文科省・新着情報

1.日時

令和4年9月7日(水曜日)14時00分~15時30分

2.開催方法

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1) 核融合発電の実施時期の前倒しの検討における第1期の目標設定及びアクションプラン「0.炉設計」について
(2) 第30回ITER理事会及び第29回BA運営委員会の開催結果について
(3) 核融合政策に関する最新情勢について

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

笠田竜太主査、坂本瑞樹主査代理、伊神弘恵委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、蓮沼俊勝委員、東島智委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

文部科学省

稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、村越幸史課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【笠田主査】お時間になりましたので、開始したいと思います。本日は、御多忙のところ、御参加いただき、ありがとうございます。第26回核融合科学技術委員会原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、タスクフォース)を開催いたします。
 今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインにて開催します。司会進行については、本タスクフォース主査を仰せつかっております私、笠田が担当します。
 それでは、議事に入る前に、事務局より新たな委員、学術調査官、事務方の紹介及び定足数、配付資料の確認をお願いします。
【吉原専門官】前任の川窪の後任といたしまして、本年4月、核融合科学専門官に就任いたしました吉原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今回より新たにタスクフォースに就任いただきました2名の委員を御紹介させていただきます。
 まず、前任の今澤良太委員に代わり就任いただきましたQST量子エネルギー部門先進プラズマ研究部次長、鈴木隆博委員でいらっしゃいます。
【鈴木委員】QSTの鈴木です。よろしくお願いいたします。
【吉原専門官】もうお一方は、前任の中島徳嘉委員に代わり就任をいただきました東京工業大学科学技術創成研究院准教授の近藤正聡委員でいらっしゃいます。
【近藤委員】御紹介いただきまして、ありがとうございます。東京工業大学の近藤です。よろしくお願いします。
【吉原専門官】続きまして、本年4月に新たに御就任いただいた学術調査官を紹介させていただきます。東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の梶田信学術調査官でいらっしゃいます。梶田調査官が現在まだ参加されておりませんので、この場では御紹介のみとさせていただきます。
 最後に、事務方に人事異動がございましたので、紹介をさせていただきます。本年7月に文部科学省研究開発戦略官に就任いたしました稲田剛毅です。
【稲田戦略官】よろしくお願いします。
【吉原専門官】続きまして、本年8月に同課長補佐として村越幸史が就任しております。村越でございますが、現在、別用務のため席を外させていただいておりますが、終了次第、本タスクフォースに同席する予定としております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、本年8月に同専門職に就任いたしました髙木将仁です。
【髙木専門職】髙木でございます。よろしくお願いいたします。
【吉原専門官】続きまして、委員の御出欠でございます。現時点では、御欠席は奥本委員、それから、吉橋委員より先ほど冒頭、別用務のために少し遅刻されるという御連絡がございました。現時点で13名の委員が出席しております。本委員会には15名の委員が在籍しておられ、過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料でございます。ただいま画面に示しておりますとおり、資料1から7及び参考資料の1から3となります。会議中はZoomの画面共有システムを使って事務局より資料を画面に表示させていただきます。また、各委員におかれましては、発言いただく際には、ミュートを解除の上、画面下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願い申し上げます。以上でございます。
【笠田主査】ありがとうございました。本日は、本年度最初のタスクフォースの開催になります。議事に先立ちまして、稲田戦略官より御挨拶をお願いいたします。
【稲田戦略官】担当戦略官の稲田でございます。よろしくお願いいたします。本年度の最初のタスクフォースの開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 初めに、笠田主査をはじめとする委員の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、御参集いただきまして大変ありがとうございます。また、この大変な作業をするタスクフォースの委員に就任いただいたことについて、厚く御礼を申し上げます。よろしくお願いします。
 核融合はエネルギー問題と環境問題を根本的に解決することから、2050年のカーボンニュートラルに向けて非常に重要だと言われています。長らく核融合というのは夢の技術と言われております。何でこれが夢の技術かと言われると、なかなか実現するのが難しいからです。しかし、ITERの2020年ぐらいから、炉心の組立てなどのいくつかのイベントを見て、諸外国においては、これはかなり現実的な未来としての核融合が現実味を帯びて見えてきております。このため、各国においては、核融合エネルギー、あるいは発現についての競争を激化し、そのベンチャーにおいても投資が活発化しているという状況にあります。
 この状況におきましては、日本でも手をこまねいているわけではありません。このタスクフォースにおいて、技術的にどういうことが実施できるかどうかについて検討していただくとともに、研究開発の計画の立案に加えて、その後の事業化や人材育成まで含めて、幅広く検討していただくことをお願いする次第です。
 このような中、昨年度、核融合科学技術委員会(以下、委員会)におきまして、核融合原型炉に関する第1回中間チェックアンドレビュー(以下、CR)の報告書を取りまとめていただきました。その結果、第1回中間CRまでのところは、おおむね達成されていると評価いただきました。その上で、先ほど来申し上げているような状況を踏まえまして、日本は核融合発電の実現に向けて、現行のペースで研究開発を進めていて間に合うのか、もう少し前倒しすべきではないか、前倒しすると何が可能なのか、をきちんと検討する必要があることについて、御指摘をいただいています。
 今回、これを受けまして、今年度はこのタスクフォースにおいて専門的、学術的な観点から御議論いただきたいと考えています。加えて、その際に当然、その計画スコープが変わるのであれば、CRの目標や、アクションプランの見直しに関して、御議論を賜りたいと考えております。
 我が国としては、核融合というのは非常に重要だと思っています。これは全人類全体の夢ではありますが、一方において、我が国のきちんとした基盤、あるいは我が国が核融合に対して、産業のコアを残すためには、ここ数年の頑張りが非常に重要だと考えております。核融合の早期実現及びその精力的な議論に皆様の専門的知見を期待するところです。よろしくお願いいたします。
【笠田主査】ありがとうございます。非常に強い期待と、あと最近の行政の状況まで御説明いただきまして、ありがとうございました。
 本タスクフォースは、委員会運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。御留意ください。
 それでは、早速ですけれども、議題1「核融合発電の実施時期の前倒しの検討における第1期の目標設定及びアクションプラン「0.炉設計」について」に入ります。まずは事務局から資料に基づいて、説明をお願いいたします。
【稲田戦略官】先ほどの挨拶の続きになりますが、第1回中間CRにおいて報告書が出てございまして、これで何が言われているかというのを示したのが資料1でございます。ポイントとしては、CRに向けた重要事項として最初のポツですが、何らかの前倒しを行う場合には、達成目標自体を見直すことや、優先順位を再検討することが課題ですと指摘されています。また、次のポツですが、1年ぐらいの期間をかけて慎重に検討してくださいということが言われております。
 加えて、その際にアウトリーチ活動や、核融合関連の産業界の連携等、その次のポツでありますが、立地や安全についての議論を深めていくことが今後の課題であります。この結果に関しては、委員会で議論するだけでなく、その結果を他の政府の検討において、審議結果を適切にインプットし、議論の高まりに貢献するということが求められております。
 以上に加えまして、人材育成は極めて重要でありますので、そのあたりもきちんと考えてください、このような宿題を前年度のCRの報告書でいただいております。それを踏まえて、では、具体的にどう検討するかをスケジュールにしたのが資料2でございます。先ほどの問題意識を踏まえて、7月から10月に本タスクフォースを3回ぐらい開催し、そこで検討して、検討課題をまとめていただきます。その結果について、委員会に戻した上で議論を行って結果を得ましょうというスケジュールになっています。
 では、その7月から10月の3回ぐらいの開催をどのように考えるのかを記載したのが資料3でございます。本日開催の第1回目については、第1期の目標、あるいはプランについての整理等々を行った上で、炉設計についての議論を行います。第2回目以降に関しては、第2回目でアクションプランの前倒しの各事項における個別の検討として、残りの様々な部分の検討を行い、10月の下旬に、先ほどのその議論を踏まえての取りまとめの議論を実施することになっています。
 1番のところだけ非常に特出ししているのは、他の要素技術というのは、炉設計をどうするか、というところがある程度議論されましたら、ある意味自動的にというか、そこを議論しなければいけないことが技術的にぶら下がって決まるところであります。そのため、最初にきちんと炉設計について議論をいただこうと思っております。以上でございます。
【笠田主査】ありがとうございます。それでは、続いて、私から資料4に基づいて、核融合発電の実施時期の前倒しの検討についてということで御報告いたします。
 まず、これまで原型炉設計合同特別チームで検討しておりますJA-DEMOですけれども、概念設計の基本設計が終了しております。委員会の言う原型炉の目標は、まず数十万キロワットの電気出力、そして実用に供し得る稼働率、さらには燃料の自己充足性に見通しを得る基本概念で構築されています。基本パラメータについては、詳細は省略しますけれども、こちらの資料に示しているとおりになります。
 概念の特徴を申し上げますと、誘導電流駆動によるIp立ち上げで、ダイバータ熱負荷低減を意識して核融合出力は1.5ギガワットになっています。運転柔軟性として定常運転とパルス運転の両者を見据えた設計となっています。このため、十分なCS磁束を確保します。プラズマ性能要求を緩和したパルス運転ということを意識して初期の調整運転、早期の発電実証というものを意識しておりました。
 原型炉研究開発ロードマップ(以下、ロードマップ)として、この概念設計の基本設計というのは2020年頃ということで、第1回中間CRを超えて、現在、概念設計に入っているというところになります。このように原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、アクションプラン)、ロードマップに従って着実に進捗しております。
 そしてロードマップに従った活動の中で、今回、原型炉による発電時期の前倒しの検討をするようにと委員会から付託され、原型炉による発電時期の前倒しを前提に考えていく必要があります。まず核融合発電というものは、発電の過程で二酸化炭素を排出せず、カーボンニュートラルで暴走といった連鎖的な反応を生じず、固有の安全性を持っています。かつ、高レベル放射性廃棄物を発生しない、環境保全性という従来の発電方法にない利点を多く有しており、我が国の経済安全保障に貢献できるものでございます。このような利点を踏まえて、これまで研究開発を推進してきた米国、英国などは、核融合発電時期を早期、2040年代に実現する構想を相次いで公表しております。
 そこで、第1回中間CRで指摘された核融合発電の実施時期の前倒しが可能か検討を深めることという指摘を受けまして、本タスクフォースは、技術的な観点から、アクションプランに沿った検討を行います。この検討では、原型炉による発電時期を前倒すために、段階的に原型炉の性能を上げる、運転領域を広げていくことを想定し、前倒しする発電開始時期までにそろえられる許認可に必要なデータや、開発できる技術を検証する必要がございます。原型炉による発電時期を前倒すことは、核融合エネルギーの早期実現のみならず、スタートアップ企業を含む我が国産業界の取組を後押しします。また、原型炉の建設に必要な高い技術力とその幅広い産業分野の関わりを通して、我が国の技術的優位性につながるものと期待し、タスクフォースは本検討を進めます。
 そして、その前倒しの考え方ですけれども、第1回中間CRでの指摘では、核融合発電の実施時期の前倒しが可能か検討を深めることです。そして、前倒しを行う場合、第2回中間CR時点での達成目標や、原型炉研究開発の優先順位を再検討することとされております。そこで、アクションプランに沿ったJT-60SA及びITERから原型炉への統合戦略を基に、原型炉による発電の実施時期の前倒しを検討しています。段階的に原型炉の性能を上げる(運転領域を広げていく)として、第1期(発電実証)と第2期(定格発電実証)を定めることが前倒しにおける前提の検討要件です。第1期は、第2期目標を速やかに達成できるようにしつつ、増殖ブランケットによる発電を早期に実証する「マイルストーン」として設定しております。
 資料の3ページにある第1目標としては、まずITERからの技術ギャップが小さい低出力及びパルス運転による早期発電実証、これはブランケット発電の早期実証を含むという言い方ができます。このとき、パルス運転で電子サイクロトロンECHが主加熱で、パルス中の正味の電気出力を実証します。あとは、稼働率の観点では、保守シナリオの実証を行う。三重水素増殖比(TBR)は自己充足性、TBR1以上を確認することになっています。これに対して第2期目標は、商用の段階に向けた定格出力及び連続運転による発電実証を行うことを目標とします。このため、中性粒子入射加熱を使って電流駆動及び高自発電流割合とした連続運転になります。このときの数十万キロワットの安定した電気出力を示します。そして、実用可能かを判断するために稼働率というものを示して、三重水素自己充足性も実証する目標を設定しております。
 第1期及び第2期で目指す装置性能のパラメータを資料の4ページに示しております。第1期目標はこの表中のPulse(2hr)、第2期目標は表中のSteady stateと表されています。細かいところと、あとリファレンスとして、ITERの数字が出ています。ITERの数字と比較した数値の差は、このパルスではSteady state、定常に対して縮まっているというところが見て取れるようになっております。
 そして、その低出力及びパルス運転に必要な技術開発を加速・重点化していくことが、この前倒しの考え方においては重要になります。2035年のITER燃焼実験の直後から原型炉建設に着手、10年後に核融合炉発電実証を目指すことで現在の計画から5年程度の前倒しが可能であると設定して検討していきます。
 となると、資料に示しているとおり、この第1期の運転開始までのスケジュールが、前倒し案で設定されています。従来のスケジュールにおいて、2027年頃の第2回中間CRまでは変わりません。それに対して、2027年から、工学設計と実規模技術開発が加速され、3年前倒しされます。移行判断の位置は変わらないとしても、この部分は前倒しされて、製造設計が移行判断までに終了します。2035年にもう建設を開始するというスケジュール案を作成し、発電実証時期を5年前倒すということについての検討となっております。
 これによって核融合発電の実施時期の前倒しにおける段階的なR&Dというものが設定されています。こちら、アクションプラン項目の区分けで、炉設計から計装制御までありますけれども、第2回中間CRまでに必要な技術、2027年までに必要な技術の代表的なものの概要を資料に示しております。そして、2035年頃の移行判断までに解決が必要な技術も示しております。これは要するに、早期発電実証に必要なR&Dに重点化する検討になりますので、今回、特出しされています。
 そして第1期に実装が必要な技術、この2045年の段階で必要な技術が検討されて、資料に示しております。例えば、炉設計では蓄熱、あるいは蓄電機器がパルス運転対応に対しては必要であるとか、初期ブランケット、初期ダイバータが必要です。さらに、200ギガヘルツのジャイロトロンがEC入射系のために必要です。他にも、そういった初期装荷三重水素調達とかペレット入射装置とか、あるいは計測器、統合制御システムが必要であると資料に示しています。第2期では定常運転に入ります。その技術開発は、これまでももちろん必要だったものですけれども、こういった段階分けでできるようになっているのが特徴です。
 そして、この前倒しによるアクションプラン項目の変更点を確認する必要がございます。核融合発電の実施時期の前倒しに伴う目標実施時期に対し、現行のアクションプランの課題ごとに議論・検討を実施します。今回のタスクフォースでは、この「0.炉設計」を取り扱っていますけれども、次回の第27回では、それ以外の項目を取り扱います。大変とは思いますが、委員の皆様、よろしくお願いいたします。もちろん、ここに書いてあるものだけではなくて、その前倒しに伴って加える必要があるのであれば、その課題も取り扱うことになります。そして、第28回では、それまでの議論を受け、第2回中間CR及びアクションプランの見直しを行い、必要であればロードマップの更新についても議論を行います。
 統合技術開発戦略「0.炉設計」ということで、これがどうなっているかというと、JT-60SAやITER用に開発された技術基盤の延長に概念を構築しております。それぞれの機器の運転を通して検証し、原型炉設計に資することになります。炉心プラズマについては、JT-60SAやITERの想定成果に基づいた概念を構築しています。原型炉のための発電プラントや遠隔保守については、産業界の技術基盤及び運転経験を取り入れた概念を構築し、社会受容性と実用化段階における経済性の見通しを得て、炉心・炉工学技術の開発と整合をとった原型炉設計を実施するということで、現在、この概念設計段階にあります。
 炉設計を前倒ししていくと、先ほど簡単に概略は述べましたけれども、移行判断までに製造設計を完了するため、炉本体設計を3年短縮する必要がございます。ITER技術ベースにCDA段階で高水準まで進める必要があります。コスト評価、候補地選定、建設サイト評価・選定を2~3年前倒しする必要があります。これは製造設計の開始前に完了する必要があります。そして、安全規制法令及び安全評価についても、3年前倒しが必要です。これはサイト評価が必要なためです。第1期のパルス運転にデータベース更新を継続することが必要です。これは、運転しながら中性子照射データを取得していくという考え方からです。
 ということで、このCR項目、第1回は終了したわけですけれども、第2回のところをきちんと見ていく必要があります。以上でございます。まず、稲田戦略官から御説明いただいたとおり、本タスクフォースは、今回も含めて、3回の開催を予定しています。委員会より付託を受けた4点について御検討いただき、次回の委員会でタスクフォースの検討結果について、私から報告させていただきたいと考えております。
 それでは、ただいまの御説明に対し、質問がございましたらお願いします。まず、1つ目の論点は、第1期の目標についてです。3ページ目を共有画面にお示しいただいた状態で、第1期目標、第2期目標で分割して設定したことに関して御意見などございますか。
 では、TBR、三重水素自己充足性の確認から実証ということで、東島委員から御説明をお願いします。
【東島委員】第1期と第2期の目標にあるTBRの確認と実証についてですが、確認については、少なくとも運転をして、プラズマを発生させ、パルス運転中にTBRが1を超えてくるところがきっちりとシミュレーション等も使って確認できるというのがここで言う確認です。
 次の実証では、運転している間に三重水素を外部から供給しなくても、実際に原型炉を運転して三重水素を生成できていくところまでを目標とします。そういう意味で、実証と示していると思います。
【笠田主査】ありがとうございます。よく分かりました。東島委員、どうぞ。
【東島委員】第1期の目標と第2期の目標を考えるときに、ITERで実際に核燃焼、プラズマの燃焼をやるわけですよね。もともと考えていたJA-DEMOでも、その領域までの間にこの第1期の目標という段階をもともと想定していたというか、資料に示している概念の特徴にある運転柔軟性として、パルス運転と定常運転を想定しています。ここの部分で、従来は、パルス運転で装置の状態を確認して定常運転できるようにしようと思っていたところを、少なくとも前倒しをするということで第1期としてパルス運転を定義します。そういう意味で、このときにもともと計画していたJA-DEMOから手戻りが少ない、若しくは手戻りがないということが、非常に重要なことかなと思って、この議論をしていると思っています。
 ですので、そういった観点から、皆様の御専門の中から、現状、これで手戻りがないところをまずは御議論いただけるといいのかなと思っております。私自身は手戻りが全くないとは言わないですけれども、少ないと思っています。前倒しを考えたときに、技術的には2045年ぐらいというところが、やはり大きな炉を造るのには10年ぐらいはどうしてもかかってしまうので、2045年の設定というのは悪くないのではないかなと思っています。まず先生方の御専門について、ここに関して御意見等いただければと思います。
【笠田主査】ありがとうございます。藤岡委員、お願いいたします。
【藤岡委員】資料の4ページのところでいろいろな数字が示されております。私、必ずしも磁場プラズマの専門家ではないので、正直な感想を申します。先ほどの話しを聞いていて、ITERとパルスという比較の数字を見ると、ITERからパルスのほうは3倍とか2倍以上増えるのに対して、パルスからSteady stateは、倍増えているのはすごく限られていて、ほとんどは1.5倍とか1.2~1.3倍かなという感じです。この表のこの数字を比較して、何倍になっているかと見てしまうと、何かあまり、2段階にしたから本当に得しているのかなと思うのですが、その辺、もう少し説明いただけないでしょうか。
【笠田主査】東島委員、お願いいたします。
【東島委員】数字の大きさを今おっしゃっていただいたわけですけれども、まず、全体の装置サイズが大きくなっているというところ、あとプラズマの形状についてです。ここが変わってきているところが大きいかと思います。例えばRp、ap、この辺が大きくなっていることでフュージョンパワーが増えてくる。一方、Q値は、そういう意味ではパルスのときには、もともと想定しているのは、いろいろな加熱システムがそろうと定常運転ができる。トカマクですので、電流を流さないといけないわけです。電流を流すというNBIの技術開発を考えたときに、2045年に発電しようと思うと、NBIを整えるのはやはりなかなかちょっと技術的には難しいかなと思うのでパルス運転を考えているわけですけれども、そうすると、どうしても今度はCS、中心ソレノイドでプラズマ電流を流すというところで全体のパラメータが決まってきます。
 そこで、もう一つはフュージョンパワーを下げています。それは、最終的には定常として1.5ギガワットぐらいのフュージョンパワーで電気を起こし、電気出力としては、資料の表だと303メガワットと書いてありますけれども、この数値の電気出力を目指していきます。パルス運転でも発電はもちろんやるわけですけれども、先ほどの第一段階の目標としては、外部にそれほど大きな電気を起こすというよりは、まず電気が起こせるというところをはっきり見せることだと思います。全体の加熱のパワーは変えられるので、そういう意味でITERから見たときには、それなりの、具体的にはQが大きくなっているわけですが、そういったところを狙います。
 しかし、2時間のパルスとSteady stateの間では、手戻りが少ないという考えで、マシン的にはそんなに大きく変えないわけですので、そういう意味で、数値の変動幅はあまり大きくないので、プラズマの大きさはほとんど変わっていません。そこに関しては、大きな数字は変わっていないということです。ただ、閉じ込めの性能とか、例えばHHファクターを1.1から1.3に上げるとか、ベータNを2.6から3.4に上げるとか、こういったところが必要であり、そういうものを制御できるツール、若しくは制御する手法が重要になると思っております。
【藤岡委員】分かりました。ありがとうございました。
【笠田主査】ありがとうございます。他の委員から、他の項目でもちろん構いませんので、御指摘等ございますでしょうか。では、もう1個、私から。本タスクフォースは、委員会から前倒しが技術的に可能かどうかということを検討するように付託されていると主査として理解して、委員の皆さんに検討をお願いしています。一方で、委員会で社会的な意義というか、そういったところを多分、ある程度見ていただくことになると思います。そのときに、このパルス運転で早期発電実証を行うことの意義を委員が考えるときに、どのように説明すべきかは、それなりの技術的な根拠を示さなくてはいけないと私は思っています。何が言いたいかというと、正味の電気出力を実証するということについて、実際、準備段階では、電気は生み出すのではなくて、使っているわけですよね。そこら辺のシステム的な課題とか、システムというのは、このプラントで閉じたシステムの課題、あるいは立地の課題とかともすごく複雑に絡んでくると思います。もちろん、その社会的意義という部分はとりあえず置いておいたとしても、そういったところの検討というのは大丈夫なのでしょうか。
【東島委員】1つはやっぱり、必要な技術、発電できる技術を我々が開発できるかどうか、それを世の中に示し、それをできるだけ早くやるということが、今回の検討に求められていると理解をして、今日の議論をしていただいていると思います。そういう意味で、確かに第1期の延長上に、要は幾つかの制御ツール若しくは加熱ツールがあるときに、定常運転ができると考えております。
 一方、そういうものがないような状況で、できる限り第1期と第2期の手戻りがないと考えたときに、技術的な実証ができていることが望ましいです。要は、我々としては、ちゃんと電気が起こせますよ、ただし、豆球1個がつくのではやはり説得力はないと考えるわけです。少なくともこのプラズマがついている間は、原型炉が使う電気以上のものを出せるところを世の中に示すということを、目標にしたらいいのではないかと思います。それであれば、いろいろなものがそろえば、長い時間、定常で運転できると思っていますので、技術的な意味は非常にあると思っています。
 一方で、例えば2035年、2045年より以降の話というのは、これまでタスクフォース若しくは委員会であまり議論してきませんでした。ですので、原型炉の発電実証が今世紀中葉という表現のままだったわけですけれども、今回、例えば明確に2045年なら2045年と定義をすることによって、我が国の産業界の方々に、ここまでにこれができるんだねというところをお示しして、若しくはそれを目標としてお示しすることで、いつまでに何ができないといけないかというところに実際に産業界の方々にも参画いただくことが重要と思っているところです。この2点が今回タスクフォースで、特に技術的な議論をする際の必要なことなのかなと思っています。
【笠田主査】ありがとうございました。では、福家委員、お願いします。
【福家委員】先ほどの発言に関係するのですが、資料の5ページ目をお願いします。原型炉建設に着手するというのが2035年のITER燃焼実験の直後から、このように読めます。それで、その着手を見ると、ITER-Q=10、こういう数字があります。2035年なのか、あるいは燃焼実験の直後なのか、Q=10が達成できたらなのか、要は、この原型炉建設に着手するトリガーというのは具体的にはどこなのかなというところを少し確認しておいた方がいいなという気がしました。これは皆さん、どういうような認識でいらっしゃいますでしょうか。
【笠田主査】ありがとうございます。重要な点であるとともに、トリガーという観点では、トリガーは多分、これがクリティカルなトリガーではなくて、Q=10が示されるというのは、おそらくもう少し社会的な、要するに原型炉建設のための要素の1つだと思います。さすがにITERで核燃焼プラズマが規定のとおり閉じ込め続けられないと建設ということにはならないのではないでしょうか。ただし、規定のとおり閉じ込め続けることさえできれば、建設できるという話でもないのではないかと私は個人的には思っています。その辺り東島委員からも何かございますでしょうか。
【東島委員】資料に示している原型炉段階への移行判断について、現状、示していることを満たしたら、原型炉に移行するというのが今の考え方なのだと思います。これから、皆様と前倒しの議論をする際に話さないといけないのは、この原型炉段階への移行判断に書いてあることは、今の前倒しの議論をする際に、変わり得るのか変わり得ないのかということだと思います。
 私自身はあまり原型炉段階への移行判断は変わらないのだと実は思っています。ただし、第2回中間CRの中身に関しては変わるのではないかと思っています。ですので、福家委員の御発言、御質問に対しては、最初にITER-Q=10の部分が資料に示していますけれども、それ以外の部分も含めて、タスクフォースか、委員会かというのはありますが、最終的には原型炉段階への移行判断が満たせたので先に進みましょうという議論になるのかなと思います。
【笠田主査】ありがとうございます。この移行判断の中身というのは、基本的に最終的な原型炉の目標が変わっていなければ、恐らくそんなに変わるものではないと私も思ってはいます。一方で、移行判断は誰がするかというところは、事務局に聞かなくてはいけないかもしれないですけれども、我々は技術的検討でこの移行判断の要件が満たされれば、世の中に原型炉というものを自信を持って示せると考えて、移行判断の要件が設定されていると理解しています。事務局においてはそういった理解でよろしいでしょうか。
【稲田戦略官】おおむねそうだと考えます。要は何かというと、技術的にできるかできないかというのは、炉の移行に関する重要な技術的な開示要件の1つだと思っています。その上で予算がつくかどうかというのは、その時点の財政状況にもよりますが、文科省としては、技術的に対応可能ということであれば、それについての予算要求は当然していくロジックツリーになっています。少なくとも、現在、委員会において、この判断をするということになっていますので、我々は、その判断を非常に重視しているというところでございます。
【笠田主査】ありがとうございます。位置づけがはっきりしたかと思います。そういった意味では、第2回中間CRも同様のことですよね。
【稲田戦略官】第2回中間CRというのは、まさにその移行の判断をする前の途中段階のマイルストーンであります。ここのところについても当然、重要視していくところであります。
【笠田主査】ありがとうございます。きちんと確認できたかと思います。坂本隆一委員、お願いいたします。
【坂本(隆)委員】ありがとうございます。移行判断は前倒しになっても変わらないということがあったのですが、1つ心配なのは、前倒しスケジュールだと製造設計が移行判断よりも前に来ています。技術的なところでは特に問題ないとは思うのですが、製造設計はメーカーの方が参入して大々的に実施することになるかと思います。製造設計を本当に実施するだけの予算を移行判断前に確保できるかどうかということについて、どのように考えるかをお聞きしたいと思っています。よろしくお願いします。
【笠田主査】非常に重要な御指摘かと思います。ここにCR3みたいなものを入れなくても大丈夫かということですよね。
【坂本(隆)委員】そうです。本当に製造設計する、それを移行判断というか、CRがないのに大きな予算をつけることができるかどうかということです。そのトリガーが何になるかということが少し心配になっています。
【笠田主査】東島委員、この辺りの考え方はどのようにされておりましたでしょうか。
【東島委員】そこは我々の中でもまだ議論していない領域かなと思います。ですので、坂本隆一委員がおっしゃった、例えばCR3みたいなものを設けるというのは1つの考え方なのかなと思います。実際、予算面がクリアできていなければ、製造設計に入れない可能性は十分あります。ただ、一方で、そうだと思ったときに、従来、2035年までにやっていたものが、今、必ずしも例えば2032年までに全て終わらなければいけないのかというところでいくと、そこは必ずしもそうではないです。全てのものが終わっていないと、それは多分、機器に依存するのだと思いますけれども、そういった精査も必要なのではないかなと思います。
【笠田主査】そういった意味では、前倒しの案は、多分、実規模技術開発、あるいは製造設計は、第2期用のものがまだ実は続いていくんですよね。
【東島委員】そうだと思います。というか、そうでないと実際に工学設計・実規模技術開発の前倒しスケジュールだけでやり切れるかというと、一部のものは多分、やりきれないのかもしれません。
【笠田主査】そういった意味も含めて、CR3を明記する必要があるかどうかは議論が必要かと思うのですけれども、いずれにせよ、何らかのチェックは必要なのだろうなと私は個人的には思います。坂本隆一委員、これを受けて何かございますか。
【坂本(隆)委員】やはり予算を使うということは、きちんとした説明が必要だと思いますし、ここには何か必要だと思います。ありがとうございます。
【笠田主査】予算面では、ロードマップの見直しについてもあり得るかどうかということにも関わってくる話だと思いますので、引き続き検討をしていきたいと思います。ありがとうございました。
 他にございますでしょうか。では、この第1期の目標については御承認いただいたものとさせていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続きまして2つ目の論点である炉設計における変更点、優先順位等について、審議いたします。現行のアクションプランとの変更が必要な点などについて、御意見いただけたらと思います。炉設計における変更点ですね。優先順位等で、例えば、資料の10ページを御覧ください。こちらで御意見ございますでしょうか。
 では、私から。製造設計が変更案では3年になっていますが、3年というのは大丈夫なのでしょうか。
【東島委員】製造設計そのものや、全てのものをある程度前倒して進めないといけないというのは事実だと思います。大規模な技術開発をやった上で、今度は物づくりを行うための製造施工をやるということになっています。現状は、もともと5年程度で考えていたものを3年程度に縮める必要があると思っています。それは、簡単に言うと、もともと想定していたもののうち、定常運転のためのものというのは比較的ゆっくりやってもいいわけです。パルス運転をやるものについて、製造設計を進めていけば、3年程度でできるようになるのではないでしょうか。2年間ぐらい縮められるのではないかと思っているところです。もちろん、この辺は実際に、炉設計の部分ですけれども、それぞれの機器の中で御議論、次回以降のタスクフォースで議論するというところになるのかなと思います。
【笠田主査】ありがとうございます。全体のところはそういった変更案になっておりますけれども、その他細かいところでの変更案につきまして、御意見ございますでしょうか。私から引き続き、この前倒し案を考えると、ITERはITERとしてITERのロードマップに従って粛々と進んでいくと思うのですけれども、もう少し我が国として自由度のあるJT-60SAの研究計画というのも何らかの前倒しが起こったりしていますか。
【東島委員】現状は、前倒しはしていないと思います。ですが、必要なデータをきっちり出していきます。もともと2035年までに移行判断できるように考えていますので、むしろ、JT-60SAが貢献するのは定常高ベータとか、そういったところかと思うと、何も問題ないのかなと思います。ここについては、前もってやらなければいけないわけではなく、2035年にある意味、全てのものがそろっていればいいです。もともとそこまで考えたJA-DEMOからすると、そこまでの高い圧力プラズマは最初必要ないところからスタートするわけです。ということもあり、十分に間に合うと今は思っています。
【笠田主査】少し心配していたのは、そのリソースの問題で、JT-60SAも何か加速してリソースが増えるとなると、原型炉のリソースを、人的リソースも含めて増やさなくてはいけないですよね。そういった意味で、リソースの取り合いになるのではないかなと少し心配です。もともと今現状で足りているのかどうかという話ももちろんありますけれども、そこが少し心配になった次第です。東島委員。
【東島委員】例えば、製造設計をしている人は一体誰なのか、若しくは建設をしているのは一体誰なのか、多分、そこの部分の議論も実際には、技術論ではないですけれども、必要だと思っています。そうだとすると、原型炉の製造設計や建設は少なくともJT-60SAやITERで今やっている人が相当数入るのではないかと思われます。
 原型炉を造るのであれば、それなりの人は確保する必要はあるわけで、逆に言うと、その確保ができないと2035年から先、若しくはその前はもともとできないのかなと思います。ですので、全体として、しっかりとした人材育成を考えていかないといけないと思います。
【笠田主査】そういったプロジェクトマネジメント的な観点は、今回の委員会からタスクフォースへの付託事項のちょっと外側にあるとはいえ、人的リソースを無視した無謀な計画を立ててもしようがないと思います。そこを見据えた形でメッセージをコミュニティー内外に出さなくてはいけないと思うので、そういったところも意識したいと思いました。坂本隆一委員、お願いいたします。
【坂本(隆)委員】ここで1つ質問なのですが、ITERに関してDT燃焼は2035年からということで、テストブランケットモジュール(TBM)の実験は製造設計の後になってしまいますが、発電実証にはブランケットというのは非常に重要な項目かと思います。そして、この製造設計の中には、多分、ブランケットの設計も入ってくるかと思うのですが、TBMを作るR&Dの経験のみで十分製造はできると考えてよいのでしょうか。
【笠田主査】ありがとうございます。東島委員、よろしくお願いいたします。
【東島委員】そこについては、既に品物としては、その前の段階でブランケット、ITER用のブランケットができていますので、それにのっとった、要はITERからのブランケット製造設計の変更が極力少ないようにしていくというのが、もともとのコンセプトです。まず、そこで製造設計は一旦終えるのだと思います。ITERからのいろいろな結果を受けて、その建設をしている最中に、ブランケットもすぐにできるわけではありませんので、これはブランケットのところで議論することになると思います。大きく要件が変わるわけではないと思っていますけれども、その中で一部変更みたいなものは取り込めるような柔軟性は持っておく必要があると思います。
【坂本(隆)委員】ありがとうございます。ということは、この建設の段階においても、この製造設計は並行して行われるということでよろしいですね。それでITERの結果を反映することが可能だという考え方でしょうか。
【東島委員】そうですね。はい。
【坂本(隆)委員】ありがとうございます。
【東島委員】ですので、資料の10ページのように2035年で明確に分かれるわけではないと思っております。
【坂本(隆)委員】はい。分かりました。
【笠田主査】私から最後に1つ、細かい点ですけれども、資料の10ページにある前倒し案について、物理・工学・材料データベースの始まりの丸だけが右側に1つずれています。これは、何か意味がありますでしょうか。東島委員。
【東島委員】実態として、いろいろなデータベースを構築するときに、今だとある程度、JT-60SAの結果を踏まえてみたいなところがあるというのもあって、2021年から明確に線を引いていないというのは1つあるかなと思います。ですが、それ以外の材料のデータベースに関しては、もともとありますので、そろえておいても確かにいいかなとも思いますね。
【笠田主査】前の案はそろっていたので、少し気になっただけでございます。それでは、坂本主査代理からお願いいたします。
【坂本(瑞)主査代理】御説明、ありがとうございました。今までの議論で、先ほど東島委員も言われましたが、明確に線を引くことはなかなか難しいと思います。それで、今日の議論をお聞きしていると、今まで必要だった工学設計、実規模技術開発が、何もなく3年短縮されてしまったように、この図では見えてしまいます。何か少し斜めの線が入っているとか、今、東島委員が言われたようなイメージが出るような線の図の作り方にできるといいのかなという気がしました。どう変えるかは分からないのですけれども、これからの議論の中で、この2045年までの表のイメージを少し皆さんと議論できればいいかなと思いました。
 あともう1点、よろしいでしょうか。これはこの修正とかではなくて、先ほど稲田戦略官から御説明がありました資料1の最後のポツにあった人材育成及び確保という観点に関することです。やはりこの前倒しの議論を進めて明確に2040年代という数字が出てくるというのは非常に人材育成・確保という観点にも期待されるところが大きいと思いました。というのは、大学で教鞭をとっていますと、高校のときから核融合をやりたいという子は、やはりある程度の数います。その高校とか大学が、この人材の確保の入り口になります。こういう前倒しの議論でしっかり、そういう議論が、一般の方にアピールすることができれば、その入り口、まずは核融合の研究をやりたいという優秀な若者を確保するという意味でも、この議論は非常に期待されるところだと思いました。以上です。
【笠田主査】坂本主査代理にはうまくまとめていただきまして、ありがとうございました。おっしゃるとおりかと思います。
 それでは、他にないようでしたら、こちらの炉設計のアクションプランの変更点、スケジュール案については若干の修正、先ほど私から指摘させていただいた丸の部分とか、あとはCR3が必要かどうかについては、今後引き続き議論していくというタイムラインで御了承いただいたということでよろしいでしょうか。では、異論ないようなので、こちらで御承認いただいたものとさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、議題2に移りたいと思います。議事2「第30回ITER理事会及び第29回BA運営委員会の開催結果について」に入ります。こちらは稲田戦略官から御説明をお願いいたします。
【稲田戦略官】資料5及び6について説明させていただきます。資料5、第30回のITER理事会の開催結果です。この議題ですが、核融合の研究開発の進展に関してITERというのは極めて重要であることから、ITER及び幅広いアプローチについて現在どのような状況になっているかというのを皆様にお知らせするのを目的とする報告でございます。資料に示してありますが、第30回のITER理事会は6月15日に欧州のサン・ポール・レ・デュランス市において、一部の極は、ビザが間に合わない等々ございましてリモートになりましたが、これを除き、久方ぶりの対面での開催となりました。
 ITER理事会では、ITERの計画の進捗として建設作業が約77%進んでいます。一方、新型コロナウイルスで多少の遅れが見られるということが報告されました。その上で、主要機器においてはITERサイトに納入されるなど組立て活動が活発化しています。一番大きいのは右側の3つ、これはITERの炉心というのは、ミカンの房みたいにこの真空容器セクターとTFコイルを組み合わせていきます。これの最初の1個がピットの中に入って、いよいよ炉心の組立てが開始されているというところが大きな進展として見られています。
 加えまして、新型コロナウイルスの影響を踏まえて、やはり多少進捗が遅れています。この遅れを取り返すため、又は遅れることによってITERの人件費等の工程コストがかかってきます。そのため、予算が増えてしまうという問題があるのですが、例えば作業工程を合理化するという形で、ベースラインの見直しをしてくださいという議論が進んでいます。現在、ITERで計画していることを全てやるというベースラインが、ITER機構の方から示されました。しかし、それではまだまだ不十分なので、さらに加速するためにどのように考えるかを議論しなければいけませんね、というようなことが確認されたという内容でございます。
 プラスして、その他のこととしましては、実はビゴ機構長が今年5月に亡くなった後、多田新機構長が暫定機構長として今着任されています。混乱なく移行したことを称賛するとともに、スケジュールの遅れ等々の原因となっている安全規制等との関連とかの状況についての聞き取りなどが行われています。以上が第30回ITER理事会の結果になります。
 一方、第29回BA運営委員会の開催結果については資料6でございます。ITER理事会同様に、コロナ禍でリモートの開催が続いていたのですが、今年の4月にQST那珂研究所において対面で開催されました。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、一部の極においてリモートで参加されましたが、欧州及び日本の参画を得ました。この主な議題のところの1ポツの丸1、2、3が大きな活動です。この活動の進捗状況の報告を行うとともに、その前年度に行いましたJT-60SAでのインシデントの結果を踏まえて、どこまで進捗しているのか等々を確認するため、サイト視察などが実施されました。
 結果については、各事業の進捗として、先ほど申し上げた主な活動のうちの中の照射施設の工学実証、要は新しく造る原型炉等々に向けて、中性子照射してどこまで材料が耐えるかというところは極めて重要です。そのための加速器を使った、加速器の開発及びそれの研究開発について順調に進んでいるということが評価されました。続きまして、国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)、これは何かというと、計算機シミュレーションであるとか、次世代原型炉の研究であるとか、あるいはITERを実際に運転されたときにリモートで研究開発を行うためのセンター等々の活動です。IFERCについても適切に事業が進捗しているということが確認されました。
 サテライト・トカマク、JT-60SAに関しましては、先ほど申し上げたインシデントの結果を受け、機器の改良や再発防止試験が進んでいること等々を確認しました。その上で、世界で初めて造るところで、誰も造ったことがなくて、困難がいっぱいあるというような機器を開発しています。そのとき、どんなことが問題になっていくか、実は今後、ITERのサイトを組立てるとか、あるいは次のデモ炉を造るときにおいても、どこに気をつけなければいけないか、非常に重要なデータを得ることになります。ここら辺のところについて情報発信するとともに、しっかりとデータを取っていくことが重要であることが確認されました。
 加えまして、BAに関しては、ホスト国が日本でありますので、ホスト国、日本のホスト国負担の部分について、青森県及び六ヶ所村の生活支援等々についての感謝を示されました。次回、今度はイタリアで本年12月に開催するということを確認したところでございます。以上でございます。
【笠田主査】ありがとうございました。ただいまの御説明に対して質問等ございましたら、お願いいたします。私から、まずはITER機構におかれましては、非常にコロナ禍の混乱下、あるいはビゴ前機構長の急逝に伴う混乱さの中で着実に建設が進捗しているということは大変すばらしいことかと思います。いろいろITERに関する情報発信が最近、以前よりもかなり活発化しています。これはITER本部もそうですけれども、QSTが非常に活発に情報発信してくださるようになったことは大変喜ばしいことだと思います。
 一方でやはり、ITER機構への日本からの枠、人事枠を埋めるというのは、やはりまだ困難が伴っているのではないかと思います。かなり頻繁に募集がかかっているのを私の研究室に所属する若い人にも見せています。実際、この原型炉にITERが貢献するのは間違いないと思います。直接的な人間のリソースの技術伝承というのに勝るものはないと思っています。そういった意味でITER機構において、今一体どういう部署にどれだけ日本人が頑張って働いているのかというのが見えると、非常に我々だけではなくて、この後続の若い人たちがどういうところであるのかなとかを見る上でも役立つ気がします。その物の進捗だけではなくて、人の働いているところというのも個人情報が出ない範囲で見せていただけると非常にいいかなと思いました。これは事務局へのお願いです。
【稲田戦略官】御指摘、ありがとうございます。実はITER機構においてどれだけの日本人が働いているかというのは、QSTのホームページに掲載されておりまして、現状の報告がされています。一方、先ほど御指摘いただいた9.1%の資金投入に対して9.1%の職員枠というところは、実はもう撤廃されております。今、ITERに関しては、最良の、もっとも聡明な人間を国際的に公募して、その中から一番いい人を選ぶ、こういう方針になっています。一方、こうなってくると、日本人を採用してもらうのが結構大変な状況です。というのもありますが、競争で採るのも別にして、特に運転期とかになってくると、データを取るために、たとえ手弁当であっても、ITERに派遣して情報を取りたいというニーズがあります。こういうことが可能になるような制度も現在運用を開始しております。我々として、必要な人材をITERに送り込み、そのノウハウをとった上で、派遣前の機関に戻して役に立っていくということを関わるべく制度は作っております。
 一方、この制度を作っても魂を入れるためには、人が、ITERに行きたいと思うこと、ITERから戻ってきて何かやりたい、これが一番重要であります。その働く場を作るという意味において、この前倒し等含めてのITER計画の次の計画をどうするか、今、皆さんにしていただいている議論は非常に重要であります。現に手を挙げている人を増やすという意味においては、皆さん、まさに核融合に関する教育の最先端に立っていますので、なるべく若い方々に、どれだけ核融合が面白くて、国外に出て関連する業務に従事することが将来や世界及び日本の未来にどれだけ資するのだと積極的に情報発信していただきたいと思います。我々もそれをサポートする施策を打っていくつもりでおりますので、引き続き御協力をいただけるとありがたいと思います。
 ちなみに、現在、2021年度の段階のITERの日本人は、世界中の職員、981名中35名ですので、なかなか9.1%には達していないということで、まだまだ頑張る余地があると考えております。以上です。
【笠田主査】ありがとうございます。状況、よく分かりました。私の研究室は、日本人の博士人材もいっぱいいて、海外で働きたいという若い人もいっぱいいます。やはりITERというのは1つの重要な候補だと思うので、着実にこの原型炉を含めて計画を進めて若者に興味を持っていけるように発信していきたいと思います。
 それでは、続きまして議事の3です。「核融合政策に関する最新情勢について」に入ります。こちらも稲田戦略官から御説明をお願いいたします。
【稲田戦略官】資料7に基づいて説明させていただきます。冒頭、説明いたしました核融合というのが、ITERを中心とした協調と協力の世界から、各国、その次の実用化を目指した競争の世界に移りつつあります。競争というのがどのような状況になっているかを説明した資料でございます。
 次のページでございますが、四角に書いてありますように、核融合の開発における各国の取組に関しましては、2020年頃から一気に加速しております。プラスして核融合ベンチャーの投資というのもかなり活発化しています。具体的に言うと、去年、大体2,000億円ぐらいの民間投資がされています。
 その政策動向の変化に関しましては、一番その中心であるというのが、EUと日本であります。日本の状況については、皆さん、まさにそれを作った方々なので省きます。EUにおいてはEUROfusionにおいて、22世紀に世界で1テラワット、これは100万キロワット級の発電所で1,000基分ぐらいの需要が期待されると分析しております。その欧州グリーンディール政策の下で2050年頃には発電を行う核融合のDEMOを建設すべきだというようなことを評価しているところでございます。
 続きまして、米国についてです。エネルギー省と、核融合エネルギー科学諮問委員会が「核融合エネルギーとプラズマ科学に関する10年間の国家戦略計画」というのを作りました。それを皮切りに、2040年代までの核融合パイロットプラントを目指すための準備を整えるというような記載がされているとともに、安全規制に対しても研究が始まっているというような状況であります。
 次、英国であります。英国に関しては、EUの一員として、EUの中の技術の中核を担っていた国です。一方、ブレグジットしたということもありますので、EU全域としての人口、それから、その資金という優位性を自分で放棄しております。したがって、英国は核融合に対して、よくよく戦略を作って考えています。先ほどの他国で示された2050年頃に原型炉の建設を目指すとしたのに比べて早い、2040年までに原型炉の建設を目指す他、科学的で合理的な安全規制等々を整備しております。同時に、立地する所がどこか決まらないとなかなか核融合の施設を造れないところがありますので、国が主導して立地地点のパブリックコメント等を行っています。立地を選ぶことを加速することによって、他の国の研究機関、地方も含めてなのですが、研究開発を加速し、英国において最初の核融合ができることを目指しての研究開発戦略を持っています。
 韓国に関しましては、韓国は我が国と類似なことを行っているところなのですが、2050年代にK-DEMOを造ることを目標にした上で、彼らのKSTAR等々の着実な研究開発を実施して頑張っています。
 続いて、中国についてです。中国は非常に人口が多いですし、今後、経済的にも成長するのが続いていくことが期待されていますが、まだ技術をそんなに持っているわけではないです。ただし、技術は持っていなくても経済力がありますので、ITER計画と並行してITERと同規模の工学試験炉を造って、そこで技術習得をした上で、中国は発電部分もつけて完全な形で改造して実験をするなど計画を推進中でございます。この後についてもさらに大きな炉を造ることを考えているという状況です。
 核融合ベンチャーの投資活発化については、マサチューセッツ工科大学(MIT)のスピンアウトであるCommonwealth Fusion Systems社などは、2,000億円以上予算調達しているとか、あるいはカナダや英国においても、それぞれ相当規模の設計活動をするためのお金等々を集めていますし、その具体的な活動も進展しているという内容でございます。
 次のページ以降は、具体的に各国がどのように核融合の政策を考えているかをまとめたものであります。非常に簡単に言うと、先ほどの説明の繰り返しになるのですが、米国においては、御承知のとおり、かつてはトップ・オブ・トップだったのですが、今は日本とEUと同等か、あるいは少し遅いというところであります。
 一方、彼らは、リスクマネーをDeep Techに投資して一気に追い上げるという手法を得意としています。具体的に言うと、SpaceXにおける宇宙開発みたいな話なのですけれども、それと同様の手法を核融合にも導入して加速するということを考えています。彼らが賢いのは、国の予算というのは別途、今までのベースで予算を確保した上で、セカンドラインとして、商業核融合というか、民間の金を使った研究開発というところを自由に構想させることを考えています。その具体のものとして、商業核融合エネルギーの実現に向けた10か年戦略などを議論して、今後、発表していきますということを議論しているところであります。まだ、結果は出ていませんが、今後どういうことを示していくかというところには注力が必要だと考えてございます。
 英国に関しては、ITERを利用しつつ、球状トカマクを利用したSTEPという計画があります。これを2040年までに実現するために先ほど申し上げた安全規制とか立地状況の前提等々を今年の12月までに選定する予定です。これは少し遅れているようではないかという情報もありますが、国家が環境を整え、競争自身については、民間の金も含めて加速していくという戦略をとっています。資料の一番下のところに、目標として核融合及び関連技術に関する対英投資を誘引して、世界の核融合市場において競争力を持つ英国企業を育てるという目標を立てて研究開発を実施しているところでございます。
 韓国に関しても、2050年に発電実証を行うために必要な研究開発を我が国のJT-60SAに匹敵するようなKSTARという実験装置を持っています。これらを活用して研究開発を行います。プラスして、彼らは重要な技術自身を、どこが重要なのかというところを8個ほど選定して、KSTARに関する研究開発を実施することによって、コア技術を少なくとも国内実験装置等で確保できる状況で進めていこうと考えているようでございます。幸いなことに我が国、この8個のコア技術、全部持っていますけれども、急激な追い上げが進んでいくという状況になっているというところです。
 以上、雑ぱくではありますが、各国においてはいろいろな戦略がありますが、戦略的に考えて競争に負けないような算段を考えていくことが極めて重要な側面に立っているというのが現在の状況でございます。よろしく御審議をお願いいたします。
【笠田主査】私もこういった核融合、各国の核融合政策は、核融合コミュニティーからの情報としては存じ上げているつもりです。行政的な観点で各国の核融合政策の位置づけについて、例えばエネルギー政策の中で捉えられているのか、原子力政策の中で捉えられているのか、それとも独自の核融合政策として行われているか、その辺りの位置づけみたいなものに関して何らかの情報があれば御教示いただきたいです。
【稲田戦略官】基本的には、その国によります。ただし、一般的には今、御指摘されたように、大きなものとして、エネルギー戦略というのがあって、そのエネルギー戦略の中には、当然、核というところがあります。この核というのが融合と分裂、fusionとfissionに分かれていて、今までfusionというのが極めて小さな割合だったということで、一緒にやられていることが多いです。ただし、我が国は、その萌芽を見せているのですが、核融合、今後広がっていくのに当たって、核融合と核分裂は明らかに規制に関する考え方等々も含めて大きく異なります。なので、核融合というのをどうすべきかみたいな議論は、少し起こっていると認識してございます。
 我々としても同様の考えでございまして、何でも一律に適用するというと、何か失敗にこりて必要以上に用心深くなり、無意味な心配をすることにもなりかねません。逆に過小評価すると何かが起こったとき、起こってから後追いするよりも、あらかじめ適切な規制を作っておいた方が圧倒的にコストって安くなるはずですよね、というところもあります。このため、科学的、合理的、かつ必要十分なものは何かを考えて安全規制をすることが重要であり、戦略についても同様にここの部分だけを考えても十分とは言えません。
 あまり他の部門を批評するのは適切ではないのですが、カーボンニュートラルと言いつつ、一部のエネルギーソースというのは、ライフタイムコストで考えたときに、必ずしもそれほど大きなものではありません。あるいはマイナスになってしまうというような問題を含むエネルギーソースもございます。こういうところ等を踏まえていると、核融合というのは他に比べて大分有利な点を持っているとなって、各国が重視しつつある状況だと認識しております。
【笠田主査】ありがとうございます。今後、多分、非常にそういった観点がタスクフォースで取り扱っている規制、基準とか、そういったところとか、社会受容性とか、そういったところを考えていく上で非常に重要かと思いますので、今後とも各国の状況の情報共有をよろしくお願いいたします。
【稲田戦略官】はい。
【笠田主査】他にございますでしょうか。それでは、ありがとうございました。本日用意しております議事は以上ですけれども、その他、特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。よろしいですかね。
 それでは、次回のタスクフォースの日程につきまして、事務局から連絡をお願いいたします。
【吉原専門官】次回のタスクフォースは、10月4日、火曜日、14時からオンラインで開催をさせていただきます。議題等につきましては、追って御連絡をさせていただきます。以上でございます。
【笠田主査】ありがとうございます。それでは、本日のタスクフォースは、これで閉会いたします。御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございました。失礼いたします。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

   髙木、坂本
   電話番号:03-6734-4163

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