議案審議経過情報

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項目 内容
議案提出者 福山哲郎 君外一名
衆議院審議時会派態度
衆議院審議時賛成会派
衆議院審議時反対会派
議案受理年月日 2022-06-10
公布年月日

要項または提出時法律案

第二〇八回
参第三五号
   持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律案
目次
 前文
 第一章 総則(第一条-第七条)
 第二章 基本方針等(第八条・第九条)
 第三章 基本的施策(第十条-第十六条)
 第四章 持続可能な開発目標達成推進本部(第十七条-第二十七条)
 附則
 国際社会が密接な相互依存関係にある現代においては、貧困、感染症、気候変動、紛争等の問題は、一国のみならず世界全体に影響を及ぼす地球規模の課題となってきている。
 こうした状況の下、二千十五年九月二十五日の国際連合総会において持続可能な開発のための二千三十アジェンダが採択され、その中において持続可能な開発のための十七の目標が掲げられた。これらの目標は、経済及び社会の発展と環境の保全を統合的に推進することにより持続可能な社会を実現することを目指した国際社会全体の普遍的な目標であり、我が国を含む世界各国がその達成に向けて尽力することが求められている。
 我が国においては、これまで、これらの目標の達成に向けた取組が進められてきたが、いまだ取組が不十分である分野も多く、その取組をなお一層進めていくことが求められている。
 これらの目標の達成には、基本的人権の尊重及び社会的包摂の理念にのっとり、社会的に弱い立場に置かれた者の視点に立って取組を進めていくことが不可欠である。我々は、これらの目標の達成に向けた取組を通じて、誰一人取り残されない持続可能な社会を実現し、より良い未来の創造に貢献することを決意する。
 ここに、二千十五年九月二十五日の国際連合総会において採択された持続可能な開発のための二千三十アジェンダに掲げられた持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進するため、この法律を制定する。
   第一章 総則
 (趣旨)
第一条 この法律は、持続可能な開発の目標(二千十五年九月二十五日の国際連合総会において採択された持続可能な開発のための二千三十アジェンダに掲げられた持続可能な開発の目標をいう。以下同じ。)の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進するため、基本原則、国等の責務、基本方針の策定その他の必要な事項を定めるものとする。
 (基本原則)
第二条 持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
 一 持続可能な開発の目標を達成するためには、国内における取組の推進並びに国際的な連携の確保及び国際協力の推進のいずれもが不可欠であり、かつ、これらが相互に密接な関連を有することに鑑み、これらが一体的に行われるようにすること。
 二 社会的に弱い立場に置かれた者を含む全ての人が、年齢、性別、障害の有無等によって分け隔てられることなく、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるとともに、その個性と能力を十分に発揮して活躍することができる社会の実現が図られるようにすること。
 三 経済及び社会の発展と環境の保全が統合的に推進されるよう、経済、社会、環境等に関する諸施策の有機的な連携が図られるようにすること。
 四 国民、事業者、民間の団体その他の社会を構成する多様な主体が持続可能な開発の目標の達成に向けた取組に参画することができる機会の充実が図られるようにすること。
 五 持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の策定の過程及び実施の状況の透明性の確保が図られるようにすること。
 (国の責務)
第三条 国は、前条の基本原則(次条及び第八条において「基本原則」という。)にのっとり、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進する責務を有する。
 (地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、基本原則にのっとり、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じて持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進する責務を有する。
 (事業者の責務)
第五条 事業者は、持続可能な開発の目標の達成において重要な役割を担うことが期待されていることに鑑み、その事業活動を行うに当たっては、持続可能な開発の目標の達成に資するよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施するその達成に向けた諸施策に協力するよう努めるものとする。
 (法制上の措置等)
第六条 政府は、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。
 (年次報告)
第七条 政府は、毎年、国会に、持続可能な開発の目標の達成に向けて講じた諸施策の概況に関する報告書を提出しなければならない。
   第二章 基本方針等
 (基本方針)
第八条 政府は、基本原則にのっとり、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 持続可能な開発の目標及びその達成に向けた諸施策の推進の意義
 二 持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策に関する基本的な方針
 三 持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の具体的な目標
 四 前三号に掲げるもののほか、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の推進に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
 (都道府県方針等)
第九条 都道府県は、基本方針を勘案して、当該都道府県の区域の実情に応じた持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の推進に関する方針(次項において「都道府県方針」という。)を定めることができる。
2 市町村は、基本方針(都道府県方針が定められているときは、基本方針及び都道府県方針)を勘案して、当該市町村の区域の実情に応じた持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の推進に関する方針を定めることができる。
   第三章 基本的施策
 (施策の策定等に当たっての評価)
第十条 国は、その施策を策定し、及び実施するに当たっては、当該施策が持続可能な開発の目標の達成に与える影響について評価を行うものとする。
2 地方公共団体は、その施策を策定し、及び実施するに当たっては、当該施策が持続可能な開発の目標の達成に与える影響について評価を行うよう努めるものとする。
 (国民の関心と理解を深めるための措置)
第十一条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、持続可能な開発の目標の達成の重要性に関する国民の関心と理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。
 (事業者の取組を促進するための措置)
第十二条 国及び地方公共団体は、事業者による人権に配慮した事業活動の実施その他の持続可能な開発の目標の達成に資する事業者の取組が促進されるよう、国内外におけるその達成に資する先進的な取組に関する情報の収集及び提供、その達成に資する取組を行う事業者に対する投資の促進のための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (民間の団体に対する支援)
第十三条 国及び地方公共団体は、持続可能な開発の目標の達成に向けた活動を行う民間の団体を支援するため、助言、助成その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (国際協力の推進等)
第十四条 国は、政府開発援助について、持続可能な開発の目標の達成に資するものとなるよう、その量的拡充及び質の向上のための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、前項に定めるもののほか、持続可能な開発の目標の達成に向けた取組が国際的協調の下で行われることの重要性に鑑み、持続可能な開発の目標の達成に向けた国際的な連携の確保及び国際協力の推進に必要な措置を講ずるものとする。
 (民意の反映等)
第十五条 国及び地方公共団体は、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の策定に多様な民意を反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するため、社会的に弱い立場に置かれた者を含む国民、事業者、民間の団体その他の社会を構成する多様な主体の意見を求め、これを十分考慮した上で政策形成を行う仕組みの活用等を図るものとする。
 (達成状況についての評価等)
第十六条 国及び地方公共団体は、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の適切な策定及び実施に資するよう、持続可能な開発の目標の達成状況について評価を行い、その結果を施策に反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、前項の措置を講ずるに当たっては、持続可能な開発の目標の達成状況について評価を行うための国際的に認められた指標を活用するとともに、持続可能な開発の目標の我が国における達成状況に対する国際的評価を勘案するものとする。
   第四章 持続可能な開発目標達成推進本部
 (設置)
第十七条 持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進するため、内閣に、持続可能な開発目標達成推進本部(以下「本部」という。)を置く。
 (所掌事務)
第十八条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 基本方針の案(その変更の案を含む。次項第一号において同じ。)の作成及び実施の推進に関すること。
 二 持続可能な開発の目標の達成状況についての評価に関すること。
 三 前二号に掲げるもののほか、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の推進に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。
2 本部は、次に掲げる場合には、あらかじめ、持続可能な開発目標達成推進会議の意見を聴かなければならない。
 一 基本方針の案を作成しようとするとき。
 二 持続可能な開発の目標の達成状況について評価を行おうとするとき。
 (組織)
第十九条 本部は、持続可能な開発目標達成推進本部長、持続可能な開発目標達成推進副本部長及び持続可能な開発目標達成推進本部員をもって組織する。
 (持続可能な開発目標達成推進本部長)
第二十条 本部の長は、持続可能な開発目標達成推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
 (持続可能な開発目標達成推進副本部長)
第二十一条 本部に、持続可能な開発目標達成推進副本部長(次項及び次条において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官、外務大臣及び持続可能な開発目標達成推進担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。
 (持続可能な開発目標達成推進本部員)
第二十二条 本部に、持続可能な開発目標達成推進本部員(以下この条において「本部員」という。)を置き、本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。
 (資料の提出その他の協力)
第二十三条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
 (持続可能な開発目標達成推進会議)
第二十四条 本部に、第十八条第二項に規定する事項を処理するため、持続可能な開発目標達成推進会議(次項及び第三項において「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議の委員は、事業者団体、持続可能な開発の目標の達成に向けた活動を行う民間の団体その他の関係団体を代表する者、学識経験を有する者その他の関係者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による推進会議の委員の任命に当たっては、その年齢、性別等に著しい偏りが生じないように配慮しなければならない。
 (事務)
第二十五条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。
 (主任の大臣)
第二十六条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
 (政令への委任)
第二十七条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
   附 則
 (施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
 (検討)
2 政府は、持続可能な開発の目標の達成の期限とされている二千三十年までに、持続可能な社会の実現のための取組に関する国際的動向等を勘案し、その翌年以降における持続可能な社会の実現に向けた施策の在り方について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとする。

     理 由
 二千十五年九月二十五日の国際連合総会において採択された持続可能な開発のための二千三十アジェンダに掲げられた持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策を総合的かつ一体的に推進するため、基本原則、国等の責務、基本方針の策定その他の必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。