外務省・新着情報

冒頭発言

【林外務大臣】今回、日本の外務大臣として、2年2ヶ月ぶりになりますが、シンガポールとマレーシアを訪問いたしました。地域・国際情勢が一層厳しさを増す中で、地域の重要なパートナーであるシンガポールとマレーシア両国の政府要人との間で、二国間関係の更なる深化や、地域・国際社会の諸課題に対する連携強化に向けて、率直な意見交換を行わせ頂きました。
 まず、シンガポールのリー首相やバラクリシュナン外相、マレーシアのサイフディン外相と率直な議論を行う中で、私からは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力を進めていきたい旨、また、来年は日・ASEAN友好協力50周年ですので、これに向けた連携を強化していきたいこういったことを申し上げ、両国から、日本との関係を一層発展させていきたいという前向きな反応を得たところでございます。
 ロシアによるウクライナ侵略については、私から、ウクライナ国内における「住民投票」やロシアによるこれらの地域の「編入」と称する行為これらを含めて、ロシアによるウクライナ侵略は国際法に違反する行為であり、決して認めてはならないと言うことを申し上げて、ウクライナ情勢への対応で連携していくことを確認いたしました。
 北朝鮮につきましては、本日も弾道ミサイルの発射がございました。4日の我が国上空を越える弾道ミサイルの発射を含めて、9月末から短期間で7回という極めて高い頻度の弾道ミサイルの発射です。日本及び地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、国際社会に対する明白な、かつ深刻な挑戦であります。断じて容認できず、北朝鮮に対して厳重に抗議をし、強く非難したところでありますが、今般の訪問中も、私から、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応について取り上げまして、引き続き連携していくことで一致をいたしました。
 また、東シナ海・南シナ海情勢については、私から、力を背景とした一方的な現状変更に対して強く反対する旨を述べ、深刻な懸念を共有したほか、ミャンマー情勢や、またCPTPPのハイスタンダードの維持、さらに安保理改革を含む国連の機能強化といった地域・国際社会の諸課題についても議論し、連携を強化していくことを確認をいたしました。
 二国間関係についても、両外相との間で、それぞれ安全保障協力、経済、エネルギー、気候変動、人的交流といった幅広い分野で協力を更に深めていくことを確認いたしました。特に、10月11日から実施をされる日本の水際措置の緩和については、リー首相と両外相からですね、これを歓迎するとの発言がございまして、人的交流を通じた相互理解を、これを更に深めていくことを確認いたしました。
 この他、シンガポールではターマン上級大臣兼社会政策担当調整大臣との懇談、また、地域・国際情勢に関する有識者の皆さんとの懇談を行い、経済や地域情勢などについてじっくりと議論を行ったところでございます。
 本年、外交関係開設65周年を迎えましたマレーシアでは、アズミン・アリ上級大臣兼国際貿易産業大臣と会談を行い、同じく本年40周年を祝う東方政策の更なる発展に向けた協力を確認をいたしました。さらに、日本政府の円借款等を活用して設立をされましたマレーシア日本国際工科院(MJIIT)を訪問した他、元日本留学生の皆さんとも懇談を行ったところでございます。
 また、両国でそれぞれ日本人墓地に於いて献花を行ったほか、この日系企業関係者の皆さんと、経済関係、またビジネス環境について意見交換を実施し、非常に有意義な訪問となったと考えております。私からは以上です。

質疑応答

【記者】ASEANとの連携について伺います。現在のウクライナ情勢や中国の海洋進出などの現在の国際情勢を踏まえまして、ASEANとの連携の重要性についてどのようにお考えでしょうか。また、ASEANやその加盟国との連携について、今後どのように取り組んでいくお考えでしょうか。

【林外務大臣】力による一方的な現状変更の試み、これは決して看過できないことであります。法の支配に基づく国際秩序の維持・強化、これこそが、地域や国際社会の安定と繁栄にとって不可欠であり、その実現のためにも、地域の重要なパートナーであるASEANとの協働、これが不可欠であると考えております。
 来年、日ASEAN友好協力50周年という歴史的な節目であり、ASEAN各国の首脳をお迎えして特別首脳会議を開催し、日ASEAN関係の将来のビジョンを打ち出したいと考えております。
 そのためにも、各国との間で幅広い分野において二国間関係をそれぞれ着実に発展させ、地域・国際社会の諸課題にこれに共に取り組んでいきたいと考えております。先ほど述べたとおり、今回の訪問においても、そうした諸点についてシンガポール及びマレーシアの政府要人、更には有識者の皆さん等との間で、胸襟を開いて有意義な議論ができたと考えております。

【記者】冒頭、大臣少し触れられましたけれども、今回ASEANの中でシンガポールとマレーシアの二国を訪問した意義を改めてお願いいたします。

【林外務大臣】先ほど申し上げましたように外務大臣就任後、初めてシンガポールとマレーシアを訪問しております。
 今回の訪問で、今だに続くロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮による一連のミサイル発射を含む核・ミサイル活動、東シナ海・南シナ情勢等ですね、地域・国際情勢が一層厳しさを増す中で、地域における重要なパートナーであるシンガポールとマレーシアとの間で、経済、それから安全保障協力、人の往来を含む幅広い分野での二国間関係、これを一層強化し、国際社会における諸課題への連携についても議論を深めることができたと考えております。
 先ほどの繰り返しにもなりますが、来年の日ASEAN友好協力50周年に向けて、また、コロナ禍を克服しつつある今こそ、ASEAN諸国との連携を更に深める好機だと考えております。人的交流を含めた顔の見える二国間関係、これを再活性化して、シンガポール、マレーシアを含むASEAN諸国との関係、これを一層発展させていきたいと考えております。

【記者】国連の安保理改革についてお伺いいたします。大臣は国連安保理改革の必要性をかねてから訴えておりますが、シンガポールとマレーシアでも対応を協議されました。今回両国と議論したことの受け止めと、今後他国とどのように連携していくか考え方をお伺いいたします。

【林外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略等が国際秩序の根本、これを揺るがしている中で国連憲章の理念と原則にもう一度立ち戻って、国連の信頼、これを回復するためには、安保理改革を含む国連自身の機能強化、これが重要になってくると考えております。
 安保理改革については、国連において長年にわたり議論が積み重ねられてきておりますが、現下の国際情勢に鑑みますと、議論のための議論ではなくて、改革実現に向けた行動、これを開始すべきだとこういうふうに考えております。国連総会の一般討論演説でも、バイデン米国大統領を含む多くの国々やまたクールシ国連総会議長が、安保理改革の必要性に言及をされております。
 こうした認識を含めてですね、今回、シンガポールのリー首相やバラクリシュナン外相、マレーシアのサイフディン外相との間で率直な議論を行う中で、両国との間で基本的な認識と今後の連携、こういうことを確認できたことは有意義であったと思っております。
 安保理改革については、各国の立場の違いも大きく、これまで大きな進展が得られていない、これもまた事実でありますけれども、今後も関係国とよく意思疎通しつつ、早期に進展が得られるよう引き続き努力していきたいと考えております。

【記者】北朝鮮のミサイルについてお伺いいたします。大臣仰ったように、9日未明もミサイル2発を発射しました。今回の外遊でもシンガポール、マレーシア大臣は今回の外遊でも各国と北朝鮮情勢について議論されましたが、日本政府としての受け止めと今後の対応を改めてお願いします。

【林外務大臣】異例の頻度でミサイル発射を繰り返されております。また我が国上空を通過する弾道ミサイルの発射、これ5年ぶりであります。こうした短期間で北朝鮮が再び弾道ミサイルの発射を行った、こうした暴挙は到底看過できないと思っております
 このこうしたミサイルの発射を北朝鮮が行っていることは日本及び地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦である旨、私から説明し、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応で連携していくことで各会談で一致しております。
 今後の対応については、米国や韓国とも連携しながら検討していきたいと思っておりますが、日米、日韓に加え、日米韓の安全保障面での協力を含めて、対応に万全を期していきたいと考えております。

【記者】最初の質問のASEANの重要性との質問と関連するんですけれども、ASEANはインド太平洋に関する、ASEANアウトルックをまとめていると思います。自由で開かれたインド太平洋の実現を目指す日本にとって、インド太平洋という観点からのASEANの重要性をどう位置づけているかという考えを改めてお聞かせください。

【林外務大臣】このインド太平洋、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)にとって、まさにこのASEANは、その域内の重要なパートナーであるわけであります。力による一方的な現状変更の試み、これは決して看過できないわけでありまして、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化こそが地域や国際社会の安定にとって不可欠であります。こうしたことの実現のためにも、先ほど申し上げましたようにインド太平洋の地域の重要なパートナーであるASEANとの協働が不可欠であります。繰り返しになりますが、来年日ASEAN有効協力50周年という歴史的な節目でございまして、ASEAN各国の首脳をお迎えして特別首脳会議を開催し、日ASEAN関係の将来ビジョンを打ち出したいと考えており、こうしたことを通じてしっかりと、FOIP、これを推進していければというふうに考えております。

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