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令和4年7月8日
G20外相会合に出席している林外務大臣の様子
G20外相会合に出席している林外務大臣

 7月7日から8日にかけてインドネシア・バリにてG20外相会合が開催され、林外務大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。

1 議題・日程

(1)参加国・機関

  • ア G20
     日本、インドネシア(議長国)、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、EU
  • イ 招待国(10か国)
     スペイン、オランダ、シンガポール、カンボジア(東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国)、セネガル(アフリカ連合(AU)議長国)、スリナム(カリブ共同体(CARICOM)議長国)、フィジー(太平洋諸国フォーラム(PIF)議長国)、ルワンダ(アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)議長国)、アラブ首長国連邦、ウクライナ
  • ウ 国際機関(10機関)
     国連、アジア開発銀行(ADB)、金融安定理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、イスラム開発銀行(IsDB)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行グループ(WBG)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

(2)日程

 7月8日(金曜日)

  • セッション1:「多国間主義の強化」
  • セッション2:「食料・エネルギー安全保障への取組」

2 議論の概要

(1)セッション1「多国間主義の強化」

 本セッションには、G20各国のほか、招待国及び国際機関が参加し、ロシアによるウクライナ侵略を始めとする現下の国際情勢やその多国間主義への影響、そうした状況におけるG20の役割等について議論が行われました。 林大臣から、国際社会は、戦争の惨禍を二度と繰り返すことのないよう、紆余曲折を経ながらも法の支配に基づく国際秩序を築き上げてきた、その上で、多国間主義の強化を進め、その取組の一つとして国際経済協調のプレミア・フォーラムであるG20も立ち上げられたと述べました。
 その上で、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序や多国間主義の基盤を破壊しようとしており、主権や領土一体性、法の支配といった戦後の国際社会を支えてきた基本原則が、力による一方的な現状変更の試みにより脅かされていると指摘しました。林大臣は、これは欧州にとどまらず、アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがす極めて深刻な事態であるとして、最も強い言葉で非難しました。
 林大臣は、この暴挙に対して国際社会が結束し、ロシアの一連の行動に高い代償が伴うことを示すことができるかが、新たな時代の進路を決める上で極めて重要であると指摘し、法の支配に基づく秩序か、むきだしの力による支配か、今日の我々の選択がこれからの世界の行く末を決めることになると述べた上で、秩序なき世界に後戻りさせてはならないと各国外相に向けて呼びかけました。
 また、林大臣は、ロシアの侵略はエネルギーや食料の価格高騰を始め世界経済にも混乱をもたらしており、その責任が制裁にあるものであるとするロシアの主張は完全な偽りであると述べ、ロシアによる侵略こそが原因であると強調しました。この混乱を収拾する最良の方法は、ロシアが直ちに侵略を止め、ウクライナから撤退し、国際法を遵守することであると述べました。
 林大臣は、国際社会の平和と安定に大きな責任を有すべき国連安全保障理事会常任理事国であるロシアが、国連憲章でも謳われる諸原則に真っ向から背き、国連は試練の時を迎えていると訴えました。日本の国連を重視する立場は変わらず、今こそ全ての国に裨益する形での国連の機能強化に向けた取組を力強く推し進める時であると訴えました。
 林大臣は、同時に、気候変動や国際保健といった分野を含めSDGsの達成に向けた歩みも緩めてはならないと呼びかけました。日本として、人間の安全保障の考えに基づき、適応支援を含む気候資金への貢献、脱炭素化・強靱化支援、ワクチンの普及、そのワクチンを現場まで届けるための「ラスト・ワン・マイル支援」、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの強化といった、誰一人取り残さないためのグローバルな取組を続けていくとの決意を表明しました。
 林大臣は、我々がこれらの喫緊の課題へ真剣に取り組むことが重要である旨述べました。また、日本はインドネシア議長国のリーダーシップを支持するとともに、法の支配に基づく国際秩序を擁護し、影響を受ける国々に対する支援を続けていくと強調しました。
 本セッションでは、日本以外の多くの国も、ロシアによるウクライナ侵略を強く非難するとともに、ロシアの行為が国際秩序及び多国間主義の基盤を揺るがしていることを指摘しました。

(2)セッション2「食料・エネルギー安全保障への取組」

 本セッションでは、G20各国のほか、オンラインで参加したクレーバ・ウクライナ外相並びに対面で参加した招待国及び国際機関の間で、食料とエネルギーの価格高騰への対処や安定供給の確保に向けた国際的な連携の重要性、そのためのG20の役割等について議論が行われました。

  • ア 導入
     林大臣は、エネルギーと食料の価格高騰は特に脆弱な国々に大きな影響を与えているとして、途上国等における状況に対して憂慮を表明しました。
     林大臣は、今回の危機の原因はG7による制裁にあるとの主張は完全な偽りであると述べ、ロシアによるウクライナ侵略、特にロシアが黒海を封鎖し、ウクライナからの穀物輸出を止めていることが原因であり、G7による制裁は食料を対象としていないことを説明しました。林大臣は、国際穀物理事会(IGC)によるデータではロシアの小麦輸出は昨年比で約13%増加していることを紹介し、ロシアはエネルギーや食料を政治的に利用しており、危機の責任はロシアにあると指摘しました。
  • イ 食料安全保障
     林大臣は、日本として、今次情勢の影響を受ける国に対する食料支援や緊急人道支援、農業生産の向上及びサプライチェーンの整備等を支援してきたことを紹介しました。また、ウクライナの穀物貯蔵能力の向上に向けた支援や、アフリカ・中東向けの食料支援といった グローバルな食料危機への対応として、日本が約2億ドルの追加拠出を表明したことを説明しました。
     加えて、林大臣は、世界的な食料危機に緊急に対処する上で、ウクライナからの穀物輸出を本格的に再開することが急務である旨述べ、そのための国連の取組への支持を表明し、ロシアが黒海ルートによる穀物輸出の再開を直ちに認めるよう強く求めました。また、ウクライナの食料を陸路でEUの港湾へ輸送・輸出する「連帯レーン」に関するEUによる取組に対する高い評価を表明しました。
     更に、林大臣は、今次食料危機に対処するため、中立で正確な統計情報を活用する重要性を指摘しました。例えば、G20から生まれた農産物市場情報システム(AMIS)やIGC等の情報を活用することで、市場の透明性を高めることができると述べ、こうした取組の活用により、食料不足への不安に伴う恣意的な措置を防ぐとともに、ロシアによる食料の政治利用に対処することが必要であると訴えました。
  • ウ エネルギー安全保障
     林大臣は、同時に、今次ウクライナ危機はエネルギー安全保障と両立した現実的なエネルギー転換を加速化する重要性を認識させた旨指摘し、原油・天然ガスの供給源の多角化、上流開発投資の促進、水素・アンモニア、再エネ、省エネ、原子力の更なる活用など、あらゆる選択肢を検討していくことが鍵となると述べました。
     また、林大臣は、ロシアによるウクライナ侵略により、エネルギー・アクセスが急速に悪化していることに懸念を示しました。エネルギー・アクセスの確保は、農業や工業における生産性に直結するため、貧困や格差解消のためにも不可欠であり、各国・地域の特性に応じて協力していくことが重要であると指摘しました。林大臣は、日本としても、気候や島嶼部といった地域の特性を踏まえた上で、アフリカ開発会議(TICAD)や太平洋・島サミット等の各地域との対話の枠組を通じ、エネルギー・アクセスの改善支援に今後更に力を入れていくとの決意を表明しました。
  • エ 結語
     林大臣は、食料安全保障やエネルギー安全保障の確保は、人々が尊厳をもって生きるための基盤を成すものである旨述べました。日本としてもできる限りの支援を行う考えであり、各国と協力して、ロシアによって引き起こされた今次未曽有の危機を共に乗り越えていきたいと訴えました。

     本セッションでは、日本以外の多くの国も、現下の食料・エネルギーをめぐる価格高騰等の問題がロシアの侵略行為によって引き起こされている旨を指摘しました。

     また、会合の場で、議長であるルトノ・インドネシア外務大臣から、安倍元総理銃撃の件につき紹介があるとともに、G20を代表してお見舞いの表明がありました。さらに、多くの国から、会合での発言や議場外において、お見舞いや弔意の表明がありました。


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