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労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年7月26日(月) 10:00~12:00

場所

労働委員会会館講堂

議題

(1)裁量労働制に関する現状等について
(2)その他

議事

 
○労働条件政策課課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから、第1回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところ、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
私は、労働基準局労働条件政策課の田中と申します。
本検討会の進行について、座長が選出されるまでの間、議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
本日の検討会につきましては、感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式とさせていただいております。また、会場の皆様におかれましては、会場備付けの消毒液の御利用やマスクの御着用に御配慮いただきますようお願い申し上げます。
続きまして、御出席いただいております構成員の皆様を御紹介いたします。
東京大学大学院法学政治学研究科教授の荒木尚志様。
京都大学大学院人間・環境学研究科教授の小畑史子様。
筑波大学ビジネスサイエンス系教授の川田琢之様。
早稲田大学教育・総合科学学術院教授の黒田祥子様。
北里大学医学部教授の堤明純様。
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授の藤村博之様。
なお、一橋大学大学院経営管理研究科教授の島貫智行様におかれましては、本日、御欠席となっております。
以上、7名となります。
続きまして、事務局を御紹介いたします。
労働基準局長の吉永、大臣官房審議官(労働条件政策・賃金担当)の小林、総務課長の石垣、労働条件政策課長の黒澤、労働条件政策課労働条件確保改善対策室長の吉田です。
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本検討会の開催に当たりまして、労働基準局長の吉永から御挨拶を申し上げます。
○労働基準局長 労働基準局長の吉永でございます。
委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、これからの労働時間制度に関する検討会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
労働時間制度につきましては、働き方改革関連法に基づきまして、罰則つきの時間外労働の上限規制が導入され、また、高度プロフェッショナル制度につきましても制度化がなされているところでございまして、私どもといたしましても、労働者の健康に留意しつつ、また、ワーク・ライフ・バランスにも配慮しつつ、労働者が能力を有効に発揮することができる労働環境の整備が重要であると考えているところでございます。
こうした中でございますけれども、裁量労働につきまして、現行の専門業務型、また、企画業務型、それぞれにつきまして、調査結果を今般取りまとめたところでございます。統計調査によって把握した実態を踏まえまして、裁量労働制が制度の趣旨に適ったものとなりますように制度を運用してまいりたいと考えておりますし、また、必要な見直しも行っていきたいと考えているところでございます。
また、裁量労働制につきまして検討するに当たりましては、労働時間制度全体を俯瞰して、改めて、それぞれの制度の意義の確認、整理を行っていきたいと考えているところでございます。
委員の皆様方におかれましても、大変御多用中のところではございますけれども、ぜひとも活発な御議論を賜れればと考えている次第でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
○労働条件政策課課長補佐 次に、本検討会の開催要綱について御説明いたします。
資料1を御覧ください。
まず、「1.趣旨・目的」でございます。
労働時間制度につきましては、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により、罰則つきの時間外労働の上限規制や高度プロフェッショナル制度が設けられ、働く方がその健康を確保しつつワーク・ライフ・バランスを図り能力を有効に発揮することができる労働環境整備を進めているところでございます。
こうした状況の中で、裁量労働制については、時間配分や仕事の進め方を労働者の裁量に委ね、自律的で創造的に働くことを可能とする制度でございますが、制度の趣旨に適った対象業務の範囲や労働者の裁量と健康を確保する方策等について課題があるところ、平成25年度労働時間等総合実態調査の公的統計としての有意性・信頼性に関わる問題を真摯に反省し、統計学、経済学の学識者や労使関係者からなる検討会における検討を経て、総務大臣承認の下、現行の専門業務型及び企画業務型、それぞれの裁量労働制の適用・運用実態を正確に把握するための統計調査を実施したところです。当該統計調査で把握した実態を踏まえ、裁量労働制の制度改革案について検討する必要があります。
また、裁量労働制以外の労働時間制度についても、こうした状況を踏まえた在り方について検討することが求められています。
このため、裁量労働制その他の労働時間制度について検討を行うことを目的として、「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催させていただくものでございます。
次に、「2.検討事項」でございます。
裁量労働制の在り方及びその他の労働時間制度の在り方について御検討いただきたいということでございます。
「3.運営」につきましては、記載のとおりでございます。
以上でございます。
初めに、本検討会の座長についてお諮りいたします。
ただいま説明いたしました開催要綱の「3.運営」(4)において、本検討会の座長は参集者の互選により選出し、座長代理は座長が指名するとしており、これに従い、座長の選出を行いたいと思います。
座長の選出につきましては、事前に事務局より各構成員の皆様にお諮りさせていただきましたとおり、荒木構成員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○労働条件政策課課長補佐 ありがとうございます。
御賛同いただきましたので、荒木構成員に座長をお願い申し上げます。
これ以降の進行は、荒木座長にお願いいたします。
まず、御挨拶をいただければと存じますので、よろしくお願いいたします。
○荒木座長 ただいま座長に指名いただきました、荒木と申します。皆様の御協力を得ながら、充実した検討会を持てればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、開催要綱3.(4)に基づきまして、本検討会の座長代理を指名させていただきます。
座長代理は藤村構成員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(カメラ退室)
○荒木座長 それでは、議事に入る前に、まず、本検討会の開催に当たり、会議の公開等について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 資料2「検討会の公開の取扱いについて(案)」を御覧ください。
本検討会は、原則公開とし、ただし、以下の①から④に該当する場合であって座長が非公開が妥当であると判断した場合には非公開とするものでございます。
なお、下の※書きでございますが、この①から④は厚生労働省が定める「審議会等会合の公開に関する指針」における審議会等会合の公開に関する考え方に準拠するものでございます。
事務局といたしましては、このような取扱いとしたいと考えております。
以上でございます。
○荒木座長 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等があれば、お願いいたします。
なお、ウェブ参加の委員の皆様におかれましては、御発言の希望がある場合は、チャット機能を利用して発言希望と入力をお願いします。「手を挙げる」機能は使わないようにしてください。よろしくお願いいたします。
何か、御意見、御質問等はございましょうか。
よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、会議の公開につきましては、事務局からの説明のように取り扱うことといたします。
それでは、本日の議題に入ります。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
まず、裁量労働制に関する現状等について事務局で資料を用意しておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 資料3から資料4-3まで、続けて御説明をさせていただきます。
まず、資料3「裁量労働制の現行制度の概要及び経緯等について」を御覧ください。
まず、3ページ、裁量労働制の概要でございます。専門業務型と企画業務型が裁量労働制にはございまして、対象業務に従事する労働者について労使協定で定めた時間や労使委員会で決議した時間を労働したものとみなす制度でございます。
続きまして、4ページから11ページまでが裁量労働制に関するこれまでの経緯に係る資料でございます。
裁量労働制に係る近年の経緯といたしましては、5ページにありますとおり、平成27年に労働政策審議会にて企画業務型裁量労働制の対象業務の追加や健康・福祉確保措置の充実など、制度の新たな枠組みや制度の本旨の徹底等について建議いただいた後、国会に法案を提出するも審議には至らず、6ページのとおり、平成29年9月に、労働政策審議会にて平成27年法案の内容を一部修正した上で改めて法律案要綱が諮問・答申されました。
その後、7ページのとおり、平成25年度労働時間等総合実態調査の公的統計としての有意性・信頼性に関わる問題が判明したことから、裁量労働制につきましては実態を把握し直した上で議論し直すこととなりました。
これらの経緯を受けまして、8ページ、改めて裁量労働制の適用・運用実態を正確に把握するため、再調査を実施すべく、統計学、労働経済学の学識者や労使関係者からなる裁量労働制実態調査に関する専門家検討会におきまして、調査手法の設計から集計に至るまで詳細に御議論いただき、総務省の承認を得た政府統計として実態調査を実施し、本年6月25日に調査結果の公表を行ったところでございます。
9ページから11ページは、関連の附帯決議・閣議決定でございますが、いずれも調査をし直した上で制度の在り方について検討することとされております。
続きまして、12ページ以降、裁量労働制以外の労働時間制度も含めて概要資料をつけさせていただいております。
まず、13ページから14ページまで、労働基準法制定時からの労働時間法制の主な改正経緯をまとめております。13ページ、昭和62年改正にて、変形労働時間制の改正、フレックスタイム制、みなし労働時間制が創設され、うち、専門業務型裁量労働制につきましては、創設当初は、対象業務は通達で列挙され、労使協定で定めることとしておりました。その後、平成5年改正にて省令での限定列挙となり、平成9年、平成14年、平成15年に対象業務が追加されました。平成10年には、企画業務型裁量労働制が創設され、対象業務は企画・立案・調査・分析業務、当初はそれを事業場の労使委員会の全会一致で決議することとされておりました。
14ページ、その後、平成15年に専門業務型の改正が行われ、労使協定事項に健康・福祉確保措置及び苦情処理措置が追加されました。また、企画業務型裁量労働制につきましても、対象事業場を本社等に限定しないこととする、労使委員会の決議について委員の5分の4以上の多数によるものとする等の改正が行われました。平成30年改正におきましては、時間外労働の上限規制の導入等、長時間労働の是正に係る改正に加え、多様で柔軟な働き方の実現に係る改正として、フレックスタイム制の改正と高度プロフェッショナル制度が新たに創設されました。
続きまして、15ページは、現行の労働時間規制の体系図、16ページは、現行の労働時間制度の概況となります。
17ページ以降は、各制度ごとの概要となりますので、適宜御参照ください。
また、22ページには、平成30年の働き方改革関連法で法定化された時間外労働の上限規制の概要、また、23ページは、同じく同法で改正された労働安全衛生法に基づく管理監督者や裁量労働制の対象労働者を含めた労働時間の状況の把握と長時間労働者に対する面接指導に係るフロー図となります。今後の議論において、適宜御参照ください。
続きまして、資料4-1から4-3までが、6月25日に公表いたしました裁量労働制実態調査の結果に係る資料でございます。
まず、資料4-1を御覧ください。こちらは、本調査の概要でございます。
本調査は、裁量労働制実態調査に関する専門家検討会におきまして、調査設計、調査事項等について御検討いただき、令和元年5月、一般統計として総務大臣の承認を得て、同年11月から12月に調査を実施いたしました。調査は、裁量労働制を導入している事業場を対象とする適用事業場調査、裁量労働制を導入していない事業場を対象とする非適用事業場調査、適用事業場で雇用されている裁量労働制の適用労働者を対象とする適用労働者調査、非適用事業場で雇用されている裁量労働制は適用されていないが裁量労働制の対象業務に従事する労働者を対象とする非適用労働者調査の計4調査を実施いたしました。回答状況は下の表のとおりでございまして、非常に多くの事業場と労働者の方々に御協力をいただいた調査となりました。
次に、資料4-2を御覧ください。こちらは、6月25日に公表した調査の結果概要でございまして、適用事業場調査から非適用労働者調査までの計4調査を順番に調査結果の概要を記載したものでございます。
なお、本日は、本調査結果の御説明は資料4-3に沿ってさせていただきます。
資料4-3を御覧ください。
本資料は、資料4-2の結果概要に記載の内容などから抜粋し、労働時間、労働者の健康状態といったカテゴリー別にまとめるとともに、事業場調査結果と労働者調査結果をそれぞれ適用と非適用で比較する形で整理等をしたものでございます。なお、本日は、時間の都合上、以下、記載の各データにつきましては、最も割合が高いものなどを中心とした説明とさせていただきます。
まず、2ページから15ページまでが、労働時間に係る調査結果でございます。
3ページを御覧ください。事業場別の1日当たりの平均実労働時間数につきましては、8時間を超える事業場の割合は、適用事業場で合計77.1%、非適用事業場で49.5%でございました。
4ページ、事業場調査における労働時間の平均値の比較表となりますが、表の左側から、1日の平均実労働時間数につきましては、適用事業場におきましては、専門型・企画型の計ですと8時間44分、専門型は8時間41分、企画型は9時間0分、非適用事業場におきましては、専門型・企画型の計ですと8時間25分、専門型は8時間26分、企画型は8時間21分でございました。
5ページ、6ページにつきましては、御参考となりますけれども、事業場調査における外れ値の除外の有無も含めた労働時間の平均値の比較でございまして、日数平均をベースに計算したもの、人数平均をベースに計算したもの、それぞれ資料をつけさせていただいております。
続きまして、7ページ、労働者調査における実労働時間の分布でございます。このページは、実際に働いた労働時間を具体的な時間数で答えた労働者の調査票のみを対象に集計、つまり、階級での回答を除いた場合の労働時間の分布に係るデータでございます。1週間の実労働時間数が40時間以上の労働者の割合でございますけれども、適用労働者で81.4%、非適用労働者で74.8%でございました。また、1週間の実労働時間数が60時間以上の労働者の割合は、表でございますと、赤い点線で囲ってある部分でございますけれども、適用労働者で8.4%、非適用労働者で4.6%でございました。
なお、階級での回答を含む場合の労働時間の分布についても集計してございまして、その結果は8ページに記載しておりますので、後ほど御参照ください。
9ページ、労働者調査における労働時間の平均値の比較でございますけれども、表の左側の欄、1日の平均実労働時間数につきましては、適用労働者においては、専門型・企画型の計ですと9時間0分、専門型は8時間57分、企画型は9時間15分、非適用労働者におきましては、専門型・企画型の計ですと8時間39分、専門型は8時間39分、企画型は8時間44分でございました。
また、10ページ、11ページについても御参考となりますけれども、労働者調査における外れ値の除外の有無も含めた労働時間の平均値の比較でございまして、階級での回答を除いたものと含めたもの、それぞれ資料をつけさせていただいております。
12ページを御覧ください。左側、適用労働者における1日のみなし労働時間の認知状況につきましては、「分かる」と御回答いただいたのは、総数ですと59.4%、専門型は58.0%、企画型は68.0%、他方、「分からない」と御回答いただいたのは、総数では38.1%、専門型では40.1%、企画型では27.4%でございました。さらに、同じページの右下を御覧ください。適用労働者の1日の平均みなし労働時間数の欄でございますけれども、これは自身に適用されている1日のみなし労働時間数を具体的に回答した適用労働者における1日の平均みなし労働時間数を集計したものでございますが、うち、左側の外れ値を含む場合におきましては、上から、専門型・企画型の計ですと7時間38分、専門型は7時間38分、企画型は7時間39分でございました。同様に、そのすぐ右側の外れ値を除く場合及び上の適用事業場調査におきましても同様に集計してございますので、後ほど御参照ください。
13ページを御覧ください。労働者調査における調査時点の前年同時期からの労働時間の変化の認識につきましては、適用労働者、非適用労働者、ともに「変わらない」と回答した割合が最も高くなっております。
続きまして、14ページ、事業場の労働時間の把握方法につきましては、専門型におきましては、適用事業場、非適用事業場、いずれも「タイムカード・ICカード」と回答した割合が最も高く、企画型におきましては、適用事業場では「PCのログイン・ログアウト」、非適用事業場では「タイムカード・ICカード」と回答した割合が最も高い結果となりました。
15ページ、非適用労働者に対して適用されている労働時間制度につきましては、総数、専門型、企画型のいずれも通常の労働時間制の割合が最も高く、続いて、1か月単位のフレックスタイム制の割合が高くなっております。
続きまして、16ページから26ページまでが、労働者の健康状態に係る調査結果となります。
17ページを御覧ください。左側、調査時点の健康状態の認識につきましては、適用労働者におきましては「よい」、非適用労働者におきましては「ふつう」と回答した割合が最も高い結果となりました。同じく、17ページの右側でございますけれども、調査時点の前年同月からの健康状態の変化の認識につきましては、適用労働者、非適用労働者、いずれも「変わらない」と回答した割合が最も高くなりました。
続きまして、18ページ、仕事のある日とない日の1日当たりの睡眠時間の結果でございますけれども、まず、左側、仕事のある日の1日の睡眠時間階級別労働者割合でございますが、適用労働者、非適用労働者、それぞれ、専門型、企画型、いずれも6時間以上7時間未満の割合が最も高く、平均睡眠時間は下の表のとおりでございます。次に、仕事のない日におきましては、同じ18ページの右側でございますけれども、1日の睡眠時間階級別労働者割合は、非適用労働者の専門型のみ8時間以上9時間未満、そのほかは7時間以上8時間未満の割合が最も高い結果となり、平均睡眠時間は下の表のとおりでございます。
続きまして、19ページから21ページまでが、仕事による健康等への影響状況別労働者割合の結果でございます。まず、19ページ、上の「1 1日の仕事でぐったりと疲れて、仕事を終えた後は何もやる気になれない」、下の「2 時間に追われている感覚がある」、いずれにつきましても、適用労働者、非適用労働者、ともに「ときどきある」と回答した割合が最も高くなりました。
20ページ、上の「3 家庭やご自身の用事をしていても、仕事が気になって集中できない」、下の「4 仕事上の考え事や悩みでよく眠れないことがある」、いずれにつきましても、適用労働者、非適用労働者、ともに「ほとんどない」と回答した割合が最も高くなっております。
続いて、21ページ、「5 この働き方をこれから先も続けていけるか不安に思うことがある」につきましては、適用労働者、非適用労働者、ともに「ほとんどない」と回答した割合が最も高くなっております。
22ページでございますが、この棒グラフの青色部分を御覧いただければと思いますけれども、労働者の勤め先に現在設けられている適用労働者に対する健康・福祉確保措置の適用労働者における認識状況につきまして、上の専門型におきましては「心と体の健康相談窓口を設置する」が最も高く、また、下の企画型におきましては「休暇取得促進措置(年次有給休暇の連続措置など)を講じる」の割合が最も高くなりました。続いて、同じページでございますけれども、今度は棒グラフの黄色い部分を御覧いただければと思いますけれども、適用労働者が希望する健康・福祉確保措置につきましては、上の専門型、下の企画型、ともに「休暇取得促進措置(年次有給休暇の連続措置など)を講じる」の割合が最も高くなっております。
23ページ、適用労働者の勤め先に現在設けられている健康・福祉確保措置に対する満足度につきましては、専門型・企画型ともに「満足している」の割合が最も高くなっております。
24ページから26ページまでが、労働者における深夜労働・休日労働の状況でございます。まず、24ページ、左側、深夜の時間帯、午後10時から午前5時に仕事をすることの程度につきましては、適用労働者の専門型のみ「あまりない」、そのほかは「全くない」の割合が最も高くなりました。同じページの右側、週休日や祝日などに仕事をすることの程度につきましては、いずれも「あまりない」の割合が最も高くなっております。
続いて、25ページ、左側、勤務時間内に終わらなかった仕事を、自宅などに持ち帰って仕事をすることの程度につきましては、いずれも「全くない」の割合が最も高くなっております。同じページ、右側、勤務時間外に電話・メール等で仕事関係の連絡をとることの程度につきましては、非適用労働者の企画型のみ「全くない」、そのほかは「あまりない」の割合が最も高くなっております。
26ページ、仕事をしない日が週に1日もないことの程度につきましては、いずれも「全くない」の割合が最も高くなっております。
続きまして、27ページから32ページまでが、裁量労働制の運用状況に係る調査結果でございます。
28ページを御覧ください。このページの上側、裁量労働制の導入理由につきましては、専門型・企画型ともに「労働者の柔軟な働き方を後押しするため」の割合が最も高く、同じページの下側、裁量労働制を導入していない理由につきましては、専門型・企画型ともに「対象となる労働者がいないと思うから」の割合が最も高くなっております。
29ページ、裁量労働制の適用要件につきましては、専門型におきましては「職種(事務職、営業職、専門職など)」、企画型は「労働者本人の同意」の割合がそれぞれ最も高くなる結果となっております。
続きまして、30ページ、左側、本人同意の手続の方法については、専門型・企画型ともに「書面で行うこととしている」の割合が最も高く、同じページ、右側、同意撤回の手続の方法といたしましては、専門型では「書面で行うこととしている」、企画型では「書面で行うこととしている」及び「メールなどの電磁的方法で行うこととしている」の割合がそれぞれ最も高くなっております。なお、専門型の割合でございますけれども、下の注書きでございますが、裁量労働制の適用要件として「労働者本人の同意」と回答した専門型の適用事業場を分母とした手続の方法の割合となります。
続きまして、31ページを御覧ください。適用事業場における労使委員会の手続に関する調査結果でございますけれども、まず、上側の表、労使委員会の労働者側委員の指名方法でございますけれども、専門型・企画型いずれも「労働組合による指名」が最も高くなっております。次いで割合の高かった「労働者の過半数代表者による指名」と回答した事業場数を分母とし、その過半数代表者の選出手続の方法の割合を表の右側に記してございますけれども、専門型・企画型ともに「労働者による投票」の割合が最も高くなっております。なお、専門型につきましては、労使委員会について回答があった事業場を自主的に労使委員会を設置・決議している事業場とみなして集計をした結果でございます。同じページ、下側を御覧ください。労使委員会の平成30年度の議題に係る調査結果につきましては、専門型・企画型ともに「勤務状況や措置の実施状況の記録・保存」が最も高い割合となっております。
続きまして、32ページ、左側でございますけれども、事業場に設けられている苦情処理措置に関する適用労働者の認知状況につきましては、「苦情処理措置を知っている」と回答した割合は、専門型では43.6%、企画型では65.3%でございましたけれども、この知っていると回答した適用労働者における平成30年度の苦情の申出の有無につきましては、同じページの右側、苦情を申し出たことが「ない」と回答した割合が、専門型では97.7%、企画型では98.7%でございました。
続きまして、33ページから35ページまでが、裁量労働制の適用労働者に対する特別な手当に係る調査結果でございます。
34ページ、左側、適用労働者に対する特別手当につきましては、「1か月ごとに支払われている」と回答した適用事業場の割合は、専門型では47.2%、企画型では63.2%でしたが、この「1か月ごとに支払われている」と回答した事業場を対象として特別手当の名目を調査した結果が同じページの右側でございますけれども、専門型・企画型ともに「通常の所定労働時間を超える残業代として」の割合が最も高くなりました。
続いて、35ページを御覧ください。同じく「1か月ごとに支払われている」と回答した事業場における特別手当の1か月の平均金額の分布の結果でございますけれども、専門型・企画型ともに「5万円以上6万円未満」の割合が最も高く、平均金額といたしましては、右上の部分ですけれども、専門型は73,545円、企画型は85,401円という結果でございました。
続きまして、36ページから43ページまでが、労働者の働き方の認識、裁量の程度に係る調査結果でございます。
37ページを御覧ください。こちらは、労働者における現在の働き方に対する認識でございますけれども、上側、専門型におきましては、適用労働者では「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」、非適用労働者では「効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる」の割合がそれぞれ最も高くなりました。下側の企画型におきましては、適用労働者・非適用労働者ともに「効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる」の割合が最も高くなりました。
次に、38ページから42ページまでが、業務遂行における労働者の裁量の程度に係る調査結果でございます。まず、38ページ、業務の目的、目標、期限等の基本的事項に係る裁量の程度につきましては、専門型・企画型それぞれ、適用労働者・非適用労働者いずれにおきましても「上司に相談の上、自分が決めている」の割合が最も高く、続いて、39ページの具体的な仕事の内容・量に係る裁量の程度、また、40ページの進捗報告の頻度に係る裁量の程度、いずれにおきましても「上司に相談の上、自分が決めている」の割合が最も高くなっております。
続きまして、41ページを御覧ください。業務の遂行方法、時間配分等に係る裁量の程度につきましては、専門型の適用労働者のみ「上司に相談せず、自分が決めている」の割合が最も高く、その他におきましては「上司に相談の上、自分が決めている」の割合が最も高くなっております。
42ページ、出退勤時間に係る裁量の程度につきましては、いずれにおきましても「上司に相談せず、自分が決めている」の割合か最も高くなっております。
続きまして、43ページは、適用労働者における裁量労働制が適用されていることに対する満足度に係る調査結果でございますけれども、専門型・企画型ともに「満足している」の割合が最も高くなりました。
最後に、44ページ以降は、制度に対する御意見に係る調査結果でございます。このうち、45ページから50ページまでが事業場における意見、51ページ以降が労働者における意見でございます。
まず、45ページ、事業場における裁量労働制に対する御意見でございますけれども、左側が適用事業場における意見でございますが、専門型では「特に意見はない」、企画型では「制度を見直すべき」の割合が最も高く、右側、非適用事業場におきましては、専門型・企画型ともに「特に意見はない」との理由が最も高くなりました。
46ページ、制度を見直すべきと回答した事業場における具体的な制度の見直しに対する御意見でございますけれども、下の棒グラフを御覧いただければと思いますが、左下、適用事業場においては、専門型では「対象労働者の範囲を見直すべき」、企画型では「手続負担を軽減すべき」の割合が最も高く、同じページの右下、非適用事業場におきましては、専門型では「対象労働者の範囲を見直すべき」、企画型では「裁量労働制を導入することで必要となる手続負担を軽減すべき」の割合が最も高くなりました。
47ページ、「制度を見直すべき」かつ「対象労働者の範囲を見直すべき」と回答した事業場における対象労働者の範囲に関する御意見でございますけれども、左下、適用事業場におきましては、専門型・企画型ともに「狭い」の割合が最も高く、右下、非適用事業場におきましては、専門型では「狭い」、企画型では「範囲が不明確」の割合がそれぞれ最も高くなっております。
48ページ、対象労働者の範囲が「狭い」と回答した事業場における具体的意見でございますけれども、左下、適用事業場におきましては、専門型では「法令上規定された業務に限らず、業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務は、対象業務として認めるべき」の割合が、企画型では「指針上規定されているように、対象業務に「常態として」従事していなくとも、「主として」従事していればよいものとすべき」の割合がそれぞれ最も高くなっております。同じページの右下、非適用事業場におきましては、専門型では「法令上規定された業務に限らず、業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務は、対象業務として認めるべき」の割合が、企画型では「法令上規定された業務に限らず、労使で合意された業務は、対象業務として認めるべき」の割合がそれぞれ最も高くなっております。
49ページ、対象労働者の範囲が「広い」と回答した事業場における具体的意見でございますけれども、左下、適用事業場においては、専門型では「一定の人事等級・経験年数等を要件とすべき」、企画型では「現在認められている業務の一部又は全部を対象から外すべき」の割合がそれぞれ最も高くなっております。同じページの右下、非適用事業場におきましては、専門型・企画型ともに「一定の年収を要件とすべき」の割合が最も高くなっております。
50ページ、対象労働者の「範囲が不明確」と回答した事業場における具体的意見でございますけれども、左側の適用事業場・右側の非適用事業場ともに、専門型では「業務ではなく、一定の人事等級・経験年数等を要件とすべき」、企画型では「業務ではなく、一定のコンピテンシー(職務遂行能力)を要件とすべき」の割合がそれぞれ最も高くなっております。
続きまして、51ページからは、労働者における裁量労働制に対する御意見でございますけれども、51ページの左側、適用労働者におきましては、専門型・企画型ともに「今のままでよい」の割合が最も高く、非適用労働者におきましては、専門型・企画型ともに「特に意見はない」の割合が最も高くなっております。
52ページ、「制度を見直すべき」と回答した労働者における具体的な制度の見直しに対する御意見でございますけれども、左下、適用労働者におきましては、専門型では「労働者の健康やワークライフバランスにより配慮されるようにすべき」、企画型では「対象労働者の範囲を見直すべき」の割合が最も高く、同じページ、右下、非適用労働者におきましては、専門型・企画型ともに「労働者の健康やワークライフバランスにより配慮されるようにすべき」の割合が最も高くなっております。
53ページ、「制度を見直すべき」かつ「対象労働者の範囲を見直すべき」と回答した労働者における対象労働者の範囲に対する御意見でございますけれども、左下、適用労働者においては、専門型・企画型ともに「範囲が不明確」の割合が最も高く、右下、非適用労働者におきましては、専門型では「範囲が不明確」、企画型では「狭い」の割合がそれぞれ最も高くなっております。
54ページ、対象労働者の範囲が「狭い」と回答した労働者における具体的御意見でございますが、左下の適用労働者、右下の非適用労働者、いずれにおきましても、専門型では「法令上規定された業務に限らず、業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務は、対象業務として認めるべき」の割合が、企画型では「法令上規定された業務に限らず、労使で合意された業務は、対象業務として認めるべき」の割合がそれぞれ最も高くなっております。
続きまして、55ページ、対象労働者の範囲が「広い」と回答した労働者における具体的御意見でございますが、左下、適用労働者においては、専門型では「一定の年収を要件とすべき」、企画型では「一定のコンピテンシー(職務遂行能力)を要件とすべき」の割合がそれぞれ最も高くなっております。同じページ、右下、非適用労働者におきましては、専門型では「一定の処遇・雇用管理等を要件とすべき」、企画型では「一定の年収を要件とすべき」の割合が最も高くなっております。
最後に、56ページでございますが、対象労働者の「範囲が不明確」と回答した労働者における具体的御意見につきましては、左下の適用労働者においては、専門型では「業務ではなく、一定の処遇・雇用管理等を要件とすべき」、企画型では「対象業務をより具体的に明確化すべき」の割合が最も高く、右下の非適用労働者におきましては、専門型・企画型ともに「業務ではなく、一定の処遇・雇用管理等を要件とすべき」の割合が最も高くなっております。
長くなりましたが、事務局からの説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ただいまの事務局からの説明におきまして、裁量労働制適用労働者のほうが、裁量労働制が適用されていない労働者よりも、平均的には1日当たり20分程度労働時間が長いという実態が報告されました。
本検討会は労働時間制度に関する検討会ですので、労働時間の長さは重要な論点ですが、一方で、柔軟で自律的な働き方を考えるに当たっては、労働時間の長短の議論にとどまらない幅広い視点も必要だと思います。
本日は、第1回目となりますので、裁量労働制に限らず、柔軟で自律的な働き方について考える際の視点について、各委員の御専門に照らしてコメントをいただければと考えて
おります。もちろん、調査結果に対する感想でも構いません。
それでは、各委員の皆様からコメントをいただいていきたいと思いますけれども、最初に、小畑委員、いかがでしょうか。
○小畑構成員 ありがとうございます。
裁量労働制に関しましては、まず、業種によって裁量労働制をどう思うかということについてかなり違ってくるだろうと考えております。裁量労働制とは縁のない業種もあれば、裁量労働制が自分のところにも適用になってしかるべきではないかと考えていらっしゃる労働者の方々もおられると思います。言うまでもなく、労働時間を自分であんばいできるというところが裁量労働制の特徴でございますが、例えば、御自身の健康状態に合わせることができる、また、家庭の事情などに合わせることができるという意味で、マイペースを大事にする労働者にとっては大変魅力的な制度ではないかと思われます。
このことは、今回の調査は大変興味深い調査ですけれども、例えば、37ページなどを拝見いたしますと、ワーク・ライフ・バランスとか、効率的に個々で労働時間が減らせるという認識が適用労働者のほうで非常に見られていることなどにも表れていると存じますし、また、41ページ、時間配分が自分で決められる、42ページにございますように、出退勤時間を自分で決められるという数値は大変興味深く感じております。また、43ページの満足度、17ページの健康の問題点などを拝見いたしますと、受け止めとしてプラスとして受け止めている方もおられることが分かるかと思います。
若い方々、これから社会に出ていく方々、留学してこられている外国人の方々、そういう方々が自分の自律的な働き方に非常に関心が高い傾向があると感じております。例えば、会社のレイアウト、職場のレイアウトを考えますと、以前は向かい合わせで島になっている、いわゆる対向島式のレイアウトがたくさんございまして、管理職は自分の前にずらっと部下が向かい合わせに並んでいる。全体を見渡すことができる。また、同僚同士でもお互いの姿が見えるという中で、皆さんでチームで動くという意識が非常に醸成されやすいレイアウトだったものが、パーティションでレイアウトを区切っていく、また、ブース型、フリーデスクというレイアウトに変わってきている。こういうことについては、若い方々は大変関心を持っておられて、例えば、たとえ裁量労働制になっても周りを見るとみんなが帰っていないのに1人だけ帰れないということをよく聞くところでございますが、同調圧力のお話なども関係してくると思いますけれども、パーティションで区切られて、自分の世界を職場で持てるかどうかによって、同調圧力も変わってくると受け止めていらっしゃる若い方々は結構おられると認識しております。
また、よく裁量労働制について心配されていることといたしましては、残念ながら、例えば、1人のクライアントは各4件だと決まっていても、その配分が、厄介な4件が1人に集中してしまう、もしくは、うまくちゃんとばらけるとかいうことによっては、なかなか仕事が終わらず、結局、割当てで数としては同じであっても1人だけに非常に負担がかかってしまうような問題があるのではないか。そういった点では、管理する人の割当ての際の力量が試されてきてしまうといった面もあるかと思います。
もう一つ、私が注目しておりますのが兼業・副業でございます。若い方々を中心に、兼業・副業への関心は強いですけれども、もちろん収入を増やしたいからという理由もございますが、スキルを高めたいからということから副業・兼業をされることに意欲的な若い方々がおられます。そういった方々が、例えば、退勤後に、ほかでの兼業・副業が予定されているときに、昼間に一生懸命やり過ぎて息切れしてしまうよりは、早めに切り上げようか、最後のほうは薄めてゆっくりやろうかということがあんばいしやすいという意味では、裁量労働が副業・兼業に関する制度の変化や社会の受け止め方の変化によって、裁量労働に関して新しく魅力を感じるような方々が出てくる可能性もあるのではないか。そんなことを考えております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ウェブ参加の委員の皆様、音声は聞こえておりますでしょうか。
○堤構成員 今、何かお話しされたのでしたら、聞こえていない状況です。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 この音声は聞こえますでしょうか。
○堤構成員 この音声はよく聞こえます。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
すみません。音声が聞こえていない状況だったようで、申し訳ございません。
今、小畑委員から御発言いただいたところですけれども、引き続いて、川田委員からお願いいたします。
○川田構成員 川田でございます。
私から、今回の検討についての全体的な枠組みに関すること、対象になる制度の在り方についての基本的な考え方、もう少し具体的にその制度に関して検討すべきと考えられる点に関すること、大きく3つに分けて考えてきたところをお話したいと思います。
まず、1点目の検討の全体的な枠組みに関して、今回の検討の中心となるのは裁量労働制かと思います。ただ、制度の在り方を掘り下げて考えていく際に、ある程度、頭脳労働における自由度の高い働き方に対応した制度の在り方という視点で考えていくことが必要かと考えております。今日の社会、働き方の下では、頭脳労働に限らず自由度の高い働き方をすることを可能にする基盤は恐らく広がりつつあるのではないかと思いますが、この後に述べるような自由度の高い働き方のメリットが最もよく生かせる働き方であり、制度的にもこれまでいろいろな対応がされてきたものとして、いわゆる頭脳労働、個々の労働者が考えたことを具体的な成果に反映させていくことが働き方の価値として大きく内容を持つような働き方が一つの焦点になるのではないかと考えております。そのような頭脳労働における自由度の高い働き方は、適切な制度の下で行われると、働く側、企業・事業者双方にメリットがあり、特に今の日本の社会の中では双方ともそのような点のメリットの重要度が高いということだろうと思います。具体的な制度との関係で言うと、中心になる裁量労働制のほかに、管理監督者あるいは高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制、事業場外労働に対しても、例えば、テレワークみたいなものを視野に入れると、頭脳労働との関わりはそれなりに深いと思いますので、そのような制度も視野に入れた上で全体として内容的にも適切で、全体的な整合性の取れた制度を考えるという視点が、1つ、大事だと思います。同時に、自由度の高い働き方との結びつきは、制度としてみると必ずしも強くないかもしれない原則的な労働時間制度とか、変形労働時間制などについても、所定労働時間の枠の中で自由度の高い働き方を実現していく余地はそれなりにある制度と言えるのではないかと思いますので、そのような点も検討の際には視野に入れて整理することも必要かと思います。これが1点目です。
2点目の制度を考える際の基本的な考え方ですが、基本的には裁量労働制など、労働時間規制の特例になる制度ということで、原則的な制度と比べて、制度を導入することで労使双方にメリットがあるべきだという視点が根本的なところで重要なのだと思います。細かいところは、初回ですし、時間もありますので、あまり詳しくは述べられませんが、基本的には、現行の労働時間制度は、実労働時間の長さを規制する点とか、割増賃金を規制するという点が中核にあって、それと併せて、労働時間の管理についても、そうした長さや割増賃金の規制と対応して、一定のことが使用者に求められる制度であると思います。自由度の高い働き方に合うような形で形を変えていく、あるいは、場合によっては規制の一部を適用しないといったことが、先ほど述べたような各当事者のメリット・デメリットという点から、どのようなところで必要とされ、あるいは、許容されるかといった点を一つ一つ見ていくことが必要かと思います。特に中心的になるのは、これは目新しい話ではありませんが、働き過ぎによる健康被害の防止という点はしっかり確保するとか、その中で効率性の高い働き方を実現していく、濫用的な使い方に適切な規制をかけるといった点などが具体的には重要になってくると思います。基本的な点として、メリットがあること、大きなデメリットを生じさせないというところを意識することが必要かと思います。
3点目、具体的な制度に関しては、時間の関係もあり、特に述べたい点に絞りますと、現行の裁量労働制なら裁量労働制の要件をベースとしつつも、必ずしもそれにはとらわれない形で、先ほど述べた自由度の高い働き方をもたらす上での必要性、あるいは、原則的な規制と異なる扱いをすることの許容性といった観点から具体的な要件等を考えていくことが必要かと思います。具体的には、実体面では、その対象になる業務について、種類や具体的な働き方に関する規定、その対象になる労働者に関する要件とか、裁量性の要件、ここは特に重要な点だと思います。先ほど小畑委員の意見の中にも出てきましたが、例えば、他の労働者との関係で自由度が十分に発揮できなくなる可能性とか、お客さんとの関係で自由度が十分に発揮できなくなる可能性なども視野に入れた上で裁量性の要件を考えることとか、健康確保措置の在り方、賃金についての額や決め方なども検討の対象には入ってくるかと思います。手続に関しては、集団的な合意の枠組み、個別的な同意の枠組み、記録の作成・保存、関係する様々なものの行政機関への届出、あとは周知などが課題だと思います。ここもいろいろと課題があると思いますが、特に最後の周知に関しては、その制度の内容が実際に適用者においてもよく分かっていないという回答もそれなりにあったことを踏まえると、検討すべき点が多いのかなと思っておりました。
大分長くなってしまいましたが、以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
続いて、黒田委員、よろしくお願いいたします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
改めまして、皆さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
今日は、音声状況があまり芳しくなく、事務局の皆さんが先ほどからマイクを持って走り回ってくださっていると思うのですけれども、この1時間ぐらいのやりとりは勘を頼りに把握しているところです。もし、重複する発言をしてしまうようでしたら、お許しください。
先ほど、事務局からとても丁寧な御説明があったと思いますが、裁量労働制の調査に関しては私もメンバーとして携わっておりました。この調査は、結論ありきではなく、厳密にデータを作成し、実態を明らかにしていくというコンセプトで、行ってまいりました。先ほどのご説明では時間の関係から平均値を中心に御報告いただきましたけれども、単なる平均だけではなくて単純集計以外の二次分析も併せて行ったことも今回の検討会の大きな特徴の一つだと理解しております。
二次分析に関しては、東京大学の川口大司先生が中心となって進められたので本来でしたら詳細は川口先生からお聞きするべきだと思いますが、私も研究協力者として携わりましたので、まずは調査に携わった者として少しだけ補足をさせていただきたいと思います。
今回の調査では、先ほどは単純平均値の報告がありましたけれども、そもそも適用者と非適用者で属性がある程度異なるのではないかということもありました。そこで二次分析では、性別、年齢、学歴、家族構成、勤続年数、役職、職種といったものをできる限りコントロールをした上で、それでも適用者と非適用者でどれくらい差があるのかといったことも分析しています。
その結果をかいつまんでお話ししますと、平均の週当たりの労働時間は、調整しても裁量労働制のほうが多少長いのですけれども、1週間で見ると大体1.2時間程度の差に縮まります。一方、労働時間が長い分だけ、適用者の睡眠時間は短い傾向にあるかというと、実はそういうことはなく、同じぐらいかむしろ裁量労働制のほうが若干長いことも見えてきています。
一番心配なのは健康への影響ですが、仕事の満足度は裁量労働制の方が高く、主観的健康状態も適用労働者の方がよいと答える確率が高くなることや、メンタルヘルスに関しては両グループで統計的な差がないことも見えてきています。こうしたことを考えますと、少し労働時間は長いかもしれませんけれども、その分だけ裁量がある働き方をしているということで、心身の健康や満足度にはプラスの影響も見えている、もちろんこれは平均的な傾向であって全ての方に当てはまるわけではないですけれども、全般的な傾向としてみえてきたことも補足させていただきます。
以上を踏まえまして、ここからは今回の検討会のスタートに当たって少しだけ見解を述べたいと思いますが、まず、公的統計の推移などを見ていますと、この5~6年で超長時間労働者の比率は少しずつ減少傾向にあると認識しております。働き方改革の効果がそういったところに出てきているのではないかとも考えられます。もちろん、そうだからといって、この長時間労働是正の流れを反転させるべきではないとは思いますが、この1年間はコロナという予期しなかった事態が起こったことで、労働市場には大きな変化の兆しが見られることも確かです。先ほど川田委員からも御発言があったと思いますが、大きな変化の一つは在宅勤務だと思います。もう一つは、副業やギグワークと呼ばれる働き方で、この2つがコロナ禍に起こった大きな変化と言えます。政府は長時間労働是正と並行して、以前から副業や在宅勤務を推進してきたところですが、私自身は、コロナ前は、働き方改革は順番が大切だと思っていました。まず、長時間労働是正が深く浸透した上で在宅勤務や副業が進展していくという順を追ったステップを踏むのが一番望ましいのではないかと思っていました。しかし、予期せぬこういった外生的なショックで、今は全て同時並行で進行している状況となっています。
今後は、コロナ前には想定していなかった大きな変化が現在の労働市場に起こっていることを踏まえた上で、どのような法制度の整備が必要になるかを考えていく必要があると思います。在宅勤務や副業は、定時に毎朝出勤して、フルタイムで働くことを前提としてきた今までの日本の働き方が、育児や介護、自身の体調など様々な事情で難しかった人にも門戸をひらくことになります。労働力人口も減少していて高齢化も進んでいく中で、そういった様々な事情を抱える人たちにも広く労働市場の門戸を開くことができるという意味では今後も推進していくべきだと思います。
こうした中、今後検討が必要なのは、大きく2つだと思います。1つは、出社を前提とした労働時間管理が今後もサステーナブルなものなのかどうかという点です。もう一つは、これまでは総労働時間の管理が健康確保のために最も重要と考えられてきたわけですが、それが果たして今後も効果的と言えるのかどうかという点です。どちらも、業種や職種によっても様々な意見があると思うのですけれども、現行制度が企業にとっても労働者にとっても煩雑になり過ぎていないか、労働時間数を管理することを注視するあまり本来の目的からそれてしまっていないか、新しい働き方の下でどのように健康を確保していくべきかということを考えていく必要があると思います。
在宅勤務によって、健康に支障が出るほど過労になってしまうことももちろん避けなくてはいけないわけですけれども、労働者にとって望ましい就業時間帯は異なりますし、毎日同じ時間数を働くことがよいとは限らない可能性もあります。厳し過ぎる時間管理は柔軟性を欠くことにもつながっていくことを踏まえた上で、当検討会では冷静な議論をしていくことができればと考えています。
私からは、以上です。
○荒木座長 黒田委員、ありがとうございました。
続いて、堤委員、よろしくお願いいたします。
○堤構成員 ありがとうございます。北里大学の堤でございます。
私も、少し皆様の話が聞き取れていない部分で、重複、もしかしたら誤解もあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
私は、実効性のある健康確保措置という立場でできるだけ参画させていただければと考えておるところです。
裁量労働制と健康問題に関わる課題として、3つほど視点をまずは挙げたいと思います。
まず、1つ目は基本的なことですが、先ほど来、お話が出ておりました長時間労働に関連することは、結果的に健康を害するような労働時間にならないように、そういうことが起こらない制度にというのが大切なことだろうと思っております。実際に裁量労働制対象者の脳・心臓疾患や精神障害で労働災害の支給が決定している事例もまだ数えられておりますので、きちんと対応は必要だろうと思います。また、いかに本人の裁量が関わってくるとはいえ、長時間労働で健康障害を発生するようなことがあれば、事業者にも安全配慮義務等が問われる可能性もありますので、そういうことも考えた上で、改めて基本的なことで恐縮ですけれども、労働時間が適切に管理される制度になる必要性をコメントさせていただきたいと思います。この点に関しては、先ほど黒田先生もおっしゃっていたように、いろいろな労働時間の観点があると思いますので、そういう点も含めて議論ができればと思っております。
2つ目ですけれども、労働意欲とか、モラルといったものも労働者の健康と関連するということが分かっています。一例でございますけれども、健康問題に関わることとして、正当な評価がなされるかどうかという視点が指摘されています。一生懸命頑張っているけれども十分な評価が得られないとか、認められないとかといったこと、報酬も関わってくるかもしれませんけれども、そういうことが心身の不調を発生するストレス要因になることが示されていたりします。
一方で、健康確保と労働生産性は必ずしも背反しないものだとも思っています。労働者の健康は生産性のベースですし、生産性と関連するポジティブな側面の指標としては、皆さんも御存じのとおり、ワークエンゲージメントといった指標とか、先ほど来出ておられると思いますが、満足感の問題とか、裁量の問題とか、ワーク・ライフ・バランスもそうだと思いますけれども、この制度が伸ばしていこうという側面はぜひ伸ばしていって、健康確保措置の視点でもこういったことも含めて検討ができるとよろしいかと考えているところです。
3つ目で、本検討会の枠組みから外れていたら申し訳ないとも思うのですが、また、少し難しい問題もあるかもしれませんけれども、格差の課題は一つ検討しておく必要があるかと思っています。経済格差は、いわゆるマクロレベルでは、健康の社会的な決定要因という形で言われています。少なくともこの多様な自由度の高い働き方の方策が必要な方が取り残されることなくと申しますか、企業規模等において格差を広げないような形で導入されることを希望するものです。先ほどの調査の結果等を拝見しますと、被調査者の誤解もあるかもしれませんが、対象者の範囲に関して、年収等のことなども挙がっておりました。そういうところも念頭に置いて議論ができればと思っております。
その調査結果を見させていただきまして、幾つか追加をさせていただきます。
1つ、深夜や休日に仕事を行っている、長時間労働や、休日を取りにくくなるといった苦情等のデータがありまして、2つほど考えるところがあります。
一つは、事業者側が適切な仕事の配分や労務管理を行えているかどうかという基本的な視点でございます。やらされている仕事になっていないか検討が行われる必要があるように思います。適用者、非適用者に分けると、十分に理解可能な形で回答がなされているように思いますけれども、こういったところで間違った運用がなされないようにということが一つ。
労働者の側からいくと、仕事から、身体的にも、心理的にも、きちんと離れることができるという概念を心理的なデタッチメントと言います。顧客を含めて、夜間・休日に入ってくるメールとか、そういうものにつながらない権利ということも欧米では言われておりますし、裁量が外的な要因とうまくバランスが取れるような形で仕事ができる制度になることが好ましいことかと思っています。
労働者の健康確保については、労働者自身も、正しい知識、認識、自律的な行動も必要という視点もあるべきだろうと思っています。労働者には、自身の雇用形態について正確な情報が与えられて、自ら適切な健康管理を行う必要があると思います。こちらは先ほどのデータですけれども、深夜・休日等に仕事をされている回答がありました。自分で働く時間を決められる点は尊重しつつ、自分自身で労働時間帯を選択する場合でも、例えば、不規則な生活や不規則な就業パターンは睡眠障害や疾病のリスクになりますので、こういったところも自律的にコントロールができるといいますか、是正ができるような正確な情報も提供されていくべきだろうと思っています。
先ほど、またこれもお話が出ていましたが、勤務場所の選択に関連すること、テレワーク等の在宅勤務に関する課題もあると思います。労働時間が、いわゆる仕事と私生活の境界が曖昧になって延びやすいという弊害も言われているのですけれども、これ以外にも幾つかのリスクファクターがあります。例えば、孤独に陥りやすいとか、サポートを受け入れられないとか、そういったことは、在宅勤務、テレワークの非常に重要な視点と言われています。また、在宅の場合は、家庭の事情や人間工学的な状況で必ずしも好ましくない就業環境でお仕事をするということは健康上の課題にもなりますので、この検討会自体の枠組みになるかどうかは分かりませんけれども、課題として挙げさせていただいております。
今後の解析の視点で2点ほど話して終わりたいと思いますけれども、健康確保措置の実施率や制度に関する労働者の満足度等に関しては、先ほどいろいろな属性で検討されるということがありましたけれども、企業規模なども関連している可能性があるのではないかと考えます。この企業規模別の解析になりますと、健康確保の措置の実施率とか、みなし労働時間が分からないといった差異や労働者の認知に関連しても示唆が得られる可能性があるのではないかと認識しております。今後の解析に関して、格差対策等にも関わることで役立てられると好ましいかと思っております。
労働者の意見を拝見しますと、労働者の健康やワーク・ライフ・バランスへの配慮に関して、まだまだ伸び代があるように思いますので、こういったところでもしいろいろな情報が入るようでしたら、検討させていただきたいと思っております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
続いて、藤村委員、お願いいたします。
○藤村構成員 藤村でございます。
私は、人事労務を専門にしておりまして、企業の労働実態を研究対象としております。労働組合へのインタビューとか、実際に裁量労働制で働いている人たちの状況とか、その辺りから発言をしたいと思います。
主に3つの点です。まず、第1点目ですが、今回の調査から、労使ともに裁量労働制の本来の趣旨をちゃんと理解しうまく使っているところと、ちょっと逸脱してしまっているのではないかというところがあると思います。いわゆる問題が発生している、例えば、長時間労働になっているとか、あるいは、健康状態の問題とか、明確には分かりませんが、ざっと1割ぐらいの回答者が、どうも本来の裁量労働の働き方とは違う働き方を強いられているのではないかと考えられます。ここでどういう人たちを対象にして議論するのか、もちろん、制度の趣旨が生かされて生き生きと働いている人たちは放っておいてもいいわけで、そうではない人たちに対して、何らかの支援といいますか、ある種の歯止めをかけていく必要があるのではないかと思います。ただ、それをやり過ぎますと、制度自体が非常に使いにくいものになっていきます。どの辺りでバランスを取るかというのが問題になるかと思います。
2点目は、本人の同意を必要とすることの実態はどうかという点です。どの調査にも、本人の同意が必要だと出てまいります。あるいは、制度自体が、労働者代表との間で合意をすること、具体的には、過半数を代表している組合があれば、その労働組合との合意になるのですが、この合意も現実には難しいところがあるように思います。私が相談を受けました案件を申し上げますと、大手の損害保険会社の情報部門の会社があります。損害保険会社は、子会社として、損害を調査する会社と情報部門を統括する会社を持っていまして、その情報部門の会社の労働組合から、現在の実態としてこういう働き方になっている、裁量労働をやっている、この裁量労働制に合意していいものかどうか悩んでいるという相談を受けました。実際に働き方を聞いてみますと、裁量労働制にするとまずいのではないかという状態でした。私からアドバイスを得たいということでしたので、今回は合意しないほうがいいのではないですかと申し上げたのですが、最終的に合意をされました。なぜかというと、合意しないという意思決定を労働組合がすることは、労使関係をとても悪くする、そこは難しいのだということがあったのですね。本人の同意というところも難しさがあります。同意しないということになると、「君は能力が低いんだね」と思われて、評価を下げられ、自分自身の将来の昇進とかに関わる。そうすると、同意しないという意思決定はしにくくなります。ですから、合意をしているけれども、心から合意しているわけではないということがある。これを私たちはどういうふうに考えるかという課題があるかと思います。
3点目として、働く側の交渉力の問題です。どれくらい会社と交渉力を持っているかという点がこの制度の成否を決める分かれ目になっているのではないかと思います。例えば、ある業務について「これを君にやってほしい。裁量労働という枠組みの中でお願いしたい」と言われたときに、明らかにこれは長時間労働になることが分かる場合、交渉力が弱ければ、合意するしかありません。でも、交渉力があれば、「これだけの時間でこれだけのことをやれというのは無理だから、合意できません」と言えます。交渉力がある人は、もしその会社にいづらくなったとしても別の会社に移って働き続けることができますから、自分の意見をはっきり言えるわけです。他方、弱い立場の人がそういう提示をされたときに、受けざるを得ないことになります。先ほどお話しした2点目との関連があります。実際に裁量労働で働いていらっしゃる方のお話を伺うと、本来は「こういう業務を何日までに」ということで始まるのだけれども、毎日会社に行っていると、上司から「ごめん、ちょっとこれをやってほしいんだけれども」と依頼されます。これは断りにくいですね。「私は裁量労働で働いているのですから、別の業務は受けられません」と言ってもいいはずなのですが、そういうことは言いにくい。そうすると「はい、分かりました」となって、業務が増えていくのですね。上司は能力のある人に仕事を任せたいから、どんどん仕事が増えていって、結果として、本来の裁量労働制で課されている課題以外のことに対応する量が増えて長時間労働になってしまいます。最近は在宅勤務が増えましたので、追加の業務が降ってきにくい状況です。これはいい傾向かなと思います。顔を合わせていないですから、上司も頼みにくいというのがありますよね。以上のように労働実態を見ていったときに、この制度がうまく使われていない企業をどう指導していくのかという議論が必要ではないかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
島貫委員につきましては、今回は御欠席ということですので、次回、出席いただいた際にコメントを伺いたいと考えております。
各委員から大変貴重な御意見いただきました。私からも、一言、コメントをしておきたいと思います。
今日の資料3の13ページ以降では、これまでの労働時間制度の大きな流れをフォローしていただいております。
15ページに全体を概観するとこういう体系ではないかということを示しておりますけれども、もともと昭和22年に労働基準法ができたときは、原則的な規制、1日8時間、休日・休憩についての規定があって、4週間単位の変形制はございましたけれども、そのほかには何もなくて、一番下の第41条、適用除外は、労働時間規制をそもそも適用しない。適用除外に当たりますと、労働時間規制は何もないという世界だったわけです。ところが、その後、たくさんの労働時間制度ができました。様々な変形制、フレックスタイム制、みなし時間制度などです。一般的な労働時間規制は、実労働時間をカウントして、それが8時間を超えてはならないと最長労働時間を規制するものだったのですけれども、みなし時間制度、とりわけ、裁量労働制のみなし時間制度の場合は実労働時間ではなくてみなし制を取ることによって自由度の高い働き方を認めようという考え方から導入されたものです。
多様な変形制、フレックスタイム制、裁量労働制、これらはいずれも労働者と働き方の多様化に対応して労働時間制度も多様化してきた歴史があったところです。今般入りました高度プロフェッショナル制度は適用除外の一種と受け止めるのが一般的な考え方かもしれませんけれども、私はこれを適用除外と捉えると本質を捉え損なうと考えております。
20ページに高度プロフェッショナル制度の概要が載っておりますけれども、確かに、5番目、右下に書いてある法的な効果としては労働時間制度は適用除外となるのですけれども、この制度を導入するためには、4の健康確保措置として様々な特別な労働時間に関するあるいは労働解放時間に関する規制を導入する必要があります。例えば、一般労働者にはない104日の休日は、36協定を結んでも破ることはできない絶対的な休日規制です。インターバル規制や健康管理時間といった一般の労働者にはない様々な特別の規制を導入することとセットで、こういった要件を満たした場合には適用除外という効果を認めるということです。したがって、昔からあった管理監督者に当たれば労働時間規制は一切何の適用もないという適用除外とは明らかに違う制度です。これは一般の労働時間規制をそのまま適用するのが合理的ではない働き方や労働者が出てきた中で、合理的な規制として何があるかということで議論されてきたものと考えられます。
したがって、15ページに戻りますと、高度プロフェッショナル制度も一般の規制をそのまま適用するのは合理的でない方々に対して特別な規制をしようという試みだったのだろうと思います。この議論の過程では、一般規制とは異なる特別規制を導入する際にどういう点に留意しなければいけないのか、実体規制としてどういう規制をすべきか、実体規制とは、例えば、対象業務がどうかとか、年収要件をどうするかとか、そういった実体要件に関するものですけれども、これと対置される手続規制としまして、個人の同意、集団的な同意、労使委員会における決議といった手続をどう組み合わせていくかということが議論されたところです。この議論からは、裁量労働制を考える上でも大変重要な示唆が得られるのではないかと考えております。
今日はたくさん御意見等を頂きました。大変重要な御指摘だったと思うのは、労働時間の長さは大変重要ですけれども、とりわけホワイトカラーの働き方においては、ストレスが大変健康とも関連してくる。ストレスがない働き方の中に、自分で労働時間管理ができる、裁量があること、そして公正な報酬を受けていることもストレスとの関係があるという御指摘でありました。
藤村委員からは、人事管理の実態も踏まえた同意の在り方も考えなければいけないという指摘がありました。裁量労働というのは本来は、専門業務型等、対象業務が限定されているのですが、それと異なる依頼があったときにどう対応するか。メンバーシップ型に浸っている労働者からすると、これは断りづらいということかもしれません。メンバーシップ型からジョブ型へという大きな議論もありますけれども、人事管理の中でどう制度を考えていくかという課題の御指摘もあったように思います。
それでは、私のコメントは以上といたしまして、各委員から貴重な御指摘もありましたので、さらに何かコメント等があれば、御自由に御発言いただきたいと思います。
藤村委員、どうぞ。
○藤村構成員 先ほど私が申し上げた損害保険会社の情報会社で、経営側の意図は明らかに残業時間に対する支払いを減らしたいというところが見えていたのですね。だから、同意すべきではないのではないですかと申し上げました。本来支払うべき労働時間を経営側が減らしたいというときにこの裁量労働が使われているという実態がどうもあるようで、その辺をどういうふうに私たちはこの場で考えるかということが課題かと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
川田委員、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。川田です。
若干細かい点になるところですが、資料4に関することで先に申し上げさせてください。
まず、この資料4のデータ自体は、全体として、これからの検討のベースになるとてもよいデータが得られていると思うのですが、確認したいのは、非適用労働者について、どういう対象を選んでいるのかに関することです。先ほどの議論の中でも、属性をコントロールした上での比較を行う可能性等について御発言があったと思うのですが、もともとの調査の対象になる非適用労働者をどういうふうに選んでいるのかということです。具体的な制度との関係も視野に入れながらこのデータを使うことを考えたときに、例えば、非適用労働者について、資料4-3の42ページのところで、出退勤に関して非適用労働者についても自分が決めているという答えが高かったという回答があります。仮に、その前提になる制度が、通常の所定労働時間が決まっている労働者だとすると、やや違和感があるような数字ではないかと思います。例えば、対象になる労働時間制度がどういうものかは特に気にしないで、非適用労働者に該当するかどうかを判断している、あるいは、フレックス制があるとか、法的に正しいかどうかはともかく、適用除外の扱いをされている人なども入ってきているなどの可能性があるのかなと思いました。質問としては、もともとの非適用労働者は、どのような観点からというか、例えば、調査の過程で自分が非適用労働者に当たるという方に御回答いただくとか、どのような形で非適用労働者を選んだのかというところを、この後のことを検討していく前提として御確認させていただきたいと思います。
以上です。
○労働条件政策課長 労働条件政策課長でございます。
非適用労働者をどのようにして捉えたのかということですけれども、今資料4-2を御覧いただいている方であれば、2ページの一番下を御覧いただきたいのですけれども、先ほどの資料4-1のときにも御説明申し上げましたが、まず、この非適用労働者は、この資料の2ページでいきますと、②の非適用事業場、つまり、裁量労働制が適用されていない事業場の中から選んでおります。そもそも、まずは、この非適用事業場、プレ調査とございますけれども、裁量労働制を適用していない事業場を、3ページにかけて、様々な構成を踏まえて無作為に抽出したことが説明をされております。まずは、事前の調査によりまして、裁量労働制の対象となり得るような業務に従事している労働者がいるかどうかということを調べました。それを調べた上で、3ページの上、6行目ほどにございます本体調査といたしまして、この適用事業場の構成も踏まえまして、さらに無作為に抽出したと。非適用労働者といいますのは、3ページの④のところにございます。この非適用事業場において、裁量労働制の対象となり得るような同様の業務に従事している労働者から無作為に選ぶというところでございます。
ここで、2つございまして、一つは裁量労働制を適用するためには、実際には労使協定や労使委員会での決議が必要になりますけれども、非適用事業場においては制度を導入しておりませんので、そういった手続は経ておりません。したがいまして、非適用事業場においてこの裁量労働制の対象となり得る業務がありますというお答えは、それに回答している非適用事業場がそのように認識をしているということでございます。したがって、ここで厳密に本当にその裁量労働制の対象となり得るようなものかどうかといったことを個別に確認をするところまでは、この統計調査の性質上、行ってはいないということでございます。
もう一つ、労働時間制度との関係でいきますと、先ほど、資料4-3、15ページにもございましたとおり、非適用労働者に対しては様々な労働時間制度が適用されてございます。そういった意味では、本日は、まずはこういった調査集計されたものを御紹介させていただいておりますけれども、今後もそういった回答の内容を分析するに当たりましては、例えば、その適用されている労働時間制度ごとに、属性ごとに分析するといった工夫もしながら、有意義な議論の材料となるように努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、また今後も議論を続けてまいりますので、特にございませんようでしたら、次に、本検討会の今後の進め方について事務局で資料を用意しておりますので、説明をお願いしたいと思います。
○労働条件政策課課長補佐 資料5「今後の検討会の進め方(案)」を御覧ください。
今後、本検討会の進め方といたしましては、この資料にもありますとおり、まず、裁量労働制の実態把握について、3~4回程度検討会を行いまして、裁量労働制実態調査のデータについて、及び、ヒアリングを行っていきたいと考えております。その後、それも踏まえまして、裁量労働制に係る個別の論点やその他の柔軟で自律的な働き方を可能とする労働時間制度等につきまして御議論いただきたいと考えております。
以上でございます。
○荒木座長 資料5、今後の検討会の進め方について説明がありましたけれども、これについて、何か、御質問、御意見等はございますでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、まだ若干時間はございますので、先ほどいろいろ貴重な御意見をいただいたところですけれども、何かさらに補足的に御発言があれば伺いますが、いかがでしょうか。
先ほど、藤村委員からは、裁量労働制がいわば割増賃金を支払いたくないがために濫用的に使われているのではないかという御指摘がございました。以前のJILPTの調査では、裁量労働制に満足している人と不満がある人に分かれていて、不満があるという回答の多くは年収が非常に低い。まさに割増賃金を抑えるために濫用的に用いられているのではないかと伺えるようなものがあったように思います。今回は満足度が高いという回答も多いわけですけれども、そうではないところではどこに原因があるのかということについても検討していければと考えております。
ほかにはいかがでございましょうか。
よろしければ、本日用意していた議題については終了ということにさせていただきたいと思います。
最後に、事務局より、次回の日程等についてお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 次回の日程、開催場所等、詳細につきましては、追って構成員の皆様に御連絡させていただきます。
○荒木座長 それでは、第1回の検討会は以上で終了させていただきたいと思います。
本日は、お忙しい中、御参加いただき、どうもありがとうございました。
 

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