、オレンジ共済の場合は、実体はないけれども、配当ないし利益の供与を行っていないという整理でいいのかというのが1点目で、今日、結論を出さなくてもいいかなと思っているところなのですが、私の考えとしては、実体がないというところでいいのではないかなと思っている次第です。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

この点に関しては、先ほど中川委員からも、事業の実体がないという点について着目することが重要だというお話を伺っておりまして、先ほどの23ページから24ページで3つマルがついている箇所でありますけれども、その中の「事業の実体」というところが重要だということについては、木村委員からもそのように考えるべきだという御意見がありました。

ここで結論を出さなくて、今後考えるべき問題として、宿題という形で残させていただいてよろしいでしょうか。

では、そういうことで、もう時間が過ぎておりまして大変恐縮なのですが、本日も大変有益な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

日弁連の意見書に関しては、幾つか重要な御質問や御指摘がなされておりまして、2つに分ける類型化というのが2つあるわけですけれども、違法収益吐出型と破産型、あと、流用型と分別管理義務違反型という分け方について、それぞれどういう内容なのかが説明されました。

それ以前の、ポンジ・スキームとはどういうものなのかということについても、ポンジ・スキーム自体、法的に厳密な定義をしているわけではないということが、最初の大森弁護士からの説明の中に出ておりました。

それから、違法収益吐出型と破産型についても、あくまで議論のきっかけとして提案されたものであって、こういう制度が考えられるという趣旨で提案しているものだという説明がありました。

本日の議論の最初の部分では、破産型につきましては、消費者が持つ債権の優先順位が低いということが問題となるという点が指摘されました。

違法収益吐出型につきましては、払ったものを取り返すのに時間がかかるという問題があることが指摘されまして、それをめぐっての議論がなされました。違法収益吐出型に関しては、法的になじみがない、類似の制度はありますが、これを正面から認めた法律はないようですので、その理解について、なかなか難しい点があると思いますけれども、本日の議論の中では、違法ということをどうやって判断するのかということが議論の対象となりました。

先ほどの違法収益吐出型につき被害回復に時間がかかるという問題でありますけれども、これについては、景表法の不実証広告規制のような解決があるのではないかという御意見がありまして、それについて結構使えるのではないかということも意見として出されました。

違法収益吐出型で違法につながるという点については、消費者法令の中に吐出型を根拠づけるような、つまり、様々な消費者法令で違法性を示しているような規定というのは吐出型に結びつく可能性がある。消費者法令における禁止規定などがそれに当たるということですが、分別管理義務違反が直ちに違法ということにつながるのかどうかについては疑問も提示されております。

また、違法収益吐出型について、消費者・被害者の債権に国が徴収するという衣をつけるという言い方がされましたけれども、国税滞納処分を使うことができるのではないか、しかし、ハードルが高い、国の衣をつけるということの正当化というのは、そう簡単ではないとも指摘されました。

それから、ポンジ・スキーム等をここで問題とする場合に、効果についての問題として、原状回復命令と行政上の直接強制という手順で、払ったものを全部返させるという手続が考えられるのではないかという御指摘もありました。

いろいろ議論が及びまして、適切にまとめられてはいないと思いますけれども、一応、私のほうでは、このような議論がされたということで以上のような問題と受け止めさせていただきました。

全体を通じて、日弁連で提案しているポンジ・スキームについて、その類型化も含めての議論がなされたわけでありますけれども、具体的にそれをどう適用していくかということについては、各法令で規定している内容で解決できない隙間事案について適用するのか、そうではなくて、隙間事案に限定しない方向で考えるのか、隙間事案に限定すると日弁連の提案も使いにくくなるのではないか、そのような御意見が出されました。

宿題も残されておりますけれども、以上を本日のまとめとさせていただけたらと思います。よろしいでしょうか。もう退室した委員の方もいらっしゃいます。時間が超過していて恐縮ですけれども、以上にさせていただきたいと思います。


≪3.閉会≫

○後藤座長 本日は、御議論いただき、ありがとうございました。

最後に、事務局から御連絡をお願いいたします。

○友行参事官 本日はどうもありがとうございました。

次回の日程につきましては、決まり次第、皆様にお知らせいたします。

○後藤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございました。

会議画面の赤色のアイコンを押していただき、御退席ください。どうもありがとうございました。

(以上)

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