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政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和3年7月9日(金)14:00~15:41

場所

オンライン会議

出席者

構成員(五十音順、敬称略、◎:主査)
  •  稲葉 由之
  •  風神 佐知子
  • ◎加藤 久和
  •  高橋 陽子
  •  樋田 勉
構成員以外の関係者
  •  西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)
  •  眞子 武久(東京都総務局統計部人口統計課)
事務局
  •  鈴木政策統括官
  •  村山政策立案総括審議官
  •  武藤参事官(企画調整担当)
  •  野口統計管理官
  •  井嶋労働施策情報分析官
  •  奥垣統計企画調整室長
  •  渡邉審査解析室長
  •  高田雇用・賃金福祉統計室長補佐

議題

  1. 1 毎月勤労統計調査におけるベンチマークの更新等について
  2. 2 その他

議事

議事内容

○奥垣統計企画調整室長
定刻となりましたので、ただいまから第1回毎月勤労統計調査の改善に関するワーキンググループを開会いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。私は統計企画調整室長の奥垣です。よろしくお願いいたします。本日は初回となりますので、委員の方々の御紹介をいたします。参考3、本ワーキンググループの設置要綱を御覧ください。当ワーキンググループの構成員及び主査は、第22回厚生労働統計の整備に関する検討会において座長から指名されております。各構成員の皆様方の御紹介をさせていただきます。青山学院大学経営学部教授の稲葉委員です。慶應義塾大学商学部准教授の風神委員です。明治大学政治経済学部教授の加藤委員です。加藤委員には主査をお引き受けいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。続いて、独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員の高橋委員です。最後に、獨協大学経済学部国際環境経済学科教授の樋田委員です。また、本日は審議協力者として、早稲田大学政治経済学術院教授の西郷先生、東京都総務局統計部人口統計課の眞子課長に御出席いただいております。
続いて、事務局の紹介をいたします。政策統括官の鈴木です。政策立案総括審議官の村山です。企画調整担当参事官の武藤です。審査解析室長の渡邉です。統計管理官の野口です。労働施策情報分析官の井嶋です。雇用・賃金福祉統計室長補佐の高田です。
それでは、会議の開催に当たりまして、政策統括官の鈴木から御挨拶を申し上げます。
 
○鈴木政策統括官
厚生労働省の統計担当政策統括官の鈴木です。先生方におかれましては、毎月勤労統計調査の改善に関するワーキンググループの構成員に御就任いただき、また、本日はお忙しい中会議に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。皆さん御存じのとおり、毎月勤労統計は、その名のとおり、毎月日本全国の3万余りの事業所に対して調査を行い、賃金や労働時間、雇用の状況を時系列比較可能な形で集計・公表しております基幹統計でして、様々な分野で御活用いただいているものであります。
厚生労働省といたしましては、先般の不適切事案の反省としてガバナンスの強化などに努めているところではありますけれども、これと併せ、毎月勤労統計が利用者の皆様方にとってより使いやすく、精度の高い統計になるよう改善することも重要な課題だと考えております。
その具体的な改善の方向について、これまで統計委員会にも御相談しつつ検討してまいりましたが、特に中長期の課題については、厚生労働省の中での専門的な議論が必要ではないかということで、今般、厚生労働統計の整備に関する検討会の中に、本ワーキンググループを設置したところです。先生方におかれましては、専門的な見地から、是非、有意義な御意見を頂きますようお願い申し上げまして、私からの御挨拶に代えさせていただきます。
 
○奥垣統計企画調整室長
次に、本日の出席状況ですが、全ての委員の皆様に御出席いただいております。それでは、以後の進行については、加藤主査にお願いします。よろしくお願いいたします。
 
○加藤主査
皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本ワーキンググループ主査の加藤です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、議事を進めてまいりたいと思います。本日の議題ですが、1「毎月勤労統計調査におけるベンチマークの更新等について」、2「その他」となっています。本日のワーキンググループは、16時までを予定していますが、予定時間を若干過ぎる可能性もあるかと思います。そのような場合、御予定がある方は御退席いただいても結構です。
それでは、議事1「毎月勤労統計調査におけるベンチマークの更新等について」です。毎月勤労統計調査は複雑な調査ですし、これまで統計委員会等でいろいろな検討がされてきたという経緯もあります。そこで、今後の議論に資するため、私から事務局に指示して、背景を説明する資料を作成していただきました。それでは、事務局から説明をお願いします。
 
○野口統計管理官
統計管理官の野口です。それでは、資料について御説明します。本日御用意した資料1、資料2について御説明します。まず、資料1の1ページ目です。毎月勤労統計調査の概要をまとめています。毎月勤労統計調査は皆様御承知のように毎月、雇用・給与・労働時間の変動を示す統計を作成していますとともに、年1回特別調査という調査を実施しています。その全体をこの表にまとめています。表で申しますと、第一種事業所、第二種事業所のこの2つが、いわゆる毎月勤労統計調査の毎月の公表分に該当するものです。一番下の1行ですが、常用労働者1人以上5人未満を雇用する事業所について、年1回調査をするというのが特別調査です。
それぞれについて代表的なところを、後ほどの資料のことも勘案しながら御説明します。まず、第一種、第二種の事業所を調査する調査ですが、全国調査、地方調査に分かれて調査をしながら、全国調査、地方調査のそれぞれを取りまとめて公表しています。第一種、第二種の主なところで、抽出方法を御覧ください。
まず、第一種事業所については、事業所母集団データベースを母集団として、標本抽出をして調査しています。従業員500人以上規模の、いわゆる500人以上規模の事業所については全数を調査していますが、それ以外の所については、後ほど御説明するローテーション・サンプリングにより、3分の1ずつ客体を入れ替えるという形で標本を管理しながら調査をしています。第二種事業所については、経済センサスを用いて作成した調査区を抽出単位として、層化無作為の二段抽出で調査区を選定した後に事業所を選定するという方法で調査しています。
御参考まで、一番右の調査方法の、第二種事業所の調査方法と特別調査の調査方法ですが、昨今のコロナウイルス感染症対策として、第二種事業所については調査員調査をしていましたが、コロナウイルス感染症対策の一環として、調査員調査の実施が困難な場合は郵送調査をできるよう措置をしています。また、特別調査については、令和3年から、調査員調査の実施が困難な場合に郵送調査、オンライン調査を可能とするように措置をしています。
それでは、もう少し全体が見えるように、2ページ目をお開きください。特記する所を御説明します。調査の概要のうち、調査内容ですけれども、これは全くの御参考ではありますが、先ほど申し上げた特別調査については、令和2年度は調査を中止し、代替調査を実施しています。3つ目の○ですが、それぞれの調査の調査客体の規模ですけれども、全国調査は3万3,200事業所、地方調査は4万3,500事業所、特別調査は2万5,000事業所程度それぞれ調査するという方法になっています。○の4つ目に、調査方法と調査経路を図示しています。今、申し上げたことも含め、第一種事業所には厚生労働省から都道府県、都道府県を経由して対象事業所に調査票をお送りして郵送で御回答いただく、それから、オンラインで御回答いただくという方法を取っています。第二種事業所については、都道府県の下に統計調査員を置き、統計調査員が事業所を訪問して調査をするという方法を取っています。下の線にありますように、第二種事業所についても、希望する所にはオンライン調査を実施できるように措置をしています。
主な調査結果、利活用については割愛しますが、皆様御承知のとおり、毎月勤労統計調査は雇用保険の基本手当日額の算定等に使われている、そのほかに月例経済報告等の経済統計や経済判断の指標として利用されています。さらに、国民経済計算の雇用者報酬の算定などに利用されている、国の重要な統計の1つと位置付けられているところです。
では、毎月勤労統計調査の標本や推計の方法について御説明します。3ページ目に移ります。毎月勤労統計調査の標本設計・標本抽出をイメージ図を交えながらポイントを御説明します。まず、第一種事業所、いわゆる事業所規模30人以上規模の事業所に対する調査は、母集団の事業所を都道府県・産業・規模で層化をして、その層の中から事業所、全国及び地方調査分の約1万5,200事業所、地方調査のみ分の約1万300事業所を抽出しています。一方、5~29人規模の第二種事業所については、二段抽出という形を取り、全国の経済センサスを用いて作成した全国約7万調査区から1,800調査区を抽出しています。この調査区から1調査区当たり約10事業所を抽出するということで、客体1万8,000事業所を指定するという方法を取っています。先ほど地方調査分と全国調査分と申し上げましたが、毎月勤労統計調査について、全国調査をするための客体に合わせて、全国調査の客体では十分ではない分を地方調査のみを対象とする分として、約1万300事業所を追加抽出しているところです。このため、地方調査の平均を取っても、全国調査の平均とは一致しないという特徴があります。
続いて、4ページ目です。毎月勤労統計調査の標本ですが、今、御説明したような抽出方法で、従来、第一種事業所については3年に1回、全ての標本を入れ替えるという方式を取っていました。ただ、標本を一遍に入れ替えたときに、数値のギャップなり断層が発生するということがありますので、これを改善するために平成30年からいわゆるローテーション・サンプリングという方法で客体を3分の1ずつ入れ替えるという方法に変更を始めています。平成30年から第1回分のローテーション・サンプリングの入替準備を始めていますが、令和2年1月分から実際の3分の1ずつの第1組、それから、令和3年1月分に第2組、来年4年1月分から第3組分が始まり、この3組が機能することで、始めてローテーション・サンプリングが機能していくということになっています。
一方、第二種事業所については、3グループに分け、調査期間を6か月ごとに、3分の1ずつ入替えるという方法で、実質的には時期をずらしながらローテーション・サンプリングのような方法を従来から取っています。第一種事業所は調査の対象期間が3年なのに比べ、第二種事業所は規模の小さい事業所ですので、1.5年間を調査対象期間として調査に御協力いただいているところです。
続いて、5ページ目に、参考までに標本の入替えによってどういうことが数字の中で起きているのかをまとめた資料を御用意しています。大きなところで申しますと、きまって支給する給与、現金給与総額のそれぞれについて、事業所の入替えに伴い、5人以上規模で、きまって支給する給与額が306円、比率にして0.1%、下の表で申しますと、現金給与額で2,089円、比率にして0.8%のマイナスとなっています。その右側の表ですが、これを規模別に要因分解しています。規模別に要因分解をすると、規模によってプラス・マイナスが少しずつ変わってきています。なお、500人以上規模については、全数調査であるにもかかわらず客体の入替えによる影響が発生していますが、これは実際の事業所が500人以上規模でなくなったもの、若しくは新たに500人以上規模になった事業所など入替えする措置が行われていますので、それに伴った数字の変動と考えています。
一方で、毎月勤労統計調査の推計の方法に説明を移ります。資料6ページ目です。毎月勤労統計調査の調査結果は、事業所に回答いただきました調査結果を、抽出調査の基本的な手法に基づき復元し、更に母集団に復元をした上で推計するという方法を取っています。資料の真ん中から下の左側の絵を御覧ください。これは常用労働者について取り扱っているものですが、産業・規模別に事業所からの回答を、それぞれの事業所に割り当てられている抽出率の逆数によって復元をするという措置をしています。これらを束ねた上で、更に常用労働者については、毎月勤労統計調査の母集団労働者数を毎月別途推計していますので、その母集団労働者数と調査結果の常用労働者数を一致させるための比率を計算して、この比率を復元に用いるという方法を取っています。この比率で戻していく絵が右側の絵ですが、例えば給与支給総額であれば、事業所の調査結果を抽出率逆数による復元を行った上で、推計比率のRを乗じて給与支給総額を計算するという方法で計算しているところです。
では、今、御説明いたしました母集団労働者数をどのように推計しているかというのを、資料7ページ目にまとめています。毎月勤労統計調査ですので、設計の一番最初の母集団は時間経過とともに変わってくるということを考慮して、7ページの資料の真ん中の右側と左側、それぞれ母集団補正の措置を毎月講じています。まず左側ですが、雇用保険データを用いて、いわゆる規模ごとに、5人以上規模の事業所の労働者数の変動、新設事業所の労働者数、廃止事業所の労働者数、これらを継続事業所の労働者から相殺しながら補正しています。相殺のイメージについては、補正比率の下の式にありますxの所に計算式を掲載しています。また、毎月勤労統計調査では、毎月の前月末、当月末の労働者数を把握していますので、前月、当月の差分について、資料の右側にありますように、母集団事業所の労働者数の補正をしています。これら両方の補正を行ったものを母集団労働者数と取り扱うという方法を取っています。
一番下に地方調査について注記していますが、このように雇用保険のデータを使ったものを都道府県ごとに実施するのは技術的にも困難を伴うために、地方調査の労働者数はこれらの補正を行わずに、前月分調査の本月末労働者の推計結果を当月分の前月末母集団として推計するという方法を取っています。これが大まかな毎月勤労統計調査の抽出と推計の概要をまとめたものです。
続いて、資料8ページです。毎月勤労統計調査は、様々な資料を作って公表しています。こちらに一覧をまとめています。代表的なものを御紹介します。まず、一番上の行ですが、毎月の結果として、速報を調査月の翌々月10日までに公表する。その上で、確報として調査月の翌々月下旬に公表しています。この公表方法は、厚生労働省のホームページに概況を掲載するとともに、いわゆる政府のe-Statに詳細な統計表を掲載しています。
ユーザーの皆様には、月の結果と併せてよくお使いいただいているものとして、2行目の年結果があります。年結果は毎月勤労統計調査の12月分の結果速報、12月分の結果確報と併せて同様の形で公表しています。
上から4つ目ですが、いわゆる毎月勤労統計調査の特別集計として、夏季賞与、年末賞与の集計をしています。これについては、6~8月に特別に支払われた給与のうち、賞与として支給された給与を特別集計して夏季賞与、同様に11月から翌年1月に特別に支払われた給与のうち、賞与として支払われた給与を特別集計したものを年末賞与として、それぞれ直近の公表、夏季賞与であれば毎月勤労統計調査9月分速報、年末賞与ですと2月分の結果速報と併せて公表しています。
それから、注記をさせていただきたいのはその次の行ですが、月報というのを公表しています。月の結果を取りまとめたものを冊子にして公表しているものです。年報は冊子を作成して、e-Statに掲載しています。月報は今、冊子の作成だけになっており、諸々の資料の作成の中でこうしたものをどのように取り扱っていくかということも、今後、先生方の御意見を頂けると有り難いと思っています。地方調査、特別調査については、資料を御覧いただければと存じます。
では、このような公表形態で取り扱っています毎月勤労統計調査の公表値にどのようなものがあるかというのを、資料9ページにまとめています。大きく申しますと、月の調査結果を集計したものとして実数を推計して公表しています。それから、時系列統計として、実数について基準年の平均を100として計算した指数というものを作成しています。基準年については、後ほどの資料の中で出てまいりますので、そのときに触れます。
この指数については、時系列としてよく用いられている季節調整を実施して、季節調整済指数というものを作成して公表しています。御参考まで、資料の大きな○の1つ目の一番下の※ですが、季節調整の手法を注記しています。季節調整は、現在センサス局法のX-12-ARIMAの中のX-11デフォルトを使っています。2つ目の○ですが、指数や季節調整済指数については、過去に遡って改訂するということが仕組みとして設けられています。
指数の遡及改訂の機会ですが、まず1つ目が、基準年を変更しますと、基準年平均を100とした指数を計算しているために分母になる値が変わってきますので、指数が変わってくるということで、指数改訂をしています。それから、今回御議論いただきたいと考えています、ベンチマークを更新したときに常用労働者数の指数であります常用雇用指数を過去に遡って改訂しながら、データをうまく接続するという遡及改訂を行っています。
御参考まで、※の2つ目ですが、平成27年1月までは、調査客体の入替えに伴い、賃金・労働時間指数についてギャップ修正を行っていましたが、今後については、ローテーション・サンプリングの導入に伴い、この修正を行わないという方針で臨んでおります。それから、季節調整済指数の改訂について、御参考まで御報告しますと、季節調整の作業は毎年1回、12月分のデータがそろった段階で原則始点まで遡り、全期間の季節調整指数を改訂するという方法を取っています。12月以降、当年の年末までについては、季節調整値の計算のときに算出されます予測季節要素を用いて季節調整値を計算しています。
続いて、資料の10ページです。毎月勤労統計調査の数値については、不適切な取扱いがあり、期間に応じた幾つかの公表値を作っているところです。まず1つ目が、平成15年12月以前については、従来の毎月の集計結果を用いて、これを主系列としています。平成16年1月から平成23年12月については、現在、時系列比較のための推計値を計算して公表しています。平成24年1月から令和元年5月までについては、抽出調査を行いながら復元をしていなかった時期に必要な復元を行った再集計値として系列として公表しています。令和元年6月以降については、毎月の集計結果を時系列として公表しています。これらを主要系列としながら、過去の経緯が分かるような参考系列を一定期間公表しながら、皆様に状況に応じた数字の動きを見ていただけるように措置しているところです。
御参考までに、資料の11ページ目に、参考指標の1つとして共通事業所の集計値を公表しています。共通事業所とは簡単に申しますと、前年と引き続き調査対象になっている事業所について、その事業所のみについてデータを集計して比較したものを公表しているものです。特徴としては、2つ目の○の2行目以降です。調査対象事業所の部分入替えや労働者数のベンチマーク更新による断層を含まない数値ということで、数値の動きを把握していただける参考値として御利用いただけるようにしています。御留意いただきたい点としては、通常の公表値に比べてサンプルサイズが小さくなるという点があります。
こうした経緯の中で、毎月勤労統計調査については、不適切な取扱いを行っていた時期があります。その不適切な取扱いの概要を資料の12ページにまとめています。大きく申しますと、1つ目、これは、東京都の一部について、500人以上規模の事業所を全数調査すべきところを抽出調査で行っていたことです。また、二つ目、この調査区分について、統計処理として復元すべきところを復元していなかった。抽出調査の場合には、抽出に応じた復元をすべきところですが、この復元を行っていなかったことがあります。併せて、三つ目、これらの精査の中で、調査対象事業所が調査計画よりも少なくなっていたということが明らかになっています。現在、これらについては、それぞれ真摯に取り組み措置をしているところです。
13ページ目に現在の対応の状況をまとめています。以上の3点について、中ほどの「現在までの対応状況」です。まず、1つ目の全数調査をすべきところを抽出調査で実施していたことについては、令和元年6月から、東京都の500人以上規模の事業所について、既に全数調査で実施をしています。この不足していた部分については、当時の状況から、厚生労働省が直轄で調査をしていましたが、令和4年1月から、東京都と十分な調整をした上で東京都に移管し、本来の毎月勤労統計調査の調査系統に戻すことを予定しています。
調査対象事業所の不足については、まず、抽出調査でやっていたために不足していた事業所については、直轄調査で補うことで予定した数字を確保しています。それ以外に、約2,000の事業所について、毎月勤労統計調査の調査対象事業所数が不足していたことが判明しています。この2,000の事業所については、令和3年のローテーション・サンプリングで新たに始まった組、それから、令和4年のローテーション・サンプリングで新たに調査を開始する組の中で、それぞれ事業所数を増やしながら、令和4年1月分調査から、調査計画にある調査客体数となるように措置を講じる予定としています。
最後に、統計処理として復元すべきところを復元しなかったことについては、先ほどの主要系列の中で御説明しました再集計値を平成31年1月に公表しています。再集計値を作成できなかった部分、平成16年から平成23年については、時系列比較の推計値として、令和2年8月から順次公表しているところです。以上により、過去の不適切な事案については、道筋を付けて着実に解消するところに至っています。
資料の14ページから17ページについては、今、御説明した技術的な点を中心に数式の形でまとめていますので、御参照いただければと思います。
指数の中でギャップ修正というものが過去に行われ、指数補正をすることを御説明しましたが、過去の指数の遡及の改訂の方法について18ページにまとめています。簡単に申しますと、指数を遡及で改訂しなければならないという時点と、もう1つ過去の時点を設け、三角形を形成して指数を変更するということ。それから、平行移動で始点から過去の指数を遡及することが、過去の毎月勤労統計調査の技術的な検討の中で実施されていたものですので、御参照いただければと思います。
資料1の最後のページの19ページ目です。毎月勤労統計調査の季節調整についてまとめています。表の一番上の左側を御覧いただくと、平成12年1月に現在の方法を採用していまして、センサス局法のX-12-ARIMAのX-11デフォルトを使って実施しています。表の左側の一番下ですが、頻度については年に1回、その隣の時期については、12月までのデータがそろった時点で実施しているところです。これら御説明しましたポイントを総務省の一覧にも掲載し、公表しているところです。以上、御参考までです。
続いて、ワーキンググループの進め方について、事務局で整理した資料2について御説明します。1ページ目です。1つ目の○は、毎月勤労統計調査について、ローテーション・サンプリングの導入や不適切な取扱いへの対応について、今まで実施してきていることを整理したものです。○の2つ目です。今後、毎月勤労統計調査を更に利活用に資する統計とするために様々な課題を洗い出しており、それらについて、基本的に速やかに見直すべき事項については見直しをしながら、技術的な検討が必要な事項について、今回、ワーキンググループでお集まりの委員の方々に御検討いただきながら改善をしていくということで臨んでおります。
1つ目の、速やかに見直すべき事項について見直すという所ですが、現在、厚生労働省で、事務的な見直しを進めている点を四角囲みの中に整理しています。まず(1)です。毎月勤労統計調査規則を7月に改正をしています。1つ目として、オンライン調査を利用しやすくするために、従来、オンライン調査を実施していただく事業所に利用希望届を御提出いただいていましたが、新規調査対象事業所については、この利用希望届を廃止して、あらかじめID・パスワードを皆様にお配りする措置を講じています。もう1つは、特別調査において、冒頭で簡単に触れましたが、従来は調査員調査で実施をしていましたが、新型コロナウイルス感染症への対応として、郵送やオンラインによる回答も可能としながら、令和3年の特別調査を実施する準備をしています。
(2)です。現在、統計委員会に諮問をしている内容です。1ですが、先ほどありました東京都への調査の移管について、調査系統の変更を申し出ています。東京都の常用労働者数500人以上規模の事業所のうち、国が直轄で実施していた事業所について、令和4年1月から、東京都に実施をしていただくために、東京都と協力しながら準備を進めており、その事務を円滑に回すとともに、調査系統を調査計画で変更するというものです。2番目は、特別調査の公表の期日です。特別調査については、公表の期日を従来は12月末としていたものを、翌年の1月末にするという変更を予定しています。そのほか、1つ飛びまして4です。毎月勤労統計調査の調査計画の内容を詳細化して、具体的にどういう措置、どういう系統でどういう調査を実施しているかということを分かりやすく記述し、皆様にも見ていただきながら、調査の内容を詳細に定めていくことを今回、実施しています。
資料の2ページ目です。毎月勤労統計調査の改善に向けて、中長期的なスケジュールを整理しています。詳細は割愛しますが、中ほどに赤囲みで本検討会の予定を案として御提示しています。
続いて、資料の3ページ目です。技術的な検討が必要なもの、外部から指摘を頂いていることを整理したのが3ページ目です。参考として御紹介します。統計委員会における主な指摘事項として、地方調査の標本も合わせて全国の集計をすることを、意見として頂いているところです。
全数調査をしている500人以上規模の事業所について、1,000人以上規模の事業所と500人から999人規模の事業所に分けたときにどのような差があるのか。その差に応じて、全数調査をする規模をどのように設定するのかを検討してはどうかという御意見を頂いています。
ベンチマーク更新を実施する際に、産業構成の変化などが発生していますので、これによって雇用の前年比がどのように動くのか、その動きをゆがまない形でできる計算方法はないのかという御示唆を頂いています。
サンプル入替え、ベンチマーク更新に関する情報開示というのが従来は不十分であった。若しくは、入れ替えた後に指摘を頂いてから情報開示をしていたという時期がありますので、情報開示を併せてやるようにという御指摘も頂いています。
詳細を省いていますが、母集団労働者数の推計の中に、雇用保険データによる補正の適合度合いとして0.5というのがあります。資料1の7ページを併せて御覧ください。資料1の7ページに、左側の補正比率の「x=」という式の一番後ろに「K」とありますが、この「K」が適合度合いです。a分のb+c-d-eが雇用保険による労働者の影響分です。この影響分に0.5を掛けたものを毎月勤労統計調査の母集団に反映させているものです。この0.5について検証してはどうかという御示唆です。
回収率を考慮した上で推計方法を検討してはどうかという、推計方法についての御示唆も頂いています。また、毎月勤労統計調査の公表については、e-Statのデータベース機能を使うなど、利用者が使いやすい形で公表してはどうかという御示唆を頂いています。
現在、第二種事業所の調査、特別調査もですが、調査員調査を実施していますが、調査員への依存度が少なく、安定的に調査ができる調査方法がないのかという御示唆も頂いています。
企業にとって負担のない形で情報が集まる仕組み、例えば企業が実務で実施するような何らかの措置で調査の情報が集まるような仕組みが考えられないかということではないかと理解していますが、こういった企業負担を軽減しながら調査を確実に実施するという御示唆も頂いています。
毎月勤労統計調査については、毎月、母集団情報を修正しながら実施している関係がありまして、過去に誤りなどがあった場合に数値の訂正が発生します。この数値の訂正が分かりにくいので、数値の訂正の通知の仕方などを工夫してはどうかという御示唆などを頂いています。以上が統計委員会で頂いている主な指摘事項です。
これに加えて、私どもとして、事務的に標本設計の見直し、先ほどありました500人以上規模のサンプルサイズなど、こういったものが今後、見直す必要があるような点ではないか。それから、ポツの2つ目です。季節調整法として、X-11デフォルトを使っていますが、昨今の政府統計の中では、異常値処理などをオプションとして利用している統計もあり、毎月勤労統計調査の季節調整の方法として、適切若しくは推奨されるべきものがどういうものかというのも検討する必要があるものと考えています。
以上が、毎月勤労統計調査に関する主な課題です。今回、こうした課題を皆様の御意見も頂きながら整理をして、取り組むべきものを定めながら確実に取り組んでいければと考えています。なお、3ページ目の一番下に注記をしています、共通事業所の集計については、過去に、「毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会」というもので検討をしていまして、ローテーション・サンプリングが平準化して安定な分析ができる時点で改めて検討を行うべきとされていますので、将来的な課題として認識はしていますが、現下の課題ではないと整理をしたいと考えています。説明は以上です。
 
○加藤主査
どうもありがとうございました。とても分かりやすい資料を御用意いただき、本当にありがとうございます。毎月勤労統計調査の概要、抱えている課題について、非常によく理解できたと思います。それでは、ただいまの御説明について、御質問も含めて委員の皆様からどうぞ御自由に御発言いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
○高橋委員
質問をさせていただきたいと思います。高橋と申します。
 
○加藤主査
よろしくお願いします。
 
○高橋委員
地方調査の保存について御説明いただいたのですが、こちらは保存するということだけでしょうか。地方調査の結果は、今ホームページに都道府県ごとに載っている状態だと思うのですけれども、我々ユーザーとしてはとても使いづらいです。各都道府県にかなり裁量があって、統一基準で使おうとする場合に非常に使いづらい状態です。こちらは、厚労省で全てフォーマットをそろえて使いやすくするなどの御予定等はあるかということを伺いたいと思います。
 
○加藤主査
事務局で御回答をお願いします。
 
○野口統計管理官
事務局です。御質問いただいた点ですが、まず地方調査の集計については、同じ技術で同じ方法で集計しています。公表については、基本的に公表すべき事項は共有していますが、都道府県の実情や事務量、ユーザーに応じて今の段階では、基本的公表事項がありますが、全体的に統一という形にはなっていないようなところです。その関係で、都道府県ごとのニーズに合わせて調査の公表様式の形態が少し変わっていたりしています。
 
○高橋委員
分かりました。では、記録の保存だけを厚生労働省で行うことになっていて、我々が各都道府県にデータを取りに行くという形を継続されるということで理解しました。ありがとうございます。
 
○加藤主査
風神先生、マイクがオンということですが、何かもし御質問、コメント等がございましたらよろしくお願いします。
 
○風神委員
はい、発言させてください。コメントさせていただきたいと思います。特別調査は今回からオンライン調査をするということですので、是非これはオンラインにしたことによって回答にどのような変化があったのか、例えば、あり得ない回答をして、その処理が必要であったとか、回答率が上がった下がったということを是非、今後のためにどのようなことがあったのかという分析をしたらいいのではないかと思います。そのことが将来的に調査員調査に依存しない安定性でしたり、回答率が低下していくということがいろいろな調査で問題になっているところですが、そういったことの何か改善につながるのではないかなと考えています。
また、毎月勤労統計調査を利用する際に見ていると、ほかの政府統計に比べて若干訂正が頻繁に出るように感じています。もちろん、きちんと訂正が出されるということは良いことだと思いますが、訂正の要因というものを拝見していますと、県職員が不適切な事務処理を行っていた事案があったためであったりとか、例えば、一部の産業の季節調整済指数について、入れるべき箇所に前年比が掲載されていて、前年比が掲載される箇所が空欄になっていたので修正したとか、そういったものも散見されますので、それがこの調査特有に発生したり、何か事務手続上で発生したりしているのか、もちろん人がやることですから、そういった何が要因で起きているのかというのを確認して、できるだけそういったことが起きないようにしていく工夫も必要ではないかと考えます。
また、資料2の最後のほうにありました統計委員会の皆様から出されているe-Statのデータベース利用など、ほかの御意見もいずれもごもっともなものだと思いますが、例えば訂正についても場合によっては利用者が一旦データをダウンロードしてしまうと、しばらくそのホームページを訪れることなく、訂正が出ていたのかどうか気付かないこともあるので、今思い付いただけで実際にこれが事務手続上できるのかどうかは分かりかねますけれども、例えば希望者がメールアドレスなどを登録しておくことで、欲しい場合には一斉送信で訂正があったときにそれを受信できるとか、何か工夫ができるのではないかなと思いました。今後このワーキンググループが進んでいく中でまた改善点などが出てくるかなと思います。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございました。事務局から今のお話についていかがでしょうか。
 
○野口統計管理官
事務局です。風神先生、ありがとうございました。先生のおっしゃるとおり、オンライン調査を利用することで調査にどのような影響が出るかということは課題だと私どもも考えていますので、どの程度の分析ができるかも含めて十分に考えながら、結果について分析させていただきたいと思っています。また機会を見つけて先生方に御報告しながら、御意見等も頂ければと考えているところです。
訂正が頻繁に起きていることについては、いろいろな事情があるにしろ適切ではないと考えており、そこはまず、おわび申し上げます。その上で、今後、毎月勤労統計調査の事務体制を更に見直し、チェック体制を充実させたり確実なものとしていくことで、この機会をできるだけ低減させるように措置をしていきたいと考えています。また、厚生労働省全体としては、厚生労働省の統計に対するビジョンを設けて、統計プロセスを精緻化するというようなことも考えています。
データベースの利用については、今後、e-Statのデータベース機能を活用していくということが1つの課題になっています。それについても課題として取り上げて進めていくことを考えていますので、御示唆など頂ければ幸いです。
 
○加藤主査
風神先生、よろしいでしょうか。
 
○風神委員
はい、ありがとうございます。
 
○加藤主査
ほかにいかがでしょうか。
 
○稲葉委員
稲葉です。今回、検討課題について1つ質問させてください。ベンチマーク更新の方法を中心に検討するということが今年度、課題として挙げられているわけですが、これが適用される指数としては常用雇用指数のみと考えてよろしいのでしょうかという質問です。ほかの指数、例えば現金給与指数とか労働時間指数についての適用というものは除外して、まずは常用雇用指数のベンチマーク更新といったもので遡及改訂のことを考えていくということが研究課題の範囲として考えられているのかということについて、教えていただきたいと思います。お願いします。
 
○野口統計管理官
御回答申し上げます。まず、ベンチマーク更新を実施しますので、ベンチマークが変わることによって、いわゆるウエイトの変更が発生します。そういう意味で将来の指数が変わっていくこと、常用労働者数については、ベンチマークを取り直した後に指数の訂正が発生しますが、過去のような大規模な指数の見直しということは、現在考えていないという状況です。
 
○稲葉委員
分かりました。常用雇用指数を中心に考えていくということで、ありがとうございました。
 
○加藤主査
ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 
○西郷先生
西郷です。委員ではないのですが、発言させていただいてよろしいでしょうか。
 
○加藤主査
よろしくお願いします。
 
○西郷先生
このワーキンググループの検討課題ではないようだったのですが、令和4年1月から、東京都の500人以上規模の事業所について、これまで本省直轄でなさっていた調査を東京都に戻す、本来の姿に戻すというようなお話がありました。その結果、東京都さんのほうでは、かなり実査の負荷が増える恰好になると。500人以上規模のものは東京都に集中しているような傾向があるので、結果的に東京都さんの実査の負荷というのはかなり大きくなるということになると思います。東京都の500人以上規模の賃金というのは比較的高めなので、ここをどれぐらいきちんと取れるかということが毎月勤労統計調査全体の精度に大きく影響することです。東京都における負荷の増加ということが、ちゃんと無理なく実査をこなし切れるような見通しというのがあるのかどうか、システム上ないしは人員上の措置とか、そういうことも含めて簡単に御説明いただければと思うのですが、よろしくお願いします。
 
○加藤主査
ありがとうございます。
 
○野口統計管理官
厚生労働省でまとめて御回答します。東京都に厚生労働省の直轄分を移管することについては、昨年夏頃から東京都と事務調整を実施しており、東京都の負荷、調査対象となる事業所の方々の混乱をできるだけ低減させながら実施できるように準備をしてきているところです。実際に移管した後も引き続き調整をしますが、準備段階としては双方の事務局が考え得る課題や問題点等を洗い出しながら、相互に調整をするという過程で準備を進めているところです。
 
○西郷先生
ありがとうございます。
 
○加藤主査
西郷先生、ありがとうございます。西郷先生からいろいろとアドバイスを今後も頂かなければいけないと考えていますので、もしまた西郷先生、何か御意見、御質問等があれば是非よろしくお願いします。
 
○西郷先生
承知しました。
 
○加藤主査
ほかにいかがでしょうか。御自由に御発言いただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、次の議題に移りたいと思います。毎月勤労統計調査におけるベンチマーク更新等について、事務局から御説明をお願いします。
 
○野口統計管理官
事務局です。本日、用意した資料3について御説明します。資料の1ページ目です。母集団労働者数のベンチマーク更新とはどういうものかというのを整理したものです。まず、1つ目の矢印ですが、ベンチマーク更新は、毎月勤労統計調査の母集団労働者数を適切に設定することを目的として実施しています。2つ目の矢印ですが、事業所の全数調査である経済センサス等の結果を、ベンチマーク若しくは一般的に言うと真の値として取り扱いながら、労働者数の増減を反映させて集計・推計をしていく。その集計の比率が賃金・労働時間の集計値のウエイトになっていること、これがベンチマークにより毎月勤労統計調査に発生する影響と考えています。ベンチマーク更新については矢印の3つ目に整理していますが、年月がたつと推計と実績が乖離してくるので、この乖離を是正するために全数調査である経済センサス等の結果を用いてベンチマーク、いわゆる水準点として母集団労働者数を設定する方法を取っているところです。
資料の2ページ目を御覧ください。過去のベンチマーク更新の実績を整理しています。従来は経済センサス、事業所・企業統計調査などをベンチマークとして活用しています。間隔としては、いわゆる全数調査の間隔である3年から6年程度の間隔でベンチマーク更新を実施していたところです。前回、平成30年1月分調査から平成26年の経済センサス‐基礎調査をベンチマークとして、ベンチマーク更新をしています。
現段階で、今後、ベンチマーク更新をする候補が幾つか考えられ、ベンチマークで利用可能若しくは候補となる統計として、現存するいわゆる全数調査的なものを挙げています。
資料で申しますと色塗りで下のほうの表ですが、3つの調査・データと1つの参考を今後のベンチマークの可能性のある調査・データとして整理しています。1つが、平成28年経済センサス‐活動調査です。この調査は全ての民営事業所を調査したものです。2つ目ですが、事業所母集団データベース令和元年次フレームです。これについては令和元年の経済センサス‐基礎調査によって全ての事業所を把握し、行政情報等も交えながら母集団フレーム、いわゆる各抽出調査の母集団として政府が整備しているデータベースです。3つ目ですが、現在、実施されている令和3年経済センサス‐活動調査が全ての事業所を調査する調査として実施されています。このほかに、令和元年経済センサス‐基礎調査というものを実施しています。これは全ての事業所を調査していますが、既存事業所については活動しているかどうかということにとどまり、労働者数などを調査していないという特徴が挙げられると聞いています。
次に、経済センサスと事業所母集団データベースがどのようなものかを簡単に整理したものが、次の3ページ目です。3ページ目に経済センサスの見直しについて整理しています。経済センサスは経済構造統計の作成を目的とする調査で、5年に1回、活動調査を実施することとし、活動調査の中間年に基礎調査を実施しています。経済センサス‐活動調査の中間年の調査について、令和元年の基礎調査は他の調査の整理統合等がありました関係で、過去の基礎調査とは大きく性格や内容が変わっています。その点を下の表で整理しています。
まず、経済センサス‐基礎調査について、平成26年と令和元年を比較しています。今回は令和元年のポイントを御説明します。全ての事業所を調査していますが、民営事業所については令和元年6月から令和2年3月までの期間で実態を把握するということ。主な変更点として、全国を順次調査するという方法で、時間の経過とともに少しずつ調査を積み重ねていたところです。先ほど御説明したとおり、既存の事業所については外観により存続の確認、新規把握事業所については調査票を配布するという形態になっています。経済センサス‐活動調査、表の右側ですが、先ほど御説明した平成28年調査と今回実施している令和3年調査について、それぞれ整理しています。この両者の大きな違いとしては、平成28年の経済センサス‐活動調査が全ての民営事業所を調査したものとなっていて、いわゆる公営事業所についての調査が実施されていません。令和3年の経済センサス‐活動調査については、全ての事業所について調査しているところです。
続いて、4ページ目です。先ほど御説明した事業所母集団データベースについて御説明します。年次フレームとは、いわゆる経済センサスの調査票情報を基礎として各種の行政記録、各統計の結果などによって政府の統計調査の母集団情報を整備しているものです。令和元年の年次フレームの特徴ですが、令和元年経済センサス‐基礎調査を基礎として、2019年に実施した経済構造実態調査などをベースに、様々な統計調査の結果や行政記録を用いて整備した、いわゆる母集団データベースとなっています。
次に、今申し上げました経済センサス‐活動調査と事業所母集団データベースについて、毎月勤労統計調査のベンチマーク更新として改めて考えたときに、どういう課題があるかを整理したものが資料の5ページ目です。平成28年経済センサス‐活動調査ですが、御説明したとおり公営事業所分の労働者数が把握されていないため、公営事業所分の労働者数を他の統計から推計することが必要と考えます。さらに、その推計方法には幾つかの方法があるかと思っています。幾つかのリソースを使って推計することになるかと思いますので、リソースや推計方法について検討が必要ではないかと考えています。
2つ目、事業所母集団データベースの令和元年次フレームですが、今、御説明しましたように令和元年の経済センサス‐基礎調査をベースとしていますので、労働者数が全て最新に更新されているわけではないと把握しています。この辺がベンチマークとしてどうかということが1つの検討課題かと思っています。
最後に、令和3年経済センサス‐活動調査ですが、1つは、現在調査しているところですので、公表は令和4年9月以降、順次と伺っています。実際にベンチマーク更新に利用できるのは、仮にですが、毎月勤労統計調査の令和6年1月分調査になることが想定されています。令和6年1月調査からの適用となりますと、毎月勤労統計調査としては、6年程度ベンチマーク更新の期間があくことになると思っています。ベンチマーク自体ですが、前回のベンチマークが平成26年の経済センサスで、今回、令和3年の経済センサスを使うと、ベンチマークの時点としても7年程度の期間があくことが起こり得るかと考えています。ベンチマーク更新については、御説明しましたように、賃金・労働時間の集計結果のウエイトとして用いられているために、間隔が大きくあいてウエイトが大きく変化することで、調査結果に大きなギャップを生じかねないことが懸念されています。矢印の所ですが、ベンチマーク更新に使用する労働者数のデータについては、仮に平成28年経済センサス又は事業所母集団データベースを基に作成することも考えられるかと思っていて、この場合に、どちらを使うことが適切か。さらに、現段階では利用できませんが、令和3年経済センサス‐活動調査の公表を得た段階で、どういう措置が必要かなど技術的な議論を必要としているところです。
資料の6ページ目ですが、ベンチマーク更新の御検討を頂くに当たって、将来的、中長期的な論点が幾つかあるかと考え、挙げています。1ですが、仮に今回、事業所母集団データベースを毎月勤労統計調査のベンチマークとして定めることとした場合、事業所母集団データベースの年次フレームは毎年更新されるために、ベンチマーク更新を毎年やるのか、それとも何らかの根拠に基づいて一定期間ごとにやるのかなど、更新の頻度をどのように考えるかが1つの論点と考えています。先ほど御説明した雇用保険を用いた母集団の補正ですが、課題にもありました補正の適用度合いを考慮するということ。それによってベンチマークによる補正幅が、どの程度小さくなるかも考えていく必要があると思っています。2の3つ目ですが、今回は事業所の全数調査に基づく労働者設定をするベンチマークの対象が、現実的にはないような状況かと思っていますので、母集団労働者数の見直しの検証を実施するときに、今後、ベンチマークによる影響をどのように考えていくのか。次回、令和3年の経済センサス‐活動調査のベンチマークを、この段階で既に利用することなどを予定しておくべきなのか。こういったことが課題かと考えています。
資料の7ページですが、今回、ベンチマーク更新を御検討いただくに当たり、毎月勤労統計調査等の政府統計について指数を作っているものは、統計基準に基づいて指数の基準年改訂を実施しています。現段階では令和4年1月結果から令和2年、2020年の基準を100として、指数の改訂をすることが考えられています。基本的には、基準年を西歴年の末尾が0又は5の付く年を用いて指数を作成するというのが政府の統計基準になっています。また、今回、消費者物価指数について2020年を基準として指数改定を行うことが予定されています。これと併せて、従来、毎月勤労統計調査も指数の基準年改訂を実施していましたので、現段階では2020年基準による指数の基準年変更を実施することを予定しているところです。
また、資料の8ページに、過去のベンチマーク更新による影響について分析した資料を参考として付けています。まず、ベンチマーク更新による過去の影響ですが、平成21年、平成24年、平成30年にそれぞれ2%の常用労働者数の断層が生じているところです。実際の数値で見ていただきますと、次の9ページです。表の右側の赤枠の所にウエイト更新とあり、これがベンチマーク更新による影響ですが、ベンチマーク更新をした結果のウエイトが変わったことによる賃金額への影響について、平成21年、平成24年、平成30年ですが、それぞれ-0.4%から+0.4%程度、ウエイトによる賃金変化の影響が発生しているところです。
以下、10ページ目にはベンチマーク更新の概要を式にした形で参考までに掲載していますので、御参照いただければと考えています。説明は以上です。
 
○加藤主査
御説明、どうもありがとうございました。ただいまの御説明について御質問も含めて、委員の皆様、どうぞ御自由に御意見、御質問等をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。高橋先生、お願いいたします。
 
○高橋委員
私の理解が合っているかも含めて確認させていただきたいのですが、最初に年次フレームは、多分、毎年の事業所数は正確だろうということで、ただし、労働者数は正確かどうか分からない。そして雇用保険データは、雇用保険加入者がいる事業所については正確な数だけれども、雇用保険に入っていない労働者が漏れてしまう。雇用者全体から見ればカバレッジが低くなることを考えると、雇用者数を調査しているのは今年6月実施の経済センサス‐活動調査なので、その確報値の公表を待ってベンチマークの更新を遅らせると、私の認識はそういうことかなと思ったのですが、これは大変筋が通っていると思いました。ギャップが発生してしまうということについてですが、それでも、あやふやなものをベンチマークにすることはできないので、経済センサス‐活動調査の結果を待つというのは筋が通っているのではないかと思いました。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございます。事務局のほうでどうでしょう。
 
○野口統計管理官
事務局です。ちょっと説明が不足していて大変申し訳ございません。高橋先生のおっしゃるとおり、令和3年の経済センサス‐活動調査では全数を調査し、労働者数も把握されているので、これをベンチマークとしないという選択肢はないかと考えています。一方、前回のベンチマーク更新が平成26年ですので、少し期間があいてきていること、毎月勤労統計調査としては様々な変更によるギャップや断層などを、できるだけ小さくして統計を作っていくことが昨今求められていますので、現段階でベンチマークに足るものがあれば、そこでひとつベンチマーク更新を行うことが技術的に可能かどうかを、皆様の御意見を伺いながら検討を進めたいと考えているところです。
 
○高橋委員
分かりました。年次フレームの労働者数ですが、どの程度の精度なのかということは把握されていますか。
 
○加藤主査
いかがでしょうか。
 
○野口統計管理官
精度という意味で、どの程度かというところまでデータを現段階で持ち合わせていませんが、総務省などに状況を御確認したり、年次フレームの作り方について更に精査を進めていく上で、状況を御報告することにさせていただければと考えます。
 
○高橋委員
分かりました。ありがとうございました。
 
○加藤主査
ありがとうございます。高橋先生、よろしいでしょうか。年次フレームの精度について、そもそも正確な値がないので判定は難しいと感じるかもしれません。ほかの委員の先生方、
いかがでしょうか。
 
○風神委員
風神です。発言してもよろしいでしょうか。
 
○加藤主査
よろしくお願いいたします。
 
○風神委員
私も、労働者数というのは平均給与を算出するのに正確さが求められているように思います。また、これまでのギャップの要因も労働者のウエイトからきているようですので、正確なものを用いる必要はあるのかなと思います。そこで確認ですが、この年次フレームを使った場合に、2019年、令和元年で入手できる民営事業所のものはそれを使って、公営事業所は、2016年、平成28年の経済センサスではなかったので、2014年のデータを使い、また、2019年には取れない民営事業所の分は、2016年の民営事業所を用いるということで混在している状況なのかなと思いまして、この点の問題はないのかということが1点です。また、その事業所名簿は更新とあるので、労働者数は2016年のデータになる部分がある一方、事業所の参入・退出は2019年になるので、そのギャップによる問題はないのかなというのを疑問に思っています。そういったことに対して、今後の委員会の中でどの程度それが問題になるのか。あるいは、もう1個の2016年のを使って公営事業所を推計した場合、何らかの方法で全数と推計値でどの程度ぶれが出るのかを、一緒にデータとしてお示しいただければ検討しやすいと思いました。
補足ですけれども、更新の頻度ということも資料の後ろのほうにありました。頻繁に行えばギャップは少なくなる一方、毎月勤労統計調査は時系列で推移を見ることもあるので、あまり母集団が変わってしまうと、一体、何の変化を見ているのか分かりにくくなるのかなという感想を持っています。また、今後、雇用保険のほうの0.5は適切なのかということも是非考えていければと思います。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございます。事務局のほうでいかがでしょうか。
 
○野口統計管理官
事務局です。風神先生、ありがとうございました。先生のおっしゃる御示唆も踏まえまして、例えば次回などに、どこまで把握できるか現段階で明確にはなっていませんが、お答えできるデータをできる限り把握して状況を改めて見ていただき、事業所母集団データベースの年次フレームの作成時点は、公式には令和元年6月1日時点となっていますが、その背景にどういうものがあるかということ。それから、経済センサスの28年を使って公営を推計するときにどういう推計の方法があるかなど、御指摘いただいたことも踏まえて、実際にデータを使ったもので見ていただけるような準備を進めたいと考えています。また、ベンチマークの更新頻度などについても御示唆をありがとうございます。正に先生の御指摘のとおりかと思っていますので、その辺も含めまして、今回のデータや今までのデータなど、次回、考え得るものを準備して、御議論にお答えできるように準備を進めたいと思っています。
 
○加藤主査
ありがとうございました。
 
○高田雇用・賃金福祉統計室長補佐
厚生労働省の高田です。少し補足させていただきますと、先生がおっしゃるとおり、令和元年次フレームは恐らくいろいろな人数が混在していまして、令和元年の経済センサス‐基礎調査ですと、先ほど説明がありましたとおり、既存事業所については外観調査ということで、新設事業所しか労働者数が更新されていないといった問題があろうかと思います。一方で、経済構造実態調査で大きい規模の事業所については把握している部分もあり、そういった所については恐らく更新できている部分もあると聞いています。あと、経済センサス‐基礎調査だと、民営事業所については期間が長期間にわたっていて6月1日時点ではないということもあり、そういった意味でも正確にこの時点のというのはなかなかできていない状況がありますので、先生がおっしゃったとおり、令和元年次フレームがいいのか、あるいは28年経済センサスを用いて公営事業所は別途推計するのがいいのか、可能性としてどちらもあろうかと考えています。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございました。風神先生、いかがでしょうか。
 
○風神委員
ありがとうございました。
 
○加藤主査
ほかに御意見等があれば、御自由に御発言いただければと思います。樋田先生、よろしくお願いいたします。
 
○樋田委員
このベンチマークの更新については、労働者数をどれだけ正確に把握できるのかと言う点が、どちらをベンチマークに使うのかという選択に大きく影響すると考えています。6年間待つというのはなかなか難しいということであれば、年次フレームを使うのか、28年センサスを使うのかを、ある程度決めていかなければいけないと思います。そのときに、年次フレームのほうでは、従業者数が登録されていない事業所があるのではないかと思います。必要な産業や規模別でみたときに、従業者数がどのぐらい正確に把握できるのかという情報がないと、どちらのデータを使う方が良いのか検討するのは難しいと思いますので、この28年のセンサスと年次フレームについて、必要となる労働者数の区分について、どのくらい登録がされているのかを実際に見て考える必要があるのかなと思っています。可能であれば次回や今後の検討の中で、そういったデータを見せていただいて検討の材料にしたいと思っています。以上です。
 
○加藤主査
ありがとうございます。私も個人的に樋田先生のおっしゃるとおりだと思いまして、ある程度見せていただいた上で考えないとということだと思います。何しろ今日はキックオフということで、まず状況と考え方について御議論いただければと思います。事務局のほうで今の樋田先生の御発言について、もしあれば。
 
○野口統計管理官
事務局です。樋田先生、ありがとうございました。おっしゃるように現段階では私どもも十分なデータを御用意していませんので、今後、データの準備を進めながら御議論いただけるような環境を整えていきたいと考えています。ありがとうございます。
 
○加藤主査
樋田先生、いかがでしょうか。
 
○樋田委員
今の御回答で結構です。ありがとうございました。
 
○野口統計管理官
ありがとうございます。
 
○加藤主査
ほかにいかがでしょうか。私のほうから1つだけお伺いしたいのが、雇用保険データを用いた補正の話です。この辺り、急激に変えるとなるとまた大きなギャップが生じてくる可能性があると思いますけれども、ベンチマークの更新とともに、この議論もこの後で少し続けていただければ有り難いなと思っています。よろしくお願いいたします。いかがでしょう、ベンチマーク更新について先生方、御意見、御質問がございましたらお願いいたします。ありがとうございます。先生方から御意見を頂きまして事務局のほうで試算等を行って対応策を検討し、次回のワーキンググループで資料を改めて提出していただき、そこで御議論いただければと考えています。それでは、次の議題は2「その他」となっていますが、事務局のほうから何かございますか。
 
○奥垣統計企画調整室長
事務局から特段ございません。
 
○加藤主査
まだ少し時間がございます。本日予定しておりました議題は以上となりますが、全体を通して先ほどまで御発言できなかったことも含め、御質問、御意見等がありましたら是非お願いいたします。よろしいでしょうか。特に御質問等はないということで、本日の議題は全て終了となります。事務局のほうにお返しします。
 
○奥垣統計企画調整室長
本日は、お忙しいところ御出席いただきまして誠にありがとうございました。これをもちまして、第1回毎月勤労統計調査の改善に関するワーキンググループを閉会します。本日はありがとうございました。
 
(了)

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

電話:03-5253-1111(内線7373)

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