厚労省・新着情報

日時

令和4年3月31日(木)10:00~12:00

場所

AP虎ノ門
(港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

(かき)(うち)(しゅう)(すけ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

鹿()()()()() 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

(かん)()()()() 東京大学大学院法学政治学研究科准教授

(なか)(くぼ)(ひろ)() 一橋大学大学院法学研究科特任教授

(やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

とりまとめに向けた議論

議事

 
○山川座長 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから第16回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方、本日も御多忙のところ御参加いただきまして、大変ありがとうございます。
 本日の検討会は、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえて、Zoomによるオンライン開催になります。御理解いただければと思います。
 本日の出欠状況でありますけれども、小西康之委員が御欠席で、そのほかの委員の皆様はオンラインで御出席いただいております。
 なお、垣内秀介委員が11時頃、鹿野菜穂子委員が12時少し前頃に御退席予定とのことです。
 委員の皆様、こちらの音声、画像は届いておりますでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川座長 ありがとうございます。
 それから、法務省からオブザーバーとして、法務省民事局の笹井朋昭参事官にオンラインにて御参加いただいております。よろしくお願いいたします。笹井参事官も11時頃御退席予定ということです。
 それでは、事務局からオンライン操作の方法等について説明していただきまして、併せて資料の確認のほうもお願いします。
○宮田労働関係法課課長補佐 労働関係法課課長補佐の宮田でございます。よろしくお願いいたします。
 本日はZoomによるオンライン会議となっております。座長以外はオンラインでの御参加となっておりますので、簡単に操作方法について御説明させていただきます。
 本日の検討会の進行中は、委員の皆様のマイクをオフの状態とさせていただきますので、マイクのアイコンがオフ、赤い斜線の入った状態になっているかを御確認ください。
 御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の許可があった後に、マイクをオンにしてから御発言いただきますようよろしくお願いいたします。
 また、本日は会議資料を御用意しております。事務局から資料を御説明する際には画面上に資料を表示いたします。
 そして、会議の進行中、通信トラブル等で接続が途切れてしまった場合や音声が聞こえなくなってしまった場合等がございましたら、お知らせしております担当者宛てに電話連絡をいただければと思います。
 なお、通信遮断等が復旧しない場合でも、座長の御判断により会議を進めさせていただく場合もございますので、あらかじめ御了承いただければと思います。
 Zoomによるオンライン会議に関する御説明は以上になります。
 次に、資料の御確認をよろしくお願いいたします。今回御用意した資料といたしましては、資料1及び資料2になっております。委員の先生方におかれましては、あらかじめ送付させていただいた資料を御確認いただければと思います。
 私からは以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 カメラ撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
(カメラ撮り終了)
○山川座長 では、本日の議題に入ります。議題は「とりまとめに向けた議論」となります。本日の資料1が報告書のたたき台、資料2がその概要となっているようであります。
 本日の進め方についてですけれども、各資料について事務局から説明をしていただいた上で、委員の皆様方から御意見をいただきたいと思います。
 それでよろしければ、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
 それでは、今、画面共有させていただいておりますが、資料1を御覧ください。資料1は「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」報告書(たたき台)です。こちらについては、これから取りまとめに向けた御議論に資するように、事務局におきまして座長と御相談しつつ、これまでの検討会における議論の内容を整理させていただいたものになっております。大部な内容になっておりますので、要点に絞って御説明させていただきます。
 目次の後の3ページの「Ⅰ.はじめに」を御覧ください。こちらでは検討会の経緯についてまとめているほか、本報告書の位置づけとしまして、「本報告書では仮に制度を導入するとした場合に法技術的に取引得る仕組みや検討の方向性等に係る選択肢等を示すものである」と整理しております。
 次に、「Ⅱ.検討の前提となる事項」です。まず、「1.解雇をめぐる紛争の現状について」のところでは、現状において、解雇の効力については、個別事案に応じて最終的には司法判断により決せられるところ、実態としましては、解雇が無効であると判断されたものの職場に復帰できないケースが3~4割程度存在するとの調査もあるなどと紹介しております。
 続きまして、「2.紛争解決システム検討会における検討について」でございます。こちらでは平成29年まで行われた紛争解決システム検討会での検討内容をまとめているところです。紛争解決システム検討会では、解雇無効時の金銭救済制度につき、使用者申立制度につきましては、現状では容易ではない課題があるとの指摘があり、今後の検討課題であるとされた上で、労働者申立の基本的な枠組みについて、3つの例について検討を行っております。
 このうちの「例3 実体法に労働者が一定の要件を満たす場合に金銭の支払を請求できる権利を置いた場合の金銭救済の仕組み」という仕組みにつきまして、労働者の選択肢を拡大するという観点や、国民にとっての分かりやすさ等を考慮すれば、ほかの例に比べると相対的には難点が少ないとの意見があったが、この案は紛争解決システム検討会で新たに提示された選択肢であるため、権利の法的性格等、法技術的にもさらに検討していくべき課題が多いとされたところです。
 次に、「3.諸外国における類似の制度について」です。こちらでは参考になり得る諸外国における紛争解決システムについて、イギリス、ドイツ、フランスを例として整理いたしております。注意点といたしまして、「諸外国と我が国においては、解雇無効の法理を採用するか否かなどの解雇ルールや紛争解決機関の状況、個別労働紛争の件数等も異なるところがあり、単純な比較にはなじまないことに留意が必要である」と記載いたしております。
 続きまして、9ページ「Ⅲ.解雇無効時の金銭救済制度に関する法技術的論点について」を御覧ください。
 まず、「1.基本的な考え方」です。こちらでは、本検討会で法技術的論点について御議論いただく際に前提とされていた基本的な考え方としまして、黒い四角で3つ記載しておりますが、「解雇が無効と判断されることを前提に、労働者の選択により権利行使が可能となること」「労働者にとって紛争解決に向けた予見可能性が高まるようになること」「迅速な紛争解決の観点から、一回的解決が可能となること」という基本的な考え方を整理しております。
 続きまして、「2.各論点における検討について」です。こちらからが個々の具体的な法技術的論点についての御議論を整理しているところです。
 まず、「(1)形成権構成及び形成判決構成について」です。こちらでは、本検討会においては、制度の骨格について、「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭(労働契約解消金)を支払い、その支払によって労働契約が終了する仕組み」を念頭に検討を進めていただきました。
 また、このような仕組みを制度的に構築する場合の選択肢として、2つの構成について検討いただいたところです。まず、形成権構成についてです。形成権構成とは、要件を満たした場合には労働者に金銭救済を求める地位を発生させる形成権(金銭救済請求権)が発生し、労働者がそれを行使した場合の実体法上の効果として、1、労働者から使用者に対する労働契約解消に係る金銭債権(労働契約解消金債権)が発生するとともに、2つ目として、使用者がその解消金を支払った場合に労働契約が終了するとの条件つき労働契約終了効が発生するとの構成です。
 2つ目の構成が形成判決構成になります。形成判決構成とは、労働者の請求を認容する判決が確定した場合に、その効果として、先ほどと同様の1、2の効果が発生するとの構成でして、要件を満たした場合には、労働者に判決によるこのような法律関係の形成を求める権利が発生するとするものです。
 形成判決構成につきましては、労働審判によって労働契約解消金債権そのものを発生させることができるかが問題となるとされた上で、結論といたしましては、「労働審判によって労働契約解消金債権を発生させることができる規律を設けることも、法技術上は可能であると考え得る」との御議論の結果を記載しております。
 次のページの「(2)権利の法性質等」です。「①対象となる解雇・雇止め」では、本制度の対象となる解雇等をどのように考えるべきかにつき御議論いただきました。そして、「本制度では無期労働契約における全ての無効な解雇と、有期労働契約における無効な契約期間中の解雇及び労働契約法19条に該当する雇止めを対象とすることが考えられる」との御議論の結果を記載いたしております。
 「②形成権の発生要件・形成判決の形成原因」のところでは、無期労働契約の場合の各構成、形成権構成、形成判決構成における要件につきまして、3つ整理していただいております。「1、労働契約関係が存在すること(労働者であること)」「2、使用者による解雇の意思表示がされたこと」「3、当該解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことにより無効であること、または、その他の法律上の制限により無効であること」と考えられるという御議論の結果を記載しております。
 要件1につきましては、これまでの資料上では「労働者であること」と記載しておりましたが、法律的な事実の表現としては「労働契約関係が存在すること」が正確と思われるため、このような記載ぶりにしているところです。
上のなお書きのところで「ここでの検討は、解雇の無効に係る主張立証責任について、現在の裁判実務を変更する趣旨のものではない」として、検討会においていただいた主張立証責任に関する御意見を反映いたしております。
 「③権利行使の方法」です。こちらでは、労働者の権利行使の方法として、「形成判決構成の場合には、その性質上、権利行使の方法は裁判上の権利行使(訴え提起及び労働審判の申立て)に限ることが当然と考えられる」。また、「当面は、形成権構成の場合であっても、権利行使の方法は訴えの提起及び労働審判の申立てに限ることが考えられる」との御議論の結果を記載しているところです。
 次の「④債権発生の時点」です。こちらでは、各構成における労働契約解消金債権が発生する時点等について御議論いただきまして、「形成権構成によれば、金銭救済請求権を有する労働者が訴え提起又は労働審判の申立てによりその権利を行使した時点で労働契約解消金債権という金銭債権が発生することとなる」とした上で、次のページですが、「判決等の確定の日に労働契約解消金の弁済期が到来するとしつつ、判決等の確定より前に労働契約解消金の支払がされた場合であってもその支払による効果(労働契約終了効)は発生しないとすることが考え得る」。また、「形成判決構成の場合には、労働契約解消金債権の発生時点は、判決又は労働審判の確定時点であり、その時点で弁済期が到来すると考えられる」との御議論の結果を記載しているところです。
 「⑤金銭救済請求権行使の意思表示の撤回等」です。こちらでは、労働者が本制度を利用しようとした後に、それを撤回するということが可能かどうかにつき御議論をいただきまして、形成権構成における形成権行使の意思表示の撤回や、形成判決構成における訴えの取下げ等につきまして、いずれも結論としては「判決等の確定時まで可能とすることも考えられる」との御議論の結果を記載しているところです。
 続きまして、「⑥権利放棄」です。こちらでは労働者が本制度における権利を放棄することは可能かどうかについて御議論をいただきまして、「労働者にあらかじめ(使用者による解雇の意思表示前に)金銭救済請求権や労働契約解消金に係る訴え提起等の権利を放棄させることは公序良俗に反して無効と考えられる。他方、労使合意の下で自主的に紛争が解決されることは望ましいものであるから、使用者が解雇の意思表示をした後に、労働者が権利を放棄することは、それが労働者の自由意思に基づくものと評価できるのであれば可能と考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 「⑦相殺・差押えの禁止」です。こちらでは「労働契約解消金債権を相殺・差押禁止の債権とするか否かについては、法技術的にはいずれの措置も可能であると考えられるが、労働契約解消金の性質等も踏まえた検討を行った上で、その要否及び範囲について判断することが適当と考えられる」との御議論をいただきましたので、そちらを整理しているところです。
 「⑧権利行使期間」です。こちらでは本制度の権利行使の期間について御議論をいただきまして、「裁判原因の発生から訴えの提起までの期間が平均1.6年といった調査も参考にするならば、少なくとも2年程度の期間は確保する必要があると考えられるが、具体的な期間については種々の選択肢があり得、政策的に判断する必要があると考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 続きまして、「⑨権利の消滅等」です。こちらでは、使用者が解雇の意思表示をした後に、辞職、定年退職、死亡、当該解雇の意思表示とは別に有効な解雇を新たにした場合など、労働契約解消金の支払以外の事由により労働契約が終了することが想定されるとして、このような場合の権利の消滅等について御議論をいただきました。そして、「労働者が金銭救済請求権を行使する前や、訴え提起等をする前に他の事由により労働契約が終了した場合には、労働契約関係が存在することという各構成の要件を欠くことになるため、もはや本制度の適用は認められないと解される。また、労働者が金銭救済請求権を行使した後や、訴え提起等をした後で、労働契約解消金の支払前に他の事由により労働契約が終了した場合については、結論としては、労働契約解消金の支払は認められないと考えられる」との御議論の結果を記載しているところです。また、次のページ、「ただし、政策的判断としては、権利行使後の労働契約が終了した事由の性質の違いに着目し、取扱いを異ならせることはあり得る」とされた上で、「例えば辞職の取扱いについては、結論としては、労働契約解消金債権の帰趨について影響はないものとの措置を講じることも考えられる」との御議論をいただいたと承知しておりますので、こちらを記載しております。
 続きまして、「⑩解雇の意思表示の撤回」です。こちらは、使用者が解雇の意思表示を撤回する旨の意思表示をした場合について御議論をいただきまして、このような使用者の行為をもって、結論としては「労働契約解消金の支払請求を妨げる事由とはならないとすることも考えられる」といった御議論をいただきましたので、こちらを記載しております。
 以上が権利の性質等についてです。
 続きまして、「(3)労働契約解消金の性質等」の項目になります。まず「①労働契約解消金の定義」についてです。こちらでは労働契約解消金の定義をどのように考えるべきかについて御議論をいただきまして、2つの考え方があり得るとされたところです。1つが「無効な解雇がなされた労働者の地位を解消する対価」という定義。2つ目が「無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について労働契約の終了により解決する対価」といった、先ほどより広義の定義も考えられるという御議論をいただきました。
 この定義をどのように定めるかについては、「その性質や考慮要素等の検討とも関連しており、それらも視野に入れつつ、本制度を導入するとした場合に、本制度や労働契約解消金にどのような機能を持たせるか、それらがどのような効果や影響をもたらすかも考慮したうえで政策的に判断することが適当であると考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 また、こちらの項目で労働契約解消金によって補償すべきものについていただいた御議論も整理しているところです。「雇用が継続していた場合に『将来的に得べかりし賃金等の財産的価値についての金銭的補償』が補償すべきものの中心となるが、『将来的に得べかりし』とまではいえないような雇用の継続による昇給等の諸利益の可能性等も含めることが考えられる。さらに、解雇がされるまで当該使用者の下で継続的に勤務することによって得たキャリアや人間関係といった『現在の地位に在ること自体の非財産的価値についての金銭的補償も含まれる』と考えることもできる」との御議論の結果をこちらで記載しております。
 次に、「②労働契約解消金の構成及び支払の効果」のところです。こちらでは、「労働契約解消金債権については、解雇期間中の賃金(バックペイ)債権、不法行為による損害賠償請求権とは別に根拠規定を有するものとすることが考えられることから、それぞれ別個の債権として独立して請求できるものとすることが考えられる」とされた上で、いかなる場合に労働契約が終了するかなどについて御議論をいただきました。
 その上で、「労働契約解消金の支払のみによって労働契約が終了する構成だけではなく、バックペイの履行確保の観点から、労働契約解消金に加えてバックペイの支払がなされたときに労働契約が終了するという構成が考えられる」との御議論をいただきました。
 その上で、「いずれの構成が適当かについては、バックペイの履行確保の必要性等を考慮したうえで政策的に判断する必要があると考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 続きまして、「(4)地位確認請求、バックペイ請求、不法行為による損害賠償請求等との関係について」です。こちらでは、労働契約解消金債権とその他の各債権等との関係等について御議論をいただいたところをまとめているところです。
 「①地位確認請求との関係」では、労働契約解消金請求訴訟と地位確認請求訴訟では訴訟物が異なるところ、これらを併合提起することは可能であると考えられる。
 また、「②バックペイの発生期間」のところでは、「新たな労働契約解消金債権の創設によって民法の規定に基づくバックペイ請求権が制限される合理的理由はないと考えられる」とされた上で、使用者による正当な理由のない労務の受領拒絶が継続する限り、解雇から解消金支払時までのバックペイが発生すると解することが原則であると考えられる。
 また、「③1回の訴訟で認められるバックペイの範囲」につきましては、「本制度を導入することとした場合、1回の訴訟手続により請求が認められるバックペイの範囲については、判決確定時までは請求の必要性を認めるという一般的に見られる判断を変更する特段の規定を設ける必要はなく、司法判断に委ねることが考えられる」との御議論をいただきました。
 「④不法行為による損害賠償請求との関係」についてです。不法行為による損害賠償請求権と労働契約解消金との関係につきましては、不法行為による損害というものは、労働契約解消金及びバックペイは別個のものであるが、ほぼカバーされると考えられるという御議論の結果を記載しております。
 「⑤退職手当との関係」のところでは、結論といたしましては、「退職手当は、労働契約解消金との調整を行わないものと整理することも可能であると考えられる」との御議論の結果を記載しております。
26ページの「(5)労働契約解消金の算定方法等」を御覧ください。まず「①労働契約解消金の算定方法・考慮要素」についてです。こちらでは、「労働契約解消金の算定方法について、法技術的には、あらかじめ算定方法を設けずに個別事案毎の状況を考慮して算定する方法から、客観的かつ定型的な考慮要素のみを前提とした算定式により算定する方法まで様々な設定が可能であり、最終的には、手続が遅延しないようにすることを含め、制度の機能や役割を踏まえて政策的に判断することが適当と考えられる」との御議論の結果を前提として記載しております。
 その上で、「算定方法を検討する際には、予見可能性と個別性という2つの視点が考えられる」とされた上で、「労働契約解消金の額等については、予見可能性を高めるような仕組みとすることが適当であると考えられる。この視点から、労働契約解消金の算定方法については、一定の算定式を設けることを検討する必要があると考えられる」。また、「他方で、労働者の地位や解雇に関する実態は個別の事案により千差万別であり、その個別性をどの程度反映する必要があるかという点も、算定方法や考慮要素を考える上では重要である」という御議論の結果を記載しております。
 また、算定式中にどのような考慮要素を設定していくかにつきましても検討いただきました。考慮要素として考えられるものとしては、給与額、年齢、勤続年数、また、合理的な再就職期間や再就職の困難性、さらには解雇に係る労働者側の事情といったものが考え得るという御議論の結果をこちらで記載しております。
 その上で、次のページになりますが、どの要素を考慮するか、また、当該考慮要素をどれほど重要な要素と考えるかを検討する際には、「労働契約解消金の定義や、労働契約解消金によって補償すべきものは何かといった点が重要であり、これらの点と相互に関連させて検討することが適当と考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 その他、「②労働契約解消金の上限・下限」では、「上下限の設定方法は、労働契約解消金の算定方法・考慮要素とも密接に関連する問題であるが、法技術的な観点からは、例えば、算定式の各係数に上下限を設ける方法など様々な方法が考えられ、これらについては政策的に判断することが適当と考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 また、「③労使合意による別段の定め」につきましては、事前の集団的労使合意によって、労働契約解消金の算定方法に企業独自の定めを置くことを認めるか否かについては、政策的に判断することが適当であるとされております。
 さらに、「④労働契約解消金の算定の基礎となる事情の基準となるべき時点」についてです。こちらは、考慮要素によっては、時の移り変わりによりその具体的な事情が変わってくることが想定されるということが前提とされた上で、このような考慮要素については、基準時点としては「労働契約解消金の支払によって労働契約が終了する時点に最も近い口頭弁論終結の時点のものを考慮するとする整理も可能である」との御議論の結果を記載しております。
 30ページの「(6)有期労働契約の場合の契約期間中の解雇・雇止め」についてです。こちらでは、有期労働契約の場合に特に考慮すべき法的論点について御議論いただいたものを整理しております。
 「①形成権の発生要件・形成判決の形成原因」についてです。こちらは要件としまして、契約期間中の解雇の場合には、「有期労働契約関係が存在すること(有期労働契約を締結した労働者であること)」「使用者による解雇の意思表示が契約期間の途中でなされたこと」「その解雇が無効であること」という要件。また、雇止めの場合につきましては、「有期労働契約関係が存在すること」「その契約につき、労契法19条1号又は2号のいずれかの要件を満たすこと」「労働者により契約期間中等、遅滞なく更新の申込みの意思表示がされたこと」「使用者が更新拒絶をしたこと」「その更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと」というところで御議論いただいたものを記載しております。
 なお、いずれのところにつきましても、「ここでの検討は、主張立証責任について、現在の裁判実務を変更する趣旨のものではない」との検討会でいただいた御意見を反映しております。
 その他、有期労働契約の場合に特に考慮するべき論点としまして、「②権利の消滅等」のところでは、有期の場合には、無期における労働契約の終了事由に加えて、一旦労契法19条が適用されて同一の労働条件で契約が更新されたものとみなされたものの、その後の期間満了によって労働契約が終了する場合や、契約期間が満了した場合に労働契約が終了するといった場合も考えられるところ、これらの場合も労働契約解消金は消滅すると考えることとなるとの御議論の結果を記載しております。
 また、「③労働契約解消金の性質等」のところでは、有期の継続の可能性そのものを反映した考慮要素も別途考慮要素として考えることがあり得るというところで、「特に、契約期間中の解雇の場合には、残りの契約期間は明確であり、残りの契約期間を考慮要素とすることも考えられる」との御議論の結果を記載しております。
 32ページの「(7)本制度の対象となる解雇等の捉え方」についてです。こちらでは、解雇の意思表示が複数された場合や、労契法19条による更新が複数回された場合につき、本制度の対象等をどのように考えるべきかにつき御議論いただいたところになっております。こちらにつきましては、お時間の都合もございますので、御説明は省略させていただきます。
 最後に34ページ「(8)その他」を御覧ください。こちらでは、検討会においていただいた個々の論点とは直接は関係のない、その他にいただいた御意見を記載させていただいております。「本制度を導入することとした場合、現行の地位確認訴訟と比較し、労使の主張立証責任に齟齬や矛盾が生じないよう、制度の詳細の設計に関しては、条文の規定ぶり等について十分な検討を行うことが必要であると考えられる。また、同様に、制度の詳細の設計に際しては、労働審判制度の運用への影響も含め、この制度を導入したことによって紛争解決の解決手続がかえって遅延しないようにすることへの考慮も必要である」。また、「裁判外での和解等においては、無効な解雇について労働者の申立てにより金銭解決を図りうるという本制度の趣旨を踏まえ、必要に応じて本制度を参照してもらうことができるよう、また、本制度の趣旨に反した安易な解雇がされないよう、本制度の趣旨や仕組みについて周知することが適当である」などといった御意見をこちらで整理しているところです。
 資料1の後ろのほうでは参考資料としまして参考資料1から12までを作成しております。こちらは本文の補足をする趣旨でそれぞれ作成しているものになっております。具体的な内容についての説明は省略させていただきます。
 資料1の御説明は以上になります。
 続きまして、資料2を御覧ください。資料2は「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会報告書(たたき台)概要」になっております。これまで御説明差し上げた資料1の報告書のたたき台の概要として簡潔にまとめたものになっておりまして、内容につきましては資料1と同様ですので、こちらの御説明は省略させていただきます。
 資料についての私からの御説明は以上になります。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、資料1が中心になるかと思いますが、全体にわたって御意見等がありましたらお願いいたします。なお、垣内委員が11時頃に御退席予定ということですし、また、オブザーバーの笹井参事官も早めの御退席と伺っておりますので、垣内委員、笹井参事官から何かあれば、まずお願いしたいと思いますが、何かございますでしょうか。では、垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 ありがとうございます。
 これまでの議論の内容を大変丁寧にまとめていただいたものだと思いまして、全体として特に異存のないところです。
 1点だけ細かい表現の問題で、内容にはあまり関わらないかと思いますけれども、本日の資料1というもので申しますと、12ページ「(2)権利の法的性質等」の②の見出しの表現の仕方についてです。ここは従来の議論を踏まえて直していただいているところだと思いますけれども、「形成権の発生要件・形成判決の形成原因」となっております。ここの後半の「形成判決の形成原因」という表現が少し不自然なような感じもいたしますので、例えば「形成判決における形成原因」とか、あるいは「形成判決に係る形成原因」といったように、表現を工夫していただけるともう少しよろしいかなと感じたところです。
 簡単ですけれども、私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 この点について御意見等ありますでしょうか。中窪委員、今の点でよろしいでしょうか。
○中窪委員 はい。今の点ですけれども、ほかのところは全部、権利の発生原因とか権利行使の方法とか、「権利」という言葉を使っておりまして、かつ上のほうで形成判決の場合もそういう判決を求める権利という言葉、「労働者に判決によるこのような法律関係の形成を求める権利が発生する」と書いているので、ここだけどうして2つを区別しないといけないのかなという素朴な疑問があります。どちらも権利の発生要件にしてはいけないのかなと思ったものですから、事務局のお考えをお聞かせいただければと思います。
○山川座長 関連したお話ですので、事務局、宮田課長補佐からいかがでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
 こちらを分けている趣旨といたしましては、「権利の要件」と記載することとした場合、形成判決構成の場合ですと、あくまでも要件とは何かと細かく考えていくと、裁判所がそういう判決を出すことについての要件、すなわち法律用語としては「形成原因」と呼ばれていると承知しておりますが、そういうものになってくるというところで、厳密に権利の発生要件という表現をした場合に、形成判決構成で正確な表現になるのかといったところがちょっと不安な点もございましたので、このように分けて記載しているということになっております。
○中窪委員 すみません。事務局よりもむしろ垣内先生にお聞きしたほうがよろしいかもしれません、その辺り。
○山川座長 垣内委員、いかがでしょうか。
○垣内委員 確かに中窪先生がおっしゃったように、両方とも結局は権利ということになるので、そういう意味ではまとめてということが考えられるのかもしれないのですけれども、多分今、事務局のほうでおっしゃったのは、例えば簡単に「権利の発生要件」という書き方にすると、そこで言っている「権利」というのは、解消金請求権のことなのか、それともそれを発生させる前提となる形成権であるとか形成判決を求める権利なのかというところがちょっと分かりにくくなり、その点を明らかにしようとすると、結局は形成権構成の場合の形成権というのと、形成判決構成の場合に一定の法律関係の形成を求める、判決による形成を求める権利というふうに書くことになりそうで、そうすると、権利ということでまとめるとかえって長くなってしまうというような考慮がもしかするとあったのかなと思いまして、その工夫として形成権の要件と形成判決における形成原因、そういった表現が一つは考えられるかなと私としては思ったところです。表現ぶりの問題かと思いましたので、事務局で精査いただいて御修正いただく分には、私は特段異論はございません。
○山川座長 ありがとうございます。
 中窪委員、何かございますか。
○中窪委員 いろいろ御苦労のあることと思いますけれども、見出しとしては「権利」でまとめて、中を少し説明するような形も考えられるのかなと思いましたので、御検討いただければと思います。
 ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 もし「形成原因」という言葉を使う場合には、垣内委員がおっしゃられたように、形成判決が形成されるわけではないので、日本語的には改めて検討することになろうかと思いますが、中窪委員のおっしゃった点も含めて事務局で書きぶりを検討していただけるでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田です。
 表現ぶりを検討させていただいて、また御意見をいただければと思います。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、笹井参事官、お願いします。
○笹井参事官 別のところですけれども、16ページの一番下のほうに「なお」というところで3行ございます。これは、労働者のよる労働契約解消金に係る訴えを一旦取り下げて、その上で再訴ができるかということについて、本制度上禁止されるものではなく、個別に判断するということで、内容的にはそのとおりであろうと思いますが、「民事訴訟法の規定等に従って個別に判断する」というのがどういった場面を念頭に置いているのかというのが、少し分かりにくいのではないかと思いまして、何か具体的な例を挙げるなりしたほうが意図が伝わりやすいのではないかと思いました。すなわち、再訴ができるかどうかという問題は、この制度においては特有の何か規定を設けるわけではなくて、民訴なりの一般的な再訴の拒否によって判断するという趣旨であろうと思いますが、その趣旨をもう少し具体化したほうが分かりやすいのかなと思った次第です。
 具体的にどういうふうに直すのかということについて、あまりよいアイデアがあるわけではないのですけれども、例えば「本制度上禁止されるものではない」というところで一旦切って、「もっとも」みたいな形でつないで、再訴が信義則に反すると、個別の事案ごとにその再訴ができない場面もあり得ると考えられるとか、そういうことも考えられるのかなと思いました。
 ただ、今、私が申し上げたことと少し矛盾するところがあるのですが、この労働契約解消金自体は、そもそも請求の意思表示を訴えという形式でやらないといけないという政策決定をしたということだと認識しております。通常の再訴の禁止というのは、実体的にどうかはともかくとして、訴訟法的に再訴ができないということだと思いましたが、再訴ができないということになると、実体法上仮に権利があったとしても、任意の履行を求めるとか、そういうことができないことになります。そういった場面で例えば信義則に反する場面がどれだけあるかということを考えると、再訴が禁止される場面というのは限定されてくるのではないかと思った次第です。
 そういう意味では、例外的に再訴が禁止される場面についてあえて言及する必要もなくて、とにかく本制度上は対応しませんよ、特別な機会を設けませんよということでとどめてもいいのかなと個人的には思ったのですけれども、いろいろ議論があってこういう形になっておりますし、また、理論上は信義則に反するということで、実体審理に入らないまま却下されるという場面も理論上はあり得るのかなと思いましたので、残されるとすれば、もう少し具体的に書かれたほうがよいのではないかと感じたということでございます。
 以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 この点についてほかに。鹿野委員、お願いします。
○鹿野委員 今の点についてです。16ページの最後の「なお」から始まる文章について、今、笹井参事官からもございましたように、この記載自体はそのとおりとは思うのですが、ただ、民事訴訟法の規定以外の理由に基づいて、個別事案において再訴が禁止される場合というのもあるのではないかなという気がしました。今、笹井参事官から信義則の話が出てきましたが、例えば裁判外で当事者間の和解が成立して労働者が訴えを取り下げた場合には、その和解が有効である限り、その趣旨とか内容に従って、つまり、和解の効力によって再訴が認められないということもあり得るのではないかなという気もいたします。この理解でよいのかどうかということもありますけれども。いずれにしても、個別事案において再訴が禁止される場合について、もう少し分かりやすく書かれたらと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 では、まず垣内委員、お願いします。
○垣内委員 垣内です。ありがとうございます。
 今の点、笹井参事官の御発言に関して、確かに「本制度上禁止されるものではない」というところで一旦切るというのは、分かりやすくなるかなと私も感じました。
後半部分ですけれども、「民事訴訟法の規定等に従って」と言うときに、普通にまず思い浮かぶものとしては、民訴法の262条の規定で控訴審なりした段階で取り下げたということだと、原則としてこれは再訴禁止効が生じるということですが、しかし、判例上は改めて再訴すべき必要性があるという場合には、必ずしも再訴が妨げられない場合もあるということになっているという辺りについて、民訴法の規定に触れるなりして少し考えておくことはあるかもしれませんし、また、併せて信義則によって封ぜられることも事案によってはあり得るかもしれないということかなというふうには思います。
 先ほど鹿野先生が言われた和解がされた場合については、いろいろ議論があり得るところなのかなと思いますけれども、一般的に言えば、和解でもう終わらせるというときに、再訴しないで、不起訴のほうに趣旨がその和解に含まれていくとすれば、その効果として再訴が結果的に不適法になるという場合はあり得るということかなと思いますが、どこまで様々、より詳しく書くかということはありますが、今の文言に若干加えるぐらいは考えられるかもしれません。
 他方、笹井参事官も示唆されましたように、本制度上禁止されるものではないということに尽きているとすれば、あとはその法理の解釈であるとか、そこの規定の判例に従った解釈であるとかといったことになるので、それは言わずもがなのことではありますので、あえて書かないという選択肢もあり得ないことではないかなと感じたところです。強くどちらがいいという意見はありませんので、事務局に御検討いただければと感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 では、笹井参事官、お願いします。
○笹井参事官 ありがとうございます。
 先ほどの鹿野先生の御指摘に関連しまして、今、垣内先生からも御発言いただいたところですけれども、和解の例におきましては、一般的には恐らく和解の中で解消金の請求権という実体法上の権利、実体的にはその権利をなくしてしまうというか、解決金という形にしてしまうのであれば、労働関係の解消金の請求権はもう請求しないという実体的な解決がなされるとともに、訴訟法上も再訴しないという約束がされると見ることもできるのかもしれません。
 そういったときに、恐らく実体法上請求権がなくなっているのだ、つまり、判決になったら棄却にされるという場面のことを念頭に置いておられるのか、あるいは却下にされる場面のことを念頭に置いておられるのか、ここで言う再訴の禁止というのがどちらの話をしているのかというのを、もし書くなら、もう少し整理しておく必要があるのかなと思いますので、その点だけ発言をさせていただければと思いました。
 以上でございます。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 前にやった議論をよく思い出せないのですけれども、そもそも「本制度上禁止されるものではなく」という部分が、紛争の迅速な解決という趣旨に照らして、一度取り下げたものについてはもう駄目とする制度のつくり方というのもあり得る気がしますので、ここは「こういうふうに禁止されるものではなく」とはっきり書かないといけないのかなと若干疑問に思いました。そこが本制度上禁止されない場合には一般的なルールによるわけですが、その前提自体、一つ政策的に今後検討すべき点かなと今の議論を聞いて思いました。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 非常に有益な御議論をありがとうございました。恐らく3つくらいの問題があって、1つ目は、今、中窪委員もおっしゃられたような、本制度を仮に導入した場合に政策的にこの制度の中で禁止するような規定を置くべきかどうかという問題と、それから民事訴訟法の現行の規定で対応する場合の問題と、それから合意が認定できる場合についての問題。その合意というのは、多分実体法上の合意と訴訟法的な合意の2つの性格があり得るのかもしれませんが、3つぐらいのレベルの話があるように伺いました。それをどの程度書き込むかという点もございまして、分かりやすさという観点からは、ある程度書いたほうがいいような気もしますけれども、書き出すと切りがないような感じもしますので、この点は同じように事務局に検討していただくということでよろしいでしょうか。事務局からは何かありますか。
○宮田労働関係法課課長補佐 ありがとうございます。
 まず、いただいた御意見を踏まえまして、表現ぶりを再度検討させていただきたいと思います。若干付言させていただきますと、こちらで「本制度上禁止されるものではなく」とお書きしましたのは、以前の検討会の中で再訴はできるのかといった観点での御意見がございまして、結論としてはできる方向で、禁止する御議論はいただかなかったということを踏まえて、なお書きというところで記載いたしたものでございます。ここの表現ぶりについては、中窪先生の御指摘も踏まえまして、よりよい表現を検討したいと思っております。
 また、御発言いただきました、これが実体法上の権利がなくなっているかどうかという観点なのか、訴訟法上再訴ができなくなるという観点なのか、どちらかという点については、事務局の中では訴訟法上の再訴ができるかどうかという観点で整理していたつもりでした。ただ、こちらについて、それが妥当かという点や、表現ぶりとして分かるかどうかという点も含めて、表現ぶりを再度検討したいと思います。
 あと、例示をもし記載する場合には、今いただきました控訴審の取下げの場合や信義則等、表現ぶりを検討していきたいと思っております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、他に特段なければ、改めて検討をしていただきたいと思います。
 では、そのほかの部分について何かございますでしょうか。鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 1つ意見と1つ質問をさせてください。
 1つ目は、12ページの(2)の①の1段落目についてです。ここでは対象となる解雇について、禁止解雇を除くという考え方に言及されて、その段落の最後で「合理性は低いと考えられる」と締めくくられております。この結論自体については、ここにも記載されていますように、この制度が無効な解雇が行われた場合における労働者の救済の選択肢を増やすという趣旨のものであることを踏まえて、禁止解雇を対象から除外しないという方向性が合理的であろうということで、この検討会で議論してきたところでございますし、この結論には異論はございません。
 ただ、この文章については、「合理性は低い」としている以上、禁止解雇を除くという考え方にも何がしかの合理性はあるということが前提になっている、そういう記載ぶりでしょうし、実際そういう考え方には一定の理由もあるのだろうと思います。ですから、その前提となっている合理性というのは何なのかということについても、ごく簡単で結構ですけれども、分かるように記載すべきなのではないかと思います。
 続けて質問ですが、文章全体で「考えられる」という表現が多く使われていますが、ただ、ところどころ「考え得る」という表現も使われています。例えば15ページと16ページを見ると、15ページの一番上の段落のところは「考え得る」と書いてありますし、下から2番目の段階も「考え得る」という言葉で締めくくられていますが、16ページのところでは「考えられる」という言葉でくくられています。この「考えられる」という表現と「考え得る」という言葉は意図的に使い分けられているのでしょうか。もし意図的に使い分けているとすると、どういう趣旨で使い分けているのかということについて確認させてください。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 まず、御質問のありました点については、事務局に伺いたいと思います。日本語表現的には、「得る」と言うと可能性のようで、「られる」と言うと、可能性の場合もあるし、受動態として婉曲的に表現しただけの場合もあるのですが、そこの使い分けの理由があるのかどうか、事務局からいかがでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 御質問ありがとうございます。宮田です。
 記載している中で意図としましては、「考えられる」と記載しているところは、御議論の内容や意見の内容等も踏まえて、この検討会ではある程度の方向性が固まっていて、この方向性があるというニュアンスのものを表現しているという意図でございます。
 他方、「考え得る」の場合は、あくまでも選択肢の一つとして御提案、御議論いただいたものというニュアンスがちょっと強く出るような議論の内容だったと理解している部分について、そのように「得る」という表現を使っているところです。
 ただ、個々のところにおいて、では、これは「考え得る」が妥当なのか、「考えられる」が正確なのかといったところについては、様々な御意見等もあるかもしれないなと今、お聞きして思ったところでございます。
○山川座長 ありがとうございます。
 鹿野委員、よろしいでしょうか。何かございますか。
○鹿野委員 趣旨は分かりました。ありがとうございます。
○山川座長 取りあえずニュアンスの差は考えられていたということですけれども、そうしますと、改めてもう一回精査した上で、どう使い分けるのかということを御検討いただいて、委員の皆様からも何かあれば、次回までに御指摘をいただければと思います。
 御質問の前に御意見をいただいたところですが、その点についてほかの委員の皆様から何かございますでしょうか。禁止解雇を対象からは外さないと考えられることに関してですけれども。神吉委員、お願いします。
○神吉委員 ありがとうございます。
 私もその点が気になっております。ここで禁止解雇を除くべきという考え方に対して、全ての無効な解雇を含めるべきという検討会の立場に関しては、結論としての合理性の低さだけではなくて、その理由をもう少し敷衍したほうがよいように思いました。
 そもそも禁止解雇を除くべきという見解は、法律上許されない解雇が有効となってしまうような帰結が法の趣旨に反しているという懸念に基づくものだと理解しています。これに対してこちらから言うべきことは、現在制度設計しているのは、金銭を支払うことによって、あたかも無効な解雇の瑕疵が治癒されるように有効な解雇に転換されるという制度ではなくて、紛争解決における労働者側の選択肢の拡大ということです。つまり、労働者自身の選択による契約解消と金銭救済請求権の付与を目的とする制度であるので、あくまでもそのたてつけを前提とする限りでは懸念される問題は生じにくいと考えております。もともとそういう頭で読めば理解はできるのですけれども、明示的に積極的な理由を補足したほうが誤解は少ないと感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。代替案的な御提案も含めて御意見をいただいたかと思います。
 鹿野委員、何かございますか。
○鹿野委員 禁止解雇を除くという考え方については、今、神吉先生がより具体的にその趣旨について触れてくださいましたし、それを入れるとともに、ここでそれを除外ということにはしないということについても、今おっしゃったような理由を補足的に書いていただくと、より分かりやすくなるのではないかと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかに何か御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、今おっしゃられたようなこと、つまり、禁止解雇は対象外とするというのは、金銭の支払いで解雇が許されるようにすることになるのは妥当でないということですけれども、本検討会で検討している本制度というのは、労働者側の申立てによって救済の選択肢を多様にするということなので、別に金銭支払いで解雇を正当化するというか、許されるようにするようなものではないという趣旨から説明する。
 そうすると、「合理性が低い」というのも、言葉をちょっと変えたほうがいいのかなと私個人としては思います。日本語としては「合理性が乏しい」というほうが多いのですけれども、英語で言えば、little,if anyとか、そういう感じなのですが、むしろ「合理性」という言葉を使わないほうがよいかもしれませんので、書きぶりを御検討いただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 では、ほかの点もお願いいたします。中窪委員、お願いします。
○中窪委員 ありがとうございます。
 結構基本的なところで、12ページ、先ほどの権利の発生要件のところの1ですが、以前の「労働者であること」がこの「労働契約関係が存在すること」というふうにより正確になったのは結構なことだと思います。厳密に言えば、その前に「当事者間に」というのが本当は要るのでしょうけれども、そこまで書くかどうかというのは1つ問題だと思います。ただ、括弧の中の「労働者であること」というのがちょっと落ち着きが悪いといいますか、労働組合法上の「労働者」というのもあって、これは失業者であっても労働者であるとか、そんな議論があったりしますので、この関係が若干曖昧であるのが気になりました。
 また、後のほうで有期労働契約が出てきたときに、「有期労働契約関係が存在すること(有期労働契約を締結した労働者であること)」と書いてあるので、それと対比した場合に、こちらの基本のほうが随分ぼやっとしている感じがどうしてもしてしまいます。ここは無期の場合をまず言うということなので、どこまで正確に書けばいいか分からないのですけれども、本当にうるさく書けば、「当事者間に期間の定めのない労働契約関係が存在すること(無期労働契約を締結した労働者であること)」とか、そういうふうになるでしょう。その辺りはどこまで書けばいいのか、私自身もよく分からないのですが、有期との対比でどういうふうに書くべきか、少し検討が必要かなと思ったところです。
○山川座長 ありがとうございました。
 今の点、ほかの委員の皆様はいかがでしょうか。
 議論の経緯は、最初は「労働者であること」と書いていて、それが「労働契約関係」というふうに変わっていって、それで括弧が残っているという経緯だったかなと記憶していますので、そこは中窪委員の御指摘のように、「労働者」と言うとちょっと抽象的ですので、場合によっては取ってしまってもいいかもしれませんし、あと、期間の定めがあるなしはちょっと難しい点もあって、何も主張立証がなければ期間の定めがないことになって、期間の定めがあるというのは、特にそういう合意をした場合だというふうな整理かなと推測しますが、事務局、いかがでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 ありがとうございます。
 こちらの要件の表現につきましては、前提としてこちらで記載するのが、実体要件としてのものを記載するのか、民事訴訟で言う要件事実論と言われるものがあるかと存じておりますが、そういう主張立証責任も踏まえて、最初に労働者、原告として主張立証すべきものとしての事実を記載するものか、いずれがより正確かというところから考えておりまして、現時点の形では実体要件であることを前提としてこのような表現で整理させていただきました。
 なのですけれども、無期の場合では、事務局の中では先ほど山川先生から御指摘のあった要件、主張立証責任の中ではひとまず無期は要らない、主張は要らないということも前提にして記載してしまっていたところもあったと今、考えたところでございます。
 記載の趣旨の御説明としては以上になります。
○山川座長 ありがとうございます。
 確かに今の点はちょっと主張立証責任の発想が入っているのかなと思います。端的に言うと、無期か有期か分からないという場合にどうなるかというと、どちらにも当たらないので請求が棄却されるということになると不合理だということでありますけれども、そこまで記載するかどうかという点はあるかと思います。今の(1)から(3)は実体要件としては書いていることが基本になっているということは、おっしゃるとおりだと思いますが、中窪委員、何かありますか。
○中窪委員 確かに無期というのがここでは前提になっているということを書いていますので、あえて無期というのは書かなくてもいいかなという感じは私もします。ただ、「労働者であること」というのは、やはり落ち着きが悪いので、今、議論を聞いていて、有期の場合も含めて括弧は取ってもいいかなという感じがいたしましたけれども、また御検討いただければと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかの委員の先生方はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 重要な御指摘をいただきましたので、その御意見を反映するような方向で、しかも有期の労働契約の箇所も統一するような方向で考えていただけるでしょうか。何かありますか。
○宮田労働関係法課課長補佐 ありがとうございます。
 一応、「(労働者であること)」と記載していた趣旨の御説明だけなのですけれども、これまでの資料上でもずっと「労働者であること」と書いていたというところも1つあるのですが、仮に「労働契約関係が存在すること」だけを記載すると、「(労働者であること)」と記載していることに比べて、労働者の権利の発生要件、労働者の権利という観点が少し薄れてしまうような記載ぶりになってしまうのではないかというところもございまして、やはり労働者の権利だというのがより端的に分かる要件としては、「労働者であること」というのが1つあって、これまで使われてきたというところも考えておりまして、そういうところを踏まえて括弧書きとして記載したというのが理由になっております。
 ただ、表現の正確性等も踏まえて、どのような表現がいいかについては検討させていただきたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、検討をよろしくお願いします。
 この点についてほかになければ、ほかはいかがでしょうか。神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 1点だけですけれども、21ページの2の(3)の①の1段落目の最後の「補償の必要性等の純粋な地位の金銭評価だけではない要素」という書きぶりが、若干分かりにくいように思いました。そもそもこれはどこの部分が一まとまりで、何にかかっているのかがちょっと分かりづらいというところがあります。場所は22ページですか。
○山川座長 21ページから22ページにわたる部分です。
○神吉委員 今、映してくださっているところです。「補償の必要性等の純粋な地位の金銭評価だけではない要素」というのは、否定も含んでいるため意味が取りづらいので、純粋な地位の金銭評価だけではなく、補償の必要性等の要素も含むべきかと分けて示しつつ、何を例示するのかが分かるように書いてみてはどうかと思いました。後のほうで詳しく述べられているので、ここで細かく書く必要はないとは思うのですけれども、「純粋な地位の金銭評価だけではない要素」の「補償の必要性」という例示を後に持ってくるだけでも読みやすさが変わってくると思った次第です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 定義なので重要なところなので、クリアにしたほうがいいかなという感じはいたしておりますが、中窪委員、別の点だったでしょうか。
○中窪委員 今の点で私もちょっとあって、括弧の中で「(後記(5)①で具体的に検討する。)」と書いてありますが、後ろのほうは結構ボリュームがあって、その中のどこをどういうふうに見ればいいのかよく分からなくて、ここでもう少し説明しておいてほしいなと思ったところです。それを1つ神吉委員から言っていただいてよかったと思いますが、私も同感ということです。
○山川座長 では、取りあえずその点について事務局から趣旨をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 ありがとうございます。宮田です。
 今、御指摘のあった「純粋な地位の金銭評価だけではない要素」につきまして御説明させていただきますと、参考資料10に「労働契約解消金の内容・考慮要素等についての整理」という表を載せております。こちらはこれまでの検討会でも資料になっていたものですが、解消金の内容等について整理したものです。こちらの「定義」の欄の中で「無効な解雇がなされた労働者の地位を解消する対価」という定義が考えられるという考え方を前提として、A-①とA-②というので2つ分けております。①、②が分かれるのが3つ目の表の「補償の考え方(算定方法)」のところになりまして、こちらでA-①の考え方としては、現在の地位の価値を反映した給与額等を考慮要素にすることが考えられるということ。他方で、A-②としては、地位の金銭的評価だけでなく、合理的な再就職期間等、補償を得る必要性を加味して算定する方法もあり得るという考え方を整理しているところです。先ほどの純粋な云々という表現については、A-②のここの表現を定義との関係で若干前出しして表現していた箇所になります。
 戻らせていただきます。「純粋な地位の金銭評価だけではない要素」というところで、そのため「補償の必要性等」という例示をつけた上で表現していた次第です。ただ、今、御指摘いただいて、分かりにくいというところもなるほどと思いましたので、表現ぶりをこれから検討いたしたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 後記参照ということはあるのですけれども、先ほど参考資料10の中で出てきた「合理的な再就職期間」などは諸外国でも例のあるところですので、例示を示すとより分かりやすいのかなと思いました。いずれにしても御検討をお願いします。
 よろしければ、中窪委員、もう一点あるということだったでしょうか。
○中窪委員 一番最後のところですけれども、この報告書は非常にボリュームがあって、技術的なものも含めた詳しい検討があって、最後の「その他」というところで、現行の制度との関係とか、こういうことが必要だということで、重要な指摘がなされているように思うのですが、「その他」で終わるというのは若干尻切れとんぼみたいな感じもします。全体をもう一度まとめて、こういう大きな制度をつくる場合にこういうことで検討してきたけれども、改めてこうだということをまとめたような「終わりに」みたいな文章があったほうがいいのかなという感じがいたします。
 そのときに、最初のところでこの検討会のいろんな経緯が紹介してありますし、その前提として労働者がそれを望む場合に限っているので、使用者の申立ては対象外であるということが書いてありますけれども、その場所が幾つかに分かれていて分かりにくいという印象もありますので、最後のところで改めてそこを指摘しではいかがでしょうか。実際こういう制度を導入するのかどうかについて、今後、労政審で検討していくわけですが、そちらにきちんと我々の検討会が何を行ったかということが分かるような形で、ちょっとまとめが欲しいなという感じがいたしました。
 それから、もう一つ、「はじめに」の4つ目のパラグラフの「なお」のところに、今言ったような趣旨が書いてあると思うのですけれども、この文章が長くてわかりにくい気がします。本制度導入の是非については、労働政策審議会において、これこれを踏まえて労使関係者も含めた場で検討すべきものである、というのは一つ所与の事実で、この検討会としては、それを前提にこの検討に資するために、本報告書でこれこれの選択肢等を示すものである、という関係になります。この「前提のもと」というのが、文章がつながっているために、我々検討会として行ったこととその前提とが分かりにくくなっておりますので、文章を切ったらどうかなと思いました。とにかくこの検討会としてはそういう前提の下でこういうことをしたのだということを最初のところでも明示しておいていただきたいなと思いました。
○山川座長 非常に重要な御提案をありがとうございました。
 この点について委員の皆様からほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この検討会が設けられるに至った経緯ですとか、それの前提となっていること、あるいは政策的な判断に資するように検討を行ったこととか、対象が労働者申立ての方を前提として検討を行ったこととか、幾つかの前提がありますので、それを盛り込むような形で書いていただいて、先ほどの「はじめに」のところも文章をブラッシュアップしていただければと思います。
 ほかに全体として何かございますでしょうか。
 なければ、私から個人的なことですけれども、28ページの「②労働契約解消金の上限・下限」で、これは表現の問題なのですが、「政策的には、上下限を設けることが考えられる」と。これの趣旨としては、政策的な判断の対象としてはこういうことが考えられるということで、この表現だと、この検討会で政策的なことそのものを判断しているようにも読まれかねないので、「政策的な判断の対象として」とか「政策的に判断すべき事項として」とか、そういうことで趣旨をクリアにしていただければと思います。よろしいでしょうか。事務局、趣旨はそういうことですね。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
 記載している趣旨は今、御指摘いただいたところでございますので、正確に表現できるように検討させていただきたいと思います。
○山川座長 よろしくお願いします。
 取りあえず最後まで御検討いただいて、いろいろ有益な御指摘をいただいたところですけれども、委員の皆様からほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川座長 事務局から特段何かありますか。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
 記載するところでこのような表現でどうかというところで特に考えたところが1点ございましたので、御説明等をさせていただければと思っております。11ページです。項目としては10ページから続いています形成権構成、形成判決構成のそれぞれの説明をしているところで、「形成判決構成」の最後の段落になっております。「以上のように、形成判決構成は、判決の効果として労働契約解消金債権が発生するという点で、労働者が実体法上の意思表示により労働契約解消金債権を発生させる金銭救済請求権を有するとする形成権構成とは異なっているが、いずれの構成も、労働者が権利を行使することによって実体法上の労働契約解消金債権を発生するという点では共通している」と記載いたしておりまして、こちらは性質の異なる2つの構成があるという前提で御議論いただいたところではありますが、どちらの構成でも共通する部分もあるのだというところを表現するべきではないかという発想で記載しているところです。
 最後の「いずれの構成も」というところですけれども、形成判決構成では、厳密には労働者が権利を行使した後、すなわち、表現としては「判決によるこのような法律関係の形成を求める権利」というような権利の行使そのものによって解消金債権が発生するのではなく、あくまでも判決等によって発生するという構成ではあるものの、少なくとも労働者がそういう権利を行使することを契機として判決を挟んで、最終的にはどちらの構成でも同じ解消金債権が発生するという構成なのだというところを表現できたらと思ってこちらを記載したところです。ただ、こちらの記載ぶり、表現ぶりにつきまして正確かどうか等について、もし御意見等をいただければと思って今、御発言させていただきました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 これは2つの構成をまとめた2の(1)のまとめ的な部分で、相違点だけではなくて共通点を記載したという趣旨ということかと思います。何か御意見等ありますでしょうか。神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 今、宮田さんのお話を伺って、なるほど、書かれている内容自体はこのとおりと思いましたけれども、最後の部分は逆にしてもいいと思いました。どこをフォーカスするかですが、いずれの構成も、実体法上の労働契約解消金債権を発生させるのが労働者の権利行使をきっかけにしている、そういう点で共通している。いま指摘されたように、権利行使によって契約解消金債権を発生させるというふうに言うと、ちょっと不正確な部分が残るようにも思いまして、最終的な解消金債権の発生が「労働者の」権利行使がきっかけだというところをフォーカスしたいのであれば、そういう書きぶりが適しているのかなと思いました。今、初めて深く考えたところで、すみません。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 中窪委員、お願いします。
○中窪委員 私も同じように、権利を行使することによって発生させるというのは、直接過ぎる感じがしますので、単なる思いつきですけれども、例えば労働者が権利を行使した結果として実体法上のこれこれの解消債権が発生するとか、そういうふうにすると少し印象が弱まるのかなという感じがしました。
○山川座長 ありがとうございます。
 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 「契機として」という言葉についてですが、形成判決構成との関係では、「契機として」という表現でいいと思うのですけれども、形成権構成の場合にも、「契機として」という表現でいいのかというと、少し気になります。形成権構成の場合、労働者の権利行使で、つまりまさに意思表示でその権利が発生するので、「契機として」という表現は、形成権構成にはそぐわないようにも思います。
○中窪委員 私は、契機ではなくて、「結果として」というふうに。
○鹿野委員 そうですね。だから、中窪先生が「結果として」と言われたのだろうと思います。今すぐにこれが絶対にいいという表現を思いつくわけではないのですが、中窪先生がおっしゃったようなご提案も含めて、御検討いただければと思います。違うものについて、共通性をまとめて正確に表現するのは難しいとは思うのですが、「契機として」については今のような問題もあると感じたことをお伝えしておきます。
○山川座長 ありがとうございます。
 最初の頃の議論と関わりますが、形成判決構成でも権利行使という形を前提にした表現にはなっていたかと思いますが、確かに直接の効果ではないという点でなお違いがありますので、共通性を表現する表現の仕方については、ちょっと工夫をしていただけるでしょうか。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
 貴重な御意見ありがとうございました。いただいた御意見を踏まえて表現が正確になるよう検討いたしたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 趣旨としては、労働者側の救済における選択を豊富化するという本検討会のタスクを踏まえた構成になっているということ。神吉委員からも御指摘があった、その趣旨でまとめとして入れているということかと思います。
 ほかによろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川座長 たたき台をお示ししましたけれども、有益な御意見をいただいて大変ありがとうございます。
 本日の御意見、また、これまでの議論を踏まえて、事務局のほうで改めて報告書案の準備をお願いいたします。
 若干定刻よりも早いのですけれども、ほかに特段なければ、本日はこれで終了させていただきたいと思います。
 次回の日程について、事務局からお願いします。
○宮田労働関係法課課長補佐 宮田でございます。
 次回の日程については現在調整中でして、確定次第、開催場所と併せて御連絡いたします。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、これで第16回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了いたします。委員の皆様、お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。これで終了いたします。

照会先

 

労働基準局労働関係法課

(代表電話) 03(5253)1111 (内線5370)

(直通電話) 03(3502)6734

 

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